2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

環境NGOのCASAが、「2℃」をキーワードに、地球温暖化に関する最新情報や役立つ情報を、随時アップしていきます。

カトリーナやウィルマは地球温暖化の落とし子か?

2005-10-27 00:47:39 | 影響
◆巨大化するハリケーン

 8月末に「ジャズの都」ニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ(Katrina)」の中心気圧は902ヘクトパスカルまで下がり、最大風速は秒速80メートル近くにのぼったとされています。その被害は類をみないほど大きく、ニューオーリンズの約8割が水没し、100万人以上の人々が家を追われ、死者は千人を超えています。さらに、10月24日にフロリダ州を襲ったハリケーン「ウィルマ(Wilma)」の中心気圧は882ヘクトパスカルに達し、史上最強規模のハリケーンだそうです。
 これまで最大の被害を出したハリケーンは、1992年8月にフロリダ州やルイジアナ州を襲ったアンドルーで、保険会社が支払った保険金は155億ドルといわれていますが、今回のカトリーナは400億ドルに達するといわれています。
 カトリーナやウィルマがここまで巨大化した理由は、海水温の上昇が原因です。

◆カトリーナと地球温暖化

 こうした巨大化するハリケーンと地球温暖化との関係が、アメリカで関心を呼んでいます。
 米マサチューセッツ工科大のケリー・エマニュエル教授(気象学)は、今年8月、英科学誌ネイチャーに、ハリケーンの勢力は過去50年で破壊力、持続期間とも約50%増加し、特に70年代以降の勢力増強が著しいとの論文を発表しました。
 米ジョージア工科大学のウェブスター教授(地球大気科学)らも、米科学誌サイエンスに、「1975年から2004年までの間、太平洋、大西洋、インド洋など世界各地で発生した台風やハリケーンについて、米国の分類で『カテゴリー4』(最大瞬間風速約58メートル以上)か『カテゴリー5(同約69メートル以上)』という強力な台風の発生比率がすべての海域で大幅にアップしていること、特に、日本が面する太平洋西部では、カテゴリー4以上の台風が、1975年から1989年までは全体の25%だったのが、1990年から2004年まででは全体の42%に達している」との研究結果を発表しました。
 また、2004年3月にはブラジルをハリケーンが襲い、気象学者の注目を集めました。何が注目を集めたかというと、これまではハリケーンが生まれてこなかった南大西洋海域で記録された、初めてで唯一のハリケーンだったからです。

◆因果関係の確定は困難。しかし温暖化すると・・・

 一方、米海洋大気局は「温暖化がハリケーンの勢力や数に大きな影響を与えるとは考えにくい」と否定的で、最近の海水温の上昇は、25-40年という周期の自然変動である可能性が高いとの見方を示しています。
 カトリーナが地球温暖化の影響によるものであるかどうかを確定することは、現在の科学では不可能です。
 しかし、地球温暖化が進めば、ハリケーンや台風が大型化することは、気候モデルによるシミュレーションの結果でも示されています。世界最大の規模と能力を持つコンピューターを装備した地球シミュレータによる数値実験では、最大風速17m/s以上の熱帯性低気圧の出現頻度は減るが、風速45m/sを超えるような強い熱帯性低気圧の出現頻度は現在よりも増えるとの結果になったと報告されています。

2℃を超えると?

2005-10-27 00:14:47 | 2℃
◆気温上昇を2℃未満に
 2002年10月、温暖化問題に取り組む世界の環境NGOのネットワークである気候行動ネットワーク(CAN)は、「気温上昇幅を2℃未満に抑えなければ、地球規模の回復不可能な環境破壊により人類の健全な生存が脅かされる可能性がある」と警告しました。
 2005年5月、中央環境審議会の専門委員会も、「気温上昇幅が2~3℃になると、地球規模で悪影響が顕在化することが指摘されている。従って、気温上昇幅を2℃以下に抑制することは、地球規模での悪影響の顕在化を未然防止することになる」として、「気温上昇幅を2℃とする考え方は、長期目標の検討における現段階での出発点となりうる」と報告しています。
 ここで2℃というのは、現在からではなく、工業化以前(1850年頃)からです。


◆2℃を超えると世界的規模で深刻な影響が
 表は、気温上昇幅が2℃未満と2℃を超えた場合とでの影響を比較したものです(IPCC第3次評価報告書より)。気温上昇幅が2℃を超えると、世界経済にも、食料生産にも、世界的な規模で影響が広がると予想されています。
 水不足も2℃未満では5億人に供給不足や水質悪化の影響がでることが予想されていますが、2℃を超えると30億人以上が水不足の危険に直面するとされています。健康影響でも2℃を超えると、3億人がマラリア感染のより大きな危険にさらされるとされています。このマラリア感染の危険地域には西日本一帯が入ると予想されています。


◆許される気温上昇幅はもうわずか
 現在、大気中の温室効果ガス濃度は359ppmに達しています。工業化以前は280ppmでしたから、すでに79ppmも上昇し、平均気温も工業化前から0.7℃上昇してしまっています。IPCCの第3次評価報告書によれば、仮に温室効果ガスの大気中濃度を現在のレベルで安定化させたとしても、1℃もしくはそれ以上の気温上昇は避けられそうにないとされています。許される気温上昇幅はもうほとんどないことを認識する必要があります。