Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

『たまゆらOVA発売記念乗船券』の新作版権絵を読み解く

2010-11-25 08:59:59 | 作品舞台研究
アニメ『たまゆら』のEDと挿入歌を収録した、中島愛(なかじま めぐみ)さんのニューシングル「メロディ」(2010年11月24日発売、発売元: フライングドッグ、販売元: ビクターエンタテインメント)を早速聴いていますが、なかなかよいです。
ハルコミン(キャラクターデザイン担当の飯塚晴子さん)による裏ジャケのイラストの、メインキャラ4人の浴衣姿がまたかわいくてやばいです。



2曲目の「夏鳥」の4話での使われ方がまたいいんだこれが。
実は小生は10月22日の上映会で既に4話を観ているのですが、トークショーのレポを投下しそびれています。
4話のAT-Xでの初回放送は12月5日(日曜)の深夜とのこと(前エントリの各話上映履歴一覧も参照)。

   *  *  *  *

さて、山陽商船株式会社といえば本作『たまゆら』とのタイアップで現在ラッピングフェリーを運航中の地元竹原の船社ですが、ここから『たまゆら』の記念乗船券が発行されることになりました。
発行事由は「たまゆらOVA発売記念」で、その事由通り発売日は BD/DVD 1巻の発売と同日の2010年11月26日。
たまゆら・お知らせページ:アニメたまゆら・公式サイト
http://www.tamayura.info/news/index.html#10111901

2010.11.19 オリジナルイラストの乗船券が発売決定!

たまゆらOVA発売を記念してたまゆらっぴんぐフェリーを運航する
山陽商船から記念乗船券が発売!
フェリーに乗っている4人のキャラクターが可愛いイラスト付乗船券と
なっています。限定枚数となっておりますのでお早めに!

■商品名 :たまゆらOVA発売記念乗船券
■価 格 :630円(往復乗船券)
■枚 数 :限定1,000枚
■発売日 :11月26日より
■販売場所:山陽商船 2階事務所
■営業時間:9:00~17:00
■問い合わせ先:山陽商船(広島県竹原市港町三丁目1番7号)

たまゆら (tamayura_tweet) on Twitter
http://twitter.com/tamayura_tweet

山陽商船の記念チケットの版権イラストは私とハルコミンのコラボで、レイアウトを私が切らせてもらいました。 私がレイアウトを切ったのはHPトップのキーヴィジュアル以来かな。 (satojumichi) http://bit.ly/dfnHbo
2010年11月20日 6:51:54 YoruFukurouから


飯塚晴子 (hal_i_00) on Twitter
http://twitter.com/hal_i_00

あとあと、たまゆらっぴんぐフェリー(?)の記念乗車券もよろしくね!!じゅみち監督とのコラボレだよ。監督の描くレイアウトは人との距離が近いくて女の子たちがはたからみてとても可愛いです。体温感じます。
2010年11月20日 20:27:18 webから

自分でいうのもとってもアレですが、塗り上がった物を見るたび思うんですけど、麻音ちゃんの美少女っぷりがスゴイ…。黒髪ストレートの前髪パッツンて最強かもしれない。そしてちぎぶボイス。そしてこっそりでかい胸。
2010年11月20日 20:29:13 webから

ハルコミン、これは乗「車」券じゃないよ!

記念切符の発行は個人的に密かに期待、というより妄想(そして脳内で捏造)していたのですが、まさかの描き下ろし新作絵ということで軽く予想の上を行ってくれました。
現地販売のみということですので、広島出張の機会は当面無さそうな自分には入手手段が無いのが残念ですが。


それはともかく、この乗船券の絵を読み解いていきましょう。


■そもそもこの航路はどこ? どんな船なん? ラッピングフェリーって?
広島県竹原市の竹原港と、その南に浮かぶ大きな島、大崎上島の垂水(たるみ)または白水(しろみず)との間を結んでいます。
航路は山陽商船大崎汽船のダブルトラッキングで、両社とも両頭型フェリー2隻(計4隻)を投入して旅客および自動車航送を扱い、両社合計で1日32往復を運航しています。

山陽商船の使用船は「第五さんよう」と「第七さんよう」(船名中の番号は漢数字)。稀に、1隻が入渠中には予備船の「シーフレンド」が入ることも。いずれも内海造船(生口島・因島)で1990年代半ばに建造された同型船です。

こちらが「第五さんよう」(2代。1994年1月17日進水、総トン数: 291 GRT、載貨重量: 137 DWT、全長: 49.90 m、登録長: 38.51 m、垂線間長: 37.25 m、型幅: 10.40 m、型深: 3.60 m、夏季満載吃水: 2.65 m)のラッピング未施工時の全容。竹原港にて。
「第七さんよう」との大雑把な差異は公式の使用船舶を参照。写真ちっちゃいですが。



その「第五さんよう」が、2010年10月8日から『たまゆら』のラッピングフェリーとして運航されています。
運航時刻は公式にあるPDF参照。ラッピングの終了時期は現時点では未定。
土・日・祝日には桜田麻音(さくらだ まおん。上掲ジャケットの一番左、乗船券の一番右の娘)役の声優、儀武ゆう子さんによる船内アナウンスが流されます。
ラッピングに関する施工などの詳細は2010年10月24日付の拙エントリを参照。

【たまゆら】痛フェリー、なので【10月10日イベント】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12396686
 (ニコニコ動画 2010年10月11日 15:36 投稿 2分55秒)



■この両頭船はどっちが船首でどっちが船尾? 船首尾の見分け方は?
両舷の前後に船名表記がありますが、船名表記のすぐ横(先端側の)に錨が付いているほうが船首(オモテ)。
上の写真ではわかりません。上の動画でも不鮮明ですが、 0:13 や 0:16 で上記位置にある凹部(アンカーレセス)の中に錆色に見えているものが錨です。
わかりにくいので、同社の同型船「シーフレンド」(1994年11月進水、総トン数: 312 GRT、全長同じ)の写真を示します。




そして、船名表記の下に「竹原」の船籍港表記があるほうが船尾(トモ = 艫)です。



因みにここの航路の就航船は、上島方にオモテを、竹原方にトモを向けて運航していることが多いように見えます。
このため竹原港にはトモ着けということになり、したがって上の「第五さんよう」の写真は左舷後方から撮っていることになります。
1話の冒頭のシーンで停泊している2船の姿は、ともに船尾だったりします。


■この絵の船は「第五さんよう」と「第七さんよう」のどっち?
公式の使用船舶を見れば瞭然ですが、両舷の前後(計4ヶ所)にある1階―2階間階段室の2階部オーニング(天幕)の色が、「第五さんよう」は緑、「第七さんよう」は赤(上の動画で 0:43 にちらと見える船です)となっています。
絵では緑ですから、この船は「第五さんよう」です。


■絵の視点位置は船上のどの辺?
これは読者諸兄にも一目のもとに瞭然で、2階の前後にあるオープンデッキ部です。
絵では「竹」「原」←→「垂」「水」の文字看板の裏側が4枚とも見えていますので、それよりも外側、2階―3階間階段の根元辺りがカメラ位置でしょうか。




おそらく、絵画化する時にデッキにキャラを配置することを予め計算して、こういうアングルでの資料写真を撮ってあったのでしょう。さとじゅみち監督、さすがプロです。
取材撮影として意識的に撮っていない限り、こういうカットを持ち帰ることは普通の人ではまずあり得ないかと。
目的意識を持ってカメラに長いこと触れていると、いつしかこういう変態的(いい意味で)なフレーミングが体得できるのです(何のこっちゃ)。



普通の人ならこのように、似たアングルで撮ろうとする場合もハンドレール(手摺り)から外側を向けてスナップしそうなところです。


■船の現在位置はどの辺を航行中? あと竹原→上島と上島→竹原のどっちの便?
背景に見える海岸沿いに、長大な落石覆いが架かっているのが見えます。
上の動画で 2:30 から約20秒映っている、国道185号の高崎洞門(竹原市高崎町 = たかさきちょう所在)です。
2話で楓(ふう)と香(こう)の姉弟が自転車で竹原駅に向かう時に通った場所ですね。

ということは、絵の時点の船位は的場海水浴場の南沖辺りでしょう。
そしてこのデッキは、上島方(南側)ではなく、竹原方(北側)のデッキということになります。


次に船の進行方向ですが、船尾旗(日章旗)が画面左側すなわち竹原方へとたなびいていること、キャラの髪や服もまた画面左側へと煽られていることから、画面右方向へ航走中、つまり竹原発→上島ゆきの便と判断できます。


■他に、気が付いた点
ところでよく見ると、キャラの影が、不鮮明ながら画面右側へと伸びています。

このデッキは北面していますから、晴天下ではこの場所は、画面外のすぐ右側至近にある2・3階のデッキハウスの日陰になっているはずです。
でも影がはっきり出ている状態というのは絵で再現すると、画面がかなりうるさい感じになってしまいます。真夏の場面で強力な陰影を描き出すとかならともかく、通常はアニメであまりそういう表現はされません。色指定や塗りの手間からも。

ですので「デッキ上はすべて日陰じゃなイカ?」問題の答えは、うやむやということで。なんなら「船上は薄曇りで、降り注ぐ陽光が全体にマイルドだった」とでも脳内補完する方向で。

いやそれよりも、影が右へと伸びるためには、画面外の左上方向に光源がなくてはなりません。
画面左側は、北です。

この「北方上空に光源?」問題の答えは……深く考えないでいいんじゃないカナ。
というのも、確かにキャラの影は右に伸びていますが、北方上空に光源があるならば同じく右へと伸びているはずのハンドレールの影は、描かれていないからです。
この影はあくまでもキャラの存在感を出すための絵画的表現技法の一つ、ということで宜しいのではないでしょうか。


楓ちゃんの写真に写るたまゆらのように、やさしい気持ちがあふれていたら光の子供たちがちょっとしたいたずらをするんだよ、きっと。(マエストロ談)

   *  *  *  *

それにしても、裏ジャケと乗船券のどちらの絵も、ももねこ様がさりげなく絵のアクセントになってますなあ。
船にまで乗ってくるとは素敵な不思議。お待ちくださいませももねこ様ぁ♪


(関連して、鉄道界における同種の記念切符の先行事例を近日まとめる予定です)

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アニメたまゆら・公式サイト
http://tamayura.info/
アニメたまゆら・公式サイト
山陽商船グループ
http://www.sanyo-shosen.jp/
山陽商船グループ
中島 愛|オリジナルビデオアニメーション「たまゆら」エンディングテーマ メロディ|@Victor Entertainment (全曲試聴可)
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A021733/VTCL-35096.html

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『たまゆら』関連の過去記事
OVA『たまゆら』2話に作画ミス? (2010年11月23日)
「痛船」の歴史(登場編) (2010年10月24日)
いにしえの一日名誉職、1952年10月の一日駅長ラッシュ (2010年10月16日)
「たまゆら」上映イベント ~それは、素敵な不思議~。 今更レポート (2010年10月12日)

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Summary of images:
Description = 中島愛「メロディ」 (VTCL-35096) 裏ジャケット
Date = 2010-11-25
Source/Author of photograph = Vantey
Source of picture = 飯塚晴子
Author/Permission of back cover = (c) 佐藤順一・TYA/たまゆら製作委員会 / (c) 2010 株式会社フライングドッグ / 日本国著作権法32条1項に基づく引用
Permission of photograph = (c) 2010 Vantey

Description = たまゆらOVA発売記念乗船券
Source of image = http://www.tamayura.info/news/
Date = 2010-11-19
Source of picture = 飯塚晴子・佐藤順一
Author = (c) 佐藤順一・TYA/たまゆら製作委員会 / 山陽商船株式会社
Permission = 日本国著作権法32条1項に基づく引用

Description of #3, 7-9 = 山陽商船社船「第五さんよう」Sanyo No.5(2代) (JL6244 / Off.No. 134817 / IMO 9084932)
Description of #4-6 = 山陽商船社船「シーフレンド」Sea Friend (JK5233 / Off.No. 134725 / IMO 9125982)
Source of #3, 8 = http://www.flickr.com/photos/hyougushi/166408202/
Source of #4-6 = http://www.flickr.com/photos/hyougushi/167616926/
Source of #7 = http://www.flickr.com/photos/hyougushi/166408303/
Source of #9 = http://www.flickr.com/photos/hyougushi/167617447/
Date = 2006-06-11
Author = Hyougushi / Hideyuki KAMON
License = CC-BY-SA-2.0
Creative Commons License


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