神尾真由子 室内楽プロジェクトVol.2
2017年11月3日(金・祝)14:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 7,000円
ヴァイオリン:神尾真由子
ヴィオラ:横溝耕一
チェロ:山上 薫
コントラバス:高橋洋太
ピアノ:佐藤卓史
【曲目】
マーラー:ピアノ四重奏曲(断章)イ短調
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 作品25
シューベルト:ビアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D.667「ます」
《アンコール》
シューベルト:ビアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D.667「ます」より 第3楽章
ヴァイオリニストの神尾真由子さんは主にソリストとして活躍しているが、これは室内楽に取り組むという企画のコンサートで、今回は第2回となっている。第1回は、とくに銘打ってあったわけではないが、2015年6月3日に紀尾井ホールで「神尾真由子×ジャン・ワン×キム・ソヌク〈スーパートリオ〉」という室内楽のコンサートを開催していて、それに続く第2回ということらしい。今回もプログラム・ノートにと一切の趣旨説明がない。主催はアスペンである。
今回はピアノ五重奏曲のシューベルトの「ます」をメインに置いている。「ます」はとても有名な曲ではあるが、ピアノ+弦楽四重奏ではなく、コントラバスを含むピアノ五重奏という構成なので、他に演奏する曲が見当たらない。その結果、前半はピアノ四重奏ということになる。
マーラーの「ピアノ四重奏曲(断章)イ短調」は、16歳くらいの時の作品でスコアはのほとんどは失われてしまったが、第1楽章が復元されて出版されるに至ったもの。曲想は憂愁をたっぷり含んだいかにもロマン派といった感じ。構造的にはヴァイオリン中心に構成されている。
演奏の方はは情感豊かに歌うように、濃厚な色彩感を見せている。神尾さんのヴァイオリンはかつてのような押し出しの強いものではなく、純粋な「美」を追い求める質感の高い演奏だ。神尾さんの求心力に対して他の3人が寄り添うようにアンサンブルをまとめていた。
続いては、ブラームスの「ピアノ四重奏曲 第1番」。こちらも若い頃の作で28歳ころ。ほの暗い心模様に中に熱い炎がチラチラと見え隠れし、また憧れを乗せた抒情性も垣間見える。ヴァイオリンだけでなく、チェロの比重も高いし、ピアノも重要な役割を果たしている。ブームス若き日の傑作である。
演奏の方は、なかなか面白い。やはりソリスト級の演奏家が集まって臨時のユニットを組むとなると、個性のぶつかり合いになる。慣れ親しんだ間柄でもなく、また手探りで様子を見ながら演奏するほど弱気でもないようである。誰かが誰かに合わせるのではなく、誰もいない真ん中の空間に向かって、全員がエネルギーをぶつけているようなイメージだろうか。
後半は、シューベルトの「ビアノ五重奏曲 『ます』」。いわずと知れた名曲中の名曲。この曲は、コントラバスが加わることで低音部が安定するためチェロの自由度が増す。そのためにより多彩な音楽表現が可能になっている。もとより美しい歌謡的な旋律を無限に作り出すことのできるシューベルトである。主題だけでなく経過句までもが旋律美で溢れている。
春めいて華やぐによう、明るく弾む第1楽章。優しく歌う緩徐楽章である第2楽章。沸き上がる情熱を弾けさせる活発なスケルツォの第3楽章。「ます」を主題とする変奏曲の第4楽章。生命力溢れるハンガリー風ロンドの第5楽章。
それぞれの異なる曲想に対して、このクインテットの演奏は実に表現の幅が広く、豊かな色彩感をもって描き出していく。色彩感と言っても標題音楽的な情景描写のものではなく、あくまで純音楽としての色彩感であり、あるいは人の情感を(喜怒哀楽のように単純ではなくもっと複雑にからみあった感情)自由に表現するロマン派の音楽としての色彩感である。おそらくは、演奏している人たちの音楽的に情感がその場で盛り上がり、それが様々な色彩感となって現れてくるのであろう。5人が完全に同じ方向性で、共通の意志で一つの音楽を作ろうとしているのではなく、もっと自由度が高く、互いを尊重しつつも自分の個性もできるだけ出して行きたい、そんな意志がぶつかり合って混ざり合っている。だから、ものすごく生き生きしているのであろう。素敵な演奏であった。
終演後には、5名の出演者によるサイン会があった。神尾さんはCDを買った人ということなので、『愛のあいさつ&夢のあとに〜神尾真由子 ヴァイオリン・アンコール』というCDアルバムを購入して、ジャケットの中ページにサインをしていただいた。後で考えたら、このCDは「DVD付き初回生産限定盤」の方を持っていて、CDの方はまったく同じである。ジャケットが違うのでウッカリしてしまった・・・・。
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【お勧めCDのご紹介】
2014年にリリースされた神尾真由子さんの『愛のあいさつ&夢のあとに〜神尾真由子 ヴァイオリン・アンコール』です。いわゆるアンコール・ピースと呼べるような小品が26曲も収録されています。ピアノ伴奏はもちろん夫君のミロスラフ・クルティシェフさんで、ジャケットにはお二人のラブラブの写真がいっぱい載っています。
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2017年11月3日(金・祝)14:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 7,000円
ヴァイオリン:神尾真由子
ヴィオラ:横溝耕一
チェロ:山上 薫
コントラバス:高橋洋太
ピアノ:佐藤卓史
【曲目】
マーラー:ピアノ四重奏曲(断章)イ短調
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 作品25
シューベルト:ビアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D.667「ます」
《アンコール》
シューベルト:ビアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D.667「ます」より 第3楽章
ヴァイオリニストの神尾真由子さんは主にソリストとして活躍しているが、これは室内楽に取り組むという企画のコンサートで、今回は第2回となっている。第1回は、とくに銘打ってあったわけではないが、2015年6月3日に紀尾井ホールで「神尾真由子×ジャン・ワン×キム・ソヌク〈スーパートリオ〉」という室内楽のコンサートを開催していて、それに続く第2回ということらしい。今回もプログラム・ノートにと一切の趣旨説明がない。主催はアスペンである。
今回はピアノ五重奏曲のシューベルトの「ます」をメインに置いている。「ます」はとても有名な曲ではあるが、ピアノ+弦楽四重奏ではなく、コントラバスを含むピアノ五重奏という構成なので、他に演奏する曲が見当たらない。その結果、前半はピアノ四重奏ということになる。
マーラーの「ピアノ四重奏曲(断章)イ短調」は、16歳くらいの時の作品でスコアはのほとんどは失われてしまったが、第1楽章が復元されて出版されるに至ったもの。曲想は憂愁をたっぷり含んだいかにもロマン派といった感じ。構造的にはヴァイオリン中心に構成されている。
演奏の方はは情感豊かに歌うように、濃厚な色彩感を見せている。神尾さんのヴァイオリンはかつてのような押し出しの強いものではなく、純粋な「美」を追い求める質感の高い演奏だ。神尾さんの求心力に対して他の3人が寄り添うようにアンサンブルをまとめていた。
続いては、ブラームスの「ピアノ四重奏曲 第1番」。こちらも若い頃の作で28歳ころ。ほの暗い心模様に中に熱い炎がチラチラと見え隠れし、また憧れを乗せた抒情性も垣間見える。ヴァイオリンだけでなく、チェロの比重も高いし、ピアノも重要な役割を果たしている。ブームス若き日の傑作である。
演奏の方は、なかなか面白い。やはりソリスト級の演奏家が集まって臨時のユニットを組むとなると、個性のぶつかり合いになる。慣れ親しんだ間柄でもなく、また手探りで様子を見ながら演奏するほど弱気でもないようである。誰かが誰かに合わせるのではなく、誰もいない真ん中の空間に向かって、全員がエネルギーをぶつけているようなイメージだろうか。
後半は、シューベルトの「ビアノ五重奏曲 『ます』」。いわずと知れた名曲中の名曲。この曲は、コントラバスが加わることで低音部が安定するためチェロの自由度が増す。そのためにより多彩な音楽表現が可能になっている。もとより美しい歌謡的な旋律を無限に作り出すことのできるシューベルトである。主題だけでなく経過句までもが旋律美で溢れている。
春めいて華やぐによう、明るく弾む第1楽章。優しく歌う緩徐楽章である第2楽章。沸き上がる情熱を弾けさせる活発なスケルツォの第3楽章。「ます」を主題とする変奏曲の第4楽章。生命力溢れるハンガリー風ロンドの第5楽章。
それぞれの異なる曲想に対して、このクインテットの演奏は実に表現の幅が広く、豊かな色彩感をもって描き出していく。色彩感と言っても標題音楽的な情景描写のものではなく、あくまで純音楽としての色彩感であり、あるいは人の情感を(喜怒哀楽のように単純ではなくもっと複雑にからみあった感情)自由に表現するロマン派の音楽としての色彩感である。おそらくは、演奏している人たちの音楽的に情感がその場で盛り上がり、それが様々な色彩感となって現れてくるのであろう。5人が完全に同じ方向性で、共通の意志で一つの音楽を作ろうとしているのではなく、もっと自由度が高く、互いを尊重しつつも自分の個性もできるだけ出して行きたい、そんな意志がぶつかり合って混ざり合っている。だから、ものすごく生き生きしているのであろう。素敵な演奏であった。
終演後には、5名の出演者によるサイン会があった。神尾さんはCDを買った人ということなので、『愛のあいさつ&夢のあとに〜神尾真由子 ヴァイオリン・アンコール』というCDアルバムを購入して、ジャケットの中ページにサインをしていただいた。後で考えたら、このCDは「DVD付き初回生産限定盤」の方を持っていて、CDの方はまったく同じである。ジャケットが違うのでウッカリしてしまった・・・・。
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【お勧めCDのご紹介】
2014年にリリースされた神尾真由子さんの『愛のあいさつ&夢のあとに〜神尾真由子 ヴァイオリン・アンコール』です。いわゆるアンコール・ピースと呼べるような小品が26曲も収録されています。ピアノ伴奏はもちろん夫君のミロスラフ・クルティシェフさんで、ジャケットにはお二人のラブラブの写真がいっぱい載っています。
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