吟遊詩人の唄

嵯峨信之を中心に好きな詩を気ままに綴ります。

声/嵯峨信之

2008-11-25 16:34:49 | 嵯峨信之


大凪の海で出会ったのだから
ふたりは
どこの海よりも遠い

櫂は
心の中にしまっておいても
夜中になるとひとりでに水面をぴちゃぴちゃたたいている

ふたりは話し合うのに
はじめて自分の声をつかった
生まれたときの真裸の声を

やがてふたりは港にはいるのだろう
あれほどの深い時をありふれた幸福にかえるために
ふたたびめぐり合うことのない自分を海の上に残して


最新の画像もっと見る

post a comment