CHANEL Pygmalion Days Classical Concerts 2014/会田莉凡
2014年4月12日(土)17:00~ CHANEL NEXUS HALL 自由席 4列目中央右ブロック中央通路側(ご招待)
ヴァイオリン: 会田莉凡
ピアノ: 務川慧悟
【曲目】
ラヴェル: ヴァイオリン・ソナタ ト長調
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第4番 ホ短調 作品27-4
ブラームス: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番 ニ短調 作品108
《アンコール》
モンティ: チャールダーシュ
ファッション・ブランドのCHANELが、若手の音楽家たちに演奏の機会を提供するという「CHANEL Pygmalion Days Classical Concerts」シリーズ。申込者より抽選で招待される無料のコンサートだが、内容は充実したもので、聴き応えがある。今年2014年の参加アーティストは、ピアノの内匠 慧さん、池永夏美さん、チェロの伊藤悠貴さん、ヴァイオリンの会田莉凡さん、バリトンの加耒 徹さんの5名。開催日は休日(主に土曜日)で、マチネの部(14:00~15:00)とソワレの部(17:00~18:00)に別れて2つのコンサートが開かれる。1年間かけて各アーティストが6回のコンサートを行うが、各自がテーマを定めて企画の内容を決めることができるらしい。開催月の2ヶ月前から申込みを受付、抽選の結果当選した人が招待される仕組みである。
昨年は関係者の招待に同行したりして、何度か聴かせていただくことができた。今年は自分のスケジュールに合わせて、りぼんちゃんの回に申し込んでおいたら、嬉しいことに見事初当選。おかげ様で、先月の「東京・春・音楽祭2014」に続けてりぼんちゃんのリサイタルをまた聴けることになった。
昨年何回か聴きに行き開催の様子が分かるようになっているので、会場には一番乗り。自由席だが前方中央付近の3列ほどは関係者のリザーブ席になっているので、4列目の通路側、ステージのりぼんちゃんの立ち位置がまったく遮られることなく見通せるベスト・ポジションを確保することができた。会場はもちろん満席で、150名以上は入っていたと思う。
成長著しく活躍を始めたりぼんちゃんについてはもう説明することはないだろう。また今日、ピアノを受け持つ務川慧悟さんは、りぼんちゃんが優勝した2012年の第81回日本音楽コンクールのピアノ部門の覇者である。彼は東京藝術大学に在学中で、桐朋学園のりぼんちゃんとは普通あまり接点はないはずだが、コンクールで優勝したのをきっかけに演奏会を通じて交流が深まり、デュオを結成して既に活動を始めているとのことである。
1時間のコンサートとはいえ、内容は濃い。1曲目はラヴェルの「ヴァイオリン・ソナタ」。いきなりの難曲である。
第1楽章は微細なトーンの描き方が難しい、捉え所のない不思議な旋律美である。技巧よりは解釈、解釈よりは感性が求められる・・・・といった感覚的な印象の強い曲想だ。務川さんのピアノがかなり抑え気味にコントロールしてキラキラする音色を聴かせるのに対して、りぼんちゃんのヴァイオリンも抑え気味ではあるが繊細な色彩の描き分けていて、微妙なニュアンスで表情を変えていく。この辺りの感性は、まさに人によって違うところだろう。二人の抑え気味の中での多彩に表情付けが中々素晴らしい。
第2楽章は緩徐楽章に相当する。4弦同時のピツィカートが拍子を刻んで始まる。ヴァイオリンのピツィカートは音がギターのように伸びないので、どちらかというとウクレレのような和音に聞こえる。リズムがピアノに受け継がれるとヴァイオリンがブルース風の旋律を弾いていく。ナイトクラブの雰囲気。とはいうもののどうもつかみ所が曖昧である。どちらかといえば務川さんのピアノはキチンとしていて優等生的(あくまで良い意味で)なのに対して、ヴァイオリンの方が自由度が高い感じがした。後は好みの問題となるが、この楽章は「ブルース」。もっと濃厚に、けだるく頽廃的な雰囲気を出しても面白くなるが、若い二人のイメージからは遠ざかってしまう・・・・かな?
第3楽章もまた、つかみ所はないもののヴァイオリンのパートは超絶技巧の連続。とにかく最初から最後まで過激な速いパッセージが続く。旋律とも分散和音とも言えるような超絶難度のヴァイオリンに対して、リズムを刻み和声を受けもつピアノのまた高度な技巧の連続で、ジャズっぽい雰囲気が描かれていく。りぼんちゃんのヴァイオリンの高速パッセージはさすがに音量があまり出ていなかったようだが、ときおりキラリと光るアクセントが加えられていて、技巧的な曲想の中でも彩りが豊かに描き出されていた。
続いて、イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第4番」。今年の「CHANEL Pygmalion Days」では、6回のコンサートをすべて、ヴァイオリンとピアノのためのソナタで構成すると同時に、イザイの無伴奏ソナタ全6曲を採り上げることにしたという。前回が第3番で、今回が第4番。彼女は意外なことに第3番以外は初挑戦なのだそうだ。1年間かけるとはいえ、ヴァイオリニストの試金石の1つであるイザイの無伴奏ソナタを、この機会にレパートリーにしてしまおうという試みは大胆と言えば大胆だし、前向きと言えば前向き。ものすごくプラス志向である。
無伴奏ソナタの第4番は、3楽章構成だが10分くらいの曲。それでもイザイならではの高度な技巧と難解な構造、シビアな表現力が求められる曲である。
さて演奏が始まると、先ほどのラヴェルとは雰囲気が一新。ソロならではの濃厚な音色と音量の豊かさがあり、立ち上がりも鋭いアタック、メリハリの効いた押し出しである。
第1楽章は主旋律と通奏低音のバランスが良く、バロック風の構造と近代音楽の豊かな抒情性がうまく配分されていた。
第2楽章の前半のピツィカートは音がプツプツと切れて伸びないのが惜しい。重音のピツィカートは難しそうだが、個人的な好みではもう少し平均的に響かせてほしかったところだ。後半の多声的な構造がうまく描き出されていた。
第3楽章は16分音符が連続し、速いパッセージが目まぐるしい部分は5拍子で書かれているという。そのためか、せわしないだけでなくどこか落ち着きのない苛立ちを感じさせる。相当な難易度なのだと思う。多少音程が甘くなっているように聞こえたが・・・・・曲の流れの中では許容範囲だろうか。一方、中間部の抒情性は豊潤な響きを持っていた。
今回のイザイは初挑戦ということなので、もちろん及第点ではあると思うが、高度に技巧的であるが故に、そこに耳目が奪われがち。その技巧の上に演奏者の個性をどれだけ乗せていくことができるか、その辺に課題があるのだと思う。
短い休憩を挟んでの後半は、ブラームスの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番」。晩年のブラームス作品にも共通するイメージを持つ短調の曲である。内省的で、諦観と憂愁が全体を覆う中に、忘れ得ない青春の憧れのようなものが見え 隠れする。古今のヴァイオリン・ソナタの傑作の1つであろう。
第1楽章は哀愁を帯びた第1主題が流れるように湧き出てきて、素晴らしいアンサンブルを聴かせる。Allegroのテンポもやや早めで、どちらかといえば若いイメージの躍動的な演奏だ。りぼんちゃんのヴァイオリンが、ここでは艶っぽい音色に変わり、レガートが美しい。第2主題の務川さんのピアノも抑え気味ながらも十分にロマン的で、なかなか素敵だ。
第2楽章はロマンティックな緩徐楽章。ふたりの演奏は優しく穏やかな印象で、屈託がなく、心休まるイメージであった。もう少しテンポを遅くして、濃厚に歌わせるという解釈をしても良いかな、とも感じたが、それは聴く者とのジェネレーション・ギャップなのかもしれない。若いデュオには若い感性を十分に発揮してもらう方が、良いに決まっている。
第3楽章はスケルツォ楽章に相当する。あまり躍動的にも諧謔的にもなれない諦念の感が、二人のさりげない演奏にうまく表されていて、なかなか聴かせてくれる。
第4楽章はニ短調に戻り、重く激しい曲想で、それまで押さえられていた感情が爆発するようである。このような激情的な曲の演奏には、りぼんちゃんのアグレッシブな面が前面に出て来て、本領発揮といったところだ。アクセントがキリッとした明瞭な音色で、リズム感良く曲をグイグイと押し進めていくのは彼女の特性だ。ピアノを押さえ込むほどの力感が感じられた。とにかく音楽の流れが良い。素晴らしい演奏であった。
演奏時間は1時間をだいぶ過ぎていたが、アンコールに応えてくれたのはモンティの「チャールダーシュ」。アンコール・ピースの定番であるとはいえ、最後にこの曲を出してくるのは体力(?)にも自信があるからであろうか。この曲に関してはずいぶん弾き慣れているようで、快速なテンポで技巧を見せるかと思えば、濃厚なフレージングでエキゾチックな雰囲気を見事に醸し出す。最後は一段とテンポを上げて、駆け抜けていった。
さて、結成して間もないデュオだが、今年の5月3日~5日に開催される「第3回 秋吉台音楽コンクール」の室内楽部門に、ヴァイオリンとピアノで挑戦するのだとのこと。実は、今日演奏されたラヴェルのソナタが第3次予選の課題曲に、ブラームスのソナタが本選の課題曲になっている。もう半月しかないが、仕上がり具合は・・・・。技巧も解釈も演奏もまったく問題はないと思うが、上位入賞は当然としても、優勝するためには、もうひとまわり個性を押し出しても良いかな、という気がするのだが・・・・。
終演後は、またまた関係者の方々がいっぱい残っていた。早々に会場を後にするのは抽選で当たった人だろうか?? 待っている人が大勢いらっしゃったので、私もちょっとだけご挨拶して引き上げることにした。
「CHANEL Pygmalion Days」に選ばれたアーティストは、その後の活躍が目覚ましい。かなり目の(耳の)効く人が人選に携わっているに違いない。また、参加されるアーティストの方々も、このシリーズの年間6回のコンサートという演奏機会を通しての経験が将来への大きな糧になるのだろう。りぼんちゃんが世界の Miss RIBON になる日は遠くないはずだ。
それにしてもこのシリーズ。毎回抽選に当たるわけもなく、通して聴くことができないのが残念でならない。
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2014年4月12日(土)17:00~ CHANEL NEXUS HALL 自由席 4列目中央右ブロック中央通路側(ご招待)
ヴァイオリン: 会田莉凡
ピアノ: 務川慧悟
【曲目】
ラヴェル: ヴァイオリン・ソナタ ト長調
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第4番 ホ短調 作品27-4
ブラームス: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番 ニ短調 作品108
《アンコール》
モンティ: チャールダーシュ
ファッション・ブランドのCHANELが、若手の音楽家たちに演奏の機会を提供するという「CHANEL Pygmalion Days Classical Concerts」シリーズ。申込者より抽選で招待される無料のコンサートだが、内容は充実したもので、聴き応えがある。今年2014年の参加アーティストは、ピアノの内匠 慧さん、池永夏美さん、チェロの伊藤悠貴さん、ヴァイオリンの会田莉凡さん、バリトンの加耒 徹さんの5名。開催日は休日(主に土曜日)で、マチネの部(14:00~15:00)とソワレの部(17:00~18:00)に別れて2つのコンサートが開かれる。1年間かけて各アーティストが6回のコンサートを行うが、各自がテーマを定めて企画の内容を決めることができるらしい。開催月の2ヶ月前から申込みを受付、抽選の結果当選した人が招待される仕組みである。
昨年は関係者の招待に同行したりして、何度か聴かせていただくことができた。今年は自分のスケジュールに合わせて、りぼんちゃんの回に申し込んでおいたら、嬉しいことに見事初当選。おかげ様で、先月の「東京・春・音楽祭2014」に続けてりぼんちゃんのリサイタルをまた聴けることになった。
昨年何回か聴きに行き開催の様子が分かるようになっているので、会場には一番乗り。自由席だが前方中央付近の3列ほどは関係者のリザーブ席になっているので、4列目の通路側、ステージのりぼんちゃんの立ち位置がまったく遮られることなく見通せるベスト・ポジションを確保することができた。会場はもちろん満席で、150名以上は入っていたと思う。
成長著しく活躍を始めたりぼんちゃんについてはもう説明することはないだろう。また今日、ピアノを受け持つ務川慧悟さんは、りぼんちゃんが優勝した2012年の第81回日本音楽コンクールのピアノ部門の覇者である。彼は東京藝術大学に在学中で、桐朋学園のりぼんちゃんとは普通あまり接点はないはずだが、コンクールで優勝したのをきっかけに演奏会を通じて交流が深まり、デュオを結成して既に活動を始めているとのことである。
1時間のコンサートとはいえ、内容は濃い。1曲目はラヴェルの「ヴァイオリン・ソナタ」。いきなりの難曲である。
第1楽章は微細なトーンの描き方が難しい、捉え所のない不思議な旋律美である。技巧よりは解釈、解釈よりは感性が求められる・・・・といった感覚的な印象の強い曲想だ。務川さんのピアノがかなり抑え気味にコントロールしてキラキラする音色を聴かせるのに対して、りぼんちゃんのヴァイオリンも抑え気味ではあるが繊細な色彩の描き分けていて、微妙なニュアンスで表情を変えていく。この辺りの感性は、まさに人によって違うところだろう。二人の抑え気味の中での多彩に表情付けが中々素晴らしい。
第2楽章は緩徐楽章に相当する。4弦同時のピツィカートが拍子を刻んで始まる。ヴァイオリンのピツィカートは音がギターのように伸びないので、どちらかというとウクレレのような和音に聞こえる。リズムがピアノに受け継がれるとヴァイオリンがブルース風の旋律を弾いていく。ナイトクラブの雰囲気。とはいうもののどうもつかみ所が曖昧である。どちらかといえば務川さんのピアノはキチンとしていて優等生的(あくまで良い意味で)なのに対して、ヴァイオリンの方が自由度が高い感じがした。後は好みの問題となるが、この楽章は「ブルース」。もっと濃厚に、けだるく頽廃的な雰囲気を出しても面白くなるが、若い二人のイメージからは遠ざかってしまう・・・・かな?
第3楽章もまた、つかみ所はないもののヴァイオリンのパートは超絶技巧の連続。とにかく最初から最後まで過激な速いパッセージが続く。旋律とも分散和音とも言えるような超絶難度のヴァイオリンに対して、リズムを刻み和声を受けもつピアノのまた高度な技巧の連続で、ジャズっぽい雰囲気が描かれていく。りぼんちゃんのヴァイオリンの高速パッセージはさすがに音量があまり出ていなかったようだが、ときおりキラリと光るアクセントが加えられていて、技巧的な曲想の中でも彩りが豊かに描き出されていた。
続いて、イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第4番」。今年の「CHANEL Pygmalion Days」では、6回のコンサートをすべて、ヴァイオリンとピアノのためのソナタで構成すると同時に、イザイの無伴奏ソナタ全6曲を採り上げることにしたという。前回が第3番で、今回が第4番。彼女は意外なことに第3番以外は初挑戦なのだそうだ。1年間かけるとはいえ、ヴァイオリニストの試金石の1つであるイザイの無伴奏ソナタを、この機会にレパートリーにしてしまおうという試みは大胆と言えば大胆だし、前向きと言えば前向き。ものすごくプラス志向である。
無伴奏ソナタの第4番は、3楽章構成だが10分くらいの曲。それでもイザイならではの高度な技巧と難解な構造、シビアな表現力が求められる曲である。
さて演奏が始まると、先ほどのラヴェルとは雰囲気が一新。ソロならではの濃厚な音色と音量の豊かさがあり、立ち上がりも鋭いアタック、メリハリの効いた押し出しである。
第1楽章は主旋律と通奏低音のバランスが良く、バロック風の構造と近代音楽の豊かな抒情性がうまく配分されていた。
第2楽章の前半のピツィカートは音がプツプツと切れて伸びないのが惜しい。重音のピツィカートは難しそうだが、個人的な好みではもう少し平均的に響かせてほしかったところだ。後半の多声的な構造がうまく描き出されていた。
第3楽章は16分音符が連続し、速いパッセージが目まぐるしい部分は5拍子で書かれているという。そのためか、せわしないだけでなくどこか落ち着きのない苛立ちを感じさせる。相当な難易度なのだと思う。多少音程が甘くなっているように聞こえたが・・・・・曲の流れの中では許容範囲だろうか。一方、中間部の抒情性は豊潤な響きを持っていた。
今回のイザイは初挑戦ということなので、もちろん及第点ではあると思うが、高度に技巧的であるが故に、そこに耳目が奪われがち。その技巧の上に演奏者の個性をどれだけ乗せていくことができるか、その辺に課題があるのだと思う。
短い休憩を挟んでの後半は、ブラームスの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第3番」。晩年のブラームス作品にも共通するイメージを持つ短調の曲である。内省的で、諦観と憂愁が全体を覆う中に、忘れ得ない青春の憧れのようなものが見え 隠れする。古今のヴァイオリン・ソナタの傑作の1つであろう。
第1楽章は哀愁を帯びた第1主題が流れるように湧き出てきて、素晴らしいアンサンブルを聴かせる。Allegroのテンポもやや早めで、どちらかといえば若いイメージの躍動的な演奏だ。りぼんちゃんのヴァイオリンが、ここでは艶っぽい音色に変わり、レガートが美しい。第2主題の務川さんのピアノも抑え気味ながらも十分にロマン的で、なかなか素敵だ。
第2楽章はロマンティックな緩徐楽章。ふたりの演奏は優しく穏やかな印象で、屈託がなく、心休まるイメージであった。もう少しテンポを遅くして、濃厚に歌わせるという解釈をしても良いかな、とも感じたが、それは聴く者とのジェネレーション・ギャップなのかもしれない。若いデュオには若い感性を十分に発揮してもらう方が、良いに決まっている。
第3楽章はスケルツォ楽章に相当する。あまり躍動的にも諧謔的にもなれない諦念の感が、二人のさりげない演奏にうまく表されていて、なかなか聴かせてくれる。
第4楽章はニ短調に戻り、重く激しい曲想で、それまで押さえられていた感情が爆発するようである。このような激情的な曲の演奏には、りぼんちゃんのアグレッシブな面が前面に出て来て、本領発揮といったところだ。アクセントがキリッとした明瞭な音色で、リズム感良く曲をグイグイと押し進めていくのは彼女の特性だ。ピアノを押さえ込むほどの力感が感じられた。とにかく音楽の流れが良い。素晴らしい演奏であった。
演奏時間は1時間をだいぶ過ぎていたが、アンコールに応えてくれたのはモンティの「チャールダーシュ」。アンコール・ピースの定番であるとはいえ、最後にこの曲を出してくるのは体力(?)にも自信があるからであろうか。この曲に関してはずいぶん弾き慣れているようで、快速なテンポで技巧を見せるかと思えば、濃厚なフレージングでエキゾチックな雰囲気を見事に醸し出す。最後は一段とテンポを上げて、駆け抜けていった。
さて、結成して間もないデュオだが、今年の5月3日~5日に開催される「第3回 秋吉台音楽コンクール」の室内楽部門に、ヴァイオリンとピアノで挑戦するのだとのこと。実は、今日演奏されたラヴェルのソナタが第3次予選の課題曲に、ブラームスのソナタが本選の課題曲になっている。もう半月しかないが、仕上がり具合は・・・・。技巧も解釈も演奏もまったく問題はないと思うが、上位入賞は当然としても、優勝するためには、もうひとまわり個性を押し出しても良いかな、という気がするのだが・・・・。
終演後は、またまた関係者の方々がいっぱい残っていた。早々に会場を後にするのは抽選で当たった人だろうか?? 待っている人が大勢いらっしゃったので、私もちょっとだけご挨拶して引き上げることにした。
「CHANEL Pygmalion Days」に選ばれたアーティストは、その後の活躍が目覚ましい。かなり目の(耳の)効く人が人選に携わっているに違いない。また、参加されるアーティストの方々も、このシリーズの年間6回のコンサートという演奏機会を通しての経験が将来への大きな糧になるのだろう。りぼんちゃんが世界の Miss RIBON になる日は遠くないはずだ。
それにしてもこのシリーズ。毎回抽選に当たるわけもなく、通して聴くことができないのが残念でならない。
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