半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第89話

2023-06-18 08:09:03 | webブログ

バレエ教師の半澤です。

平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、水曜日、金曜日の
夕方5時20分は子供の初級、夜7時から中級レベルのレッスンです。
土曜日は朝11時からのレッスン、夕方6時です。ポアントもあります。
日曜日と祭日も朝11時から初級のレッスン、ポアントもあります。

皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/

連絡をお待ちしてますね!

2023年12月24日(日曜日)枚方(ひらかた)芸術文化センターにて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。

Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

バリエーションは「海賊」二幕から花園より、グルナーラのヴァリエーションです。
男子は「ラ・シルフィード」のヴァリエーションです。
さ、やりましょう!!

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第89話
ショージは路上の婦人から急遽買った、どちらも
婆ちゃん用のケバケバがおかしい帽子と手編みの
毛糸の靴下を両手にはめ、ジーパン姿にスニーカー。
大きなスノーブーツは恥ずかしいからスウェーデンに
置いて来たのだ。これが大きな間違いだった。
スウェーデンよりもモスクワの方が気温が異常に
低く吹雪いているではないか。前を行く背中が
異様に大きな男性に何気なく付いて行くと、
「あっ!あれは関係者入口じゃないのか…!?」

ボリショイバレエ団の看板スター

「あっ!やっぱりあれは関係者入口だ!…って
事はこの男性も劇場のスタッフなのか…ま、
大道具さんかもな…」その時だった、ふいに
ショージの右横の劇場の壁の方向から、「おいっ、
イレ~ク!」と大きな声で呼ぶ者がおり、
ショージもその声の主の方を見た。と、それが
あまりにも大声なのでビックリしたのだが、
それよりももっと驚いたのは「あーっ!この人…!」
大きい声で叫んだ男はショージがビデオやテレビで
何度も見た有名なロシア人バレエダンサーの
ユーリー・バシュチェンコだったのだ。

「で、でっけ~!」190センチを優に越えて
いるであろう。そしてその時、重低音の腸に
響くような唸り声で「ウォ~ドブレイウートラ…」
(ウォ~お早う…)とその猛獣のような声を
出したのは、ショージの直ぐ前を歩いていた
灰色のジャンパーを着込んで、頭には熊のプーさん
みたいな面白い帽子を被った声の主を見た途端、
ショージの呼吸が止まりそうになった。

またもや絶句!そのプロレスラーのような背中で
ショージの前を歩いていた男は、なんと世界中の
クラッシック・バレエファンの注目を一身に
集めて、今のヨーロッパ、アメリカ、日本の
バレエ雑誌を賑わせている、ボリショイバレエの
プリンシパル(事実上のバレエ団のトップダンサー)
のイレク・ムハメドフではないか!

観音開きのドアー

観音開きのドアーをギ~と開けば又、中側にドアー
がありその中間に厚手の生地で天井から幕みたいな
物が垂れ下がっている。これはドアーの外の
マイナス38度の極限の冷温から劇場内の温度を
保つために冬限定で付けられているのであろう。
先にイレク・ムハメドフ氏が入り次にショージが
入り、中側のドアーを通る際にイレクが低く唸る声で
「ズドラストブチエ~!」(こんにちは)と門番に
挨拶をした。

門番はパッと見た感じで70歳から80歳くらい
までの男性が4人いた。どうして門番が4人も
いなきゃならないのだろうか…?イレク・ムハ
メドフ氏のボストンバッグは意外にも小さめで
質素なバッグだ。ショージのバッグは中型犬が
丸々と一匹入る事の出来るサイズの大き目。

ショージもまるで昔からボリショイ劇場のお抱えの
ダンサーであるかのような顔つきと疲れたような
イレクの声のトーンに似せて「ズドラストブチエ~!」
とイレクの直ぐ背後にピッタリと付いて行く。
「おっ、やった…通っちゃった!」と脳が反応した
途端…「うわ~っ!!」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第88話

2023-06-17 09:03:45 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第88話
「よしっ!タクシーを拾ってさえしまえばこっちの
もんだ!行くぞ~っ!」ダッダッダッダダダ…
勢いに乗って、4~5百メートルは走った。
もう少しで大通りに出る…という所まで来た時に、
突然、目の前が真っ暗になり絶叫した。
「ンガッ~!俺はアホか~っ!折角ここまで来れた
のに、お前って言う奴はこの、ろくでなしがーっ!」
ガーン!大変な事を忘れていたのだ。ショージは
自分が宿泊しているホテルの名前を知らなかった。

「おー!危ない危ない…」寸での所で迷子になって
ホテルに帰れなくなるところであった。「ああ…
またホテルまで走って戻らなきゃ…」その時点で
既につま先や手先、特大の鼻が凍傷を起こしそうな
ほど限界温度が身体中を麻痺させていた。
「耳なし芳一は知っているけど、鼻が取れちゃったら、
鼻無しショウジになっちゃう…」走ってホテルまで
引き返し、深呼吸をして外に出る心の準備と空気を
思い切り吸って肺に貯めた。「あ、ちょっと待てよ…
このチラシを落としたら、それでもうお終いか…
僕は再びこのホテルには戻れなくなってしまう。
ちゃんとホテルの名前を見て確認しておかなきゃ…」
そしてホテルのチラシを見ると、「ホテル・コスモ」
と書かれてある。

再び大通りに出るまで走り、手を上げると一台の
車が止まった。だが、どう見てもタクシーでは
なかった。自称「タクシー」の酔っ払い運転手は
右に左に横滑りを起こしながら、ようやく目的地の
ボリショイ劇場の近くまで来た時…「おいっ、
もうそこがお前の言っていたボリショイ劇場だ。
ここまでの距離は半端じゃない!2ドルじゃ到底
足りない、もう2ドルよこせ!」

酔っ払っている運転手が、ショージをガキだと
勘違いしているのだろうが、ショージも負けずに
なんとか厳めしい顔つきで「おい、いい加減に
しろ!2ドルでも十分すぎるくらいだっ!お前が
2ドルなら行ってやるって自分の口で言ったんだ!
その2ドルもあれば、お前の好きなウォッカが
数十本は買えるだろう!俺はここで降りる」すると
こちらの剣幕に押されたのか運転手は車を止めた。

私の前を歩くダンサーの背中

路上で婆さん用の帽子を売っていたロシア人の
婦人に聞いた通りに、道沿いに歩いて行くと
「あ、あ…ボリショイ劇場だ、すんげ~!こんなに
迫力がある劇場もそうざらには無いな!」
夢の劇場がショージの目の前に威風堂々と聳え
立っているのだ。「これか…これが世界中の
バレエファンなら誰でも頷く、世界最高のバレエの
殿堂か…!」

暫し絶句。少しずつ劇場に近寄って行き、寒さなど
この瞬間は感じなかった。でも、やはりほんの瞬間
だけであった。実に寒い。ショージの横を灰色の
ジャンパーを着た人が素通りして行き、ショージも
その人が向かう先の劇場の正面まで歩いた。「何て
威厳のある劇場の正面造りなのだろう…」玄関には
大型の大理石の石柱が8本もバーン、バーン…!
と並んでおり、その遥か上の久ひさしの上に
ブロンズで作られた、4頭の馬を男が手綱を
引いているようなモニュメントがショージを興奮
させる、夢にまで見た劇場だ。

ショージの前をズシズシと雪を踏みしめて歩いて
いる男はダンサーらしき鞄を背負っているが、
あまり背中がダンサーらしくない。「ま、鞄を
背負っているのが決まってダンサーとは限らないし、
兎に角、関係者入口を探そう…」前を歩く男の靴を
見ると「ん?足が外側に開いている…え?まさか…
こんなプロレスラーみたいな背中をしている人が
ダンサーのはずないよな…そこら辺のおっさん
だって、ガニ股で歩く人はいるんだから。しかし、
なんちゅう寒さなんだ…もう、頭がクラクラとして
思考回路が働かない…早く暖を取らなければ間違い
無く凍傷に罹ってしまう…」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第87話

2023-06-16 08:12:43 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
モスクワ到着
第87話
ここはモスクワ空港。異常な臭い(おそらくは
トイレのタンクの中に入っているタブレット錠の
消臭剤のせいであろうと思う)が充満する
ジェット機内からようやく解放され、あまりの
恐ろしさにまだ足が地上に付いてない感じだ。
大きなドーム状のとても暗い空港内。そこには
外国人を喜んで迎え入れてくれるような雰囲気は
微塵も無く、人間の感情など受け付けようと
しない無言の威圧感と冷たいコンクリートの床に、
これまたデザインなどを無視した共産圏独特な
奇妙な天井が妙に恐ろしく感じられる。

そして入国審査はもっと恐ろしいものであった。
ツアー客同士が入り混じり、ショージも列に並んで
待っているがビザは取得してあるから大丈夫な
はずだ。とは言え、やはり向こうで機関銃を構えて
立っている人間を見たら誰だって恐ろしさに足が
竦むはずである。

この機関銃はカラシニコフと言うマニアたちの
間でも有名な武器だが、有名であろうが無名で
あろうがそんなものはショージには興味は
なかった。それよりもショージの気を揉ませる
のはこの武器を持っている人間の人差し指に
少々の力が入った時に、数十名もの人間が
たった数秒でこの世から消えてしまうという
事だ。どうしてそんな危ない物を構えていな
ければならないのであろうか。理由はどうであれ、
話で解決をしようとする人間たちではないのは
明らかだった。

電光掲示板に映し出された表示にはマイナス
32度と出ている「,げ~っ!?スウェーデンの
最低温度は今までにマイナス24度で、その時は
あまりの寒さに身体が思うように動かなくなり、
アパートの中でもセントラルヒーティングを
目一杯にしても足りないほどだった。それなのに
ここモスクワではマイナス32度だって?
どうやって人間が生きていられるんだ!?」
俄かには信じられない数字だ。道理で道脇の
雪は凍りついて固まってしまうはずだ。
けばけばしく唇を真っ赤に塗った口うるさい
バスガイドと共にホテルへ到着した。

1987年12月23日 鼻無しショージ

翌朝、「さあ、出発だ~っ!僕の人生は自分で
切り開くんだっ!よ~しっ!」バッグを担いで
巨大なホテルの二重ドアーの外に出た。猛烈な
吹雪であった。雪がショージの両頬をバシッ
バシッと引っ叩く感じだった。次の瞬間、
ショージは息が全く出来なくなった。その空気の
冷たさは人間の限界温度を超えて、命を脅かす
ほどの気温なのだ。「うわっ!」ホテルの玄関から
ポンと出たものの、その瞬間にまたポンと後ろ
向きにホテルの中に戻ってしまった。

「な、何だ、この気温は!?出られない…決して
外には出られない!まず息が出来ない。
どうしよう、このままホテルの中で外を眺めて
いても、僕の人生に何の変化は起きない。だから
といって命を危険に晒すわけにもいかない…」
これは大袈裟でも何でも無く,マイナス32度の
気温に吹雪の強烈な風が加わるので、マイナス
38度以下に下がっているのだ。日本でこの気温を
体感できる場所は北海道だけかもしれない。
このホテル内と外の気温差はホテル内が17度
としても、実に55度ほどだ。

「げ~っ!なんちゅう所に来てしまったんだ…
兎に角、どうしよう…早くしないと!えーい、
出るぞ~っ!」バシッとドアーを開いて3歩走り
出したが、瞬時に引き返してしまった。
「ガビーン!何でこんな地獄のような寒さなんだ!?」
そうやって5,6回繰り返してる内に、どうやら
この強烈な寒さにも慣れてきたみたいでようやく
行けそうだ。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第86話

2023-06-15 08:25:53 | webブログ

バレエ教師の半澤です。

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第86話
テープからの秀樹の声…「今からショージさんの
知っている人たちが話しますから聞いていてくだ
さいね!」「半澤君、スウェーデンにいるの?
イタリアにいるって聞いていたけど、寒いでしょ
北欧は…」ああ、この独特の鼻にかけた甘い声は
あの人だ!そして直ぐに「半澤君、佳子です…
覚えていますか?スタジオパフォーマンスの時は
喧嘩もしたわよね…スウェーデンでも頑張って
くださいね!」今では茶の間でも有名になった
女優の床島佳子さんであった。そうそう、確かに
あの筋金入りの九州出身の女性とはパ・ド・ドゥを
一緒にした時にかなりの喧嘩もしたものだ。       

次々に沢山の懐かしい声がテープから聞こえて来た。
「思い出すな…六本木のスタジオで毎日欠かさずに
皆と一緒に頑張って練習をしていた頃を…」この
ティーシャツに書かれてある寄せ書きは秀樹が皆に
頼んで書いてもらったのであろう。ショージはその
ティーシャツを着てみた。「これは宝物だ!」
クラブ「愛」のママからの手紙とこのティーシャツと
カセットテープからの激励が心に沁みた。迷いから
脱出する事が出来たのは遠い日本にいる皆のお陰で
あった。

1987年12月23日 ソ連の飛行機

スウェーデンのゴッセンブルグに来て以来、
ショージはバレエ以外に習慣にしている事があった。
それは毎週木曜日に必ずロシア領事館に行く事で
ある。ソ連に入るためにビザを発給してもらうため
には、何らかの伝手が無い限り日本人がソ連に入る
事は不可能である事から、単純にロシア領事館に
伝手さえ出来たらビザを発給して貰えるだろう
という、普通の人間ならばおよそ発想しない事だ。

ショージはイタリアのバレエ団を辞めてフィン
ランドに行こうと思ったのはロシアで勉強がした
かったからだ。だが、フィンランドのバレエ団では
働く事が出来なかった。そこで急いでスウェーデン
にやって来て仕事をさせて貰う事になったが、
ショージが北欧にやって来た本当の理由は変わら
ない。どうしてもロシアで勉強がしたいのだ。

そんな時だった。たまたま道で見掛けた旅行会社の
看板に「クリスマスにモスクワへ…」が!これこそ
ショージを炎に揺らめく男に変えてしまった。
そしてモスクワに行く決意をした。果たして観光
ビザが日本人のショージに下りるだろうか。だが
その心配は無用であった。すんなりビザが下りたのだ。

飛行機が離陸前に「シートベルトをしてください…」
と機内アナウンスが入り、客たちがちゃんとシート
ベルトをしているのかを確認するためにスチュワー
デスが機内を廻り始めた。背が高くがっしりした
体躯がロシア的なのだが、アエロフロートのスチュ
ワーデスは日航のJALやオランダ航空のKLMと違って
笑顔がほとんどない。

その無言の表情から読み取れる彼女らの声を代弁
したとするならば、「あんたら、ベルトをしたの
かい?していないじゃないかっ!ちゃんとしろっ!」
とまあこんなもんであろう。

気流が悪いせいか機体がグラグラと横に揺れ、
その度にショージの胃の中はググっと込み上がり、
一瞬で30メートルほど機体が落下した。「あ…
駄目か…」と眼をカッ!と見開いた。イタリアの
ダンサーたちが「ドイツとロシアのパイロットは
腕が世界でも最高ランクなんだよな…!ただ、
ロシアの機体は世界の最低ランクだから、どんなに
パイロットが上手でもポトッて落ちても不思議じゃ
ないのさ!ハハハ、チャオ~!」と言っていたのを
思い出した。ショージは顔が真っ青になっているのが
自分でも分かった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第85話

2023-06-14 07:48:10 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
1987年3月 (23歳)手紙には…
第85話
スウェーデンに着きバレエ団で働き始めた。それから
暫くしてショージは首を痛め、バレエ団から休暇を
もらった。その際、母のように慕っている東京の
麻生十番にあるクラブ「愛」のママに宛てて書いた
ショージの手紙にママから返信があった。ショージは
胸を躍らせ手紙の封を切った。ヨーロッパに来て以来、
誰からも手紙をもらった事のないショージに初めて
ママからの手紙であった。

ショージには一つの大きな迷いがあった。「人生とは
何か…そして人間は何のために生きるのか…」
それをこの手紙から読み取る事が出来たのだ。
そこには「一生懸命に今その瞬間瞬間を生きる事
だけを考えればそれで良い…」ショージは絶句した。
「全神経、全力を賭けて今この時を生き、明日に
備えるために今しなければ成らない事だけに
必死になれば良い…他の一切の邪念を捨て、
先の事など心配などしなくて良い。必死に今の
瞬間、瞬間を繋げた時にそこに自分の道が出来る
のだから…」

 ショージは手紙を見ながら、その文が段々と
波打って見え始めた。ショージの手紙を見つめる
目から滂沱(ぼうだ)の様に涙が堰を切って流れ
出たからだ。「ああ…この懐かしい筆跡!
昔ママから言われた言葉を思い出す…今しか
出来ない事を、その事だけをやればそれで
良かったんだ!何故、僕は今まで迷っていたん
だろう。先の事なんか心配する事など愚の骨頂
だったんだ…」目の前から霞がさーっと晴れて
行くように、そして不思議にも何かショージの
前に又、進むべき道が、方向性が微かに見える
ような気がした。

「ああ、なんて素晴らしい字なんだろう…
ありがとうママ、本当に心に沁み通る「愛」の
ママの言葉だった。

日本語の肉声カセットテープ

麻布のクラブ「愛」のママからの手紙の他に、まだ
包みの中には何かが入っていた。「あれ、何だ
これは?」包みから出すとティーシャツが入って
いた。グレーのティーシャツにマジックで寄せ書き
が書いてあった。それも可笑しいことに胸の所に
ショージがよく通っていた麻布十番の温泉マークが
手書きで書いてあるのだ。もう一つの小さな包みを
開けたらそこにはショージの後輩の秀樹からの
鉛筆で書かれたメッセージがあり、1本のカセット
テープがあった。

ショージは隣の家からカセットレコーダーを借りて
そのテープを聴くためにスイッチを押した。
「ショ-ジさんですか…?」ショージにとって
手紙に書いてある日本語の字も久しぶりであったが
この声にじっと耳を傾けた。数年の間、聞いた事が
なかった日本語の肉声だ。しかも懐かしい、直ぐに
泣く少年の秀樹の声であった。「ああ…なんと懐かしい
この声が…」

ショージは日本を発つ前に麻布のクラブ「愛」に
この秀樹という少年を紹介してショージの後釜
としてママにお願いしたのである。秀樹とは
六本木の「スタジオ一番街」の小川亜矢子バレエ
スタジオで知り合った。彼はまだバレエを習い
たてで生活力の弱い少年であったが、この男なら
真面目に仕事もしてくれるだろうし、秀樹に
とってもクラブ「愛」で働く事が出来ればママから
たくさんの事を教えて貰い、バレエを続ける事を
ママが応援してくれるだろう…そんな思いから
ショージは後釜として彼に白羽の矢を立てたのだ。
(つづく)