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1/9(月・祝)読響みなとみらい名曲/下野竜也・ドヴォルザーク交響曲シリーズ/第3番と「新世界から」

2012年01月10日 01時28分06秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団/第53回 みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2012年1月9日(月・祝)14:00~ 横浜みなとみらいホール S席 1階 C2列 14番 4,100円(会員割引)
指 揮: 下野竜也
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ドヴォルザーク: スラブ舞曲 第1集 作品46から 第1番 ハ長調
ドヴォルザーク: 交響曲 第3番 変ホ長調 作品10
ドヴォルザーク: 交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
《アンコール》
ドヴォルザーク: スラブ舞曲 第2集 作品72から 第7番 ハ長調

 年明けの第2弾は、読売日本交響楽団の横浜みなとみらい名曲シリーズ。このところ年をまたいで下野竜也さんの演奏会が続いている。昨年末の「第九」も今日と同じシリーズで聴いたし、今年になって1月3日の「NHKニューイヤーオペラコンサート」も下野さんの指揮だった。今日のコンサートは、下野さんが読響と取り組んでいるドヴォルザークの交響曲ツィクルスという位置づけで、交響曲の第3番と第9番「新世界から」である。「新世界から」の方は、お正月に聴くのにはピッタリで、フレッシュな気分になれるからまあ良いとして、第3番の方はあまり聴く機会のない曲。その意味では楽しみでもあった。

 1曲目の「スラブ舞曲 作品46-1」は、ハ長調で明快な曲。今日の読響の演奏は、最初からエンジン全開で、パワフルなことでは随一の音を聴かせてくれる。下野さんの指揮は、明確なリズムを刻み、若々しく躍動的で、素直に楽しく聴かせてくれる。

 2曲目は交響曲第3番。ナマ演奏を聴くのは実は初めてである。全3楽章の曲。第3番が変ホ調というのも、やはりベートーヴェンの影響なのだろうか。
 第1楽章はソナタ形式で書かれているためにスッキリして分かりやすい。ドヴォルザークらしい美しい旋律の第1主題がとても印象的。このロマンティックな曲想に対して、読響の演奏は、とくにヴァイオリンが美しいアンサンブルを聴かせていた。短調が主体の展開部では、木管楽器が柔らかな音色を聴かせ、クライマックスの金管楽器はホルンもトロンボーンも明瞭な音を出していた。
 第2楽章もまた、ドヴォルザークらしい憂いを含んだスラブ系のロマンティックな旋律が繰り返され、中間部は長調に転じ、終わるような終わらないような、無限旋律のような曲想が続く。この感じはワーグナーへのオマージュなのだろうか。
 第3楽章はロンド形式であるため、さらに繰り返しが多く感じられ、ちょっとしつこい感じに聞こえる。曲自体がそういった調子なので、演奏もメリハリの付け方が難しそうだ。
 下野さんの指揮は、速い楽章には明快なリズム感でダイナミックな音楽作りが見られ、緩徐楽章などにはそれほど極端ではないが旋律を歌わせるようなフレージングがある。全体的に非常にリズミカルであり、曲の流れが一貫しているといった印象だ。ダイナミックレンジの広い読響をグイグイと引っ張って行き、フレッシュで推進力の強い音楽を描き出していた。オーケストラの各パートもなかなかノリの良い演奏で見事に応えていたように思う。

 後半は「新世界から」。あまりにも名曲すぎて、演奏についてもなかなかコメントしにくいものがあるが…。
 曲については今さら何も説明する必要はないので、演奏についてだけ。第1楽章では、ここでも下野さんの指揮は速めのイン・テンポで押して行く。ホルンがなかなか素晴らしい。全合奏時の音量が爆発的なのは読響らしくて明快だ。
 第2楽書は、「家路」のテーマのコールアングレを話題にしたいところだが、今日の演奏も、何と言ったら良いのか、牧歌的で郷愁を誘い、とても上手いとは思う。「新世界から」のように演奏機会の多い曲では、とくに「家路」のテーマについては各オーケストラの奏者の皆さんがとても上手い。あまり下手な演奏を聴くことがないが、それだけにどんなに上手くてもなかなか深い感動には至らないような気がする。むしろ今日の演奏では、弱音器を付けた弦楽のアンサンブルの美しさに新鮮さを感じた。とくにヴァイオリンの透明な音色は素晴らしく、曲の表現にしっとりとした潤いを与えていたように感じた。
 第3楽章はやはりリズム感だろう。下野さんの指揮は、フレーズのアタマを明確に指示して行くのだが、そのタイミングにキレがあり、怒濤のような推進力を生み出していた。管楽器群が出遅れることもなく、オーケストラ全体がしっかりとした流れに乗っていく。見事にコントロールされていた。
 第4楽章では、金管楽器がなかなか上手いところを聴かせていた。とくにホルンがいつもと違って(失礼)艶のある音色で弱音もキレイに出していた。トランペットの華やかな音色とトロンボーンの割れた低音も良い味を出していた。フィニッシュにむけては、全合奏で馬力のある読響サウンドが豪快に響き渡り、下野さんの音楽作りとうまく合って、ダイナミックな「新世界から」を作り出していた。

 演奏の後、下野さんの信念のご挨拶があり、アンコールは「やっぱりドヴォルザークです」と言われて、「スラブ舞曲 第2集」から作品72-7のハ長調。明るく楽しく締めくくった。

 今日のオール・ドヴォルザーク・プログラムの全体の印象としては、下野さんの指揮も、読響のサウンドも、あまりスラブ系の土の香りのようなものは感じられなかったが、むしろクセのない無色透明な音を豪快にドライブさせていたという意味では、日本的なドヴォルザークだったのかもしれない。若々しく、フレッシュで、未来志向の音楽のように聞こえた。今年が良い年でありますように、という下野さんと読響、いやドヴォルザークからのメッセージだったような気がする。

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