第12回東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門
2014年8月26日(火)17:30~ 東京芸術劇場コンサートホール 自由席 1階 C列 12番 2,000円
指 揮: 大井剛史
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
【演奏者と曲目】
蓑田莉奈★プロコフィエフ: ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
佐藤元洋★チャイコフスキー: ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
本山乃弘★ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
梅田智也★ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
8月23日に引き続いて「第12回 東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門」を聴く。今年のピアノ部門の応募者は83名。CDによる非公開の予備審査を経て、7月から非公開審査の第1次予選に出場したのは46名、そのうち公開審査の第2次予選に進んだのは12名であった。その中から本選まで駒を進めたファイナリストは上記の4名である。今年は藝大生が圧倒的に多く、第2次予選の12名のうち9名が藝大生(うち2名は大学院生)が占めた。本選の4名も3名が藝大生となった。本選会はオーケストラとの共演でピアノ協奏曲を弾くことになるわけだが、課題曲は34曲に及び古典から近代まで、普通のコンサートのプログラムに載るような名曲がほとんど網羅されていた。その中から任意の1曲を各ファイナリストが選んだのは上記の4曲で、どういうわけかまたダブってしまった。「皇帝」を2回続けて聴くことになる。
自由席なので早めに並んだとはいえ、20番目くらいだったので、今回は最前列はやめて、敢えて3列目の左ブロック通路側を選んだ。この位置だと、管楽器群がピアノの影に隠れてしまうこともないし、鍵盤側なのでピアノの音の出る方向(やや右側)とは逆になるので、音量のバランスが良いはずである。しかも通路に沿ってオーケストラの音も直接流れてくるし、もちろん鍵盤上の手の動きもよく見える。
例によって、このブログを書いている時点で、すでに審査結果は発表されているが、とりあえずそれを無視して、演奏順に見ていくことにしよう。あくまで本選会だけを聴いた上での、素人の独断による感想と評価などを書いてみたい。
●蓑田莉奈さん(19歳/東京藝術大学 音楽学部2年 在学中)
【曲目】プロコフィエフ: ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
今回のファイナリストの中では紅一点となった蓑田さん。最年少でもあるのに、プロコフィエフを選んだ、その心は・・・・。とにかくあまり聴く機会のない曲だけに、演奏を聴いても上手いのかどうなのか、今ひとつピント来ないものがある。概してトップ・バッターは緊張感が高く、周囲が見えなくなってしまうのではないだろうか。そんな印象の演奏であった。第1楽章は軽快さの中にプロコフィエフ特有の推進力と諧謔性が入り乱れる。蓑田さんのピアノは小粒の音型がキラキラと輝くような演奏で、それ自体は曲想にも合っていて良いのだが、音量が小さめのためかオーケストラに飲み込まれてしまう傾向が強かった。ピアノがソロに近い状態になる部分では音が煌めいて良かったが、オーケストラの伴奏にまわるとよく聞こえない。オーケストラの音があまり聞こえていないのではないのかな、と感じた。技巧的にもかなり難しそうな曲なので、弾くのに一所懸命になりすぎたのかも。
★現時点で暫定1位(^^;)。
●佐藤元洋さん(21歳/東京藝術大学 音楽学部3年 在学中)
【曲目】チャイコフスキー: ピアノ協奏 曲第1番 変ロ短調 作品23
いきなりホルンが大音量で曲が始まった。和音を刻む佐藤さんのピアノは、打鍵が強く、立ち上がりの鋭いタッチで、オーケストラに負けないくらい豪快である。ご本人の見た目の印象とは少々違っていて、ピアニストとしてはヴィルトゥオーソ系(?)。こういうコンクールの時はオーケストラはスタンダードに伴奏に徹するはずなので、今日の演奏のように、全体に速めのテンポを採用しているということは、ソリスト側に主導権があるはず。従ってこの難易度の高い曲を敢えて速めのテンポで押しまくるというのは、要はテクニックには自信があるということなのだろう。音量も大きく、音質も明瞭そのもので、オーケストラの全合奏時でもピアノの音ははっきりと聞こえてくる。日本フィルも遠慮なく大音量で演奏していたが、ピアノは全然負けていない。またカデンツァもピアノをガンガン鳴らし、押し出すイメージは強い。とにかく、速めのテンポでグイグイと進むオーケストラに対して、さらに突っ込んで前にのめりがちの演奏は、ある意味で聴いていて気持ちがよい。若さの前向きな部分、良いところが前面に出ている演奏だと思う。明瞭、明快、闊達、豪快、そして超絶技巧。これはBravo!であった。
★前半が終わったところで、暫定1位=佐藤さん、2位=蓑田さん。
●本山乃弘さん(30歳/パリ・エコールノルマル=アルフレド・コルトー音楽院 ペルフェクショヌマン課程 在学中)
【曲目】ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
後半は「皇帝」を2回聴くことになるので、これはどうしても聴き比べになってしまう。オーケストラも同じように演奏しなければならないので大変だろう。大井剛史さんの指揮する日本フィルの演奏は、あくまでインテンポでほとんど何の装飾もないようなスコアそのものの演奏に徹していたので、ソリストの違いは明瞭に聞き分けられた。本山さんの演奏は、丁寧なものでスコアを忠実に再現しようとするような教科書的な感じのするものであった。実際にすべての音符が聞こえるような印象の演奏なのである。ところが不思議なもので、これが意外と音楽的でない。リズム感が固く、旋律もあまり歌わない。要するにノリが良くないというか、スイングしないというか、どこかチグハグな印象なのであった。あまりにも丁寧に、キチンと、律儀に演奏しているためか、本山さんの個性、つまり他の人とはここが違う、という部分が見えてこない。実際は、もちろんミスもなく、ちゃんと演奏しているのである。本山さんの演奏を聴いていて感じた違和感のようなものは、これまで何十回も聴いてきたこの名曲の過去の演奏と、どこかで比較してしまっていることに起因しているのだろう。もうひとつ気になったことがある。左手の音が弱いことだ。意図的に出さなければならないところではガーンと出てくるので、普通の時の左手(主に分散和音など)が弱めにのは本山さんの持ち味なのだと思うが、少々音楽が薄くなってしまうようだ。
★3名の演奏が終わった時点で、暫定暫定1位=佐藤さん、2位タイ=蓑田さん、本山さん。
●梅田智也さん(23歳/東京藝術大学 大学院 音楽研究科修士課程 2年 在学中)
【曲目】ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
協奏曲の評価というのは、実はソロが入ってきた最初の数小節で7割方決まってしまう(ような気がする)。残りの3割はエンディングだ。「皇帝」の場合は冒頭の絢爛たるカデンツァでかなり決まる。梅田さんの演奏が、まさにそんな感じで、このカデンツァが豊穣に響き、雄大に歌っていたのである。楽器を豊かに鳴らすということ、和音を美しく響かせること、細やかなニュアンスで音楽的に心地よく歌わせること。これらの要素が詰まったカデンツァであった。オーケストラだけの主題提示部が終わり、駆け上るようにピアノが入ってくるところも自然さと高揚感がある。ピアノが主旋律を弾く時の押し出しの強さ、伴奏にまわるときの引き方などのバランス感覚も素晴らしい。つまり、梅田さんはオーケストラの音をよく聴いているのだ。リズム感もピッタリと合っていて、一体となって曲が流れていくのがよく分かる。また、ひとつひとつの動機やフレーズ、そして主題や主旋律の歌わせ方も上手い。ひとつとして同じ音はなく、あらゆる部分に細かく神経が行き届き、微妙に変化する抑揚が音楽を豊かに彩っているのだ。この辺りは見事としかいいようがない。
また、梅田さんのピアノは弱音がとても美しい。ソロ部分で消え入るような弱音をわざと弾くことで、聴衆が耳をそばだててしまう。聴衆を惹き付けるチカラのある弱音で、第2楽章などは素晴らしいものを聴かせていた。弱音が小さいということは、逆にダイナミックレンジが広いということにもなる。表現の幅が広いということにもなるのだ。
さらに第3楽章では抜群のリズム感を見せる。跳ねるような躍動感はオーケストラにも伝わり、少々ヘバリかかっていた日本フィルが元気を取り戻した(?)。このノリの良い演奏を支えているのは強靱なテクニックなのだと思うが、けっしてヴィルトゥオーソ的に聞こえることはなく、あくまで表現力重視型の演奏には違いない。
幸か不幸か、本山さんとの聴き比べになってしまったが、質感の深さで、梅田さんが圧倒していたと思う。最初のカデンツァの印象は、最後まで変わらなかった。Bravo!! 間違いなし。
★全曲が終わった時点で、1位=梅田さん、2位=佐藤さん、3位タイ=蓑田さん、本山さん。という順位を付けた。3位タイは実際にはありえないので、どちらかが選外となるわけだが、演奏曲目が違うので、私としては判断できなかったのである。聴衆賞への投票は、もちろん梅田さんに◎だ。
さて本選の審査結果は、22時31分付けの「東京文化会館メールマガジン」で届いた。以下の通りであった。
第12回東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門 審査結果
第1位 梅田智也
第2位 佐藤元洋
第3位 本山乃弘
入 選 蓑田莉奈
聴衆賞 梅田智也
今回は、ほぼ的中!! ピアノに関してはあまり自身がなかった私だが、ほぼ的中したということは、4名のファイナリストの間にけっこう実力差があったということかもしれない。いずれにしても、これにて「第12回東京音楽コンクール」もすべて終了となった。この結果を得て、来年1月12日に開催される「優勝者コンサート」の出演者は、弦楽部門第1位の坪井夏美さん(ヴァイオリン)、声楽部門第1位の岡 昭宏さん(バリトン)、ピアノ部門の梅田智也さんに決まった。年明け早々に、また彼らに会うことができるのは楽しみである。
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2014年8月26日(火)17:30~ 東京芸術劇場コンサートホール 自由席 1階 C列 12番 2,000円
指 揮: 大井剛史
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
【演奏者と曲目】
蓑田莉奈★プロコフィエフ: ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
佐藤元洋★チャイコフスキー: ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
本山乃弘★ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
梅田智也★ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
8月23日に引き続いて「第12回 東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門」を聴く。今年のピアノ部門の応募者は83名。CDによる非公開の予備審査を経て、7月から非公開審査の第1次予選に出場したのは46名、そのうち公開審査の第2次予選に進んだのは12名であった。その中から本選まで駒を進めたファイナリストは上記の4名である。今年は藝大生が圧倒的に多く、第2次予選の12名のうち9名が藝大生(うち2名は大学院生)が占めた。本選の4名も3名が藝大生となった。本選会はオーケストラとの共演でピアノ協奏曲を弾くことになるわけだが、課題曲は34曲に及び古典から近代まで、普通のコンサートのプログラムに載るような名曲がほとんど網羅されていた。その中から任意の1曲を各ファイナリストが選んだのは上記の4曲で、どういうわけかまたダブってしまった。「皇帝」を2回続けて聴くことになる。
自由席なので早めに並んだとはいえ、20番目くらいだったので、今回は最前列はやめて、敢えて3列目の左ブロック通路側を選んだ。この位置だと、管楽器群がピアノの影に隠れてしまうこともないし、鍵盤側なのでピアノの音の出る方向(やや右側)とは逆になるので、音量のバランスが良いはずである。しかも通路に沿ってオーケストラの音も直接流れてくるし、もちろん鍵盤上の手の動きもよく見える。
例によって、このブログを書いている時点で、すでに審査結果は発表されているが、とりあえずそれを無視して、演奏順に見ていくことにしよう。あくまで本選会だけを聴いた上での、素人の独断による感想と評価などを書いてみたい。
●蓑田莉奈さん(19歳/東京藝術大学 音楽学部2年 在学中)
【曲目】プロコフィエフ: ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
今回のファイナリストの中では紅一点となった蓑田さん。最年少でもあるのに、プロコフィエフを選んだ、その心は・・・・。とにかくあまり聴く機会のない曲だけに、演奏を聴いても上手いのかどうなのか、今ひとつピント来ないものがある。概してトップ・バッターは緊張感が高く、周囲が見えなくなってしまうのではないだろうか。そんな印象の演奏であった。第1楽章は軽快さの中にプロコフィエフ特有の推進力と諧謔性が入り乱れる。蓑田さんのピアノは小粒の音型がキラキラと輝くような演奏で、それ自体は曲想にも合っていて良いのだが、音量が小さめのためかオーケストラに飲み込まれてしまう傾向が強かった。ピアノがソロに近い状態になる部分では音が煌めいて良かったが、オーケストラの伴奏にまわるとよく聞こえない。オーケストラの音があまり聞こえていないのではないのかな、と感じた。技巧的にもかなり難しそうな曲なので、弾くのに一所懸命になりすぎたのかも。
★現時点で暫定1位(^^;)。
●佐藤元洋さん(21歳/東京藝術大学 音楽学部3年 在学中)
【曲目】チャイコフスキー: ピアノ協奏 曲第1番 変ロ短調 作品23
いきなりホルンが大音量で曲が始まった。和音を刻む佐藤さんのピアノは、打鍵が強く、立ち上がりの鋭いタッチで、オーケストラに負けないくらい豪快である。ご本人の見た目の印象とは少々違っていて、ピアニストとしてはヴィルトゥオーソ系(?)。こういうコンクールの時はオーケストラはスタンダードに伴奏に徹するはずなので、今日の演奏のように、全体に速めのテンポを採用しているということは、ソリスト側に主導権があるはず。従ってこの難易度の高い曲を敢えて速めのテンポで押しまくるというのは、要はテクニックには自信があるということなのだろう。音量も大きく、音質も明瞭そのもので、オーケストラの全合奏時でもピアノの音ははっきりと聞こえてくる。日本フィルも遠慮なく大音量で演奏していたが、ピアノは全然負けていない。またカデンツァもピアノをガンガン鳴らし、押し出すイメージは強い。とにかく、速めのテンポでグイグイと進むオーケストラに対して、さらに突っ込んで前にのめりがちの演奏は、ある意味で聴いていて気持ちがよい。若さの前向きな部分、良いところが前面に出ている演奏だと思う。明瞭、明快、闊達、豪快、そして超絶技巧。これはBravo!であった。
★前半が終わったところで、暫定1位=佐藤さん、2位=蓑田さん。
●本山乃弘さん(30歳/パリ・エコールノルマル=アルフレド・コルトー音楽院 ペルフェクショヌマン課程 在学中)
【曲目】ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
後半は「皇帝」を2回聴くことになるので、これはどうしても聴き比べになってしまう。オーケストラも同じように演奏しなければならないので大変だろう。大井剛史さんの指揮する日本フィルの演奏は、あくまでインテンポでほとんど何の装飾もないようなスコアそのものの演奏に徹していたので、ソリストの違いは明瞭に聞き分けられた。本山さんの演奏は、丁寧なものでスコアを忠実に再現しようとするような教科書的な感じのするものであった。実際にすべての音符が聞こえるような印象の演奏なのである。ところが不思議なもので、これが意外と音楽的でない。リズム感が固く、旋律もあまり歌わない。要するにノリが良くないというか、スイングしないというか、どこかチグハグな印象なのであった。あまりにも丁寧に、キチンと、律儀に演奏しているためか、本山さんの個性、つまり他の人とはここが違う、という部分が見えてこない。実際は、もちろんミスもなく、ちゃんと演奏しているのである。本山さんの演奏を聴いていて感じた違和感のようなものは、これまで何十回も聴いてきたこの名曲の過去の演奏と、どこかで比較してしまっていることに起因しているのだろう。もうひとつ気になったことがある。左手の音が弱いことだ。意図的に出さなければならないところではガーンと出てくるので、普通の時の左手(主に分散和音など)が弱めにのは本山さんの持ち味なのだと思うが、少々音楽が薄くなってしまうようだ。
★3名の演奏が終わった時点で、暫定暫定1位=佐藤さん、2位タイ=蓑田さん、本山さん。
●梅田智也さん(23歳/東京藝術大学 大学院 音楽研究科修士課程 2年 在学中)
【曲目】ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
協奏曲の評価というのは、実はソロが入ってきた最初の数小節で7割方決まってしまう(ような気がする)。残りの3割はエンディングだ。「皇帝」の場合は冒頭の絢爛たるカデンツァでかなり決まる。梅田さんの演奏が、まさにそんな感じで、このカデンツァが豊穣に響き、雄大に歌っていたのである。楽器を豊かに鳴らすということ、和音を美しく響かせること、細やかなニュアンスで音楽的に心地よく歌わせること。これらの要素が詰まったカデンツァであった。オーケストラだけの主題提示部が終わり、駆け上るようにピアノが入ってくるところも自然さと高揚感がある。ピアノが主旋律を弾く時の押し出しの強さ、伴奏にまわるときの引き方などのバランス感覚も素晴らしい。つまり、梅田さんはオーケストラの音をよく聴いているのだ。リズム感もピッタリと合っていて、一体となって曲が流れていくのがよく分かる。また、ひとつひとつの動機やフレーズ、そして主題や主旋律の歌わせ方も上手い。ひとつとして同じ音はなく、あらゆる部分に細かく神経が行き届き、微妙に変化する抑揚が音楽を豊かに彩っているのだ。この辺りは見事としかいいようがない。
また、梅田さんのピアノは弱音がとても美しい。ソロ部分で消え入るような弱音をわざと弾くことで、聴衆が耳をそばだててしまう。聴衆を惹き付けるチカラのある弱音で、第2楽章などは素晴らしいものを聴かせていた。弱音が小さいということは、逆にダイナミックレンジが広いということにもなる。表現の幅が広いということにもなるのだ。
さらに第3楽章では抜群のリズム感を見せる。跳ねるような躍動感はオーケストラにも伝わり、少々ヘバリかかっていた日本フィルが元気を取り戻した(?)。このノリの良い演奏を支えているのは強靱なテクニックなのだと思うが、けっしてヴィルトゥオーソ的に聞こえることはなく、あくまで表現力重視型の演奏には違いない。
幸か不幸か、本山さんとの聴き比べになってしまったが、質感の深さで、梅田さんが圧倒していたと思う。最初のカデンツァの印象は、最後まで変わらなかった。Bravo!! 間違いなし。
★全曲が終わった時点で、1位=梅田さん、2位=佐藤さん、3位タイ=蓑田さん、本山さん。という順位を付けた。3位タイは実際にはありえないので、どちらかが選外となるわけだが、演奏曲目が違うので、私としては判断できなかったのである。聴衆賞への投票は、もちろん梅田さんに◎だ。
さて本選の審査結果は、22時31分付けの「東京文化会館メールマガジン」で届いた。以下の通りであった。
第12回東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門 審査結果
第1位 梅田智也
第2位 佐藤元洋
第3位 本山乃弘
入 選 蓑田莉奈
聴衆賞 梅田智也
今回は、ほぼ的中!! ピアノに関してはあまり自身がなかった私だが、ほぼ的中したということは、4名のファイナリストの間にけっこう実力差があったということかもしれない。いずれにしても、これにて「第12回東京音楽コンクール」もすべて終了となった。この結果を得て、来年1月12日に開催される「優勝者コンサート」の出演者は、弦楽部門第1位の坪井夏美さん(ヴァイオリン)、声楽部門第1位の岡 昭宏さん(バリトン)、ピアノ部門の梅田智也さんに決まった。年明け早々に、また彼らに会うことができるのは楽しみである。
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