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【和製ハンドツールのひとつの到達点】実にすばらしい。

2015年10月26日 22時39分47秒 | キワモノすぎるレビューたち
KTC (京都機械工具) ネプロス ラチェットハンドル NBR390
クリエーター情報なし
京都機械工具


長所……バックラッシュがほとんど無く、送りが細かい
短所……動作トルクが重い
    一度不良品を掴んだ

 KTC Nepros NBR390。
 数ある日本のハンドツールメーカーの雄であるKTCが、満を持して送り出した最高峰のラチェットハンドルです。
 ギアの歯数が90T、国産の小判型ヘッドのラチェットハンドルではもっとも細かい部類に属し、駆動に必要な空転角度が4度と非常に小さいです。


 いわゆるラチェットハンドルは一般的な小判型のほか、海外メーカーによく見られる丸型、丸型のラチェット機能を内蔵した小型のハンドルタイプ、NKCしか作っていない無段階式のコンパクトヘッドなど、いくつかの種類があります。
 小判型は一般的に内部構造上空転トルクが軽く、代わりに送り角が大きい(小判型の一般的な歯数は20~30T)、丸型は空転トルクがやや重く、回転方向の切り替えにややコツが必要、代わりに送り角が小さい(一般的な歯数は72T)などといった差異があります。

 ちなみに今まで、わたしの愛用品は新潟県三条のNKCのプッシュ式無段階ラチェットハンドルでした。
 飾り気は無いですが無段階式ラチェットでそもそも送り角が存在せず、ねじ山に空転に必要な抵抗がかかってさえいればどんなに小さな空転角度でも締め込める、ヘッド部が非常に小さいなどの特徴を持つ隠れた逸品です。
 ある意味日本のハンドツールの最高峰、むしろ人類の英知の結晶であるともいえましょう(持ち上げ過ぎ)。
 ちなみにフォルクスワーゲンの指定工具としても使われていたメーカーです。あと、和製ハンドツールのもうひとつの到達点がこのギアレスラチェットだと、ひとりで勝手に思っております。

 ぶっちゃけた話かつて山下工業研究所が発刊に協力していた「ハンドツールおもしろブック」を見て購入して以来その使い心地に病みつきになっていたのですが、最新のNBR390の発売を見て興味がわいたため、試しに購入してみました。

 最近のトレンドではKTCは空転トルクがやや重く、Ko-kenは歯数が少なく送り角が大きい代わりに空転トルクが軽いなどの特徴がありました。

 これらの特徴の差異をぶっちぎったのがNBR390です。

 NBR390は小判型でありながら内部にサメの歯の様な非常に細かなラチェット機構を内蔵し、90T送り角4度を実現しました。
 これはハンドツールとしては無段階ラチェットに次ぐ製品なのですが。

 が。

 ぶっちゃけた話、よほど狭い場所でのボルトの締緩作業でない限り、ギヤの歯数による送り角の違いが作業性に影響する状況はほとんどあり得ません。
 例として、ギア数20Tと30Tのラチェットハンドルを使って比較してみましょう。
 20ギヤは、360÷30で1ギヤ当たり18度。
 つまり、ひとつのギヤの山を越えるのには18度回すことになります。
 一方、30ギヤは、360度÷30で1ギヤ当たり12度です。
 すなわち、両者の送り角には6度程度の違いが出てきます。
 更にNBR390は360度÷90で、1ギヤ当たり4度です。これは非常に細かな送り角なのですが、これが直接作業性に影響するかと言われれば、答えは実は否です。
 というのはラチェットの全長を175ミリとして考えた場合、20Tと30Tのラチェットレンチの振り幅を比較したとき、両者の差はいいところ8ミリ程度です。ハンドルエンドの振り幅の差に8ミリの差が生じたとして、それがどれほど作業性に影響するかといわれると、まず無いと言わざるをえません。
 そう考えると、ラチェットハンドルの性能を決定づけるのは送り角よりも空転トルクの軽さや重量のバランスといったトータルの性能であるといえます。

 空転トルクが非常に軽い製品であれば、かかりの浅いボルトの締め込みにも使えるので、ひとつの価値はあります。特に手回しの困難な場所のボルトの場合は、特に。
 しかし、ぶっちゃけこの製品は空転トルクが非常に重いです。
 このため、折角の送り角の細かさが活きていません。また、地味に重いのもポイント低いです。
 私の個体だけかもしれませんが、回転開始時に妙な引っ掛かりがあるのも気になります。この点に関しては販売店に報告したところ、現品提出の上で交換になりました。
 NBR390系列はすべての商品ラインナップがプッシュボタンつきで、ソケットの着脱は楽です。個人的には不用意にはずれる可能性があるのでプッシュボタンつきの製品をあまり評価していないのですが、この製品はプッシュボタンがラチェットヘッド本体と面イチになっており、またロッキングボールが解除されるまでに必要な押し込み量が結構深いので簡単に解除されることはありません。
 また。バックラッシュがほとんど無いのが特徴で、KTCの極めて高い工作精度を如実に表しているともいえます。
 
 結論としては、玄人向けの工具であって経験の浅いライトユーザーが手を出す価値はありません。また、仕事用としてもどうかと思います(ほとんどの状況でこの高性能ラチェットが役に立たないため) 。工場一件に一本あれば十分なレベルです。
 ただし極端に振り幅が取りづらい箇所では、間違い無く価値があります。
 MPVのタイロッドの通る穴から手を入れて、スターターモーターの取りつけボルトを締め込む際には大活躍でした。仕事用に一本ほしいところですが、KTCは値崩れしにくいのでなかなか手が出ません。
 むしろコンパクトラチェットの分野に投入していた方が、製品としては価値があったのではないかと思います。
 なお、化粧箱入りです。潰れてたけど。

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