好きなもの ほしいもの。モノには色々な物語があると思っています。
(写真は毎日使っている市原平兵衞商店のお箸です)
まずはお箸から



オットのZoomyです。

この週末は台風の接近で用心のために予定を変更された方もあったのではないでしょうか。やはり10月前半の体育の日あたりは年間と通してもっとも天気のいい日が多いという統計は当たっているのですね。

毎週のように六甲山に登っていても下の写真のように対岸が見える日はそう何日もありません。これは10月の体育の日の連休の摩耶山からの風景です。



今日は六甲山とは直接関係ない植物の名前のこと、あれこれです。先週見た目も名前も地味なシラキを六甲山 - Part 67で取り上げましたが、今回もちょっと地味な名前を集めてみました。

目を引く植物名はヘクソカズラ以外にも「ションベンノキ」や「ハキダメギク」などあるのですが、印象に残る名前は検索していただければすぐ見つかると思います。植物も特に外来種の名前はキソウテンガイです。魚や昆虫にも思わず笑ってしまう名前があるようですね。オジサンは理解に苦しみます。蛇足ながら前の2つの文中のカタカナは生物種の名前です。駄洒落の準備運動はこのへんにして本題です。

(本文とは関係ありません。木漏れ日のスポットライトのあるところに幼樹あり。)

(これは恐らくヤマウルシ、若い時だけ葉に鋸歯があるそうです。)

今日の最初のお題は同音異義語のいたずらです。すべてまじめな学名です。

・クサイ
・クサスギカズラ
・ヤブヘビイチゴ

名前の付け方はいたって事務的に見えるのですが、結果だけ最初に図鑑の目次などで見せられると一瞬?となることがあります。

クサイは同じイネ科の通称イグサ、学名イに比べて草のようであるという意味で名づけられたようです。たから『臭い』と同音なんて下世話なことより判りやすさ優先ということでしょう。でも素人の私には同音のことのほうが気になってしょうがないのです。すみません。

クサスギカズラは予想がついたかと思いますが、スギカズラという植物(シダ)に似た草ということのようです。

ヤブヘビイチゴは生息地の状況からヤブが頭につけられたヘビイチゴのようですが、果実はほとんど味がないそうです。藪を分け入って採ってもろくな事はない、とするとその意味も兼ねて付けられた名前であったとしても納得してしまいます。

(10月頃野生種にしては大きな花を咲かせるミカエリソウ、山の中にあっては葉も大きくとても目立ち見落トシソウではないです。)

(名前と見た目からは想像つきませんが、草本ではなく木本だそうです。と聞くと写真を見返しませんでしたか?)

次は同音異義語とはちょっと様子が違う植物の名前です。名付けて「昆虫編」です。まるで昆虫のような名前が付いた植物があるのです。そんな名前についてのクイズです。次の名前で実在する植物の名前はいくつあるでしょう? なかには実際の虫の名前もあります。

・オケラ
・カラムシ
・ジムカデ
・ノヤマトンボ
・ヒメクワガタ
・ヤブジラミ

クイズの答えよりそれぞれの植物の記事のほうがよっぽど面白いのですが、順番に答を見てきましょう。

・オケラ
キク科オケラ属の植物名と、バッタ目ケラ科ケラという昆虫の通称です。植物名は古名の「ウケラ」が訛ったものとのことです。万葉集にも謡われているとか。新芽が山菜として珍重されてるそうです(知らなかった)。

「手のひらに太陽を」の「ぼくらはみんな生きている...ミミズだってオケラだって..」の「オケラ」はバッタ目のほうで、バッタの仲間なのに土の中に住む虫だそうです。私は検索して初めて画像を見たかもしれません。

無一文をオケラというのを私はあまり使いませんが、この虫の形からという説が検索にヒットしました。さらに植物のオケラの花言葉は「金欠病」というのもびっくりです。(誰がつけたの?)

・カラムシ
イラクサ目イラクサ科、これも植物です。Wikipediaによると昔は繊維をとる植物だったそうです。漢字は「苧」、昔は「紵」。こちらもオケラに負けない歴史があるようです。この名前が初耳の方は検索してみて下さい。

・ジムカデ
ツツジ科ジムカデ属の植物と、ムカデ綱ジムカデ目の昆虫が同名です。高山植物として扱われることが多いようですが、茎にびっしりとついた短い葉がまるでジムカデのようだという判り易い理由です。(だからって同じ名前、ですか...)

・ノヤマトンボ
ラン科ツレサギソウ属、これも植物です。

・ヒメクワガタ
ゴマノハグサ科クワガタソウ属ヒメクワガタ、ということで植物です。クワガタソウと聞けば植物と予想できますが、その仲間で高山植物のようです。

・ヤブジラミ
セリ科ヤブジラミ属ヤブジラミ、所謂ひっつき虫の一つです。つまり藪でくっつくのでこの名前となりました。同音異義語ではなく、人間に忌み嫌われるシラミそのものが名前の一部となった可憐な白い花を咲かせるこの草にはちょっと同情しますが。

いずれも植物名ということで正解は6です。

(夏に清楚の花を咲かせていたセンニンソウの種です)

(子孫を残す段には花よりもやや雑然としている印象を受けます。)

次は名付けて「鳥類編」です。ウグイスカグラやサギソウやヤマジノホトトギスのように鳥の名前が付けられた植物はいくらか見受けられますが、思いつく範囲では花が美しいものが多いように思います。では同じように植物名はいくつあるでしょう?

・イワチドリ
・クサヒバリ
・コツバメ
・ベニスズメ
・ミヤマウズラ

鳥の名前は日本で稀に見られるものを含めても600種弱のようですが、亜種の数え方など細かいことまでは把握してないので、異なる数字もあるかも知れません。少なくとも植物や昆虫よりはかなり少ないので鳥類に興味のある方なら鳥の名前かどうかはすぐに判ることでしょう。題材が少ないので植物以外の名前も混ぜました。

・イワチドリ → ラン科の植物です。
・クサヒバリ → バッタ目クサヒバリ科、昆虫にこの名前、ありですか...?
・コツバメ → チョウ目シジミチョウ科、 つまり蝶の仲間です。
・ベニスズメ → スズメ目カエデチョウ科の鳥とチョウ目スズメガ科の蛾の同名です。
・ミヤマウズラ → ラン科の植物です。

答えは2つです。植物名が2つということより、同名もありますが鳥類以外の名前として使われていることのほうがなんかトリビアな気がします。

(ツタにしては鋸歯がはっきりしないので恐らくブドウ科の落ち葉かも知れません。ノブドウ、アマヅル、エビヅルなどが六甲山で確認されているようです。昨年11月撮影。)

(オーヘンリーの短編、最後の一枚の葉のツタはどんな葉だったのでしょう)

では最後に植物っぽい名前の問題をひとつ。実在する学名はいくつあるでしょう?
・バリバリノキ
・ヒリヒリグサ
・フサフサシダ
・ペラペラソウ
・ボロボロノキ

ちょっと調子に乗りスギでしたでしょうか。この問題は勝手に作った名前を加えました。答えはバリバリノキとボロボロノキが木本、フサフサシダがシダ類の名前です。正解は3です。ハナヒリノキという木の名前はありましたがヒリヒリはなさそうです。園芸品種でペラペラヨメナというのはありました。

正解率はいかがでしたでしょう?

名前を付けるときに既に使われている名前を優先したら、こうなっただけという名前もたくさんあるはずなので命名した方に何か言いたい訳ではありません。その背景がわかれば納得できるのなら名前として機能するでしょうから。

こんな変わった名前がある、ということから足元の草花の名前に興味も持つもの入り口としてはなかなかいいのではと思っています。

(切り株のキノコですが名前は判りません。自然の色は美しいと思って写真に収めたもの)

(森の循環の一端をつかさどる菌類ですが、絶滅危惧種の選定対象になっていません。菌類にもタマノリイグチなどノリのいい名前があります。)

植物雑学事典掲載種
オケラ
カラムシ
クサイ
クサスギカズラ
ジムカデ
センニンソウ
ノヤマトンボ
ハキダメギク
バリバリノキ
ヒメクワガタ
ミヤマウズラ
ヤブジラミ
ヤブヘビイチゴ
ヤマウルシ


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オットのZoomyです。

ようやく六甲山も登って気持ちいい季節になってきました。ひたすら体温上昇を防ぎながら登る気遣いも減ってきましたが、少し速度を上げるとまだまだ暑いです。

当然まだ紅葉も見られないかと思っていましたが、一部にはこんな姿がこの週末にはありました。



まだまだモミジの仲間は一部の木で枝先が微かに色付き始めてる程度でモミジ以外も含めて紅葉にはまだまだ早い状態です。

実は2週間前、体育の日の3連休、すでに色付いている木がありました。遠目にみるとちょっと茶色が混じっているようにみえたので、さては高温と水不足で葉が痛んでいるのか、と思っていたのですが近づいて見るとそうではなかったようです。


(二週間前の別の場所にあった同じ木です。)

葉脈の部分に緑を残しながら色付いていたので遠目には少し茶色味を帯びてみえていたのでした。葉脈は最後に色が付くようです。なので、黄色からやがて赤に変化するのですが、葉脈部分だけが黄色だったり、年によっては全体が黄色に色付くこともあるそうです。

六甲山では最初に色付く木のようです。その名前はシラキでした。名前が判らないまま去年の6月と7月に花と未熟果の写真を撮っていました。

(花びらのない花です)
(熟すともう少し膨らみます)

でもこの季節はキノコの写真に押されて地味な花と未熟果はお蔵入りしてました。しばらくして花の特徴から多分シラキだろうというところまで判りましたが。

今回、花も実もない状態では色付いた葉が過去に調べたことのある木とは全く気付きませんでした。葉は単葉で互生し縁は全縁、1m程度までの小さな木を除外して絞り込んだ木の紅葉写真を検索していきました。本来なら葉から検索する図鑑があるので、それを使うべきなのですが、単葉、互生、全縁という条件では多数あって、それ以外の特徴を押さえて絞り込む必要があり、追加の条件として縁が波打つのですが、その条件の中にシラキはありませんでした。

結果から言うと縁が波打つという以外の特徴で分類されていたのですが、それが同定への近道となる特徴だから、というのは名前が判った後に調べて知りました。その特徴というのが葉に腺点(せんてん)があるというもの。蜜などの分泌物を出す腺がゴマ粒のように点状になったもの、らしいです。これがある植物はある程度限られるので同定の決め手になるのだとか。ピントのあってない写真では拡大しても確認できるはずもありませんでした。

山道では上を向いてばかりでは歩けないので足元に目を移すと、芽吹いて間もないであろう幼木がありました。



まだ葉が3枚しかないのにちゃんと紅葉を始めてるのには驚きました(ピントは背景の土に合っているのですがお許しを)。もし紅葉してなければ絶対同じ樹木とも気付かず通り過ぎていたことでしょう。

最後におまけです。



登山道沿いのある登山会の休憩所前ですが、このあたりに居ついてしまったらしいイノシシです。山歩きのブログなどに掲載されていたので驚きませんでしたが、初めて出会いました。こちらはメスの成獣のようです。

今年は特にイノシシとの接触事故を耳にすることが多いだけに、共存が簡単ではないことを実感させられます。

このイノシシは横を通り過ぎても写真を撮っても何ら反応しなかったので、もしかしたら人が持っている食べ物を狙う個体ではないのかも知れません。そうであって欲しいと願うのは少し自分勝手でしょうか。


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オットのZoomyです。

この週末の摩耶山はようやく日陰が涼しくなって来ました。流れる川の水の水温も先週より確実に下がってきています。先週は前線が通過して降った雨のおかげでようやく乾いた地面も一息ついた感じですが、その後は降ってないので布引の滝のある生田川はまた水量は減ってきています。

アジサイ池のほとりで一休みしていると、リュックの紐にトンボが止まりました。


この紐の幅は19mmです。およそ数cmといったところでしょうか。羽に色がついているカワトンボより一回り小さいように感じました。うちに帰って調べてみましたが、結局断定には至りませんでした。

神戸市内で確認されている昆虫類のリスト3807種の中にトンボ目は11科(89種)あります。その中からイトトンボ体型のイトトンボ科、モノサシトンボ科、アオイトトンボ科、カワトンボ科に的を絞りました。念のため、細身体型がいるサナエトンボ科もざっとはチェックしました。

この4つの科のトンボの色と胴体の図柄からモノサシトンボ科2種を除外、カワトンボ科5種も羽の色が濃いので対象外にし、イトトンボ科10種もより詳細な写真が掲載されているサイトを複数確認し消去していきました。残るはアオイトトンボ科5種ですが、羽を閉じて止まる2種は可能性は低いと見ています。そうして残った3種が、アオイトトンボ、コバネアオイトトンボ、オオアオイトトンボです。

この中でコバネアオイトトンボは絶滅危惧種I類でかつ市内分布域は西寄りの2つの区なので恐らく対象外としていいのではないかと思います。ただこの写真の解像度では色合いが似てるので類似種として泡沫候補にしておきます。残り2種のうちどちらかというとアオイトトンボに似ているようにも思いますが、この時期ならもっと粉を吹いた白っぽい色になるのだとか。個体差なのか別種なのか、もうこのあたりが門外漢の限界です。

このアオイトトンボ科の識別には尾の部分が判りやすいそうなので、来週ももし見かけたらちゃんと撮るようにします。でも気温が下がってきたことは彼らに残された時間がそう多くないことを教えてくれます。この写真のトンボも二匹がふわふわと追っかけあいをして、もう一匹は私の頭の上に止まりました(止まり木にされたのは2回目か)。来週までは待ってくれないかも知れません。

この季節、このブログに欠かせないのがキノコの写真ですよね。まだ樹上は色の変化はそれほどでもない時期に盛んに彩をそえてくれます。



まだ頭を出す前の幼菌です。成長するとどうなるかというとこうなります。



横からみるとこんな感じです。



透けたヒダは繊細さが感じられますが、大きさは堂々たる10cmオーバーです。ちょうど真っ赤なタマゴタケを変わらない大きさです。今回は図鑑で少し似ているキノコを見つけました。この美しい容姿とは裏腹にドクツルタケという恐ろしい名前を持っています。ただ今回も類似種の可能性は残ります。特に上から見た写真で中央にぷっくりと膨らみがあるのでタマゴタケにそっくりです。柄のささくれも顕著ではないのでシロタマゴテングタケかも知れません。

もしドクツルタケだとすると、1本食べると適切に処置しないと確実に死亡するのだとか。さらにその有毒成分は加熱しても分解されないという極めつけの札付きキノコです。シロタアマゴテングタケにも同じ毒成分が検出されているそうなので、どちらにしても危険なシロモノのようです。冗談でもお持ち帰りはされませんようにお願いします。

物騒なものは置いといて、春先に至る所で小さな花を楽しませてくれたクロモジですが、その蕾はすでに夏の間に用意されていました。



涼しくなると少し色付きますが、大きさは変わりません。じっと冬の間はこの状態で耐えしのぐようです。神戸市内には類似種としてヒメクロモジとオオバクロモジがあるそうです。どれかまでは調べていません。

足元では雨で葉っぱに砂をかぶるような小さな植物が花を咲かせています。



花の大きさは1cmちょっとくらいの可憐な花です。おそらくゲンノショウコではないかと思います。明治生まれだった祖母は日常語として『現の証拠や』という言葉を使っていました。久しく聞いてない様な気がします。玄関先を『かど』と言い、お茶を『おぶう』と言ってましたが、いずれも京言葉として残っていますね。どうやら京言葉のなかにも他では使われなくなった当時の関西弁、関西一円で使われていた古い言葉が多くあるようですね。

植物雑学事典のクロモジゲンノショウコ


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オットのZoomyです。

真夏日の記録更新のニュースが流れる中、1週間以上に渡って香りを楽しませてくれた金木犀が徐々に散り始めています。季節の話題に事欠かない時期ですが、あまり、いえ、全く季節に関係のない話題です。



平成11年発行で、神戸の次の年代の地形図と解説がセットになっています。

1. 1886(明治19)年頃 2万分1
2. 1935(昭和10)年頃 5万分1
3. 1969(昭和44)年頃 5万分1
4. 1987(昭和62)年頃 5万分1
5. 1998(平成10)年頃 2万5千分1
解説:開港から現在までの神戸港と市の発展

解説の前書きによるとこれは、多摩、札幌、岐阜、つくば市、横浜、東京、金沢、仙台に続く第9集とのことです。神戸に続いて長崎、広島、旭川、さいたま市が発売されています。ただし、多摩、横浜、東京は絶版で、札幌は販売を行っている日本地図センターのサイトには掲載されていません。

都市の選択基準は書かれていませんが、関西は神戸しか出ていません。一番新しいさいたま市が平成15年発行らしいので、ここしばらく新刊されていないようです。

神戸は5枚の地図ですが、都市によっては5~7枚の地図で構成されています。いずれの地形図も旧版が入手可能です。他は見てませんが神戸版に関してはそれぞれ隣接する複数の地形図を組み合わせて1枚になっています。そのため複数の地形図を継ぎ目なく見ることができます。特に5枚目の地図は2万5千分1の『神戸首部とその周辺の地図7枚の一部をつなぎ合わせたものになっています。(周辺8枚のうち1枚は海だけ)

この地図の主眼は変遷をたどることでしょうから、大きく変貌を遂げた街が選ばれているのでは、と私は推測しています。関西に限らないかも知れませんが、県庁所在地は江戸時代から街として栄えていた場所が多いはずです。大阪、京都、奈良の各市はもちろん、和歌山市も城下町ですし、三重の津市も昔から港町です。ところが神戸は、栄えていた兵庫の湊の隣にある『寒村』と言われるほどの村でした。

この地形図を見ると栄えていた隣村を追い越すばかりか、飲み込んでしまうまでに発展した神戸村の軌跡のスナップショットを見ることができます。それを物語るのが明治19年の地形図です。

明治19年頃の地図ではすでに兵庫港の周辺と変わらない大きさになり名称も『神戸區』となった街の姿があります。それでも三宮の生田神社がその町並みの一番東北の隅にあたり、そこから北や東は田畑が広がり、所々に民家が散らばる山村風景だったようです。


(今も登山道に残る神戸區の境界標)

幕末(慶応3年、1867年)の兵庫開港の際、トラブルを避けるために隣接地の神戸を開港させるという違約同然のギリギリの方針で新しく形作られていった神戸の街ですが、20年で肩を並べるほどになっています。

明治になって発生した居留地での外国人との衝突に対処するため、明治新政府は兵庫御役所を設置しますが、それが後の兵庫県へと発展していくことになります。ただ、湊の名前が県の名前になったのは一説によると違約を糊塗するために、つまり神戸の港も兵庫に含まれるということにするために兵庫を県名にしたという話もあるそうです。

ただし、兵庫の隣を開港させたのは旧幕府側で、県名に関しては明治新政府の政策です。実施主体が異なり少なくとも一貫した方針の下に行われたものではないはずです。

ですがそれを傍証してくれるものが横浜にあります。時計を少し戻すと開港交渉中の安政6年(1859年)、神奈川開港なのに横浜では話が違うと抗議するアメリカ公使ハリスやイギリス公使オールコックに対し、幕府からの正式回答は神奈川が横浜を含む広域の名前だというものでした。(『オールコックの江戸』中公文庫)

明治新政府はこの点については旧幕府の既定路線をそのまま踏襲しているように思えます。前政権による正式回答がある以上は踏襲せざるを得なかったと言うべきかも知れません。でも港の名前を県名にするといった方針は当時の幕府側にはなかった発想のはずです。

兵庫御役所は当時の神戸村ではなく兵庫に置かれ、神戸村も管轄範囲という状態です。場所と名前を変えながらもその位置付けは一貫しています。神奈川奉行所が明治政府の管轄になったときに横浜裁判所と呼ばれ、後に神奈川裁判所となり、やがて神奈川府→神奈川県へと変遷していったのとは微妙に違いがあります。

紆余曲折は省略しますが結果として全国の政令指定都市の行政区でも2箇所だけという県名と同じ区が誕生します。神奈川県横浜市神奈川区と兵庫県神戸市兵庫区です。日頃馴染んでいると何の疑問も感じない住居表示ですが、これも幕末から明治にかけての混乱を物語る生き証人とも言えるかと思います。


(本文とは関係ありません。10月の3連休、摩耶山の掬星台を走り回るイノシシの子供。親のほうですが最近人の持っている食べ物を取ろうするのがいてローカルニュースでも注意を呼びかけています。)

最初の地図から約半世紀後の1935年(昭和10年)の地図を見ると様相は一変しています。田畑は姿を消し、隙間なく建造物がひしめく街へと変貌を遂げるのです。現在の長田区、須磨区の南部は明治19年の地図を見ると溜池と田畑が広がる田園地帯だったようですが、溜池は地名にその名を残すばかりとなってほぼ姿を消し、およそ平地と呼ばれる土地には建物が作られ現在の市街地図を見た目大きな違いはない状態になっています。

解説には鉄道網の変遷も図一枚ですが掲載されていて、えっ、そんなのあったの?と初めて知ったものもありました。廃線を尋ね歩くのが秘かなブームになっているそうなので、その方面では特別知られてないものでもないようでWikipediaにも項目がありました。国鉄有馬線というのが三田~有馬間を戦前運行されていたそうです。昭和18年に不要不急路線ということで休止されますが、廃止の手続きはされずに休止のまま現在に至っているそうでWikipediaの有馬線の項には「ありません、と揶揄される」とあってちょっと笑いました。

平成15年以降他の都市の新刊が出てないのですが、大きな変化があった都市をこれで網羅したとも思えません。不要不急の事業と判断されたのでは、という可能性もありますが、この1世紀あまりの間の人の営みを物語る地図は、何をしてきたかを教えてくれます。地図マニアでなくてなかなか楽しめるとは思います。

日本地図センター(都市変遷図)
国土地理院の地図用語



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オットのZoomyです。

ようやくこの季節らしいかなと思える日もありますが、まだまだ暑さも実感できる週末でした。今日の最初の写真はこちら。春先に花を咲かせるカキドオシという草です。


前回の記事(六甲山 - Part 64)の写真と共通点を感じた方もおられるかと思います。意識して撮った写真ではないのですが、ちょっとだけ構図が似てたので先頭に持って来ました。カキドオシは垣根を通りぬけて増えることから名前がつけられたようですが、六甲山の中ではどこにでもというほど目立つ訳ではありません。特に珍しい草ではなさそうなので、名前を載せました。私が歩いた登山道の足元を見た感触ですが、次の写真のミズヒキのほうが目立ちます。

名前を調べるには『葉による野生植物の検索図鑑』という本を使いました。以前にもちらっと頂いた図鑑があることを書きましたが、現在新品は入手できないため名前も著者もかいていませんでした。Amazonの中古価格を見てみると、どれも当時の販売価格より高くついてますね。この図鑑のすばらしいところは、私のような素人でも葉から少なくとも可能性のある科(当然複数の場合もあり)へ、かなり短時間に絞り込めるところにあります。しかも草本と木本両方です。

余談ですが、どうしてもわからないときに片意地になって図鑑の全種類の写真をチェックするという不毛なことをすることもなくなりました。植物の特徴を把握しないまま写真を見ることになるのでこの試みは大抵失敗に終わります。たまに以前わからなかった別の植物の名前を見つけることはありますけど。

草本の花の特徴から名前を割り出す検索図鑑は持っているのですが、当然花が咲いてないと活用は難しいです。前回の記事のタデ科の植物と今回と、葉からその名前を調べることが出来たのもこの図鑑のおかげでした。ちょっとそれが嬉しくてこの写真を先頭に持ってきたのですが。

季節の写真としては、六甲山でなくとも神戸市内の里山やその近辺では珍しくはないミズヒキ(かその仲間としておきます)です。


既に六甲山でも2,3週間前から咲き始めてこの週末あたりがピークかなあ、という感触です。次の週末もきっと残ってはいると思います。真横から撮ると花はぽつぽつと離れて茎についているで、なるべくぎっしり見えるように、画面奥から手前に向かってたわんでいるアングルを狙いました。運良く葉も含めて写真の中に納まってましたし、横にあった岩が明るかったため背景が影になってくれました。そういうことをちゃんと考えながら撮ればいいのですが、あまり考えないことが多いので毎度ながら粗製乱造ばかり繰り返しています。

そして、秋とくれば紅葉と食欲ですが、紅葉より早い時期に見られるのが、キノコです。


とは言ったものの、登山道沿いでキノコが目立つのはどちらかといえば梅雨から初夏にかけてです。またしても、ですが写真のキノコの名前はわかりませんでした。傘の様子はカラカサタケというキノコに似ていますが、柄の色が異なりました。兵庫のキノコという本にはオオシロカラカサタケというのがあり少し似ているのですが、もしそれだとしたら猛毒なので、食欲を発揮するのも気が早いようです。

ただ、そのキノコは成熟すると裏のヒダが色がつくそうですが、このキノコは撮影時点でヒダの色は白でした。もうそうなったらあっさりと降参です。同定は諦めました。このキノコ完全に傘が開いていませんが、それでも直径11cm程度、高さは25cmほどありました。どうやら傘はもう少し開くようです。右下に少し小さめながら開いた傘の一部が写っています。

最後のおまけですが、ちょうど1ヶ月前の写真です。


フサフジウツギの花にホバリングしながら吸蜜してました。まさかハチドリではと思ったのですが、ややサイズが小さいのと、特に下の写真を見ると鳥類にはあるまじき触覚が写っています。これで蛾の仲間ということが決定的になりました。名前はどうやらホシホウジャクという蛾のようです。類似種との比較はしていませんが、これがこのタイプの中では一番よく見かけるものだそうです。

1ヶ月前はアブの羽音がにぎやかでより攻撃的だったのですが、この蛾はそれよりも低音の羽音をしていました。今週、休憩中に栄養補給のゼリー(グレープフルーツ風味)を摂っていたら耳元でまたこの羽音を聞きました。姿は確認できませんでしたが匂いに反応して来たのかも知れません。特別虫嫌いではありませんが、3,4cmのサイズになってくるとあまり近寄られるのはちょっと...なのですが。

蛾はともかくとして、山歩きにはいい季節が近づいてきました。ただ、まだ多めの水分を持つといった暑さ対策はしておいたほうが良さそうです。これから登ろうかという方にとってはそろそろ準備の体力作りの季節となってきたようです。

植物雑学事典カキドオシ ミズヒキ
みんなで作る日本産蛾類図鑑ホシホウジャク

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