
読売日本交響楽団 第193回土曜マチネーシリーズ/「第九」
2016年12月17日(土)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 6,141円
指 揮:マルクス・シュテンツ
ソプラノ:アガ・ミコライ
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:デイヴィッド・バット・フィリップ
バ ス:妻屋秀和
管弦楽:読売日本交響楽団
合 唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:三澤洋史
【曲目】
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」
2016年も12月半ばを過ぎると、今年もいよいよ「第九」の季節に突入。もう年末である。まず第1弾は、読売日本交響楽団。ご承知のように読響は「定期演奏会」を除く定期シリーズ、すなわち「名曲シリーズ」「土曜マチネーシリーズ」「日曜マチネーシリーズ」「みなとみらいホリデー名曲シリーズ」「大阪定期演奏会」の12月公演は、ベートーヴェンの「交響曲 第9番 ニ短調 作品125『合唱付き』」の演奏会となっている。これらのいずれかのシリーズの定期会員になっていれば、12月には必ず「第九」が定期会員価格で聴けるので、非常に助かる。他のオーケストラは定期シリーズでは「第九」はやらずに、12月に「特別演奏会」を複数回開催するのである。読響も定期シリーズとは別にスポンサー付きの「特別第九演奏会」が2回ある。「第九」のコンサートは4名のソリストと合唱団が加わるため大掛かりになってしまい、費用もかかる。したがってチケットが高くなる。年に一度、「第九」だけを聴きに行く人にとっては価格はそれほど問題にはならないだろうが、年間150回もコンサートに行く私などにとっては、「第九」は聴きたいけれどもチケットは高いので、辛いところ。だから定期シリーズで聴ける読響は重宝する。毎年複数シリーズの会員になっているので、どこかで必ず聴くことができる。今年は、読響にとっても「第九」の初日にあたる「土曜マチネーシリーズ」を聴くことにした。
今年のマエストロはドイツの中堅、マルクス・シュテンツさん。読響に初登場で「第九」を7回も振る。1965年生まれの51歳。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者とボルティモア響の首席客演指揮者を務めている。世界の一流オーケストラや歌劇場に客演している俊英である。私は聴くのは初めてだと思う。
4名のソリストは、昨年あたりからガラリと入れ替わるようになり、今年は、ソプラノがポーランド出身のアガ・ミコライさん。メゾ・ソプラノはお馴染みの清水華澄さん。テノールはイギリス出身のデイヴィッド・バット・フィリップさん。バスは主にヨーロッパで活躍してきたお馴染みの妻屋秀和さん。日本人のお二人はよく知っているが、外国人2名は未知数といったところ。
合唱は例年通りの新国立劇場合唱団。日本で唯一のプロの合唱団であり、人数は少なめでもパワーでは引けを取らないはず。合唱指揮は三澤洋史さんである。
第1楽章。主題を提示するヴァイオリンやヴィオラは、ほとんどノン・ヴィブラートに近く、サウンド的にはピュアな響きでキレが良いが、深みは乏しいようにも聞こえる。シュテンツさんの音楽作りは、テンポはやや早めだがオーソドックスにまとめている。全体的な味わいはダイナミックレンジの広く採ったドイツ風といった感じ。音量を十分に轟かすのは読響らしい。今日は1列目のコンサートマスターの目の前という席で聴いたわけだが、その位置にあってもティンパニがいささか元気すぎた。室内オーケストラの演奏する古典的なベートーヴェンのイメージに近く、乾いた硬い音で叩き出してくるのだが、音量が大きすぎて残響の多い芸劇のホールでは地響きのようになってしまってウルサイのである。ティンパニの連打が入ると他の楽器が聞こえなくなってしまうのだ。迫力はあるのだが・・・・。
第2楽章はスケルツォ。弦楽がピュアなサウンドで主題を提示して、しかもダイナミックレンジが広くメリハリが効いている。そこは良いのだが、ここでもティンパニが出てくると大きすぎて他の音が聞こえなくなってしまう。テンポは気持ち速めといったところだが、木管や金管が揃わなかったりして、ちょっとドタバタしている感じだ。初日だけにオーケストラと指揮者が互いに感じを掴みきれていないような印象もあった。
第3楽章は緩徐楽章。今ドキの「第九」らしく、けっこう早めのテンポでスイスイと流れる。旋律のフレージングにはシュテンツさんの独自の解釈もまじえて歌わせたり、強弱のメリハリを付けたりしている。弦楽はノン・ヴィブラートに近く、古楽風のピュア・サウンドでとても美しいが、テンポが速いので妙にアッサリしていてコクがない。この楽章の持つ、天国的な響き、心安らぐような要素はまったくなかった。脇目も振らずにそんなに急いでどこへ行く??
第4楽章、冒頭からオーケストラがちょっと冴えない。第1・第2楽章のパワフルな感じがなくなってしまい。なぜか抑制的なイメージだ。チェロとコントラバスによるレチタティーヴォは非常に音楽的に歌わせている。そしてなぜか音量が控え目になってしまい迫力はなくなってしまった。「歓喜のテーマ」が低弦から始まるとやはり速めのテンポとノン・ヴィブラートのピュア・サウンド。全合奏にまで拡大していっても意外に抑制的で、音量を上げてこない。
妻屋さんのパスが朗々と響き渡る。さすがに素晴らしい押し出しで聴かせる。続いて合唱が入って来ると、??と首をかしげてしまう。合唱も立ち上がりが鈍く、キレが悪い。いつもの新国立劇場合唱団らしい瞬発力もないし、音量も不足気味。テノールのフィリップさんは声に透明感がなく(この辺は好みの問題なので・・・)、ホールに響く声量を出すための発声をしている内に微妙にテンポがずれたりしていたような。メゾ・ソプラノの清水華澄は声量が十分にあるので、あまり目立てない「第九」のソリストの中でもそれなりの存在感を出していたと思う。ソプラノのアガ・ミコライさんは声質があまり好みのタイプではなかったが、それでもわざわざ海外から呼んでくるだけの技量なのかは、やや疑問だ。
結局最後まで、合唱が精彩を欠いていたように感じられた。また芸劇の音響の良さが、かえってキレの良くない合唱を一層ボヤケさせてしまっていたのかもしれない。合唱と歌手陣に合わせてオーケストラ側を抑制的にしてしまったのか、読響も第1・第2楽章に比べるといささか冴えないようであった。
というようなわけで、やはり初日は避けるべきだったのかな、とちょっと悔やむことになった。指揮者とオーケストラと合唱が、ひとつにまとまったという感覚が乏しく、全体がドタバタしている印象。第1楽章はまあまあのスタートだったのに、楽章が進むにつれてオーケストラも各パートが合わなくなってきて、ぶっつけ本番のような感じ。要はリハーサル不足といった印象なのである。
何だか感動に乏しい「第九」であった。
← 読み終わりましたら、クリックお願いします。
★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★
当ブログの人気ページをご紹介します。
↓コチラのバナーをクリックしてください。↓


2016年12月17日(土)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 6,141円
指 揮:マルクス・シュテンツ
ソプラノ:アガ・ミコライ
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:デイヴィッド・バット・フィリップ
バ ス:妻屋秀和
管弦楽:読売日本交響楽団
合 唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:三澤洋史
【曲目】
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」
2016年も12月半ばを過ぎると、今年もいよいよ「第九」の季節に突入。もう年末である。まず第1弾は、読売日本交響楽団。ご承知のように読響は「定期演奏会」を除く定期シリーズ、すなわち「名曲シリーズ」「土曜マチネーシリーズ」「日曜マチネーシリーズ」「みなとみらいホリデー名曲シリーズ」「大阪定期演奏会」の12月公演は、ベートーヴェンの「交響曲 第9番 ニ短調 作品125『合唱付き』」の演奏会となっている。これらのいずれかのシリーズの定期会員になっていれば、12月には必ず「第九」が定期会員価格で聴けるので、非常に助かる。他のオーケストラは定期シリーズでは「第九」はやらずに、12月に「特別演奏会」を複数回開催するのである。読響も定期シリーズとは別にスポンサー付きの「特別第九演奏会」が2回ある。「第九」のコンサートは4名のソリストと合唱団が加わるため大掛かりになってしまい、費用もかかる。したがってチケットが高くなる。年に一度、「第九」だけを聴きに行く人にとっては価格はそれほど問題にはならないだろうが、年間150回もコンサートに行く私などにとっては、「第九」は聴きたいけれどもチケットは高いので、辛いところ。だから定期シリーズで聴ける読響は重宝する。毎年複数シリーズの会員になっているので、どこかで必ず聴くことができる。今年は、読響にとっても「第九」の初日にあたる「土曜マチネーシリーズ」を聴くことにした。
今年のマエストロはドイツの中堅、マルクス・シュテンツさん。読響に初登場で「第九」を7回も振る。1965年生まれの51歳。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者とボルティモア響の首席客演指揮者を務めている。世界の一流オーケストラや歌劇場に客演している俊英である。私は聴くのは初めてだと思う。
4名のソリストは、昨年あたりからガラリと入れ替わるようになり、今年は、ソプラノがポーランド出身のアガ・ミコライさん。メゾ・ソプラノはお馴染みの清水華澄さん。テノールはイギリス出身のデイヴィッド・バット・フィリップさん。バスは主にヨーロッパで活躍してきたお馴染みの妻屋秀和さん。日本人のお二人はよく知っているが、外国人2名は未知数といったところ。
合唱は例年通りの新国立劇場合唱団。日本で唯一のプロの合唱団であり、人数は少なめでもパワーでは引けを取らないはず。合唱指揮は三澤洋史さんである。
第1楽章。主題を提示するヴァイオリンやヴィオラは、ほとんどノン・ヴィブラートに近く、サウンド的にはピュアな響きでキレが良いが、深みは乏しいようにも聞こえる。シュテンツさんの音楽作りは、テンポはやや早めだがオーソドックスにまとめている。全体的な味わいはダイナミックレンジの広く採ったドイツ風といった感じ。音量を十分に轟かすのは読響らしい。今日は1列目のコンサートマスターの目の前という席で聴いたわけだが、その位置にあってもティンパニがいささか元気すぎた。室内オーケストラの演奏する古典的なベートーヴェンのイメージに近く、乾いた硬い音で叩き出してくるのだが、音量が大きすぎて残響の多い芸劇のホールでは地響きのようになってしまってウルサイのである。ティンパニの連打が入ると他の楽器が聞こえなくなってしまうのだ。迫力はあるのだが・・・・。
第2楽章はスケルツォ。弦楽がピュアなサウンドで主題を提示して、しかもダイナミックレンジが広くメリハリが効いている。そこは良いのだが、ここでもティンパニが出てくると大きすぎて他の音が聞こえなくなってしまう。テンポは気持ち速めといったところだが、木管や金管が揃わなかったりして、ちょっとドタバタしている感じだ。初日だけにオーケストラと指揮者が互いに感じを掴みきれていないような印象もあった。
第3楽章は緩徐楽章。今ドキの「第九」らしく、けっこう早めのテンポでスイスイと流れる。旋律のフレージングにはシュテンツさんの独自の解釈もまじえて歌わせたり、強弱のメリハリを付けたりしている。弦楽はノン・ヴィブラートに近く、古楽風のピュア・サウンドでとても美しいが、テンポが速いので妙にアッサリしていてコクがない。この楽章の持つ、天国的な響き、心安らぐような要素はまったくなかった。脇目も振らずにそんなに急いでどこへ行く??
第4楽章、冒頭からオーケストラがちょっと冴えない。第1・第2楽章のパワフルな感じがなくなってしまい。なぜか抑制的なイメージだ。チェロとコントラバスによるレチタティーヴォは非常に音楽的に歌わせている。そしてなぜか音量が控え目になってしまい迫力はなくなってしまった。「歓喜のテーマ」が低弦から始まるとやはり速めのテンポとノン・ヴィブラートのピュア・サウンド。全合奏にまで拡大していっても意外に抑制的で、音量を上げてこない。
妻屋さんのパスが朗々と響き渡る。さすがに素晴らしい押し出しで聴かせる。続いて合唱が入って来ると、??と首をかしげてしまう。合唱も立ち上がりが鈍く、キレが悪い。いつもの新国立劇場合唱団らしい瞬発力もないし、音量も不足気味。テノールのフィリップさんは声に透明感がなく(この辺は好みの問題なので・・・)、ホールに響く声量を出すための発声をしている内に微妙にテンポがずれたりしていたような。メゾ・ソプラノの清水華澄は声量が十分にあるので、あまり目立てない「第九」のソリストの中でもそれなりの存在感を出していたと思う。ソプラノのアガ・ミコライさんは声質があまり好みのタイプではなかったが、それでもわざわざ海外から呼んでくるだけの技量なのかは、やや疑問だ。
結局最後まで、合唱が精彩を欠いていたように感じられた。また芸劇の音響の良さが、かえってキレの良くない合唱を一層ボヤケさせてしまっていたのかもしれない。合唱と歌手陣に合わせてオーケストラ側を抑制的にしてしまったのか、読響も第1・第2楽章に比べるといささか冴えないようであった。
というようなわけで、やはり初日は避けるべきだったのかな、とちょっと悔やむことになった。指揮者とオーケストラと合唱が、ひとつにまとまったという感覚が乏しく、全体がドタバタしている印象。第1楽章はまあまあのスタートだったのに、楽章が進むにつれてオーケストラも各パートが合わなくなってきて、ぶっつけ本番のような感じ。要はリハーサル不足といった印象なのである。
何だか感動に乏しい「第九」であった。

★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★・・・・・★
当ブログの人気ページをご紹介します。
↓コチラのバナーをクリックしてください。↓

