調子が悪い と電話の向こう
今から行くね と受話器を置いた…
まだ外は暗闇の中
始発電車の時間を待って
そっと玄関のドアを開けた
走っても電車は早く来る筈無いのに
走って行った駅までの道
眠そうな会社員
少し場違いに感じた駅のホーム
ポツリポツリと人がいる座席
白々と明けていく窓の外
時間の経つのが遅すぎる
何度も時間を確かめる
電車を乗り継ぎ
人込みの中
その時
繋ぐものは何も無い
電話ボックスを見つける度
電話をしようと思ったけれど
一歩でも早く歩きたい
想いは先へ先へと急ぐ
次に電話を見つけた時に
また次の時にと…
人込みに見つけた姿は
優しく笑っていた
心配して迎えに来てくれた人
傍に居てあげたいと想う気持ちだったのに
私のほうが優しい想いをもらったよう
受話器を置いた時からの
切ない時間は
一瞬に
優しさの中へ変わった
切なさや…
ぬくもりや
優しさや
想いは…
時代が変わって
交わす言葉や伝えるすべが変わっても
今
この時も
どこかにたくさんあるのだと思う