なんといったらいいんでしょうか。
ちょっと前回のカリオンショックが尾を引いております。
なんか、これ以上の驚きは今後ないような気がして……。
一瞬、呆けたというか、気の抜けた状況で、視聴に身が入りません。
それくらいびっくりしたんだよ。
でもここからが本番よね?!
《あらすじ》
解放されたカリオンが家に戻ると、ムヒュルが待っていた。
正倫岩へ行くので、酒膳の用意をしてついてこいと言う。
おそるおそる行ってみると、岩の上には王その人が立っていた。
王は、カリオンを助けられず傍観していたことを詫び、カリオンに杯を賜った。
「ここは、チョン・ドジュンが成均館にいたころ、
儒生と学問を論じた場所だ。彼らは今でも密かにここへ集まり、あの者をしのぶそうだ」
酒を注ぐカリオンの手が思わず止まる。
そう、その儒生たちの集まりに、カリオンは肉を持って給仕にいったのだ。
そこで三峯先生の教えを皆に説き、仲間を集めてきた。
そうやって密本を再生させたのだ。24年もの間。
王は杯を捧げて、三度にわけて酒をまいた。
カリオンは、自分はただ酒膳を運んだだけだと言うのだが、王はその言葉をさえぎった。
「ここに呼んだのは、三峯ならあの密命を理解すると思うからだ。
あのものの書物を何度も読み、あの命令を下すにいたった。
皆は朱子学に反すると言うだろうが、三峯だけは賛同してくれるだろう」
(いったいあの命令が三峯先生と何の関係が?)
王の下した密命は、「解剖の準備をせよ」というものだった。
しかも、解剖するのは獣ではない……。
チェユンは、ソイから感謝の言葉を受け取った。
「もう、おやめください。王の大義に人生を懸けるのは。
眠るために、解放されるために、すべての重荷を下ろすのです。
そうしなければ、つらすぎる」
彼の言葉に、不満そうなソイ。
(兼司僕だって、酸棗仁とエゴノキを飲んでいたくせに)
表情が顔に出たのか、チェユンは笑う。
「人のことが言えるのか、とお思いでしょうね。
そのとおり。ゆえにわたしは、やりきれない想いでずるずると生きながらえています。
だからこその忠告です。まだお若いのだから、
王の大義などのために人生を無駄にしませんよう。
いや、わたしとしたことが失言でした。お気になさりませんように」
去ろうとするチェユンを、ソイが腕をとって引き留めた。
彼女の手紙には、こう書いてある。
「わたしは、わたし自身より王を信じる。
王の作る世界が、わたしを苦しみから救ってくれる」
トダム行首を尾行したパクポだが、姿を見失ってしまったという。
さすがにチェユン、パクポ、チョタクの三人では捜査は難しい。
「他の手を考えるか」と思案したチェユンに、パクポが伝言を伝える。
「そういえば、お前を訪ねて人が来たぞ。トルボクって伝えてくれってさ」
なぜ、その名を?チョタクとチェユンの間に緊張が走った。
ユン・ピョンは、密かに師匠イ・バンジのゆくえを探している。
手下は、イ・バンジが長白山にいることを突き止めたが、師匠は留守だという。
ただ、弟子らしき男は、旅支度をして漢陽(ハニャン:首都)にあらわれたという。
イ・バンジは都にいるのだろうか?
イ・バンジの弟子だと思われる男は、チェユンに会いに来た男であった。
チェユンに面会する前に、ユン・ピョンが男を拘束する。
「師匠とカン・チェユンの関係は?」
「師匠と呼ぶな!お前を弟子とお認めではない!」
ユン・ピョンは、男の足を容赦なく切り裂いた。
チェユンは、出上術のあとを見つけ、
自分に会いに来た男がユン・ピョンに連れ去られたと見当をつけた。
トルボクという名を知る男……。いったい誰なのか?
パクポが白土跡を見つけた。
戦場で道しるべとして使われる土だ。
そのあとをたどり、男が拉致されている場所に近づいている。
あたりの様子をうかがっていると、目の前の小屋から、
隙をついて逃げ出した男が飛び出してきた。
「カン・チェユンか?イ・バンジ師匠……」
男は何かを言う前に、ユン・ピョンの矢に射殺されてしまった。
男を拉致したユン・ピョンの手下を連行していたチョタクとパクポ。
彼らも、何者かに襲われた。
ふたりの命に別状はないが、手下の男は殺されていた。
胸に、木の枝が突き立てられている。
背後から、まっすぐ心臓を貫いており、即死だ。
師匠に勝るとも劣らぬ腕、見たこともない殺法に驚くチェユンとチョタクである。
彼らは、その犯人が場のケパイだとは、知る由もなかった。
チェユンは、チョ・マルセンにたずねる。
「密本の武士と言われて思い当たるものはいませんか」
そういえば、かつて密本に、朝鮮一の刀使いと言われる男がいた。
今でこそそれはムヒュルのふたつ名で通っているが、
彼も歯が立たないほどの達人が存在したのだ。
それは、チョン・ドジョンの護衛。
ドジョンが死んだ夜に、彼は消えた。
なぜ護衛をせずに消えたのかは、誰も知らない。
そして「密本の書」を持ち去ったと言われている。
「密本の書とは、何なのですか?」
「チョン・ドジョンの遺言が書かれている。それ以外は知らぬ。
ただ、密本の者たちが必死で探したそうだ。見つかったかどうかも、預かり知らぬところだ。
なぜ、イ・バンジが書を持って消えたのか。そして……」
「今、なんとおっしゃいました?」
チェユンは密かに驚いていた。
朝鮮一の刀使い、チョン・ドジョンの護衛とは、イ・バンジ師匠のことだったのだ。
「密本の書」
視聴者は知っての通り、これはいま、チェユンの手元にある。
本元であるチョン・ギジュンのもとには存在しないのだ。
もちろん、それはただの紙にすぎない。
大義は、密本の思想そのものになるのであって、紙切れにあるのではない。
シム・ジョンスもそれはわかっている。
しかし、儒生たちは、どうだろうか?
チェユンは師匠の素性をいまさらに知って、驚いている。
イ・バンジの持ち去った密本の書が、今は自分の手元にある。
いったいこれはなんなのだろうか?
まぁ、実を言えば、そんなことはどうだっていいのだ。
真夜中すぎ、カリオンは王に言われたとおり解剖の支度をして王宮にやってきた。
人間の死体を解剖し、図に描くのだ。
王も白い上着を着て、同席する。
「王様、どこを切開すればよいのでしょう?」
「口と、喉だ」
いったいなぜ、何のために?
カリオンの手は震え、すべてを描き取る女官も、気を失いかけながら作業を続けた。
すべてが終わり、出てきた王に、右議政が面会にやってきた。
長年潜伏していた彼は、密本組織に絶対的な忠誠を誓っているわけではない。
どちらについたほうが得か?
自分の立ち位置を決めかねているのだ。
しかし、王に話をしようと声をかけた矢先、
カリオンが官服を着て変装し、王とともにいることに気付く。
結局右議政は言葉を濁し、話を避けた。
王は、右議政が何かに感づいたのかと不審に思うのだが、
それは取り越し苦労というものだ。
王は、喉音発声のしくみを探ろうと、解剖を計画した。
カリオンは、この密命の意味を知りたがっている。
「ソイに声を取り戻してやりたいと思ったのだ」
王は、本来の目的を隠した。
(カリオンは信じたでしょうか?)
ソイは書いた。
「あの話は嘘だというのか?わたしにとっては、大事な理由のひとつだ」
王は優しく、ソイに発声の練習を促す。
ソイ自身は、半ばあきらめているのだけれど。
王とソイ、ムヒュルが方陣部屋に戻ると、
ソンムンや女官たちが不安そうな表情で待ち構えていた。
声帯を見るために試みた解剖に、みなは恐れをなしているのだ。
こんな残酷なことが、本当に必要なことなのか?
みなは、納得できなければこれ以上の協力はできない、と口々に訴えた。
自分を信じてついてきてくれない部下を見て王は失望するが、
ソイの励ましにより、皆に説明を始めた。
「この文字には、致命的な欠陥があるのだ」
その頃、夜半過ぎ、正倫岩のまわりには、大勢の儒生が集まっていた。
シム・ジョンスもいる。
三峯先生の直弟子、ヘガンもやってきている。
満を持して、チョン・ギジュン(カリオン)が儒生の姿で登場し、演説をぶった。
建国の理念、我らの理想、宰相総裁制を貫くべく、力を集めるのだ、と。
しかし、どこに力を集め、何をすればよいのか?
「まずは集賢殿の撤廃だ!」
ギジュンの言葉に熱がこもる。
そこへ水を差したのは、右議政イ・シンジョク。
表向きは本元に忠誠を誓ったようだが、彼はギジュンに
「密本の書」を読み上げるよう、促す。
人々は口々に同意する。
ギジュンは目をつむり、一節を朗読し始めた。
力強い演説に、多くの人々は満足そうにうなずいている。
しかし、イ・シンジョクは「密本の書」の存在に疑いを持った。
王の作った新しい文字の「致命的な欠陥」とは?
この文字が、漢字のように自然発生的に出来たものではない、ということだ。
たった数人しか知らない、普遍性を持たない新しい文字。
この文字が広く使われるようになるために、王は考えた。
自然から出来た文字にしよう。
この文字は、舌の形、歯の形、喉の形から出来ているとわかる文字。
そうして民に覚えてもらいたい。
船乗りがおおいなる自然を前に、迷信を信じずにはいられないように、
王もまた、大いなる自然、民衆に触れ、信じたのだ。
自分がこのようにして文字を作れば、民が使ってくれるはずだと、信じた。
それは、間違っているだろうか?
王の深い決意に触れた者たちは、
解剖実験のおそろしさから生じた不安を払拭し、
あらたな思いで王に付き従うのであった。
チョン・ギジュン(カリオン)は、ヘガンと話をしている。
王は集賢殿を作り、自分の言うことを聞く側近を作り出し、
好き放題に政治を行っている。
イ・ドは立派な王かもしれないが、だからこそ危険なのだ。
次の王はどうか?私欲に走る者が王になったら?
そのための制度を三峯先生が作った。
それを崩したイ・ドは、けしてゆるされない。
「密本の書」?あのような紙切れに大義があるのではない。
先生の教えにこそ、大義があるのだ。
しかし、ヘガンは納得しない。
もちろん、大義は先生の思想にあることは理解している。
だが、彼の選択に多くの儒生の将来がかかっている。
彼らを逆賊だと、歴史に刻むことはできないのだ。
集まる者たちが、しっかりとした基礎の上に立つことが必要なのだ。
どうしても、「密本の書」を見せてもらいたい。
4日後には、必ず。
カン・チェユンは絵を描いている。
「わたしを見て」と鼻歌を歌いながら、密本を捕まえるための絵を。
カリオンは、その張り紙を見て、驚く。
ソイもまた同じ張り紙を見て、信じられない思いでいた。
「木覚山 八角亭 三更五点(午前一時)」と描かれたものに添えられていた絵は、
ソイがトルボクに贈った巾着の絵だった。
画数の足りない、「福」の文字が描かれた巾着の絵だったのだ。
(つづく)
今からでも、1~10話を全部見直したい気分です。
カリオン、いやチョン・ギジュン……。
本当によく身分を隠し、潜伏していたよなぁ。
しかも屠畜を行う最下層の民としてですよ?!
すごい信念だわ~。
この、屠畜を行うものが最下層の民として蔑まれる、という状況については、
ひとこと言いたい気持ちですが、ここではひかえておきます。
もちろん現代日本においては、そんな状況はあり得ないと信じておりますよ。
カリオンのすごさがずっとあとを引いていて、
けっこう驚くこともあったはずなのに、なんかフツーに見てしまいました11話。
イ・バンジ師匠はチョン・ドジョンの護衛だったんだ-、ふーん。
ムヒュルが唯一勝てなかった刀使いだっていってたもんなー。
しっかしチョン一族は名前がめんどくさいなー。
チョン・ドジョンは三峯先生でオッケーだよね。初代本元だな。
とかね。
あのケパイっていう謎の男は、密本のために働く刺客だったんだー。
へぇー、あやしいとは思ってたんだよねー。
でもあのお花の指輪かわいかったな。
無垢な少女といる時って「レオン」とかみたい。
っていうより、ラピュタの護衛兵みたいな雰囲気かなー。
とかね。
なんなん、この脱力加減は。
解剖実験のショックで、いきなり「王様についていけん!」みたいになった人々。
彼らに「今までのこと知ってるのに、なんで信じてくれないの!」みたいな王様。
「誠心誠意お話しすればわかってくれますよ」と励まし役のソイ。
このへんの流れも、おいおい、という気分。
みんなの気持ちもわかるけどね~。
イ・ドほどのモチベーションはないわけだからさ、
ちょっとショックなことがあったらびびっちゃうんだよね。
画担当の女官はよくがんばったよ。
でも検死解剖はいっぱいやってたじゃん?
あ、これはみんなはよくわかってないんだっけ?
少なくともカリオンは遺体の解剖何度かやってるんだからさ、
そんな驚かなくてもいいでしょ。
イ・ドも責められていきなりきれそうになっちゃってちょっとしっかりしなよ、って感じ。
こういうところが非常に人間くさい王様なんですね。
怒ったり、拗ねたり、笑ったり、表情豊かでわたしは好きですけど。
チェユンの師匠イ・バンジは、なぜユン・ピョンを弟子だと認めないのか?
なぜ、三峯を守らず、密本の書を持って逃げたのか?
その辺は謎です。
イ・バンジが持って逃げた「密本の書」は長らく行方不明だったんだけど、
なんか文官みたいな人が見つけたのかなぁ、泮村のスパイみたいな男に託したんだよね。
あれ、誰に渡すように言ってたんだっけな~。
忘れちゃった。
でも結局重要なのは書物じゃ無くて、それをとめてた帯の中にあった書だったんだよね。
行首は「元」っていう木札でそれに気付いたのでした。
後にイ・バンジの弟子となるトルボクがそれを持つことになったわけだけど、
イ・バンジは、まさかそれを彼が持ってるとは気付かないでいたんだよね、きっと。
不思議な巡り合わせだなあ。
そう考えると、なぜイ・バンジは書を持って逃げたか、知りたいね。
進退窮まった三峯先生に託されたんじゃないかな。
師匠の弟子らしき男が、チェユンに伝えたかったこともわからずじまい。
こちらも謎ですね。
この角度の画が多いんだよね。かっこいいからいいけど。
王様は、カリオンに解剖の目的を伝えませんでした。
前回はすべて話すと言ってたから心配してたのに。
思わせぶりだな、ドラマ制作者。
ま、ここでわかっちゃったら早いですね。
まだ話数半分も残ってますからね。
チョン・ギジュンは、イ・ドについてはある程度認めている様子ですね。
あの岩の上で、三峯先生に示した敬意を見たせいもあるでしょう。
彼は良い王かもしれないけれど、
この先の王がみな正しい王だとは限らない。
だからこそ、制度を守らなければならないんだ、という彼の論には納得できます。
でもさー、それって逆も言えるんじゃないの?
士大夫たちがみんな優秀で、国のことを思って働く人ばっかりじゃないかもしれないでしょ。
悪いやつらだっているかもしれないじゃん。
てか、数が多い分だけ確率も高いじゃん。
やっぱ相互に牽制し合えるような制度が必要なんじゃないの?
で、そういうことって、今とりあえずいい王様のイ・ドと話合って決めたら?
どうも王様の秘密計画がなんなのかわからないことが、不安要素みたいですね。
密本は決起するのはいいけど、具体的に何をするのか?
集まった人たちもよくわかってないですよね。
まずは集賢殿の廃止。
具体的な目標ができるのはいいけど……。
ヘガン先生の心配もわかりますね。
で、どうしたらいいの?レベルの儒生たちが大勢いるなら、
しっかりした理念の象徴がほしいところです。
しかし、で、どうしたらいいの?レベルの儒生たちしかいないんだったら、
時期尚早っつー気がしますけど。
シム・ジョンスですら、どこに集まればいいの?とか聞いてますよ。
だいじょぶなんでしょうか?
今回は、視聴者は全体をわかっていて、
登場人物たちは部分しか知らない、という状況が多い回でした。
神目線で観られたから、ちょっと気が抜けちゃったのかもね。
ソイとチェユンのやりとりはよかったかな。
チェユンが、「いや、わたしとしたことが……」なんて言って口を押さえる仕草をしましたね。
なんかいつもの彼らしくなーい、と思いつつ見ていました。
ソイが相手だと思ってちょっと気取ってる感が微笑ましいですね。
女性に対しては意外に紳士なチェユンなのでした。
ユン・ピョンの矢を小刀で受けて、スパッと切るところはかっこよかったな~。
ああいう状況だといわゆるフロー状態になり、
飛んでくる矢がスローモーションに見えちゃってもおかしくない。
小刀ってとこが人智を超えていますが。
頭脳戦あり、アクションあり、で好きだ。
男の胸に木の枝が刺さって死んでいる状況を、
太平館の通訳ってか刺客、ジョエンが見てましたね。
この人の衣装はいつもびっくりするほどフュージョンで、見るからにあやしい。
当時の中国の女性って、どんな服装だったんでしょうか。
明の人ですのでこのあたりかと。
いろんな組織が絡んできて、物語はますます複雑になりそうです。
ちょっと前回のカリオンショックが尾を引いております。
なんか、これ以上の驚きは今後ないような気がして……。
一瞬、呆けたというか、気の抜けた状況で、視聴に身が入りません。
それくらいびっくりしたんだよ。
でもここからが本番よね?!
《あらすじ》
解放されたカリオンが家に戻ると、ムヒュルが待っていた。
正倫岩へ行くので、酒膳の用意をしてついてこいと言う。
おそるおそる行ってみると、岩の上には王その人が立っていた。
王は、カリオンを助けられず傍観していたことを詫び、カリオンに杯を賜った。
「ここは、チョン・ドジュンが成均館にいたころ、
儒生と学問を論じた場所だ。彼らは今でも密かにここへ集まり、あの者をしのぶそうだ」
酒を注ぐカリオンの手が思わず止まる。
そう、その儒生たちの集まりに、カリオンは肉を持って給仕にいったのだ。
そこで三峯先生の教えを皆に説き、仲間を集めてきた。
そうやって密本を再生させたのだ。24年もの間。
王は杯を捧げて、三度にわけて酒をまいた。
カリオンは、自分はただ酒膳を運んだだけだと言うのだが、王はその言葉をさえぎった。
「ここに呼んだのは、三峯ならあの密命を理解すると思うからだ。
あのものの書物を何度も読み、あの命令を下すにいたった。
皆は朱子学に反すると言うだろうが、三峯だけは賛同してくれるだろう」
(いったいあの命令が三峯先生と何の関係が?)
王の下した密命は、「解剖の準備をせよ」というものだった。
しかも、解剖するのは獣ではない……。
チェユンは、ソイから感謝の言葉を受け取った。
「もう、おやめください。王の大義に人生を懸けるのは。
眠るために、解放されるために、すべての重荷を下ろすのです。
そうしなければ、つらすぎる」
彼の言葉に、不満そうなソイ。
(兼司僕だって、酸棗仁とエゴノキを飲んでいたくせに)
表情が顔に出たのか、チェユンは笑う。
「人のことが言えるのか、とお思いでしょうね。
そのとおり。ゆえにわたしは、やりきれない想いでずるずると生きながらえています。
だからこその忠告です。まだお若いのだから、
王の大義などのために人生を無駄にしませんよう。
いや、わたしとしたことが失言でした。お気になさりませんように」
去ろうとするチェユンを、ソイが腕をとって引き留めた。
彼女の手紙には、こう書いてある。
「わたしは、わたし自身より王を信じる。
王の作る世界が、わたしを苦しみから救ってくれる」
トダム行首を尾行したパクポだが、姿を見失ってしまったという。
さすがにチェユン、パクポ、チョタクの三人では捜査は難しい。
「他の手を考えるか」と思案したチェユンに、パクポが伝言を伝える。
「そういえば、お前を訪ねて人が来たぞ。トルボクって伝えてくれってさ」
なぜ、その名を?チョタクとチェユンの間に緊張が走った。
ユン・ピョンは、密かに師匠イ・バンジのゆくえを探している。
手下は、イ・バンジが長白山にいることを突き止めたが、師匠は留守だという。
ただ、弟子らしき男は、旅支度をして漢陽(ハニャン:首都)にあらわれたという。
イ・バンジは都にいるのだろうか?
イ・バンジの弟子だと思われる男は、チェユンに会いに来た男であった。
チェユンに面会する前に、ユン・ピョンが男を拘束する。
「師匠とカン・チェユンの関係は?」
「師匠と呼ぶな!お前を弟子とお認めではない!」
ユン・ピョンは、男の足を容赦なく切り裂いた。
チェユンは、出上術のあとを見つけ、
自分に会いに来た男がユン・ピョンに連れ去られたと見当をつけた。
トルボクという名を知る男……。いったい誰なのか?
パクポが白土跡を見つけた。
戦場で道しるべとして使われる土だ。
そのあとをたどり、男が拉致されている場所に近づいている。
あたりの様子をうかがっていると、目の前の小屋から、
隙をついて逃げ出した男が飛び出してきた。
「カン・チェユンか?イ・バンジ師匠……」
男は何かを言う前に、ユン・ピョンの矢に射殺されてしまった。
男を拉致したユン・ピョンの手下を連行していたチョタクとパクポ。
彼らも、何者かに襲われた。
ふたりの命に別状はないが、手下の男は殺されていた。
胸に、木の枝が突き立てられている。
背後から、まっすぐ心臓を貫いており、即死だ。
師匠に勝るとも劣らぬ腕、見たこともない殺法に驚くチェユンとチョタクである。
彼らは、その犯人が場のケパイだとは、知る由もなかった。
チェユンは、チョ・マルセンにたずねる。
「密本の武士と言われて思い当たるものはいませんか」
そういえば、かつて密本に、朝鮮一の刀使いと言われる男がいた。
今でこそそれはムヒュルのふたつ名で通っているが、
彼も歯が立たないほどの達人が存在したのだ。
それは、チョン・ドジョンの護衛。
ドジョンが死んだ夜に、彼は消えた。
なぜ護衛をせずに消えたのかは、誰も知らない。
そして「密本の書」を持ち去ったと言われている。
「密本の書とは、何なのですか?」
「チョン・ドジョンの遺言が書かれている。それ以外は知らぬ。
ただ、密本の者たちが必死で探したそうだ。見つかったかどうかも、預かり知らぬところだ。
なぜ、イ・バンジが書を持って消えたのか。そして……」
「今、なんとおっしゃいました?」
チェユンは密かに驚いていた。
朝鮮一の刀使い、チョン・ドジョンの護衛とは、イ・バンジ師匠のことだったのだ。
「密本の書」
視聴者は知っての通り、これはいま、チェユンの手元にある。
本元であるチョン・ギジュンのもとには存在しないのだ。
もちろん、それはただの紙にすぎない。
大義は、密本の思想そのものになるのであって、紙切れにあるのではない。
シム・ジョンスもそれはわかっている。
しかし、儒生たちは、どうだろうか?
チェユンは師匠の素性をいまさらに知って、驚いている。
イ・バンジの持ち去った密本の書が、今は自分の手元にある。
いったいこれはなんなのだろうか?
まぁ、実を言えば、そんなことはどうだっていいのだ。
真夜中すぎ、カリオンは王に言われたとおり解剖の支度をして王宮にやってきた。
人間の死体を解剖し、図に描くのだ。
王も白い上着を着て、同席する。
「王様、どこを切開すればよいのでしょう?」
「口と、喉だ」
いったいなぜ、何のために?
カリオンの手は震え、すべてを描き取る女官も、気を失いかけながら作業を続けた。
すべてが終わり、出てきた王に、右議政が面会にやってきた。
長年潜伏していた彼は、密本組織に絶対的な忠誠を誓っているわけではない。
どちらについたほうが得か?
自分の立ち位置を決めかねているのだ。
しかし、王に話をしようと声をかけた矢先、
カリオンが官服を着て変装し、王とともにいることに気付く。
結局右議政は言葉を濁し、話を避けた。
王は、右議政が何かに感づいたのかと不審に思うのだが、
それは取り越し苦労というものだ。
王は、喉音発声のしくみを探ろうと、解剖を計画した。
カリオンは、この密命の意味を知りたがっている。
「ソイに声を取り戻してやりたいと思ったのだ」
王は、本来の目的を隠した。
(カリオンは信じたでしょうか?)
ソイは書いた。
「あの話は嘘だというのか?わたしにとっては、大事な理由のひとつだ」
王は優しく、ソイに発声の練習を促す。
ソイ自身は、半ばあきらめているのだけれど。
王とソイ、ムヒュルが方陣部屋に戻ると、
ソンムンや女官たちが不安そうな表情で待ち構えていた。
声帯を見るために試みた解剖に、みなは恐れをなしているのだ。
こんな残酷なことが、本当に必要なことなのか?
みなは、納得できなければこれ以上の協力はできない、と口々に訴えた。
自分を信じてついてきてくれない部下を見て王は失望するが、
ソイの励ましにより、皆に説明を始めた。
「この文字には、致命的な欠陥があるのだ」
その頃、夜半過ぎ、正倫岩のまわりには、大勢の儒生が集まっていた。
シム・ジョンスもいる。
三峯先生の直弟子、ヘガンもやってきている。
満を持して、チョン・ギジュン(カリオン)が儒生の姿で登場し、演説をぶった。
建国の理念、我らの理想、宰相総裁制を貫くべく、力を集めるのだ、と。
しかし、どこに力を集め、何をすればよいのか?
「まずは集賢殿の撤廃だ!」
ギジュンの言葉に熱がこもる。
そこへ水を差したのは、右議政イ・シンジョク。
表向きは本元に忠誠を誓ったようだが、彼はギジュンに
「密本の書」を読み上げるよう、促す。
人々は口々に同意する。
ギジュンは目をつむり、一節を朗読し始めた。
力強い演説に、多くの人々は満足そうにうなずいている。
しかし、イ・シンジョクは「密本の書」の存在に疑いを持った。
王の作った新しい文字の「致命的な欠陥」とは?
この文字が、漢字のように自然発生的に出来たものではない、ということだ。
たった数人しか知らない、普遍性を持たない新しい文字。
この文字が広く使われるようになるために、王は考えた。
自然から出来た文字にしよう。
この文字は、舌の形、歯の形、喉の形から出来ているとわかる文字。
そうして民に覚えてもらいたい。
船乗りがおおいなる自然を前に、迷信を信じずにはいられないように、
王もまた、大いなる自然、民衆に触れ、信じたのだ。
自分がこのようにして文字を作れば、民が使ってくれるはずだと、信じた。
それは、間違っているだろうか?
王の深い決意に触れた者たちは、
解剖実験のおそろしさから生じた不安を払拭し、
あらたな思いで王に付き従うのであった。
チョン・ギジュン(カリオン)は、ヘガンと話をしている。
王は集賢殿を作り、自分の言うことを聞く側近を作り出し、
好き放題に政治を行っている。
イ・ドは立派な王かもしれないが、だからこそ危険なのだ。
次の王はどうか?私欲に走る者が王になったら?
そのための制度を三峯先生が作った。
それを崩したイ・ドは、けしてゆるされない。
「密本の書」?あのような紙切れに大義があるのではない。
先生の教えにこそ、大義があるのだ。
しかし、ヘガンは納得しない。
もちろん、大義は先生の思想にあることは理解している。
だが、彼の選択に多くの儒生の将来がかかっている。
彼らを逆賊だと、歴史に刻むことはできないのだ。
集まる者たちが、しっかりとした基礎の上に立つことが必要なのだ。
どうしても、「密本の書」を見せてもらいたい。
4日後には、必ず。
カン・チェユンは絵を描いている。
「わたしを見て」と鼻歌を歌いながら、密本を捕まえるための絵を。
カリオンは、その張り紙を見て、驚く。
ソイもまた同じ張り紙を見て、信じられない思いでいた。
「木覚山 八角亭 三更五点(午前一時)」と描かれたものに添えられていた絵は、
ソイがトルボクに贈った巾着の絵だった。
画数の足りない、「福」の文字が描かれた巾着の絵だったのだ。
(つづく)
今からでも、1~10話を全部見直したい気分です。
カリオン、いやチョン・ギジュン……。
本当によく身分を隠し、潜伏していたよなぁ。
しかも屠畜を行う最下層の民としてですよ?!
すごい信念だわ~。
この、屠畜を行うものが最下層の民として蔑まれる、という状況については、
ひとこと言いたい気持ちですが、ここではひかえておきます。
もちろん現代日本においては、そんな状況はあり得ないと信じておりますよ。
カリオンのすごさがずっとあとを引いていて、
けっこう驚くこともあったはずなのに、なんかフツーに見てしまいました11話。
イ・バンジ師匠はチョン・ドジョンの護衛だったんだ-、ふーん。
ムヒュルが唯一勝てなかった刀使いだっていってたもんなー。
しっかしチョン一族は名前がめんどくさいなー。
チョン・ドジョンは三峯先生でオッケーだよね。初代本元だな。
とかね。
あのケパイっていう謎の男は、密本のために働く刺客だったんだー。
へぇー、あやしいとは思ってたんだよねー。
でもあのお花の指輪かわいかったな。
無垢な少女といる時って「レオン」とかみたい。
っていうより、ラピュタの護衛兵みたいな雰囲気かなー。
とかね。
なんなん、この脱力加減は。
解剖実験のショックで、いきなり「王様についていけん!」みたいになった人々。
彼らに「今までのこと知ってるのに、なんで信じてくれないの!」みたいな王様。
「誠心誠意お話しすればわかってくれますよ」と励まし役のソイ。
このへんの流れも、おいおい、という気分。
みんなの気持ちもわかるけどね~。
イ・ドほどのモチベーションはないわけだからさ、
ちょっとショックなことがあったらびびっちゃうんだよね。
画担当の女官はよくがんばったよ。
でも検死解剖はいっぱいやってたじゃん?
あ、これはみんなはよくわかってないんだっけ?
少なくともカリオンは遺体の解剖何度かやってるんだからさ、
そんな驚かなくてもいいでしょ。
イ・ドも責められていきなりきれそうになっちゃってちょっとしっかりしなよ、って感じ。
こういうところが非常に人間くさい王様なんですね。
怒ったり、拗ねたり、笑ったり、表情豊かでわたしは好きですけど。
チェユンの師匠イ・バンジは、なぜユン・ピョンを弟子だと認めないのか?
なぜ、三峯を守らず、密本の書を持って逃げたのか?
その辺は謎です。
イ・バンジが持って逃げた「密本の書」は長らく行方不明だったんだけど、
なんか文官みたいな人が見つけたのかなぁ、泮村のスパイみたいな男に託したんだよね。
あれ、誰に渡すように言ってたんだっけな~。
忘れちゃった。
でも結局重要なのは書物じゃ無くて、それをとめてた帯の中にあった書だったんだよね。
行首は「元」っていう木札でそれに気付いたのでした。
後にイ・バンジの弟子となるトルボクがそれを持つことになったわけだけど、
イ・バンジは、まさかそれを彼が持ってるとは気付かないでいたんだよね、きっと。
不思議な巡り合わせだなあ。
そう考えると、なぜイ・バンジは書を持って逃げたか、知りたいね。
進退窮まった三峯先生に託されたんじゃないかな。
師匠の弟子らしき男が、チェユンに伝えたかったこともわからずじまい。
こちらも謎ですね。
この角度の画が多いんだよね。かっこいいからいいけど。
王様は、カリオンに解剖の目的を伝えませんでした。
前回はすべて話すと言ってたから心配してたのに。
思わせぶりだな、ドラマ制作者。
ま、ここでわかっちゃったら早いですね。
まだ話数半分も残ってますからね。
チョン・ギジュンは、イ・ドについてはある程度認めている様子ですね。
あの岩の上で、三峯先生に示した敬意を見たせいもあるでしょう。
彼は良い王かもしれないけれど、
この先の王がみな正しい王だとは限らない。
だからこそ、制度を守らなければならないんだ、という彼の論には納得できます。
でもさー、それって逆も言えるんじゃないの?
士大夫たちがみんな優秀で、国のことを思って働く人ばっかりじゃないかもしれないでしょ。
悪いやつらだっているかもしれないじゃん。
てか、数が多い分だけ確率も高いじゃん。
やっぱ相互に牽制し合えるような制度が必要なんじゃないの?
で、そういうことって、今とりあえずいい王様のイ・ドと話合って決めたら?
どうも王様の秘密計画がなんなのかわからないことが、不安要素みたいですね。
密本は決起するのはいいけど、具体的に何をするのか?
集まった人たちもよくわかってないですよね。
まずは集賢殿の廃止。
具体的な目標ができるのはいいけど……。
ヘガン先生の心配もわかりますね。
で、どうしたらいいの?レベルの儒生たちが大勢いるなら、
しっかりした理念の象徴がほしいところです。
しかし、で、どうしたらいいの?レベルの儒生たちしかいないんだったら、
時期尚早っつー気がしますけど。
シム・ジョンスですら、どこに集まればいいの?とか聞いてますよ。
だいじょぶなんでしょうか?
今回は、視聴者は全体をわかっていて、
登場人物たちは部分しか知らない、という状況が多い回でした。
神目線で観られたから、ちょっと気が抜けちゃったのかもね。
ソイとチェユンのやりとりはよかったかな。
チェユンが、「いや、わたしとしたことが……」なんて言って口を押さえる仕草をしましたね。
なんかいつもの彼らしくなーい、と思いつつ見ていました。
ソイが相手だと思ってちょっと気取ってる感が微笑ましいですね。
女性に対しては意外に紳士なチェユンなのでした。
ユン・ピョンの矢を小刀で受けて、スパッと切るところはかっこよかったな~。
ああいう状況だといわゆるフロー状態になり、
飛んでくる矢がスローモーションに見えちゃってもおかしくない。
小刀ってとこが人智を超えていますが。
頭脳戦あり、アクションあり、で好きだ。
男の胸に木の枝が刺さって死んでいる状況を、
太平館の通訳ってか刺客、ジョエンが見てましたね。
この人の衣装はいつもびっくりするほどフュージョンで、見るからにあやしい。
当時の中国の女性って、どんな服装だったんでしょうか。
明の人ですのでこのあたりかと。
いろんな組織が絡んできて、物語はますます複雑になりそうです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます