MAG2NEWS (by 中島聡『週刊 Life is beautiful』)
2024年3月13日
Googleで働いていたエンジニアが、仕事中にAI向け専用チップの設計図や機械学習関連のソフトウェアなど機密情報を盗み出し、中国企業に漏洩させていた事件。この人物には禁固10年が言い渡されましたが、これは氷山の一角にすぎないという見方が有力です。最先端の技術情報を中国に盗み取られることを「避けられない」理由とは?Windows95を設計した日本人として知られるエンジニアの中島聡さんが解説します。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
中国に機密を漏洩、ベンチャーCEOとしてカネを集めて「禁固10年」
元Googleのエンジニア、Linwei Dingが、Googleで働いている間に会社から盗んだAIに関する機密書類を中国企業に渡した罪で起訴され、10年間の禁固刑を言い渡された、という報道です。
Dingは単に情報を流していただけではなく、それを活用して(中華ベンチャーの)CEOとして資金集めをしていたそうです。
盗んだ情報の中には、TPU(Googleの人工知能向けの専用チップ)の設計図、Googleのスーパーコンピュータ・データセンターにデプロイされたGPUの仕様、Googleのスーパーコンピュータ・データセンターで機械学習をマネージするソフトウェア、などが含まれていたそうです。
「中国のスパイ活動はどこにでもある」マーク・アンドリーセンの警告
ちなみに、中国への情報漏洩に関しては、1年ほど前のインタビューで Marc Andreessen(編註:米国のソフトウェアエンジニア・投資家。WebブラウザMosaicやNetscape Navigatorの開発者として著名)が以下のように語っています(An Interview with Marc Andreessen about AI and How You Change the World)。
(※Googleの対話型AI「Gemini」による翻訳)
「ええ、問題はですね、おそらくあなたはご存知でしょうが、中国のスパイ活動は非常に洗練されていて、もはやどこにでもあるような状態です。ですから私の推測では、中国は基本的に毎晩、あらゆるものの最新情報を入手していると思います。
ほとんどすべての企業や研究所は完全に浸透されているのではないかと考えています。
ちなみに、それは実在の人物によって行われている可能性もあるし、別の手段を使っている可能性もあります。
多くの会社にハッキングする方法の一つは、清掃業者と契約して、USBメモリを何かに差し込ませることです。つまり、侵入経路はたくさんあるのです。そしてもちろん、中国によるアメリカの技術的知的財産の窃盗に関しては、長い実績があります。
私の推測では、中国はとにかく毎晩すべての最新情報を入手していると思います。ですから、世界のどこかの誰かがそれに取り組んでいる限り、中国は基本的に毎日それにアクセスできるのです。
そのような状況下では、中国がその技術を最先端の形で手に入れるのは避けられないことであり、問題はその後私たちがどのように対処するかということになるのです」
中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LL
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