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1/4 (金)ラ・ルーチェ弦楽八重奏団/新年早々のコンサートに若く躍動するエネルギーが結集/緻密かつ大胆なアンサンブルが秀逸

2019年01月04日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
La Luce vol.5
ラ・ルーチェ弦楽八重奏団


2019年1月4日(金)19:00〜 東京文化会館・小ホール 指定席 A列 25番 3,000円
《ラ・ルーチェ弦楽八重奏団》
ヴァイオリン:大江 馨
ヴァイオリン:城戸かれん
ヴァイオリン:小林壱成
ヴァイオリン:毛利文香
ヴィオラ:有田朋央
ヴィオラ:田原綾子
チェロ:伊東 裕
チェロ:笹沼 樹
【曲目】
ブラームス:弦楽六重奏曲 第2番 ト長調 作品36
     (Vn1: 城戸/Vn2: 大江/Va1: 田原/Va2: 有田/Vc1: 笹沼/Vc2: 伊東)
ブルッフ:弦楽八重奏曲 変ロ長調 Op. Posth
     (Vn1: 大江/Vn2: 小林/Vn3: 城戸/Vn4: 毛利/Va1: 田原/Va2: 有田/Vc1: 笹沼/Vc2: 伊東)
グリエール:弦楽八重奏曲 ニ長調 作品5
     (Vn1: 小林/Vn2: 毛利/Vn3: 城戸/Vn4: 大江/Va1: 有田/Va2: 田原/Vc1: 伊東/Vc2: 笹沼)
《アンコール》
 ヨハン・シュトラウスII/山中惇史編:ラルッチ・ラルッチェ・ポルカ
 メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20 より 第4楽章

 ラ・ルーチェ弦楽八重奏団は、2013年に当時の東京藝術大学4名と桐朋学園大学4名のメンバーによって結成され、ほぼ年に1回のペースで演奏会を開いている。当初は大学生だったメンバーの皆さんも卒業して大学院に進んだり、海外へと留学したりと活動拠点がバラバラになってしまい、8名が一堂に集まるのがなかなか難しくなってしまったようだ。そんな理由もあって、8名が集まることができ、第5回に当たる今回のコンサートは何と1月4日。新年仕事始めの日には違いないが、今年は曜日の関係で6日の日曜日までが年始休暇の会社も多く、私も仕事は7日からなので今日はまだまだお正月休みの最中というイメージだ。聴く側の私たちは暢気に構えていれば良いが、演奏する皆さんは当然リハーサルを繰り返さねばならないから、ほとんど正月返上になってしまったに違いない。大変だなあとも思うが、8名の皆さんもこの後一流の演奏家になっていけば、年末年始には色々と演奏の仕事が入って来るだろうから、慣れていくことになるのかもしれない。

 弦楽八重奏というと、あまり曲目が多くはないので、基本的に五重奏以上の曲をプログラムに載せるということで、今回も1曲目はブラームスの「弦楽六重奏曲 第2番」である。それでもあまり聴く機会のない曲だろう。ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ2という編成で、4つの楽章を持ち、演奏時間も40分を超える大作である。
 演奏は、第1ヴァイオリンの城戸かれんさんが情熱的に皆を引っ張る感じか。アンサンブルはあくまで緻密だが、機械的な造形ではなく、瑞々しい情感が共有されていて、抒情性と憂いが交差するような世界観を描き出している。城戸さんのヴァイオリンは優しげでしっとりとした趣がある美しい音色だ。

 プログラム後半の1曲目はブルッフの「弦楽八重奏曲」。弦楽五重奏として作曲しようとしたものを八重奏に作り直したという。ブルッフといえばドイツ・ロマン派の先駆けのような位置付けになるが、まさにロマンティックな美しい旋律が散りばめられた曲だと言える。八重奏の分厚い和声の流れに、抒情的な旋律が、ヴァイオリン、ヴィオラやチェロに形を変えて現れてくる。23〜4分くらいの佳作。
 ここで第1ヴァイオリンを弾く大江 馨さんの演奏は緊密な印象の強く感じられる端正なもので、太く豊潤なイメージの笹沼 樹さんのチェロと美しい対比を作り上げていく。第1ヴィオラの田原綾子さんも柔らかく暖色系の音色で主題を美しく描き出している。基本的に皆さんの音色は陽性であり、短調に転じる第2楽章もあまり陰鬱にならないところがフレッシュな感じで良い。第3楽章は弾むようなリズム感を見事に捉えて、推進力のある若々しい演奏で、やはりこの年代の演奏家たちならではの良さがある。それにしても、素敵な曲だ。今回初めて聴いたのだが、やはり弦楽八重奏曲は演奏機会が滅多にないのだろう。曲自体はもっと多くの人に聴いてもらいたいと思うくらいに、素晴らしい。今回、この曲を採り上げてくれたら・ルーチェ弦楽八重奏団の皆さんに感謝したい。

 プログラムの最後は、グリエールの「弦楽八重奏曲 ニ長調」。ロシアの民族風の旋律が随所に現れ、国民楽派の影響も感じられる曲だが、ヨーロッパ的(ドイツ的)なロマン派の造形も感じられる。年代的には近代への移行期になるが、美しく抒情性に満ちた曲である。4つの楽章を持ち、27〜8分。第3楽章が殊の外、ラブ・ロマンスの映画音楽のように美しい。第4楽章は舞曲風で躍動的。
 演奏の方は第1ヴァイオリンが小林壱成さんに変わり、抒情性が豊かなイメージが強調されたような気がする。また第1チェロの伊東 裕さんはとくに音色が陽性で、両者の掛け合いもロマンティックな雰囲気を強調する。皆さんの演奏を聴いていると、どんな場面にも共通するのは「漲るような生命力」を感じること。それが単純に若さの表れではなく、各自が高度な技巧と幅広い表現力を持っていること、そして8名が合わさる時のアンサンブル能力の高さが功を奏しているのだ。

 アンコールの1曲目、「ラルッチ・ラルッチェ・ポルカ」は、山中惇史さんの編曲というよりは作曲に近く、ヨハン・シュトラウスIIの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」を主題にした変奏曲のような弦楽八重奏曲で、グリッサンドなどの特殊奏法も多用され、途中にはワルツやら何やら他の曲が出て来たりとニューイヤー気分の楽しい曲。ラ・ルーチェ用のオリジナルということで、「ラルッチ・ラルッチェ・ポルカ」という曲名になっているのだろう。
 アンコールの2曲目は、弦楽八重奏と聞けば誰もが思い浮かべる、メンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20」より第4楽章が演奏された。ここでは第1ヴァイオリンが毛利文香さんに変わり、豊潤で勢いのある演奏で皆を引っ張っていく。この曲は何度も演奏しているはずなので、上手いというよりは、手慣れた面もあり、むしろ勢いとパワー溢れる演奏で会場を魅了した。

 お正月真っ只中という1月4日の夜、東京文化会館・小ホールがほぼ満席となる盛況のコンサート。プログラム自体は重量級で本格的なものだったが、普段演奏する機会が少ない曲ばかりになってしまっただけに、準備も大変だったのではないかと推測する。お正月返上でのリハーサルの結果は見事に現れていて、若い力が結集した、瑞々しさと抒情性に加えてエネルギッシュな面もあり、素晴らしい演奏だったと思う。まさに、今、彼らに出来る最高のパフォーマンスであった。聴く側の私たちにとっては素敵なお年玉になったようで、嬉しかった。

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