Renaissance

2006-07-22 15:41:44 | 映画@ベルギー
昨日の夜、久しぶりに映画館に行って、Renaissance(ルネッサンス)という映画を観てきました。

この映画はフランス映画なのですが、白黒、そしてモーションキャプチャを利用したCGアニメーション映画、というあまりお目にかかれないスタイルの映画です。

舞台は2054年のパリ。監視社会が進み、要塞と化したパリの造形が文句なしに素晴らしいです。そのパリの街並みを見ているだけでも十分だと思えるほど。モーションキャプチャの技術もとても優れていて、人物の動きも完璧でした。物語は、巨大なコスメ会社に勤める若く、美しく、有能な科学者Ilonaが誘拐されるところから始まり、誘拐事件を専門に扱う刑事、Karasが事件を解決するまでが映画になっています。

物語自体は、近未来ものには比較的ありがちなシナリオで、特に目新しいところはないのですが、ビジュアルの美しさがすべてをまかなっています。正直言って、その映像を見るのが目的であって、物語はどうでもいいというか。このアニメーションの技術に相応しい素晴らしいシナリオだったら・・・と思うと残念でなりません。

もうひとつ私が気になったのは、資金集めにとても苦労したのかもしれませんが、映画の中に某大企業の広告が背景の一部として出てくること。大事なスポンサーなのかもしれないけど、ちょっとダイレクトすぎて、広告を出させた某大企業にも、広告を出すことをOKした映画のプロデューサーにも、ちょっといや~な感じがしました。

でも、そう頻繁にはお目にかかれない美しい映像を見ることができて、大満足。この映画がフランス映画だというのも、嬉しい発見でした。これからも、優れた才能のあるクリエーターたちが素晴らしい映画を作ってくれるのではないかと、とても期待させてくれる映画です。



Renaissance  2006年 フランス
監督:Christian Volckman
オフィシャルサイト:http://www.renaissance-lefilm.com/

Lilja 4 Ever

2006-03-29 12:15:50 | 映画@ベルギー
月曜日の話ですが、ARTEで放送された「Lilja 4 Ever」(2002年)という映画を観ました。(IMDB内のページはこちら

監督は、スウェーデンのルーカス・ムーディソン。私は処女作の「Fucking Amal」しか観たことありませんが、この映画が3本目の作品らしいです。

「Fucking Amal」はスウェーデンの田舎町で暮らす、ちょっと派手で学校中の人気者の女の子と、対照的におとなしくて目立たない女の子のラブストーリーで、いわば“素朴な”、可愛らしい青春映画だったのですが、「Lilja 4 Ever」はとてつもなく悲惨で痛切な青春映画です。どちらもとてもリアルなことに変わりはないけど、「Lilja 4 Ever」の現実は耐え難い現実。

舞台は、ロシアのとある町。お金もない、仕事もない、夢も希望も何もない、郊外の団地。誰もがこんな国から出て行きたいと思っていて、Liljaの母親もまた、チャンスをつかむとためらいもなくLiljaを捨てて男とアメリカに行ってしまいます。

大人たちは疲れきっていて、本来守られ、大事にされるべき子供たちは見捨てられたまま。唯一の身内であるおばにアパートを奪われ、汚いアパートに引越しさせられたLiljaは、友達にも裏切られ、お金も底をつき、仕方なく男と関係を持ってお金を稼ぎます。そんな風にして手に入れたお金でも、スーパーで好きなものが買える、唯一の友達である年下の男の子に誕生日のプレゼントを買ってあげられる、というささやかな幸せが、Liljaに子供らしい表情を蘇らせます。

でも、親にも社会にも見捨てられた子供に子供らしく生きるなんてできるはずもなく。Liljaはクラブで知り合った優しくてハンサムな男にそそのかされ、スウェーデンに行くことにします。でも、希望に満ちた彼との新しい生活、という夢はスウェーデンの空港であっけなく壊され、待っていたのは、すべての自由を奪われた、単なる性商品としての生活。

私たちは、この映画がフィクションであっても、Liljaのような女の子が世の中に、スウェーデンのような豊かな国にも、もちろんベルギーにも、日本にも、無数にいることを「知っている」ので、この映画から目を逸らすことはできません。映画を観終わって心に残るのは、なんという世の中に生きているんだろう、という絶望感。

主演の女の子が、とてもとても素晴らしくて彼女の表情が頭に焼きついて離れないのですが、彼女が、彼女の年齢に相応しい(役では16歳ですが、実際には14歳だったとか)、子供らしい本当に屈託のない笑顔を見せるのが、現実世界ではなく夢の中だけ、というラストが本当に痛ましいです。

辛い映画だけど、観ることができて良かった。

久しぶりのブリュッセル

2006-03-19 21:16:23 | 映画@ベルギー
昨日の話ですが、久しぶりにブリュッセルに行ってきました。お目当ては映画。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で上映された、黒沢清の「Lost」と塚本晋也の「Haze」を観てきました。

今年の映画祭で観るのはこの2本だけ。メイン会場のPassage 44には行かないので、あまり映画祭に行く、という感じもしません。ブリュッセルで仕事をしていたときは、仕事帰りに映画を観て帰るのもたまにはいいかな、と思えたのですが、今となっては電車の定期もないし、平日の、しかも夜に映画を1本観るためにブリュッセルまで・・・という気にはとてもなれません。ちょっと淋しい気もするけど。

久しぶりにせっかくブリュッセルまで行ったので、本当は和食でも食べたかったのだけど、映画が6時半からだったので和食は断念。代わりに土曜日はノンストップで営業している中華スーパー近くのベトナム料理屋に行ってきました。早めに着いたので、だらだらと2時間くらい時間をかけて。(^_^;) 午後だったのでほかに2~3組しかお客さんがいなくて快適でした。

もちろん(?)、レストランの前に隣のマンガ&アニメ屋をチェック。久しぶりに行ったらいつのまにかきれいになっていました。以前はいろいろと売っていて雑然としていたけど、今では本当にマンガとアニメの専門店、という感じで、なかなか繁盛している様子。隣のベトナム料理屋といい、リエージュにもこういうお店があるといいんだけどな~。

さて、肝心の映画はというと、ちょっと期待はずれ。(^_^;)

黒沢清の「Loft」(主演:中谷美紀、豊川悦司、西島秀俊)は予告編を見て、正統派のホラーというか、本当に怖ーいホラーを期待していたのですが、恐怖に取り付かれた人間の弱さを、どちらかというと面白おかしく描いている、という感じ。雰囲気的には、「回路」と「ドッペルゲンガー」を足して2で割ったような感じ、かなあ。怖いんだけど可笑しい、というのは、発想は悪くないように思うのだけど、でも怖いんだったら最後まで徹底して怖くしてくれればいいのに、可笑しいんだったらもっと皮肉をこめて徹底的に可笑しくしてくれればいいのに、というのが私の個人的な感想です。でも、「回路」と同じような映画を作っても仕方ないしね・・・。新鮮味のあるホラー映画を作る、というのは、いつの時代でもとても難しいものだと思いますが。

もう1本は塚本晋也の「Haze」。もともとは25分くらいの短編映画として撮ったものを再編集して49分にしたもので、短編ならではの勢いがある、という感じ。あるとき目覚めたらものすごく狭い、コンクリートの竪穴のような空間にいて、そこにいる理由も出口もわからず悪戦苦闘する、という設定はヴィンチェンゾ・ナタリの「Cube」を彷彿とさせます。短編なので、話は単純でわかりやすいですが、映像と音楽の迫力はさすが塚本晋也。まったく非現実的な話なのに、何があってもあんな狭いわけのわからない空間に閉じ込められるのは絶対に嫌だなあ、と心底思わされる映画でした。(^_^;)

映画とは直接関係ないのですが、今回映画を観に行ったNOVAという映画館は普段インディペンデント映画を上映している映画館で、とても快適とは言えない造りです。(^_^;) そもそも平らな床にあまり居心地のよくない椅子が並んでいるだけ。おまけにいつもそうなのか、映画館の中がやたらと暑くて、2本目を見終わった頃にはなんだかふらふらになってしまいました。幸い短い映画だったから良かったのだけど。

家に帰り着いたのは、真夜中近く。義母の家に遊びに行って帰りが真夜中、というのとは全然疲れ方が違って、年かしら・・・。(^_^;)

今年も・・・

2006-02-22 18:20:50 | 映画@ベルギー
来月、3月10日から25日まで、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭(BIFFF)が開催されます。

2週間以上、という映画祭としては稀に見る長さ。24年という長い年月を経ても、いまだに学生の自主上映会的な、オタクっぽい雰囲気が残る映画祭です。(^_^;) ミシェルもかつては、映画祭の間休みを取って通いつめていたほど。最近はそんなにお金もかけられないのでアジア映画ばっかり観ていましたが、リエージュに引っ越してきてからはさらに足が重くなり、年々観る映画の数が減っていくような気がします。ちょっと淋しいけど、特に今年はいっそうお財布が淋しいし。(^_^;)

ちなみに、去年は清水崇の「稀人」が最高賞のCorbeau d'Or(金のカラス)、塚本晋也の「Vital」が次賞Corbeau d'Argent(銀のカラス)を取りました。映画はいろんな国から出品されているのですが、とりあえず日本映画だけ日付順にピックアップします。詳しいプログラムは、BIFFFのサイトを見てください。


 おそいひと Late Bloomer
 上映日:3月12日20:30/3月13日22:30 上映会場:Nova
 監督:柴田剛
 出演:住田雅清、とりいまり、堀田直蔵、白井純子、福永年久、有田アリコ

 重度の身体障害を持ちながら、介護者のサポートを受けて暮らしている障害者が主人公。卒論の取材のために、介護を経験したいという女子大生がやってくるところから主人公の生活や気持ちに変化が現れ・・・。
テーマはずばり、障害者と(障害者による)犯罪。個人的にかなり興味を惹かれるテーマではありますが、日曜か月曜の夜というのがつらい・・・。こういう映画が観られるのが、映画祭の魅力でもあるのですが。

公式サイト:http://osoihito.jp/


 Meatball Machine
 上映日:3月12日0:30 上映会場:Auditorium 44
 監督:山口雄大
 出演:高橋一生、河井青葉

 タイトルからしてBIFFF受けしそうな映画。上映時間も夜中だし。
去年の東京ファンタで上映されたらしく、東京ファンタのサイトによると、「生きた人間に寄生する怪物と、それに身体を乗っ取られ醜悪な生き物=ネクロボーグとなり、戦いを強要される一組の男女ヨウジ、サチコの物語」だそうです。
監督の山口雄大は北村龍平の「Versus」「Alive」の脚本を担当した人らしい。
マンガが原作のコメディ「魁!!クロマティ高校THE★MOVIE」の監督でもあり、この作品も今回のBIFFFで上映されます。


 乱歩地獄 Rampo Noir
 上映日:3月13日20:00/3月14日22:30 上映会場:Nova
 監督:竹内スグル、実相字昭雄、佐藤寿保、カネコアツシ
 出演:浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平

 江戸川乱歩の「火星の運河」「鏡地獄」「芋虫」「蟲」を映画化して1本の作品にまとめたもの。出演者は3人しか書きませんでしたが、そのほかの出演者もとっても豪華です。
江戸川乱歩、好きなので観てみたいです。松田龍平、密かに好きだし。

公式サイト:http://www.rampojigoku.com/


 マインド・ゲーム Mind Game
 上映日:3月15日18:30 上映会場:Auditorium 44
 監督:湯浅政明
 出演(声):今田耕司、前田沙耶香、藤井隆、たくませいこ、山口智充

 毎年、1本は日本アニメが上映されるBIFFFですが、今年のアニメはこれ。監督は「クレヨンしんちゃん」劇場版を手がけた人。
お話はともかく(^_^;)、アニメーションは「アニマトリックス」をプロデュースしたSTUDIO4℃。アニメ表現の新しい可能性を切り拓いた作品・・・らしいです。


 Shinobi
 上映日:3月15日20:30 上映会場:Auditorium 44
 監督:下山天
 出演:仲間由紀恵、オダギリジョー、椎名桔平、黒谷友香、沢尻エリカ

 この前DVDを買ったばかりですが、この映画はきっとBIFFFで公開されるだろうな、と前から思っていた作品。
原作は、かの有名な山田風太郎の「甲賀忍法帖」です。日本でもこの手のエンターテイメント映画はあるんですよ、っていう感じでしょうか。

公式サイト:http://www.shinobi-movie.com


 魁!!クロマティ高校 Cromartie High School
 上映日:3月15日22:30 上映会場:Auditorium 44
 監督:山口雄大
 出演:須賀貴匡、虎牙光揮、渡辺裕之、高山善廣、遠藤憲一

 野中英次原作の同名ギャグ漫画を映画化した作品。監督は、Meatball Machineの山口雄大で、今回のBIFFFにはゲストとして招待されているようです。
予告編観ましたが、バカバカしくていい感じです。
でもお金払って観る気は・・・。(^_^;)

公式サイト:http://www.kurokou.com


 Loft
 上映日:3月17日20:30/3月18日18:30 上映会場:Nova
 監督:黒沢清
 出演:豊川悦司、中谷美紀

 私もミシェルも大好きな黒沢清の久々(?)の新作。前作「アカルイミライ」は全然機会がなくていまだに観ていないのですが、今作は黒沢清らしい、正統派ホラーという感じです。

予告編は韓国の配給会社Mirovisionのサイトで。


 Haze
 上映日:3月18日20:30/3月19日18:30 上映会場:Nova
 監督:塚本晋也
 出演:塚本晋也、藤井かほり、村瀬貴洋、神高貴宏、辻岡正人、さいとう真央

 これまた私たちが大好きな塚本晋也の最新作。
批評によると原点回帰的な作品らしく、お相手役も「東京フィスト」の藤井かほり。たった49分の作品ではありますが、塚本映画らしいぶっ飛び感が期待できそう。

公式サイト:http://theres.co.jp/tsukamoto/haze/index.html


 妖怪大戦争 The Great Yokai War
 上映日:3月19日14:00 上映会場:Auditorium 44
 監督:三池崇史
 出演:神木隆之介、宮迫博之、南果歩、成海璃子、佐野史郎

 上映される作品のほとんどが16歳以下禁止指定を受けているBIFFFの映画ですが、もちろん、子供向け映画もあります。
で、BIFFFでも人気の三池崇史が今年のお子様担当(?)。
ちっちゃい子(でも、小学校の高学年くらいかな)、そして男の子の子供がいたら、一緒に観に行きたいかも。(^_^;) (ていうかミシェルは今でも楽しめる?)

公式サイト:http://yokai-movie.com/index.html


 ゴジラFinal Wars Godzilla Final Wars
 上映日:3月19日18:00 上映会場:Auditorium 44
 監督:北村龍平
 出演:松岡昌宏、菊川怜、宝田明、ケイン・コスギ、水野真紀

 こちらもお子様OKな1本。監督は「Alive」「Versus」「荒神」「あずみ」・・・などなどBIFFFでもお馴染みの北村龍平。
誰でも知ってるゴジラのシリーズ最終作、ということですが、やっぱりゴジラは、着ぐるみの特撮モノのほうが、迫力があっていいですよねえ・・・。

公式サイト:http://www.godzilla.co.jp/


 エリ・エリ・レマ・サバクタニ Eli, Eli, Lema Sabachtani?
 上映日:3月20日20:30/3月21日22:30 上映会場:Nova
 監督:青山真治
 出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、戸田昌宏

 青山真治の最新作です。が、微妙な感じです。
感染すると自殺したくなる病気に感染してしまった女の子が、その病気を治せるという音楽家を訪ねる、という物語で、「音楽」がモチーフなのですが・・・。
ものすごく気に入るか、全然つまらないか、どちらかだろうな、という気がします。

公式サイト:http://www.elieli.jp/top.htm


 デス・トランス Death Trance
 上映日:3月22日22:30 上映会場:Auditorium 44
 監督:下村勇二
 出演:坂口拓、須賀貴匡、剣太郎セガール、竹内ゆう紀、藤田陽子

 「Versus」「Alive」「Shinobi」などのアクション監督を務めた下村勇二が監督の日米合作映画。
時代劇なんだけどアクション、ファンタジーで、「Versus」や「Alive」のスタイリッシュな流れを受け継いでいる、という感じでしょうか。

公式サイト:http://www.deathtrance.us/


<番外編>
といっても、ちゃんとしたプログラムの中に入っているのですが、お色気もの。(^_^;) 今年のクラシック映画特集はお色気もの、しかも「尼僧もの」(そんなジャンルがあるのね)のようで、日本映画も「聖獣学園/School of the Holy Beast」、「濡れ縄ざんげ/Wet Rope Confession」といういかにもなタイトルの2本が上映されます。ちなみに2本とも3月24日の夜、22時30分からNovaで2本続けて。


・・・ということで、日本映画は全部で14本。今のところ、問題なく観に行けそうなのは18日の土曜日の2本だけかなあ。

天邊一朶雲

2006-01-30 12:35:10 | 映画@ベルギー
もう土曜日の話なのですが、ひっさしぶりに、映画を観てきました。

この映画が観たい! というよりは、映画館に映画を観に行きたい! というのがまずあって、この映画なら面白いかな、と思って観に行った、という感じ。リエージュはブリュッセルより映画の値段が安いのですが、今回は40ユーロで10回観られる回数券を購入。1回4ユーロだから、かなりお安いです。

さて、肝心の映画は台湾の蔡明亮(Tsai Ming-Liang)の「天邊一朶雲」(英題「The Wayward Cloud」/邦題「浮気雲」)。台湾映画って、なんだかクセのある作品が多いように思うのですが、この作品も大いにクセありまくりの1本。そもそも、台湾が極度の水不足に襲われ、人々が水よりも安く生産されるようになったスイカで水分を補給するようになった、という設定自体が飛んでいます。映画には、ミュージカル映画と言うほどではないけど、ところどころミュージカル・シーンが登場するのですが、その歌も踊りも衣装もまた飛びまくり。

物語はというと、そんな水不足の台湾で、職場の美術館の洗面所から水を盗んで暮らしている若い女の子と、ビルの水槽タンクをお風呂代わりにして水不足対策をしているようなAV男優(!)のラブストーリー。女の子は街で出会ったAV男優に少しずつ惹かれていくのですが、彼が自分の住むマンションの別の部屋で撮影をしているAV男優だということに気づくラストシーンがこれまた衝撃的です。

実を言うと、私はラストシーンを見るまで何がなんだかさっぱりわからず、単なるおバカ映画としてこの映画を観ればいいのか、もっと深い何かを私がまったく読み取れずにいるのか、大いに悩みながら観ていたのでした。というのも、AV男優のお仕事風景のシーンはとってもリアルだし(16歳以下鑑賞不可)、スイカ大好きな女の子が妊婦さんのようにスイカをお腹に抱えてマンションの階段を上る途中、陣痛が始まったかのように苦しみだし、無事スイカを出産したりするし、こんなに広い公衆トイレ見たことない、というくらい広いトイレでミュージカルシーンが繰り広げられるし、女の子が暗証番号を忘れてしまったため開かなくなってしまったスーツケースの存在意義もよくわからないし・・・。そもそも水不足のためスイカで渇きを凌いでいる、という設定からしてナンセンス。

結局、衝撃のラストにたどり着いて始めて、よくわからなかったシーンもこの映画の妙に乾いた雰囲気を作り出すのに必要不可欠だったことがわかるのですが、そこまでたどり着くのが長くちょっと苦痛でした。(^_^;)

そんなこの映画のモチーフは一言で言うと「渇き」。水への渇きは甘~いスイカが、他者への渇きは肉体への欲望が癒してくれます。あまりにも過激なお色気シーンのため、ベルリンでは途中退席者が後を絶たなかったそうですが、お色気シーンでさえなんとも乾いているその妙な雰囲気と、水のようにつかみどころのない数々のシーンが、なんとも言えない後味となって見終わった後も残ります。それこそ、地面からじわじわと水が染み出してくる劇中の1シーンのように、この映画の毒のような魅力がじわじわと体の中を回っていくような。(^_^;)

そんなわけで、決して万人受けする映画ではありません。映画館の紹介文にも、「要注意」と書いてあるくらいだし。でも、何かが琴線に引っかかれば、気づかぬうちにこの映画の魅力に溺れてしまうかもしれません。

ちなみに・・・ミュージカルシーンに出てくるスイカの傘、可愛いです。

ヴァイブレータ

2005-10-15 23:45:55 | 映画@ベルギー
昨日は仕事が終わったミシェルとブリュッセルで待ち合わせをして、映画を観てきました。

観てきた映画は廣木隆一の「ヴァイブレータ」。いろんな人にこの映画はいいよ! と言われていたのでずっと見てみたかったのですがベルギーではこれまで機会がなく、日本に帰ったときにDVDを買ってしまおうかと思ったのですが、みんながいいと言っても気に入らないこともあるので、結局買わずじまいでした。

でもやっぱり思い切って買っておけば良かった! とものすごーく後悔するほど、衝撃的なほど素晴らしい映画でした。こんなふうに頭をガツーンとやられてしまうような映画って、そうそうありません。

物語は、アル中で食べ吐きを繰り返しているフリーライターの女(寺島しのぶ)が、ある夜コンビニでトラック運転手の男(大森南朋)に一目でくらっときてしまい、彼のトラックに乗って旅(仕事)の道連れになる、というもの。彼の仕事の道連れで東京と新潟を往復する間に二人の間に起こること、が映画になっているのですが、寺島しのぶが本当にとてもとても素晴らしくて、大森南朋もとっても良くって、二人の表情が素晴らしい映像になっていました。

旅の終わりに、寺島しのぶがいい女になったかな、と感想を抱くのですが、見ている自分も彼女と一緒にちょっと癒されたような感じ。もちろん、これからも辛いことは起こることはわかっている、という点で、完全にハッピーエンドな映画ではないのですが、辛い目に合わずには生きていけないこの世の中、時にはこんなふうにちょびっと癒されて、その分いい女になる、そんな時間を過ごす必要があるよなあ、と思います。私は免許もないし、車に乗りたいと思ったこともないのだけど、こんな旅ができるなら、車に乗るのもいいかな、という気がしました。それにしても冒頭で寺島しのぶがくらっときてしまう大森南朋・・・別にどうってことない服を着て、雪対策用の長靴を履いてるだけなのに、あー。カッコよかった・・・。(^_^;) 監督は男の人ですが、男の人が観るとまた違った見方になるのかもしれません。

ちなみにこの映画、田川のあるChaussee de Vleurgatを下っていったところにある、Place Flageyに面したFlageyというところで、11月1日まで上映しているみたいです。