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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

8/1(水)中桐 望サロン・コンサート/別府由佳とのピアノ・デュオ/息の合ったアンサンブルで圧倒的な躍動感を表現

2018年08月01日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
中桐 望 サロン・コンサート シリーズ Vol.1「ピアノ・デュオ」

2018年8月1日(水)19:00〜 ヤマハ銀座コンサートサロン 自由席 最前列 左端 3,000円(後援会割引)
ピアノ:中桐 望
ビアノ:別府由佳(ゲスト)
【曲目】〜オール・ピアノ・デュオ〜
モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.488(2台ピアノ)
ドビュッシー/ラヴェル編:牧神の午後への前奏曲(連弾)
ドビュッシー:小組曲(連弾)
ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲(2台ピアノ)
ラヴェル:マ・メール・ロワ(連弾)
ラヴェル:ラ・ヴァルス(2台ピアノ)
《アンコール》
 アルチュニアン&ババジャニアン:アルメニア狂詩曲(2台ピアノ)

 先週も聴かせていただいたばかりのピアニストの中桐 望さんが、自身の後援会が設立されたのを記念してスタートさせた「サロン・コンサート シリーズ」の第1弾。毎回テーマを決めて、客席との距離感が近くアットホームな雰囲気の演奏会を目指して小さなサロンでリサイタルを開催するというもので、年間1〜2回の開催を目指すという。
 第1回は、会場を東京・銀座のヤマハ銀座ビルの6階にある「ヤマハ銀座コンサートサロン」。もちろんヤマハホールとは別物で、最大94席(可動式)の小さなコンサート会場である。私はその存在さえ知らなかったのだが、さすがはヤマハだけあって、小さな空間ながらも自然で高品質の音響を誇る素晴らしいサロンだ。
 そして第1回である今回のテーマは「ピアノ・デュオ」ということである。プログラムは上記の通りで、すべての曲が、2台ピアノのための曲か、連弾の曲、すなわち4手のためのピアノ曲になっている。中桐さんの相方を務めるゲストは、別府由佳さん。現在はドイツのワイマールを中心に活動していて、コレペティトゥーアなどを務めている。お二人は東京藝術大学の同級生で、その頃からビアノ・デュオには取り組んでいるとのことだ。
 2台ピアノや連弾によるコンサートは、あるようであまりないというのが実状だと思うが、それはピアニストは基本的にソリストなので、特別の企画でもない限りデュオは興行的にあまり組まれないのだろう。人気や実力が同じレベルのソリストをブッキングすることは意外に難しいのかもしれない。まれにデュオ専門のアーティストとして活動している人たちもいるが、それも特殊な例だと思う。つまり今回の「ビアノ・デュオ」はちょっと変わった、面白い取り組みになったと思われる。
 会場がヤマハということで用意されたピアノは、「ヤマハS6X」が2台。今年2018年1月に発売が開始されたばかりのNew Modelである。サロンにちょうど良い212cmのグランドピアノだが、メーカー・機種・型番だけでなく製造時期やコンディションが同じピアノが2台揃うということは、実際には中々難しいことになるので、その意味でも今日の「ピアノ・デュオ」は素晴らしい条件が整ったということができる。実際に演奏を聴いてみても、2台のピアノの音は均質であり、4手2台から繰り出される厚みのある和声の美しさは見事であった。


 1曲目は、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.488」。これは有名な曲。2台のS6Xから飛び出す音はさすがに現代的なクリアで美しいもので、モーツァルトの時代のフォルテビアノとでは音楽そのものの雰囲気も変わってしまうような気がする。お二人の演奏は息もピッタリと合っていて、速めのテンポと弾むようなリズム感が軽快で、この古典的な名曲に、フレッシュな息吹と現代的なキレの良さを与えている。2台のピアノから繰り出される重音の旋律や4手から生まれる和声がとても美しい。

 2曲目は、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」ラヴェル編曲の連弾版で。怪しげな半音階を含む旋律を支える複雑な和声が4手から美しく繰り出される。ピアノの音が澄んでいることで、不協和音を含む分散和音も濁らずに美しく広がっていく。夢幻的な表現は、夢見心地にテンポが揺れていて、聴いていても心地よい。

 3曲目は、ドビュッシーの「小組曲」。こちらは元々が連弾用の曲である。「小舟にて」は主旋律は親しみやすく、小波が揺れるような伴奏の音形がキラキラと反射する光が煌めくような描写力がある。「行列」はウキウキと飛び跳ね回るような楽しげなリズム感が印象的。「メヌエット」にはもはや舞曲のイメージはなく、やや古典的な旋律による近代的な3拍子の曲という感じ。「バレエ」の方が踊りに適した曲になっている。テンポの安定したリズム感が弾むように生き生きとしている感じが印象に残った。全体的に音量を出すような曲ではないが、比較的幅の狭いダイナミックレンジの中で、音量差を繊細に打ち出し、微妙なニュアンスを表現していた。

 後半の1曲目は、再び2台ピアノに戻り、ルトスワフスキの「パガニーニの主題による変奏曲」。パガニーニのこの主題を扱ったピアノ曲では、ラフマニノフの協奏曲スタイルのものが有名だが、コチラは2台ピアノ用の変奏曲。1941年の作というだけあって、曲相も変奏の編曲も現代的な趣になる。お二人の演奏は、キレ味が非常にシャープで、リズム感のノリが良い。極めて躍動的なのに、2台ピアノのアンサンブルはむしろガッチリ組合わさっていて、エネルギーも2倍以上に増幅されているようであった。

 続いて、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」を本来の連弾で。「眠れる森の美女のパヴァーヌ」淡々とした物語の運びが描かれるが、4手ならではの広い音域に渡る和声が美しく響く。「親指小僧」は4手による重音奏法(和音奏法?)で刻まれる旋律が童話風の可愛らしさをうまく描き出す。「パゴダの女王レドロネット」は2拍子のリズムが軽快に跳ね回る。中間部のは光と影のような陰影のクッキリとした表現だ。「美女と野獣の対話」は可憐な美女とコワモテの野獣が対比的に描かれるのも4手ならではで、低音域と高音域それぞれに厚みのある和声が美しく響く。最期の「妖精の園」では3拍子の和音の進行そのものが旋律になり、近代フランスならではの色彩感だ。「ゆっくりと荘重に」という演奏指定だが、ここでの演奏はあくまでサロン風であり、重厚になりすぎないことで印象主義的な色彩感が煌びやかに表現されていた。

 プログラムの最期は、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を原曲の2台ピアノ版で。ただしこの曲だけは交替して、別府さんが第1ピアノを弾いた。人気曲のひとつで管弦楽版もオーケストラのコンサートでよく聴くが、ピアノの場合はソロで演奏されることが多く、2台ピアノで本来の版を聴ける機会は、あまりない。結局は、2台ピアノによるコンサートが少ないからに他ならない。今日は実に素晴らしいコンディションの2台ピアノで、間近に聴く「ラ・ヴァルス」は奥の深い曲であることを再認識させられた。2台4手から繰り出されるたくさんの音から生まれる複雑で煌びやか、空間に広がっていく和声の鮮やかさが素晴らしい。光の粒が煌めくような音の奔流の中からふわりとワルツの旋律が浮かび上がってきたり、それを強烈な不協和音がかき消していったり、改めて複雑で奥の深い曲でと感じる。管弦楽版と比べると2台ピアノ版は、すべての音が均質なビアノの音だけなので、その分だけ音楽的な造形が純粋に見え、感じられる。もちろん、演奏が素晴らしいからであることは間違いない。

 アンコールは、アルチュニアン&ババジャニアンの2台ピアノのための「アルメニア狂詩曲」。2台ピアノの世界では有名な曲・・・・らしいが、私は初めて聴いた。アルメニアの民族性が盛り込まれた舞曲であろうか。とくにテンポが速くなる後半は、エキゾチックであると同時に躍動的でエネルギッシュ。ピアノを弾いているお二人もノリノリで楽しそうであった。


《デュオに相応しい色違いのドレスは今流行の双子コーデ?》

 今回は完全なビアノ・デュオによるコンサートになったが、企画の趣旨としてはあくまで中桐さんの「後援会」による「サロン・コンサート シリーズ」である。次回の開催も決まっていて、2018年12月22日(土)に、東京・三軒茶屋にあるサロン・テッセラで、チェロの上野通明さんをゲストに迎えて開催されるとのことだ。年末のクリスマス前の3連休ということで、何かと忙しい時期なので、今のところは中々予定が立てにくいが、後援会にも入ったことだし、できることなら都合を付けて聴きに行きたいと思っている。

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