Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/17(木)萩原麻未ピアノ・リサイタル/確かな技巧と多彩な音色でで描かれる奔放な音楽世界

2011年11月19日 01時58分29秒 | クラシックコンサート
萩原麻未 ピアノ・リサイタル
Mami Hagiwara Piano Recital


2011年11月17日(木)19:00~ 紀尾井ホール 指定席 1階 2列 9番 4,000円
ピアノ: 萩原麻美
【曲目】
ハイドン: ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI-33
ベリオ: 5つの変奏曲
ラフマニノフ: コレルリの主題による変奏曲 作品42
シューマン: アラベスク 作品18
シューマン: 謝肉祭 作品9
      「前口上」「ピエロ」「アルルカン」「高貴なワルツ」「オイゼビウス」「フロレスタン」「コケット」「返事」「蝶々」「A.S.C.H.-S.C.H.A.躍る文字」「キアリーナ」「ショパン」「エストレッラ」「巡り会い」「パンタロンとコロンビーヌ」「ドイツ風ワルツ~パガニーニ」「告白」「プロムナード」「休憩」「ペリシテ人と戦うダヴィッド同盟の行進」
《アンコール》
ショパン: ワルツ 変イ長調 作品69-1「告別」
ショパン: 12の練習曲 から第5番 変ト長調 作品10-5「黒鍵」

 1位をなかなか出さないことで有名な(?)ジュネーヴ国際音楽コンクールで、2010年のピアノ部門で見事に第1位を獲得したことで、一躍時の人となった萩原麻未さんのリサイタル。現在もパリ在住で研鑽中でもあり、活動の中心はヨーロッパである。日本でも最近、オーケストラに呼ばれての共演が多くなった。事実上今日が東京でのリサイタル・デビューとのことだ。ウワサによると「のだめ系」の奔放な演奏をするらしい。コンヴァトで学び、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調がお気に入りとか…。

 実際に萩原さんのピアノを聴くのは初めてなので、全体の印象から。
 リサイタルだから大きな音を出す必要がないからか、音量は意外に控え目。楽器の目の前の2列目で聴いていてもそう感じた。ところが、ppは極端なくらいギリギリの小さな音だし、時々ハッとするようなffがアクセントを付けたりするので、むしろダイナミックレンジが広く感じられ、表現力の幅を広くしている。全体の音量を抑えることによって、音色にひずみや濁りが感じられないのはさすがである。
 そして、とにかく指がよく回る。かなり速いパッセージも均一な音でキレイに回すかと思えば、細やかな抑揚が付けられていたりと、自由自在な感じだ。難関のコンクールを取るだけあって技巧的には申し分なしである。
 キリッとした打鍵は音の立ち上がりを明瞭にしているが、決して強い弾き方ではない。女性的なしなやかさと、瑞々しい若さが感じられて素敵な演奏だ。音色は多彩で、絵画的名色彩感がある。
 楽曲の解釈にも独特のものがあった。テンポの速い部分はより速めに、遅い部分はより遅めにと、節回しも両極的。しかも時折極端にテンポを揺らして、情感を乗せていく。クセがあるといえばその通りなのだろうが、聴いている上ではごく自然に曲が流れていくので、何かを狙ってやろうとするようなイヤらしさがない。この辺が「のだめ系」なのかもしれない。個性的には違いないが、いつの間にか共感してしまうようなところがある。

 演奏した曲では、ハイドンはあたかもロマン派のような濃厚な色づけがされていて驚かされた。ベリオは現代曲なので、リズム感や表現の感性が瑞々しく、刺激的な演奏だった。ラフマニノフは、何より多彩な音色が次々と繰り出されてきて、奏者の懐の深さが感じられた。シューマンは、「アラベスク」は音の粒がキラキラと輝くようだった。「謝肉祭」は重厚かつ劇的であり、異なる20の曲想を絵画的名描き分けている、といった印象で、大変な熱演だった。アンコールのショパンは速いテンポで駆け抜けるような演奏。とくに「黒鍵」は煌びやかな音を撒き散らしながら、しっかり技巧的なスゴさを見せつけていた。

 ちなみに今日の楽器はヤマハのコンサート・グランドCFX。萩原さんの演奏では、重低音を豪快に鳴らすようなところがなかったため、低音域の金属的な響きが少なく、中音域から高音までキレイな音が溢れている印象だった。ただ、ペダルを離す時にビビリ音が聞こえることがあって、少々気になった。
 萩原さんは、来年2012年2月に来日する「南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデン&フライブルク」のツアー(東芝グラント・コンサート2012)にヴァイオリンの神尾真由子さんとともにソリストとして参加する。そこではお得意のラヴェルのピアノ協奏曲が予定されているので、これは楽しみ。すでにチケットは良席を確保してある。

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