ねえ、
私とあなたは、
お付き合いしていると言ってもいいの?
急に、そんな形式めいたことを確認したくなった。
寂しいのか?
会ったこともないのに。
彼に聞いたら、なんて答えるだろう。
聞かない方がいい。
真っ暗で、街灯もない田んぼの畦道を
犬を連れて歩いていた。
でも、怖くないのは、
彼も一緒にいてくれたから。
お月様が綺麗で、写真を撮って送った。
そしたら、彼も、夕焼けの空を送り返してくれた。
この空は、仕事中に撮った空。
いったい、誰のために撮ったの?
もし、少しでも、私に見せようと思って撮ってくれたのなら、
その行為が嬉しい。
そう。
私達は、相手のことを思う。
それ以外、できることはないのだから。
線と線が、この先、
クロスする時が来るのか?
本人たちも、分からないんだから。
私は、今が旬なの。
抱き合ったら、わかってもらえる。
お願い。
旬の時期を逃さないで。
旬?
旬じゃなくて、熟してるんだよね。
腐る前の、
1番美味しい時だ。
上手に保管しとかないと。
そう。
保管するのは、私。
それは、私がすること。
毎日、お手入れをして、
彼の要求に応えられるような
感覚を磨く。
決して、老けない。
女であることを忘れずに、
常に、品を持ち続ける。
私は、腐らない。
1番美味しい身を
彼に食べてもらうために。
仕事が終わった彼は、奥さんが待つ家に帰っていった。
もう、街灯のある車通りに出た私は、
随分遠くまで歩いてきたなあと、我にかえり、
帰路に着いた。