好きなもの ほしいもの。モノには色々な物語があると思っています。
(写真は毎日使っている市原平兵衞商店のお箸です)
まずはお箸から



先日ご紹介した 「美の求道者・安宅英一の眼 - 安宅コレクション」 。現在、大阪市立東洋陶磁美術館の開館25周年記念特別展として開催されています。(「安宅(あたか)コレクション」 と 大阪市立東洋陶磁美術館については、先日の記事 で簡単に紹介したので、よろしければご覧下さい)

以前も書きましたが、我が家はこちらの美術館が好きで今まで何度か訪れています。なので、今回の展覧会でも今まで観た事があるものが多く展示されていました。もちろん何度観ても思わず惹き込まれてしまう美しさなのですが、今回は更に作品に対する理解や愛着 (というのもおこがましいのですが) が増したような気がします。それは美術館館長であり、安宅氏の元で安宅コレクション収集に携わっていた伊藤郁太郎氏の作品収集に関するエピソードが添えられていた事。作品に対する解説とは別に、このようなエピソードがあるのは今回初めてでした。このエピソード、思わず笑ってしまいそうになるもの、うーんと唸ってしまうもの等など、読んでいると思わず時間を忘れてしまいます。(なので、全てを見終るのに時間がかかる... ^。^;) 目の前の作品が更に生き生きと見えるようです。この中で一番印象に残ったのが 「青花 草花文 面取瓶」 に添えられていたものです。「青花 草花文 面取瓶」 は18世紀前半の青花磁器で、日本では風情ある趣から 「秋草手」 とも言われています。安宅氏は手に入れたいと思うものの写真か図版を額に入れ、寝室から見える場所に飾っていたとか。そして就寝前にその写真を見て入手の方法に静かに想いを廻らせるのが日課だったそうです。伊藤氏の記憶では、数年ほどの長い間、同じものがこの額に入っていたそうですが、それが この「秋草手」 の徳利だったそうです。そして念願かなってやっと手に入れた直後、伊藤氏は安宅氏に呼ばれました。床の間にはこの秋草の徳利が。伊藤氏は 「とうとう...」 と次の言葉が出なかったそうです。しかし、安宅氏は何時ものようにただ微笑を浮かべているだけ... その夜 伊藤氏が自宅に戻ると、赤飯と鯛の折り詰めが届けられいたそうです。



安宅氏はいつも 「ものは三顧の礼をもって迎えるべし」 とよく言われたそうです。国宝の油滴天目茶碗にも、この言葉を実感するエピソードが添えられていました。(このお話は迫力あります) もちろん、安宅氏に対しては色々な意見があると思います。10大総合商社の一角を占めていた安宅産業の経営破たんに深く関わった訳ですから。でも、これらの素晴らしいコレクションを観たり、それにまつわるエピソードを読むと、簡単な言葉では片付けられない、安宅氏の人柄と収集に対する気迫を感じます。ぜひ、もっと多くの人に安宅氏の鋭い 「眼」 と美に対する情熱を観て、そして感じて欲しいなあと思います。

最後に、伊藤氏が安宅氏の言葉でどれか1つをあげるとすれば...と語っていたお話をご紹介します。美術館が出来てから安宅氏は2回、美術館を訪れているそうです。その2回目、車椅子にのって展示を観ている時 「”あれだけ一所懸命集めたコレクションが人手に渡ってしまい、さぞかしお気を落としになったおられるでしょう。” と慰めてくださる方が多いです。」 と伊藤氏が話しかけた時、安宅氏は次のように語ったそうです。
「コレクションは、誰が持っていても一緒でしょう」
私はこのお話を読んで、ますますこの美術館が好きになりました。

美術館公式ページ 油滴天目 茶碗

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この展覧会は 大阪では 9/30 まで開催され、その後 以下の日程で全国を巡回します。お近くの方はぜひ行ってみて下さい。(東洋陶磁美術館はこの展覧会の後、工事の為 10/1~2008/3/31まで休館となります。)

2007/10/13~12/16 三井記念美術館 [東京] (我が家も大好きな美術館です)
2008/ 1/ 5~ 2/17 福岡市美術館 [福岡]
2008/ 2/29~ 3/20 金沢21世紀美術館 [金沢]

# 日付を間違っていました。(6/12訂正。寝ぼけていた...^。^;)


コメント ( 2 )
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