哀しきヒーロー

「浅草のビーズ屋さんに行きたいんだ」
って言ったら　友達
「いいよ　浅草だったらもんじゃ焼きの
美味しいお店があるからランチはそこで」
って
なんて頼りになるお友達なんざんしょ




当日　彼女は　パソコンからプリントアウトしたらしい
紙持ってやってきた
その紙には　今日行く　もんじゃ焼き屋の地図が載ってた

ああ　そこのもんじゃ焼き屋は初めて行くんだね
でも　地図持ってきてくれて　なんて頼もしいのかしら




浅草着いて　一応浅草寺お参りした
そして　お目当てのもんじゃ焼き屋へ
（お目当てはすでにビーズ屋ではなくなってる）


少し　ウロウロしたけど
地図のお陰で　無事到着

有名なお店らしくって
かなり混んでた
でも　私達は　なんとか席に座れた
やっぱり　通の友達が連れて来てくれると
とっても安心


私　初もんじゃ



ドキドキ

ワクワク






「これと　これにしない？」
リードしてくれる友達に
注文も全て任せた





程なく　もんじゃ　運ばれてきたよ
「やりましょうか」
運んできた　イケメン兄さんに

「いえ　自分達でやります」
って　友達
慣れてんね


「これそのまま　鉄板に流し込めばいいから」
って　私に教えてくれた

「へ～っこのままね」
いやに　サラサラした生地やな
でも　通の友達が言うんだからね
一気に鉄板に流し込んだよ
と　同時に






どっひゃーーーーっ



















腰抜けそうになった




凄い音と共に
凄い蒸気が店中に噴火した





死ぬかと思った
死ななくても　瀕死の大ヤケド







しかし
つとめて冷静な　私のお友達

あまりの冷静さに
明らかに　テレビで見てたもんじゃ焼きと
違う目の前の　蒸気で殆ど体積を失いかけている
その物体を

これが　
本家本元の正しいもんじゃなんだ　と
自分に　いいきかせてみようかと　努力しそうになった






でも　違う　これはもんじゃじゃない
　　　　　　　　　　　　もんじゃなんかじゃないよーっ









店内中に広がった
爆発蒸気を受けて
さっきの　イケメン兄ちゃん
目を吊り上げてやってきた









「だーかーらーー　やりましょうか」
　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　



彼の顔には
（ったく　この忙しいのに手を煩わせやがって）
（どこの山奥から出てきやがったんだ）
って　書いてあった





うん　確かに書いてあった





　　　　　　　　　　　　　　　　　　


序じょに　蒸気の威力も弱まり
視界が開けてきて
たまげたのが
当たり前だが
周りの客の目　あたしらに釘付け釘付けになってたこと


その中
激怒の兄ちゃんが　まだ流し込んでなかった
もう一つの　もんじゃ　うつわの中で
激しくかき回し始め
「ダシと粉こうやってよくかき混ぜないと
ダシが全部蒸発しちゃうんですけどね」

って
もう　完璧　つり上がった目を三角にさせて
怒りと共に　うつわの中ぶちまけながら
もんじゃ　焼いてくれましたよ












えっ
友達？　　　　　　　　　








ああ　友達ね　　　　　　　



「２５年位前に　１度だけ食べたきりだったから
多少　焼き方忘れちゃってたわ」
だと



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　








　通に見てしまった
私の負けかい？　　　




　　　　　
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