晴れときどき化学、ところにより雑想

もしかしたら何かの役に立つかもしれない化学のお話(と、よしなしごと)

フェロモン

2012年03月21日 20時58分52秒 | 化学のお話
フェロモンは、生物により放出されて、同じ種の他の個体に特別な行動を引き起こす化学物質の総称です。

フェロモンの存在は多くの動物で知られていますが、特に昆虫などの知覚が未発達なものでは情報伝達物質としての役割が大きく、種類も豊富にあります。

そこで、ここでは昆虫フェロモンについて書いていくことにします。


フェロモンには、交尾、警報、縄張りの表示、営巣仲間の認識、道しるべなどにおける、一種の通信信号のような役割があり、ごく微量で十分な効果を示します。

また、フェロモンには、空気中を漂って嗅覚器官を刺激するものと、経口的に効くものの2種類があります。

性フェロモンやアリの道しるべフェロモンは前者、ミツバチの女王物質やシロアリの階級分化物質は後者に属します。

※なお、昆虫フェロモンの中には、数km先の遠方にまで届いて効果を示すものも存在するというから驚きです。


一般にフェロモンは、

・活性が極めて強く、種に特異的に作用すること

・殺虫剤などと異なり、抵抗性を持つような心配をしなくてよいこと

・揮発性が高いものが多く、分解されやすいため、残留性についても心配しなくてよいこと

といった理由から害虫駆除に役立てていくことが期待され、現在その方面での研究がかなり進んでいて効果を上げています。


ちなみに昆虫のフェロモンとして最初に解明された物質は、カイコの雌が雄を誘引する物質で、ボンビコールと呼ばれる化合物です。

これは炭素16個からなる(二重結合を2個もつ鎖状の炭素骨格を持つ)アルコールになります。

※なおこの物質の解明には、100万匹のカイコと20年以上の歳月が必要でした。

そしてこの化合物が同定されたことにより、フェロモンの科学が発展していくことになります。