「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

泰山石経と浄土経美術

2007年05月25日 | みやびの世界
 30代のころ、泰山金剛経の、伸びやかで丸みを持った線質でいて、内に力を感じさせる文字に憧れて、臨書本で練習をしていたことがあります。例のごとくものにならないままで終ってしまいましたが。
 今回は、理解がいまひとつ難しくて、敬遠していた浄土美術とともに、巨大な泰山石経の拓本が展示されている九国博特別展を、「みまき会」の企画で訪ねました。



 国宝15点、重要文化財も50点と、仏教美術の名宝が一堂に展示されると、さすがに見応えがあり、仏法への強い信仰のもたらす力に、ある種の畏れさえ感じました。
 末法の只中に生きる今、露天の岩肌に、1文字50センチを超す経文を最大30メートルもある長さで刻み込んだ執念は、仏の教えを後世に遺すこと以上の圧倒する迫力で迫ります。わが国での、書写した経文を銅の経筒の中に納めて、土中に埋めるやわらかな作業と思いあわせるとき、その思いはひとしおです。

期待していた“餓鬼草紙”よりも、国宝の“辟邪絵 栴檀乾闥婆”センダンカンダツバ(後期展示)の、疫鬼を退ける善神とされる姿が楽しめました。後白河法皇のコレクションの一つと推測されているのだそうです。
パンフレットに部分が採られている来迎図も後期の展示で拝観することができました。

そのほか、求菩提山や宝満山出土の経塚の遺宝は地元とあって、50点を超す多数多彩で、小さな銅板法華経33枚と・収納す銅筥は珍しいものでした。(国宝求菩提出土)
紺紙に金や銀字、また金銀交互といった装飾経も多数出ていましたが、平家納経がなかったのは残念でした。

入館前には、いずれ近いうちにご縁があるのだから、しっかり見ておこうなどと軽口をたたいていた従兄弟たちも、みんな口数も少なく、一日を堪能して帰途につきました。

 右上の”うそ”は、妹が買った太宰府天満宮のおみくじ。下の赤い紐を引くと中から出てきます。(H、5cm)

<未来への贈りもの>
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展覧会の画像はパンフレット、絵葉書からお借りしました。