吟遊詩人の唄

嵯峨信之を中心に好きな詩を気ままに綴ります。

生きるということ/嵯峨信之

2009-02-09 13:14:07 | 嵯峨信之
すべてが一回かぎりのものだ
遠くの野づら 空を掠める一羽の鳥 横切つた水路

さらにもう一度と思っても
再び同じことはくりかえさない

日は照っている
山なみも青くゆるやかにつづいている
小道を
バッタが跳ねた
木から葉が一枚舞い落ちる

ぼくは素直に生きようと思う
空気の教え 水の諭し 光の導きによって
木の葉 草の葉のそよぎとともに生きよう

ああ 人間は自己の影を越えて先きへ進むことはできない
日々 欣びは遠く 憂いは近い

でも
ぼくはたしかにいま生命の近くにいる

GAZA