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村上春樹と河合隼雄

2021-07-29 19:06:20 | 日記



『村上春樹、河合隼雄に会いにゆく』

村上春樹の小説がこんなに人気あるのは、体を日々鍛えて、文体が日々かわっているからではないか、と思う。
思想めいたものを持っていないが、文章が非常に読みやすい。

 1 だいたい、日本の人生相談の質問は、本当に来ているのかどうか、あやしい。あんまり来ない場合は記者がつくったりしている。人生相談を読むの好きな人が多いゆえにと。


 2 日本人の人生相談の回答は、ウン、ウン、とうなずいてやるか、叱ってやるかどちらか。これはこうだからこうしなさい、というロジカルを相談者が求めていないと。
ロジカルな回答を出すと、人情がわからない、わからないから簡単なことを言えるんだ、などと。



 3 村上春樹は、小説家になった時、先行する小説家の真似をしたいものがなかった。
それで、これまでの作家の逆のことをした。まず、朝早く起きて、夜早く寝る。運動をして体力をつける。文壇に関わらない。注文を受けて小説を書かないと。


 4 翻訳をしていると、自分が透明人間になって、文章という回路を通って、他人(それを書いた人)の心の中や、頭の中へ入っていくみたいな気持ちに。


 5 愛し合う二人が結婚したら幸福になれる、というそんな馬鹿な話はない。そんなことぉ思って結婚するから憂鬱になる。なんのために結婚したかといったら、苦しむために、井戸掘りをするためなんだと。



 6 アメリカ人の夫婦は、一緒にいる間はすごく仲がよくベタベタしている。どこかへ行くにも手を繋いで行くが、別れる時はパッと別れる。
 
 日本では好きじゃないけど、一緒にいるとか、子供がいるからとか、いやいや一緒にいる人が多いと。

 しかし、アメリカ人の場合、自分達の関係がどこかで本物でないという意識がある。だから、いつも意識的にベタベタしている。意識のところでいつも、愛し合っていますよ、と確かめないと、もう不安になる。確かめそこなったら、パッと別れると。


 7 小説を書いていると、生理的なものに興味がわいてきて、体を動かすようになった。すると、体が変わっていく。脈拍も、筋肉も、体形も、同時に小説観や文体がどんどん変わる。身体の変化と精神的なものの変化は呼応していると。


 
 8 昔の文士は、言葉という精神的な仕事をしているから、体を軽蔑した。暴飲するのは、自分の体を軽蔑しているから。そこから生まれる文体と、村上春樹の体を鍛えてつくる文体とは、変わってくると。



 9 現代の風潮は、できるだけ早く、多い情報のの獲得、大量生産を目指している。これが、人間の魂を傷つける。癒しを求める人に、一般風潮の逆のことをする。

 小説は、対応性の遅さ、情報量の少なさ、手工業的なしんどさ。それらが、心理療法のメリットになっていると。



 10 一人ひとりの魂を深く傷つける傾向が、故事主義を唱える欧米から生じたのはアイロニーだと。
個人を最も大切と考える生き方が、個人を最も深く傷つけていると。



 11  小説家は相手と対面する必要がないが、村上春樹の所に、小説を読んで、自分の問題が非常に明らかになったと、手紙がくる。どうして、自分の事を書いたのか、という人が非常に多いと。



 12 麻原のような人でも治療できるのか、と村上春樹が聞くと、河合は、器の勝負で、麻原より河合が大きい器を持っていれば、彼に会えるが、彼の器が大きかったらもうだめだと。人間と人間の本当の勝負なので、六歳の子でも、河合より器が大きければ、負けるんだと。



 13 村上春樹も谷川俊太郎も、夢を見ないと。
別の形で出しているので。



 14 痛みのない正しさは意味がないと。例えば、フランスの核実験にみんな反対する。言っていることは正しいが、誰も痛みを引き受けない。
文学者の反核宣言もあるが、ムーブメントは正しいが、世界の仕組みに対して、最終的な痛みを負っていないという面では、正しくないと。


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