fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

iPS cell:

2007-11-23 00:00:00 | biologie*

ヒトの皮膚から万能細胞 京大チーム成功(産経新聞) - goo ニュース

だ、そうです。iPS cell(induced pluripotent stem cell)速報。
今までマウスでは成功していたのですが、これはなかなか大きな進歩でありますね。
胚性幹細胞(ES cell)を通り越して人工的に組織幹細胞(tissue stem cell)を作った…ってことでいいのかな?あ、違うか。
そもそも「万能性に関係する4つの遺伝子を導入」ってどういうこった?
(どうやらマウスから採取したtranscription factorOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycをレトロウィルスで導入したらしいですね。
 Oct3/4, Sox2は胚細胞に特有とされている転写因子ですが、c-Mycは細胞増殖に係わる有名な癌遺伝子。
 Klf4は大抵癌抑制遺伝子として働けど、たまに乳癌などでは癌を誘発する因子だったり…
 この辺りは導入しても、例えばiPS cellの分化後に異常が出るなどといった事象は無いのでしょうか。
 俺ゲノム関連とか苦手な方だから、ちゃんとこの辺り説明して欲しいな。勉強不足スミマセン…)
取り敢えず元のペーパーを読むなりしないと、この記事だけじゃまだ何とも言えません。

ただ「受精卵を使わないため倫理的な問題も回避できる」ってのはどうなんでしょう。
接合子zygoteと体細胞somatic cellは一応は異なりますが、元々体細胞だって接合子から発生developしたものです。
例えばこれが「初期胚から採取できます」「生まれたての赤ちゃんから採取できます」とあったらどんな反応が出るか。
一応両方とも"体細胞"ではあると思うが。
…それは極端なのかもしれないけれど、そうそう倫理問題ってのは簡単に回避できるものじゃない、回避してはいけないと思う。

1番怖いのは、例にも漏れず"メディアの煽り"。
もう既に「万能細胞、万能細胞」て騒ぎ始めてるようだけど…
「何が分かっていたか、新たに何が分かったか、何に利があり、何が問題か」ってのは殆どの場合無視されているようで、
これじゃ情報の受け手も誤解するばかりですね。まったく…

取り敢えず、この記事読んで第一に思ったのは、
「来年のη先生の発生学の講義は大波乱だ!」ということでしたー(笑)。

BLOG内LINK:→ segment of divelopmental bio. report:



最新の画像もっと見る

5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
トラバありがとうございました。 (ウフフマン)
2007-11-23 01:00:15
生物学がご専門とのこと!色々と参考になります。・・・例えばiPS cellの分化後に異常が出るなどといった事象は無いのでしょうか。・・・とのお言葉は成るほどと思います。これからの問題が多く、またこの分野での諸研究がなされていくとは思いますが、だんだん、神の領域に近づいていくのでしょうか?個人的には発想の転換が良いなとも思いますが、問題も多いでしょうね。遺伝子の不思議さを実感いたします。すべてを再生してできた自分て何なのかと思うとき、それは束の間の現象であり、生命とは構造ではなくて瞬間の現象のような気がいたします。
返信する
とらば (tetty)
2007-11-23 12:32:27
ありがとう。まさに専門職ですね。私のような臨床家はちょっと聞きかじっただけです。celldownloadしてみましたがちんぷんかんぷんでした。。。
返信する
Unknown (LOKI:(fantasia*diapsida))
2007-11-23 16:30:21
>ウフフマン様
こちらこそどうもありがとうございます!
そうですね、医療面で"再生"は非常に有用なものになっていくでしょうけど、
技術が行き過ぎることを考えると少々不安も残りますね。
とは言え、ヒトが"神の領域"に近づくこともまずないでしょう。
再生医療でも何でも、
科学技術が行なっているのは"与えられたものの加工"に過ぎませんから。
そういう意味では、形式の差異こそあれ、
ヒトの行為はやはり他の生物の行動と同一線上に並ぶものでしかないとも感じますね。

>tetty様
専門職…とは一介の学生に対しては褒めすぎですよ(笑)。
ありがたいお言葉です。
私自身も正直聞きかじりで「これで合ってるかなぁ」と
不安を感じつつも書いたもので…大して理解しているわけでもございません。
Cellも読んで、もう少し勉強してみます。
返信する
万能って (Mirin)
2007-11-25 20:25:29
その言葉が重い…。

倫理的な問題が会費でキタかどうかはさておき(おい)、
生命の萌芽である受精卵からではなく、
患者自身の表皮から取る事で、
拒絶反応を抑える事が出来るらしい。

なんていうか、すごいよね~。
返信する
たしかに凄いんだが… (LOKI:(fantasia*diapsida))
2007-11-26 01:57:18
>Mirinサン

実際にマウスで試してみるとかなりの確率で腫瘍が出来たりと、
まだまだ課題もたっぷり在るみたい。
国が70億研究費出すとか言って
周りも「国の威信だなんだ」と叫んでいるけど、
(当たり前かも知れんけどゲンキンだよな。
評価される研究を作るよう支援するんじゃなく、
評価されてから初めて応援し始めるんだから。)
まずは、正確に理解することから始めなければ、
メディアやら何やらが先走り過ぎても仕様がない。(いや本当に凄いんだけどね、)

っつても結局あーだこーだ騒いでるのは結局外野に過ぎず、
当の研究者の方々はきっと冷静に且つアツく、
「よし、死ぬ気で頑張るぞ」って決意固めてるんだろうなぁ。
返信する

post a comment