「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

古都の王朝絵巻二題

2008年05月19日 | みやびの世界
 折々の京都の風物詩を映像でお届けくださるOさんが、古都の優雅なお祭りの映像を送ってくださいました。
 一つは先日15日に行われた、京都三大祭の中で、もっとも優雅な賀茂祭の映像です。
 私はまだこの祭りにご縁がありません。
 応仁の乱や、東京遷都などで中断があったとはいえ、平安朝以来続く伝統の祭りです。王朝装束に身を包んだ500人の行列が、京都御所から下鴨神社を経て上加茂神社へ8キロの道のりに繰り広げる王朝絵巻は、今日では、古趣に富む祭りの筆頭ではないでしょうか。

 源氏物語、葵の巻に描かれる車争いはあまりに有名で、能にも登場します。枕草子、徒然草でも「祭り」として取り上げられています。単に「祭り」という時はこの賀茂祭でした。応仁の乱で200年の中断のあと、元禄期に復活した時から、賀茂祭を葵祭と呼ぶようになったようです。枕草子などで記されるように、御簾、車、冠などをはじめ、すべての家具調度などに葵の葉を飾ったところからですが、同じフタバアオイを紋所とする江戸幕府の後援もあったからでしょう。
 一人占めで見ているのは勿体ないので掲示します。前にも記事にしました。


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<齋院代 祭りのヒロイン>


 あと一つは三船祭(ミフネマツリ)の模様です。車折神社(クルマザキ)例祭の延長神事として行われているそうです。
 このような祭りが今も行われているとは。さすが1000年の都です。
 大鏡の中に、嵐山の麓、大堰川に三艘の舟、(和歌、漢詩、管弦)を浮かべ、その道に堪能の人を、それぞれの舟に乗せて遊んだ記事は“三船の遊び”として古典の教科書にも登場していました。その折、道長が藤原公任に「どの舟にお乗りになるか」と尋ね、公任は和歌の舟を選ぶのですが、要するに「三舟の才」で、どの道にも卓抜であったということでしょう。「小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき」がその折賞賛された公任の歌です。
 同じ大井川、渡月橋のほとりで昨日催された「三船祭」の映像です。今、名称は「三船祭」でも、三舟どころか20艘もの船が出て、流扇船や、長唄、常磐津、今様、尺八とそれぞれの舟で芸能の奉納がなされるのだそうです。
 画像4枚でお楽しみください。

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<奉納される舞樂>

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2 コメント

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船楽 ()
2008-05-22 08:06:39
 みやびな世界へお招き頂きましてありがとうございます。 賀茂の齋院… 式子内親王の御歌も思い出されます。 葵の緑がまぶしいこと。 
 ちょうど物語のおさらい中で。 明石の君、大堰の邸… 龍頭鷁首の船をお庭の池に浮かべられて… と。 貴重な写真を拝見して興味も湧きます。すばらしい音色が響きました。
 うれしいご教示をありがとうございました。感謝します。  
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龍頭鷁首の船 (boa !)
2008-05-22 13:33:42
龍頭鷁首の船リュトウゲキシュなどという奇想天外な作り物を船に取り付け,楽を奏しての舟遊び。
自分の屋敷の池にこのような船を浮かべる貴族の暮らしは想像もつきませんが、いにしえの雅な催しを保持しようとする努力はありがたいものですね。
MAILによると、外国人観光客が格別目についた由が記されていました。
挿絵で見ることはあっても、写真の迫力には及びもつかないので私も感嘆頻りでした。
少しお役に立てたとしたら、Oさんも大喜びでしょう。
日曜日から信楽詣でです。しばらく留守にします。またご報告をいたします。
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