「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

「乱れ」と「変化」

2008年07月20日 | ああ!日本語
 昨日(19日)の朝日新聞の、土曜日に付いてくる”be”紙に、「日本語の乱れを感じますか?」というアンケートの集計が出ていました。(回答者数:4548人)

 「はい」と回答した人が96%という圧倒的な数です。ただ、このアンケートの回答者は任意の抽出ではなく、朝日新聞に自発的に登録しているモニターによるものですから、もともと言語に関して意識している人が多いと思われますので、任意の抽出アンケートだと数値は違ってくることが考えられます。それにしても、乱れを感じないという人が僅か4%という極端は、まだ日本語のために救いがあると嬉しく思ったことです。

 この少数派の人を代表する意見が、「『いまどきの若者』によって文化が変化するから、変化は止められません。」という、乱れではなく変化とする意見が大半を占めています。(61%)
 なかには、「意味がわかればよい」という極端や、「年寄りが受け入れないだけ」という耳の痛い「いいえ」の人もいます。

 さらに、「はい」と答えた人の、日本語を乱す張本人は?の回答の51%がテレビ、次が若者(28%)です。あとは極端に少なくなって一桁ずつです。
乱れを感じるサンプル表現10個をトップから順に挙げると
  1、千円ちょうどからお預かりします(2994人)
  2、飲めれる(2884人)
  3、わたし的にはオッケーです(2842人)
  4、全然大丈夫です(2692人)
  5、コーヒーで良かったでしょうか(2467人)
  6、見れる(2068人)
  7、雨が降るっぽいね(2048人)
  8、終わらさせていただきます(1746人)
  9、○○会社さま(1480人)
 10、超かっこいい(1341人)
以上の順になっています。
 気が付いてみると、この数が示すように、自分で使わないまでも、10のような表現に抵抗感は余りないようになっています。
 謙譲語が尊敬語に流用される現象や、「やる」と「あげる」、「こだわる」の、本来は否定的な意味が、逆転する使い方などにも、以前のようには気にならなくなってきています。
 初めて目にする「さ入れ言葉」「れ足す言葉」という乱れ言葉を表す分類があるのも知りました。ひところ、(6)のような「ら抜き言葉」がよく取り上げられていましたが、今度は、逆に入れたり(8)、足したり(2)する表現が出てきているのですね。1,5はマニュアルでしょうから修正は簡単なはずです。
 若い人たちが仲間うちで使う言葉の、その垣根を壊しているのがマスコミではないかといった趣旨の意見もありました。

 「美しいと感じる日本語は?」には、「ありがとうございます」「かしこまりました」などの挨拶や謙譲語を挙げる人が多く、季節や、自然、色合いを表す日本語が挙げられていたようです。
 敬語を否定するのではなく、逆に過剰な敬意表現を試みようとする若い人たちがいるということは、敬語は美しい言葉と思うからでしょう。してみると『いまどきの若者』も捨てたものではありません。
 大人の責任において正しい表現を示す場が必要となります。
 テレビをはじめとするマスコミの努力も期待されます。方言で会話する人たちも、共通語が理解できない人はまずいないのは、功罪の功のほうの力ですから、出来ないはずはありません。
 そして、大事なことは、形だけどんなに美しく整えられていても相手の気持ちに対する思いやりに欠けた言葉遣いは、敬語以前の問題ということでしょう。
 日本語のような細かな敬語表現がない外国語では、相手の気持ちを刺激するようなことは口にしないという嗜みが発達しているようでした。プライバシーに関することに無神経に踏み込んでくることはしないようです。
 敬意のこころが欠けていると、言葉は時に凶器のような役割を果たしてしまいます。

 あなたの好きな次代に伝えたい日本語はどんな言葉でしょう。「品格」ある美しい日本語は大事にいたわって存続させていきたいものです。