自己紹介を兼ねた足跡帳です。
よかったらコメント残していってくださいね。
中学時代、転校したおりにはずみで入ってしまった文芸部。今では普通に教科書に入っている吉野弘の「夕焼け」を鑑賞していました。顧問の先生は結婚した後に娘に「奈々子」「万奈」とつけるほど吉野弘に傾倒していて、中学生だった私も強く影響を受けました。
そして吉野弘を通じて、嵯峨信之、茨木のり子、黒田三郎、岸田衿子なども読むようになり、かれこれ数十年。自分の好きな詩を集めたくなってこんなブログを始めました。
なお、「吟遊詩人の唄」は甲斐バンドの曲で「マリウス」は栗本薫によるヒロイックファンタジー「グインサーガ」の登場人物の一人である吟遊詩人です。
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中学時代、転校したおりにはずみで入ってしまった文芸部。今では普通に教科書に入っている吉野弘の「夕焼け」を鑑賞していました。顧問の先生は結婚した後に娘に「奈々子」「万奈」とつけるほど吉野弘に傾倒していて、中学生だった私も強く影響を受けました。
そして吉野弘を通じて、嵯峨信之、茨木のり子、黒田三郎、岸田衿子なども読むようになり、かれこれ数十年。自分の好きな詩を集めたくなってこんなブログを始めました。
なお、「吟遊詩人の唄」は甲斐バンドの曲で「マリウス」は栗本薫によるヒロイックファンタジー「グインサーガ」の登場人物の一人である吟遊詩人です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/3c/4f2dd68b0de849d521cc7f7101cea020.jpg)
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは 明石の鯛が食べたいと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは 幾種類ものジャムが
いつも食卓にあるようにと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは 朝日の射す明るい
台所がほしいと
すりきれた靴は あっさりと捨て
キュッと鳴る新しい靴の感触を
もっとしばし味わいたいと
秋 旅に出たひとがあれば
ウィンクで 送ってやればいいのだ
なぜだろう
萎縮することが生活なのだと
思い込んでしまった村と町
家々のひさしは 上目づかいのまぶた
おーい 小さな時計屋さん
猫背を伸ばし あなたは叫んでいいのだ
今年もついに 土用の鰻と会わなかったと
おーい 小さな釣り道具屋さん
あなたは叫んでいいのだ
俺はまだ 伊勢の海も見ていないと
女が欲しければ奪うのもいいのだ
男が欲しければ奪うのもいいのだ
ああ わたしたちが
もっともっと貪欲にならないかぎり
なにごとも始まりはしないのだ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/97/cc5d3c3779acb81d024d6c17203668ad.jpg)
ぼくにはゆるされないことだった
かりそめの愛でしばしの時をみたすことは
それは椅子を少しそのひとに近づけるだけでいいのに
ほんとうにそんな他愛もないことなのに
二人が越えてきたところにゆるやかな残雪の峰々があった
そこから山かげのしずかな水車小屋の横へ下りてきた
小屋よりも大きな水車が山桜の枝をはじきはじき
時のなかにひそかに何か充実させていた
ぼくたちは大きく廻る水車をいつまでもあきずに見あげた
いわば一つの不安が整然とめぐり実るのを
落ちこんだ自らのなかからまた頂きにのぼりつめるのを
あのひとは爽やかな重さで腰かけている
ぼくは聞くともなく遠い雲雀のさえずりに耳をかたむけている
いつのまにか旅の終りはまた新しい旅の始めだと考えはじめている