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ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》 日本公演 2017
State Symphony Cappella of Russia Japan Tour 2017
2017年11月7日(火)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 12,000円
指 揮:ヴァレリー・ポリャンスキー
チェロ:宮田 大*
管弦楽:ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》
【曲目】
チャイコフスキー:大序曲「1812年」作品49
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104*
《アンコール》
カザルス:鳥の歌*
ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47「革命」
《アンコール》
チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』より「葦笛の踊り」
ショスタコーヴィチ:バレエ音楽『ボルト』より「荷馬車引きの踊り」
ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》の日本公演を聴く。今回の来日ツアーでは、全国10都市で11公演を行う。東京だけが2回の公演があり、一昨日(2017年11月5日)にはサントリーホールで、前回来日した時と同じプログラムでチャイコフスキーの交響曲第4番・5番・6番を演奏した。そちらもチケットは取っていたが、別の公演と重なってしまったため、やむなく断念した。今日はゲストに宮田大さんを参加させてのドヴォルザークの「チェロ協奏曲」とショスタコーヴィチの交響曲第5番という、こちらも王道を行くプログラムである。
ロシアのオーケストラは名前を聞いただけでは何だかよく分からないのが多い。ソ連時代に作られた沢山のオーケストラがソ連の崩壊と自由化に伴い、改組されたり、再編されたり、名称が変わったりしているからだ。「ロシア国立交響楽団」は、1957年に設立された「全ソビエト放送オペラ交響楽団」が前身で、後に「ソビエト国立文化省交響楽団」と改称、1991年には「ソビエト連邦国立室内合唱団」合併して、現在の名称となった。翌1992年からヴァレリー・ポリャンスキーさんが音楽監督を務めて現在に至っている。
1曲目、チャイコフスキーの「大序曲『1812年』作品49」は、例の大砲が鳴ることで知られている曲。演奏は、さすがにロシアのオーケストラだと思わせるもので、弦楽や木管などが奏でる甘美でロマンティックな部分と全合奏で爆音を轟かすのと対比がスゴイ。いささか荒削りの印象もあるが、むしろそれこそがロシアのオーケストラの持ち味だろう。大砲の代わりに大太鼓が連打されると行き場のなくなった音のエネルギーがビリビリと伝わって来る。ものすごい迫力だ。
2曲目はドヴォルザークの「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104」。さすがに協奏曲になるとポリャンスキーさんはオーケストラをぐっと抑え込んで、音量は半分以下になってしまう。第1楽章の主題提示部、第2主題のホルンのソロは弱音で朗々と歌わせ、体格に勝るロシア人ならではの味わいだ。宮田さんのチェロは比較的よく鳴っていたと思う。音質は決して明るくはなく、渋みと言うよりはほの暗い音色といったイメージだろうか。低音部は滑らかで豊かな音色で、ゴツゴツしたところはない。ハイポジションになる高音域はやや神経質な感じがする。旋律の歌わせ方は、呼吸するイメージを伴う大らかなもので、表現力の幅広いところはさすがである。押し出しはあまり強くないので、迫力は今ひとつのように気がするが、一方で滑らかでしなやかな質感は見事なものであった。
宮田さんのソロ・アンコールはカザルスの「鳥の歌」。お馴染みのアンコールの定番である。
後半はショスタコーヴィチの「交響曲 第5番 ニ短調 作品47」。演奏は粛々としたイメージで始まり、意外に穏やかな印象であったが、全合奏のクライマックスを迎えるとさすがに大音量で迫力いっぱいになる。基本的に各パートの演奏能力は高く、金管が大きく咆哮し打楽器が打ち鳴らされても、芯のつよい弦楽が負けることがない。しかし、曲自体は弱音の部分が多いので、演奏の方もどちらかといえば繊細でナイーブな印象だ。このオーケストラは弱音の演奏が、木管も金管もかなり巧い。コンサートマスターによるヴァイオリンのソロもナイーブな感じだ。弦楽のアンサンブルはやや粗雑な感じもするが、これはロシアのオーケストラの持ち味だろう。ポリャンスキーさんの音楽作りも、彼の見た目の印象とは違って(失礼)繊細にアンサンブルを構築していく。全体が強奏になる第4楽章になると弦楽も管もぐっとテンションが上がって、地力が見えてくる。パワフルが迫力もあるが、キレ味が鋭く決然とした印象で、わざとらしくドラマティックにしようとはしていない。速めのテンポ設定を採ることで、音楽の純度が高まっている印象だ。聴き応えのある、素晴らしい演奏だったと思う。
アンコールは2曲あった。まず、チャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』より「葦笛の踊り」。こういった可愛らしい曲をサラリと演奏する辺りはいかにもロシアのオーケストラである。手慣れていて、上手い。
最後は、ショスタコーヴィチのバレエ音楽『ボルト』より「荷馬車引きの踊り」。管楽器と打楽器が活躍する。
少なくとも、今日のプログラムを聴いた限りでは、想像していたよりは繊細で緻密な演奏という印象が強く、豪快なロシアのオーケストラというイメージがあまり感じられなかった。まあ、部分的にはパワフル名面も見せていたので、あくまで曲目によるところが大きいのであろう。そうなると、チャイコフスキーの後期三大交響曲を聴き損ねたことが惜しくてならない。前回の来日公演の同プログラムが録音されて2枚組CDとしてリリースされているので、せめてそちらで楽しむこととしよう。
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【お勧めCDのご紹介】
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮、ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》による「チャイコフスキー/三大交響曲」です。2015年7月18日、東京芸術劇場コンサートホールでの公演をライブ録音したものです。
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State Symphony Cappella of Russia Japan Tour 2017
2017年11月7日(火)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 12,000円
指 揮:ヴァレリー・ポリャンスキー
チェロ:宮田 大*
管弦楽:ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》
【曲目】
チャイコフスキー:大序曲「1812年」作品49
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104*
《アンコール》
カザルス:鳥の歌*
ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47「革命」
《アンコール》
チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』より「葦笛の踊り」
ショスタコーヴィチ:バレエ音楽『ボルト』より「荷馬車引きの踊り」
ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》の日本公演を聴く。今回の来日ツアーでは、全国10都市で11公演を行う。東京だけが2回の公演があり、一昨日(2017年11月5日)にはサントリーホールで、前回来日した時と同じプログラムでチャイコフスキーの交響曲第4番・5番・6番を演奏した。そちらもチケットは取っていたが、別の公演と重なってしまったため、やむなく断念した。今日はゲストに宮田大さんを参加させてのドヴォルザークの「チェロ協奏曲」とショスタコーヴィチの交響曲第5番という、こちらも王道を行くプログラムである。
ロシアのオーケストラは名前を聞いただけでは何だかよく分からないのが多い。ソ連時代に作られた沢山のオーケストラがソ連の崩壊と自由化に伴い、改組されたり、再編されたり、名称が変わったりしているからだ。「ロシア国立交響楽団」は、1957年に設立された「全ソビエト放送オペラ交響楽団」が前身で、後に「ソビエト国立文化省交響楽団」と改称、1991年には「ソビエト連邦国立室内合唱団」合併して、現在の名称となった。翌1992年からヴァレリー・ポリャンスキーさんが音楽監督を務めて現在に至っている。
1曲目、チャイコフスキーの「大序曲『1812年』作品49」は、例の大砲が鳴ることで知られている曲。演奏は、さすがにロシアのオーケストラだと思わせるもので、弦楽や木管などが奏でる甘美でロマンティックな部分と全合奏で爆音を轟かすのと対比がスゴイ。いささか荒削りの印象もあるが、むしろそれこそがロシアのオーケストラの持ち味だろう。大砲の代わりに大太鼓が連打されると行き場のなくなった音のエネルギーがビリビリと伝わって来る。ものすごい迫力だ。
2曲目はドヴォルザークの「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104」。さすがに協奏曲になるとポリャンスキーさんはオーケストラをぐっと抑え込んで、音量は半分以下になってしまう。第1楽章の主題提示部、第2主題のホルンのソロは弱音で朗々と歌わせ、体格に勝るロシア人ならではの味わいだ。宮田さんのチェロは比較的よく鳴っていたと思う。音質は決して明るくはなく、渋みと言うよりはほの暗い音色といったイメージだろうか。低音部は滑らかで豊かな音色で、ゴツゴツしたところはない。ハイポジションになる高音域はやや神経質な感じがする。旋律の歌わせ方は、呼吸するイメージを伴う大らかなもので、表現力の幅広いところはさすがである。押し出しはあまり強くないので、迫力は今ひとつのように気がするが、一方で滑らかでしなやかな質感は見事なものであった。
宮田さんのソロ・アンコールはカザルスの「鳥の歌」。お馴染みのアンコールの定番である。
後半はショスタコーヴィチの「交響曲 第5番 ニ短調 作品47」。演奏は粛々としたイメージで始まり、意外に穏やかな印象であったが、全合奏のクライマックスを迎えるとさすがに大音量で迫力いっぱいになる。基本的に各パートの演奏能力は高く、金管が大きく咆哮し打楽器が打ち鳴らされても、芯のつよい弦楽が負けることがない。しかし、曲自体は弱音の部分が多いので、演奏の方もどちらかといえば繊細でナイーブな印象だ。このオーケストラは弱音の演奏が、木管も金管もかなり巧い。コンサートマスターによるヴァイオリンのソロもナイーブな感じだ。弦楽のアンサンブルはやや粗雑な感じもするが、これはロシアのオーケストラの持ち味だろう。ポリャンスキーさんの音楽作りも、彼の見た目の印象とは違って(失礼)繊細にアンサンブルを構築していく。全体が強奏になる第4楽章になると弦楽も管もぐっとテンションが上がって、地力が見えてくる。パワフルが迫力もあるが、キレ味が鋭く決然とした印象で、わざとらしくドラマティックにしようとはしていない。速めのテンポ設定を採ることで、音楽の純度が高まっている印象だ。聴き応えのある、素晴らしい演奏だったと思う。
アンコールは2曲あった。まず、チャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』より「葦笛の踊り」。こういった可愛らしい曲をサラリと演奏する辺りはいかにもロシアのオーケストラである。手慣れていて、上手い。
最後は、ショスタコーヴィチのバレエ音楽『ボルト』より「荷馬車引きの踊り」。管楽器と打楽器が活躍する。
少なくとも、今日のプログラムを聴いた限りでは、想像していたよりは繊細で緻密な演奏という印象が強く、豪快なロシアのオーケストラというイメージがあまり感じられなかった。まあ、部分的にはパワフル名面も見せていたので、あくまで曲目によるところが大きいのであろう。そうなると、チャイコフスキーの後期三大交響曲を聴き損ねたことが惜しくてならない。前回の来日公演の同プログラムが録音されて2枚組CDとしてリリースされているので、せめてそちらで楽しむこととしよう。
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ヴァレリー・ポリャンスキー指揮、ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》による「チャイコフスキー/三大交響曲」です。2015年7月18日、東京芸術劇場コンサートホールでの公演をライブ録音したものです。
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