僕はまるでちがって/黒田三郎 2008-11-25 15:42:03 | 黒田三郎 僕はまるでちがってしまったのだ なるほど僕は昨日と同じネクタイをして 昨日と同じように貧乏で 昨日と同じように何にも取柄がない それでも僕はまるでちがってしまったのだ なるほど僕は昨日と同じ服を着て 昨日と同じように飲んだくれで 昨日と同じように不器用にこの世に生きている それでも僕はまるでちがってしまったのだ ああ 薄笑いやニヤニヤ笑い 口を歪めた笑いや馬鹿笑いのなかで 僕はじっと眼をつぶる すると 僕のなかを明日の方へとぶ 白い美しい蝶がいるのだ
ある日ある時/黒田三郎 2008-11-24 09:57:03 | 黒田三郎 秋の空が青く美しいという ただそれだけで 何かしらいいことがありそうな気のする そんなときはないか 空高く噴き上げては むなしく地に落ちる噴水の水も わびしく梢(こずえ)をはなれる一枚の落葉さえ 何かしら喜びに踊っているように見える そんなときが
出発/黒田三郎 2008-11-21 13:59:35 | 黒田三郎 どこか遠くの方から見ていたい 感動している自分を 感動して我を忘れてとんでゆく自分を どこか遠くの方から見ていたい 息を切らしてしまってはいけない よそ見してはいけない 心ひそかにそう念じながら どこか遠くの方からみていたい あおいじつにあおい その遠くの空の彼方へ 今はそれだけが私の仕事だ 荒々しく私は私を投げつける 紋白蝶のようにかるがるといってしまうようにと 眼をとじながら私は私を投げつける 足元に落ちて高雅な陶器のように砕けないようにと