「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

逆戻り

2006年11月04日 | 塵界茫々
 順調に回復への道を辿っていると安心していましたが、一昨日から発熱しました。
 38度台の熱が下がらず、2日の2時に予定されていた、退院に備えての、栄養士による栄養と食事に関しての指導もキャンセルになりました。
急遽、胸部、腹部のレントゲン、CT検査が行われ、また絶飲食に逆戻りです。先日の検査では見られなかった縫合部に遺漏が出たようです。
 やはり、回復が早いとはいえ、年齢的に食事の進度が、特に副食の摂取に無理があったのではないかと思います。もう、平常の食事に近いものが出ていましたから。
 今日も、座薬を使えば下がりはしますが、熱は続いています。

 患者が何も言わない分、私のナースセンター通いが増えてしまいます。若い当直の医師達が頻繁に覘いてはくれますが、3連休とあって、どうしても手薄のようです。
 術前あれほど手間をかけて精密な検査が行われたのですから、せめて半分くらいの慎重な術後の対応があってもよかったかと思います。ともあれ、悪性の病変は取り除かれているのですから、じっくり構えて、回復へと取り組むつもりです。

 絶好の行楽日和とあって、どの部屋も見舞い客の姿はあまりなく、静かな土曜日でした。

 今年の”唐津くんち”も終わりました。秋空のもと、「えんや、えんや」の掛け声と、笛、鉦の、お囃子の優雅な独特の音色はいつまでも耳に残っています。
 元気なら、澄み切った秋空のもと、何処の秋祭りに出かけるかで、”長崎くんち”、”いや、唐津の曳き込み”が、と賑やかなのですが、せめて美しく撮影された画像で楽しむこととします。


    
唐津くんち宵山の写真はフォトギャラリー感動写真集よりお借りしました。

奈良からの土産

2006年11月01日 | 絵とやきもの
  
 毎日通う病院への道の途中、川沿いに続く銀杏並木が日を追って色づいてきます。病人の回復につれて、季節が進んでいるのを感じるゆとりも出てきました。

 先週末には、奈良に住む妹が見舞いに来てくれました。
 私への土産は、欲しがっていた「美し 乾山 四季彩菜」でした。(うまし うるはしとルビがふってあります)

 宇治の伊藤久右衛門の愛らしいお菓子と、式部卿の”源氏歌あわせ”が添えられていました。

 MIHOミュージアムに秋の特別展「青山二郎の眼」を観に出かけた折に、私のために求めてきてくれた心づくしです。
 この本は書店の店頭には出ていなくて、MIHO MUSEUMでしか入手できません。2005年のグルマン・ワールド・クックブック・アワード写真部門で、最優秀賞を獲得しました。世界一の折り紙付きの本です。

 傾倒してやまない尾形乾山のやきものに、料理を盛り付けたものを主体に、写真と文章が絶妙のバランスで配置されています。MIHOのコレクションの乾山焼きは、どれも見事なのですが、ひとつだけと言われれば、魯山人の木の葉皿の原点、乃至は本歌と思われる皿に、おにぎりが盛られているのに強く惹かれました。日本料理は目で食べる要素を持ち、よく言われる「うつわ半分」という文化を維持してきました。
 改めて料理を盛る器としてみると、乾山のものは、現代の感覚では、やや、描きすぎで、絵が邪魔になっているとも見えるものもありますが、料理を食べ終わった後まで、存在感を示して、その器は余韻を味わうに役割を果たしたことでしょう。

 当分は、この本で、贅沢を目で食し、文字通りの眼福至福の垂涎で眺めることにします。

  

表紙は、色絵竜田川図向付に盛られた真鯛

よみがえる乾山 雪月花さんのブログに詳細な考察があります。ご一読をお勧めします。