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静寂はあなたへの恩恵

人生の途中で聴覚障害となった私。
でも代わりに心の声が聞こえるように・・・
そんな私の思いを綴っていきます。

子育てのこと ~ともに育ち合うことについて~

2011-02-28 00:36:04 | 子育て
私は実際子供を産んだことはなく、そして子育ての経験もなく、この先子供を産む予定もなく、
そんな私だけれど、保育士を長年していた経験から、子供は大好きだし、今後も子供のこと、
子育てのことには関わっていきたいと思っていて、
そんなときある方の話で思いだしたことがありました。

子育てのことで悩んでいるその方は、知人に「正論」で説かれてしまったことに
とても苦しんでいたのです。

そのことで私が思いだしたのは、保育士時代のこと。

ある年、私が担当していた、ダウン症のH君っていう子がいて、
その子はとてもいい子なんだけれど、お友達を噛んでしまう癖があって、
それも親がクレームをつけてくるような、今で言うと「モンスターペアレント」だったの。

なんでH君がその子を噛むかって言うと、理由はちゃんとあるのだけれどね。。。

噛まれる子の親がとにかくうるさいので(うるさくなくても噛むことはよくないことだしね)
H君がお友達を噛まないように、担任の私はもちろんその場に居合わせる保育士は
みんな目を光らせていて、ぴりぴりしていたの。

そして私の上司の主任とか園長はH君の親に厳重注意して、
「もっとH君に愛情をかけてあげてください。H君の行動は愛情が足りないから起こっているんだ」と
いうことを話して、私も同じようなことを話したと思う。
H君のお母さんの気持ちも考えずに、正論を言いまくったのね。

そうしたら、ある日H君のお母さんはいっぱいいっぱいになってしまって、
「そんなふうに言われても、どうしていいのかわかりません。
うちにはH君の他に小さい妹もいて、H君だけにかまってあげることはできないし、
それっでなくても(ダウン症の)H君を育てることは大変で、
私なりに精いっぱいやっているところにそんなことを言われても。。。」と
FAXで殴り書きをしたものを送ってみえました。
そしてしばらく保育園には行かれません、と。

その文章は本当に殴り書き、と言った感じで、感情がばらばらになってしまっているような文章で、
そのとき初めて、「H君のお母さんを苦しめてしまった」と保育士みんなで反省しました。

そして正論では解決できないことや、相手を傷つけてしまうこともわかりました。
まずはH君のお母さんの気持ちをわかってあげなくちゃいけなかったのに、
最初から責めてしまったこと、そのことは本当に悔んで、H君が保育園を休んでいる間、
毎日、H君のお母さんに謝りと毎日のクラスの様子、
そして「H君とお母さんに会えるのを待っています」と書いたFAXを送り続けました。

そして10日ほど休まれて、保育園に再び来てくれたときには、
ただただお母さんと、お互い泣きながら抱き合ったのを覚えています。
この出来事はもう、10年以上もたった今も忘れられません。

保育士とか先生はとにかく正論を押しつけてしまいがち。
もちろんそこには良かれという思いがあってのことだと思うのだけれどね。

親さえしっかりしていれば、親さえちゃんと子供と向き合っていれば、
子供はちゃんと育つ、って思う人が多いのかな。

でも親も完璧じゃないし、毎日いろんなことがありながら、子供と向き合っていこうって
なんとかしていこうっていう気持ちを持っているっていうことをわかってほしい。
やろうと思ってもできないこともあるってわかってほしい。

親が子供を育てるのではなくて、共に育ち合っていくということをわかってほしい。

親子さんの問題って、親が一方的に悪いわけじゃない、
精いっぱいやっていても、難しいことはある、みんな一生懸命やっているんだって
改めて思いだしたの。

そして子供も傷ついて、親に伝えたいことがいっぱいあるんだよね。

私はそんな親子さんに寄り添っていけたらいいなと思う。

保育士をしていた当時は、表面的なことでしか見ていなかった部分がたくさんあったと思う。

でも今はもっと深いところを見て、働きかけていくことができる。

マニュアル本じゃわからないこと、子供やその親の心の奥底にある根本的なものを
読み取って、少しでも親子さんが楽になっていかれるような
メッセージを送っていけたら、と思う。