Lilja 4 Ever

2006-03-29 12:15:50 | 映画@ベルギー
月曜日の話ですが、ARTEで放送された「Lilja 4 Ever」(2002年)という映画を観ました。(IMDB内のページはこちら

監督は、スウェーデンのルーカス・ムーディソン。私は処女作の「Fucking Amal」しか観たことありませんが、この映画が3本目の作品らしいです。

「Fucking Amal」はスウェーデンの田舎町で暮らす、ちょっと派手で学校中の人気者の女の子と、対照的におとなしくて目立たない女の子のラブストーリーで、いわば“素朴な”、可愛らしい青春映画だったのですが、「Lilja 4 Ever」はとてつもなく悲惨で痛切な青春映画です。どちらもとてもリアルなことに変わりはないけど、「Lilja 4 Ever」の現実は耐え難い現実。

舞台は、ロシアのとある町。お金もない、仕事もない、夢も希望も何もない、郊外の団地。誰もがこんな国から出て行きたいと思っていて、Liljaの母親もまた、チャンスをつかむとためらいもなくLiljaを捨てて男とアメリカに行ってしまいます。

大人たちは疲れきっていて、本来守られ、大事にされるべき子供たちは見捨てられたまま。唯一の身内であるおばにアパートを奪われ、汚いアパートに引越しさせられたLiljaは、友達にも裏切られ、お金も底をつき、仕方なく男と関係を持ってお金を稼ぎます。そんな風にして手に入れたお金でも、スーパーで好きなものが買える、唯一の友達である年下の男の子に誕生日のプレゼントを買ってあげられる、というささやかな幸せが、Liljaに子供らしい表情を蘇らせます。

でも、親にも社会にも見捨てられた子供に子供らしく生きるなんてできるはずもなく。Liljaはクラブで知り合った優しくてハンサムな男にそそのかされ、スウェーデンに行くことにします。でも、希望に満ちた彼との新しい生活、という夢はスウェーデンの空港であっけなく壊され、待っていたのは、すべての自由を奪われた、単なる性商品としての生活。

私たちは、この映画がフィクションであっても、Liljaのような女の子が世の中に、スウェーデンのような豊かな国にも、もちろんベルギーにも、日本にも、無数にいることを「知っている」ので、この映画から目を逸らすことはできません。映画を観終わって心に残るのは、なんという世の中に生きているんだろう、という絶望感。

主演の女の子が、とてもとても素晴らしくて彼女の表情が頭に焼きついて離れないのですが、彼女が、彼女の年齢に相応しい(役では16歳ですが、実際には14歳だったとか)、子供らしい本当に屈託のない笑顔を見せるのが、現実世界ではなく夢の中だけ、というラストが本当に痛ましいです。

辛い映画だけど、観ることができて良かった。


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