半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第76話

2022-07-31 08:36:05 | webブログ

バレエ教師の半澤です。

平日は朝は11時から初中級レベルのレッスン、水曜日、金曜日の
夕方5時20分は子供の初級、夜7時から中級レベルのレッスンです。
土曜日は朝11時からのレッスン、夕方6時です。ポアントもあります。
日曜日と祭日も朝11時から初級のレッスン、ポアントもあります。

皆さま、お待ちしております!

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/

連絡をお待ちしてますね!

2022年12月27日(火曜日)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

バリエーションは「ライモンダ」からの夢のVaです。静かな曲調でありながら
流れるような振付が実に魅力的です。

男性陣は「海賊」からアリのVaです!

一歩一歩ゆっくりと楽しみながら踊りましょう!
さ、やりましょう!

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第76話
素っ頓狂な声を上げた秘書を軽く制するように
ディレクターのウルフ氏がショージに向って、
「君はこれからイタリアまでビザ申請に行かな
ければならないし、何週間掛かるか判らない
から、半分の給料の前払いなら大丈夫だ。」
その言葉にまた、秘書は仰天しながら白目を
剥いた。

「そうだ、ここは事務局じゃないか…スザンナ、
早速手配してあげなさい!バレエ団の費用と
言えば良いじゃないか、そうだろ?私は先に
劇場に行っているから。じゃ、バーイ!」
スザンナは、「ちょっと、ちょっ…」

信頼は直感!

グレゴリーというイギリス籍の黒人ダンサーは、
ショージがゴッセンブルグの稽古場に突然やって
来た日、彼は周りのダンサーたちに向かって
度肝を抜くような痛烈な皮肉や毒舌を混じえ
ながら、その話の内容には完璧に筋が通っており、
その話しぶりにショージは魅了された。
ショージが今、実際に彼と稽古場内にある
リラックスルームで話をする時は全く別人の
ように静かで、彼の話す英語の流れに美しさを
感じた。ショージはグレゴリーに初めて会話を
するのに「僕はショージ…僕の友だちになって
くれませんか?」と申し出た。

彼がショージに問い返した。「友だちに?何故、
僕なんだね?君はこんなに沢山いるダンサーたちの
中から、どうして僕を選んだんだね…?」澄んだ
黒い瞳でショージの眼を見つめた。「僕はこの
稽古場で初めてあなたを見かけた時から、
あなたの話を静かに聞いていました。あなたの
話の中に矛盾点は無く、はっきりとした筋が
見えました。何故、あなたを選んだか…それは
インスピレーションです。つまり直感です!
私は、あなたが信頼出来る人間なのだと直感
したのです。そしてその直感にきっと間違いは
無いと信じるからです。」

 グレゴリーは、初めて出会うショージのような
人間からこのような事を言われて、かなり
戸惑ったであろう。しかし、「そうか…。多分
君は正しいかもしれない。僕は物事をはっきりと
言う性質だから、このバレエ団でも異種的に
見られがちだが嘘は言わない主義なんだ。それでも
良かったら、僕も君の事に大いに助言させて
貰うよ。」ショージはグレゴリーとがっちり
握手すると、彼は電話番号を書いたメモを
ショージに差出した。そして、グレゴリーは
リハーサルをするために消えて行きった。

翌朝、早速電車に乗り、またイタリアへと向かった。
もう慣れたものだ。今回はレッジオエミリアに
帰るのではなく、スウェーデン領事館のある
ミラノに向けてチケットを買った。片道切符だ。
何故、片道切符なのか…それはイタリアに戻れば、
領事館で労働許可証の申請後に一体どれくらいの
時間がかかるのか全く見当がつかない。その
申請中に何をすれば良いかショージには
はっきり分っているからであった。

つまり武者修行の続行である。武者修行をする
のには再びインターレイルパスが必要になる。
レッジオエミリアまで行けばこのユーロ鉄道
パスを買う事が出来るのだ。この特別なチケットは
在住先でしか買う事が出来ない。そしてイタリアに
到着し、ショージは鉄道パスをゲットした。
領事館で労働許可を申請すると、その足で
武者修行の続行が始まった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第75話

2022-07-30 08:06:09 | webブログ

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また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
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スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

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流れるような振付が実に魅力的です。

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
ディレクターが舞台に上がって来た…!
第75話
真っ青な眼で瞬きもせずに、ディレクターである
ウルフ・ガッド氏はショージの眼を真っ直ぐに
見つめたが、深海の様な瞳が怖い。しかしその
刹那、ニッと笑うと、「合格だ~っ!君を我が
バレエ団に迎えよう!これから直ぐに事務局に
行き、契約書にサインしてから日本で労働許可証を
申請する事になる。となると今が11月だから…
労働ビザが降りて君の仕事の開始は来年の8月の
半ばになるだろうか…?」

ショージはディレクターの言葉を全部聞き終わる
前に、「ちょっと待ってください、私は今すぐに
仕事が必要なのです!日本に帰るお金など持って
いませんし、日本で申請しなくてもイタリアに
2年働いていたからイタリアで申請出来ます。
今から働かないともう食べて行けなくなるの
です!」すると今度はメガネをかけた金髪
クリンクリンの秘書が「今からって、それでは
ボーナスが出ないわよ?このバレエ団では
12ヶ月の雇用期間と13ヶ月分の給料という
契約になるのだから、12ヶ月に満たない方には
ボーナスは出せませんが…」

ショージは即答した。「ボーナスは要りません…。
お願いです!食べて行けるだけの給料が出るのなら
それだけで結構です。今直ぐに仕事がしたいの
です!」ショージの言葉にすかさず秘書が、
反論しようとするのをディレクターが手で
押さえ、「それは私にとっても願ってもない
事だ!よし、善は急げだ!事務局に行こう!」
 
秘書は目をパチクリさせながら、3人で劇場を
出た。劇場から歩いて5分ほどの街の中心地に
事務局はあった。その厳重な門を潜ると更に
奥に進んで行き、一面ガラス張りのひときわ
美しい部屋でタキシード姿の老人が他の人たちと
話し込んでいる。

ディレクターと秘書、そしてショージは待つ事
10分。ディレクターはその老人の前では、
非常に丁寧な挨拶をした。そしてショージに
英語で「この方が我々の劇場の支配人だよ」
と紹介した。タキシード姿の老人…いや、
支配人は優しい眼をしているが、ちょっと
珍しそうにショージを見た。

支配人はパーフェクトな発音の英語でショージに
「よくいらしてくれました…」そう丁寧に言うと、
今度はディレクターとスウェーデン語で話し出した。

1986年11月中旬 契約書にサイン!

早速、支配人とディレクターのウルフ・ガッド氏
の立会いの下で、契約書にサインをした。契約も
無事に済んだ。危機一髪のところであった。
これほどの危機感は今までで1番だった。
しかしこれからイタリアに、再度戻らなければ
ならない。労働許可証の申請のためだ。

普通ならば日本に帰って申請しなければならない
ところをイタリアで済ませられるのはとても
有り難いのだが、それでも労働ビザを取得する
までに数週間は掛かり、もう財布の中を覗いたら
そんな長い日数を暮らせるだけの金の持ち合わせ
が無い。 ガラス張りの部屋から丁寧にお辞儀
して出ると、支配人は優しく笑顔でショージたちを
見送った。

ショージはこの時点からショージのボスになった
ディレクターに聞いてみる事にした。 「あの、
お願いがあるのですが…、」前を歩くウルフ氏と
金髪の秘書が足を停めて振り返った。「何だい?」
ショージは躊躇いながら、「給料の半分を前借
させて頂けませんでしょうか…?」これには
秘書がびっくり仰天して金髪の髪をゆさぶり、
ブルーの巨大な眼をおよそ顔半分位までに見開き
ながら、「な、なんですって!?」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第74話

2022-07-29 08:13:23 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第74話
一般的なオーディションの場合、その結果は数カ月
経ってから連絡して来る事が多い事からショージは
オーディションの前に秘書に予め願い出た。
「すみませんが、即この場で、オーディションの
結果の答えが欲しいのです。もし、ディレクターが
私を気に入ってくれなくてもショックは受けません、
お願いです、結果だけはこの場で教えて欲しいのです。
私は今とても厳しい条件の下に立たされておりますので、
勝手を言っているのは重々分っております。すみま
せんが、なんとかお願い出来ませんでしょうか?」
 
秘書は困惑していたが「一応、ディレクターのウルフ
ガッドには伝えてみますが、ディレクター次第なので…」
金髪をクリクリにカールした女性秘書はディレクターの
方に向かって歩いて行った。秘書の話では「オーディ
ションはスタジオではなく、劇場の舞台の上で行われ
ます。普通、オーディションが舞台上で行われる
ケースは珍しいのですが、この日はたまたまバレエ団の
舞台リハーサルと稽古が舞台上で行われるため、
オーディションも舞台の上になるのです…」

バレエ団のダンサーのための稽古が即ちショージの
試験だ。稽古も中盤に入り、ここからが勝負だった。
火蓋は切って落とされた。ここで失敗すればショージの
将来は終わってしまう。もう生活する金が財布の中に
半分しか残っていない。日本に帰る切符を買う金など
到底持ち合わせていなかった。

背水の陣!

早速、3人ずつグループになって一緒にジャンプする
のだが、ショージの順番が来ると、4人になった。
それでも音を外さない様にテンポを守りながら回って
いくと、劇場の巨大スピーカーから男性がスウェーデン語
でペラペラと言った。

稽古担当のバレエ教師、ユッスィがジャンプを制止した。
そしてショージの傍までツカツカと寄って来て、「今、
ディレクターが君一人でマネージ(舞台を大きく旋回する
技術)をしなさいって言ってるんだよ…」「えっ、私一人
だけでですか?」ユッスィは、皆を少し下がらせて
ピアニストのブルガリア人の男性に、「じゃあ、スタート!」

ゴーサインを出した。このディミトリというピアニストが
ショージに目で合図を出した。「君のやり易いテンポで
弾こうじゃないか…!」ディミトリの熱の籠った指先!
グランドピアノの内部のハンマーが弦を強く叩き
グランワルツの調べに乗ってショージもありったけの
力でステップを踏み出し、ジュッテ・アントゥール
ラッセに入って行く。

周りのダンサーたちもじっと見入った。ショージは
空中にいる時間がとても好きだ。「ああ、跳んでいる、
空間に浮かんでいる!」と実感し体中が喜びで満た
される。最後にパラプリ(フランス語の傘という
意味のジャンプの一種)で仕上げに入れた。

暫くしたら、全員のダンサーたちが拍手をした。すると、
つかつかとディレクターが客席から舞台上まで上がって
来て、ショージに向かって英語で言った。「君が私の
秘書にショックを受けても良いから直ぐに合格か不合格
かの返事が欲しいと言ったんだね?じゃあ、言おう…」
ディレクターのウルフ・ガッド氏は、金髪の髪に
真っ青な瞳でショージを睨む(にらむ)ようにして見た。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第73話

2022-07-28 08:00:27 | webブログ

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スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
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スウェーデンの第2首都、ゴッセンブルグ
第73話
スウェーデンには、2つのバレエ団があることを
知った。1つはロイヤルスウェディッシュ・
バレエ団で首都ストックホルムに所在するが、
もう一つはゴッセンブルグバレエ団(日本
読みはギョテボルグ、または、ヨーテボリバレエ
団)だ。スウェーデンの第2首都的存在である。
日本で言えば大阪に当たる。

地図を見ながら、そのすぐ左横にはノルウェー
という国があり、その国の首都のオスロは
ゴッセンブルグからは非常に近い。まずは
ゴッセンブルグバレエ団に電話を掛けてみた。
ショージ「あの、すみませんが…ダンサーの
空きは有りますか?」相手「ああ、1つだけ
なら有ります。」ショージ「ほ、本当ですか!?
男性ですか?女性ですか?」相手「出来れば
男性を探していますが…」ショージは念を
押して聞いてみた。「身長は175センチで
日本人です。問題は無いでしょうか?」
当地に着いてから問題が出ないように絶対に
聞いておく必要があるからであった。

実際にそこまで行ったは良いが、白人でなければ
とか背が低いとかいう理由で断られないかを
前もって聞いておく必要があるからだ。
ショージの財布の中は旅費と食費の分を考慮
すると限界があった。もし、このひと月以内で
仕事がなければ、乞食になるか、飢え死にする
しかない。まさに「背水の陣!」必死に聞き出した。

相手「何か訳有りなのですか?凄く切羽詰った
感じに聞こえますが…?」ショージ「切羽
詰まっている?その通りなんです!私、直ぐに
でも行きます!オーディションはいつが可能
でしょうか?明日は、船の関係で無理ですが
明後日なら行けます!お願いします!」
相手「ここに芸術監督がいますので、ちょっと
聞いてみますね…。」

しばらく沈黙があり、相手「では、明後日に
お待ちしています。あなたの名前は?」
ショージ「ショージ!マイネーム、イズ、
ショージ!」よっしゃ~っ!

ゴッセンブルグ・バレエ団のスタジオ

劇場から歩いて10分ほどの距離の場所にその
スタジオは所在した。ショージは意を決して
スタジオ内に入ると近くにいた女性がショージに
近づいて来て、「あなた、誰?」と聞いて来た。
「私は先日、オーディションしてもらえると
約束して頂いた日本人です…」と応えると、
「ああ、あなたなの…。明日が約束の日だった
はずですが…朝、劇場で…と」ショージは約束を
守らなかった事がいけなかったんだなと躊躇
しながら「そうなんですが、早く着いてしまった
から見学に来たのですが、邪魔だったでしょうか?」
すると、「別に邪魔ではないけれど、ちょっと
待っていてください。ディレクターはあの椅子に
座っている方だから、挨拶したら
いいわ…」

秘書の女性は、ディレクターに突然の来訪者が
来た事をその場で伝えた。しかしディレクターは
椅子からは立とうとせずに、そのまま座った状態で
ショージに手を上げて挨拶を返しながら、振り付け
を続行した。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!) 第72話

2022-07-27 07:50:47 | webブログ

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オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
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スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

バリエーションは「ライモンダ」からのVaです。大人の雰囲気が素敵で
ピアノの音楽が段々と盛り上がり、キャラクター的な振り付けも魅力な
踊りです。
男性陣はコッペリアからフランツのVaです!

一歩一歩ゆっくりと楽しみながら踊りましょう!
さ、やりましょう!

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
レッジオエミリア駅のプラットフォーム
第72話
とうとうイタリアを去る最後の日となった。電車が
来るまでランドルは10メートルも向こうで背中を
向けて立っており、ロバートも話しかけては
くれない。電車が到着した。

ショージの顔を見ようともしない向こうのランドルと
ロバートに最後の礼を声にした。「今まで本当に
有難う、とても楽しかった!君たちの事は絶対に
忘れないよ…」

その刹那、ランドルが走り寄って来て「うわっ~!」
っと叫びながら石敷きのプラットフォームに泣き
崩れた。「え、ラ、ランドル…!?」ランドルの
こんな泣く姿など見た事もなかった。「ショージ、
ドントゥ ゴー!、ホワイ?ホワイ、アーユー
ゴーイング?」石敷きのプラットフォームに咽んで
いるランドルをショージは呆然と見つめ、次いで
ロバートを見ると、普段はブルドッグの様なガッシリ
とした身体の静かなロバートが肩を震わせて泣いて
いるではないか!

「あ…!?」 ショージは電車に乗り込み2人に
声を掛けたくても、涙で詰まってもう声が出ない。
無情にもドアーが閉まり2人が見る見る流れて
去って行く。ランドルは地面にうつ伏して泣いて
おり、ロバートは頭を抱えているのが最後の別れ
となってしまった。

電車のドアーにしがみつくショージは、「ランドル…
ロバート…いつかまた会おうね!ありがとう…
今まで本当にありがとう!」心の友だちがそこに
いた。列車は、ひたすら北欧へと走って行く

絶対絶命!

巨大船のシリアラインがフィンランドの港に横づけ
された。首都ヘルシンキに到着したのだ。まだ朝が
早かったのだが、トラム(路面電車)に乗り込むと
セントラルステーション(鉄道の中央駅)にやって
来た。「ここで新しい生活が始まるんだ…」と感慨も
一潮だ。

「ああ…なんて美しい国なんだろう…」そして
この国にもオペラ座がある。ショージの夢に見た
ロシアはこの地平線の向こうにあるのだ。ショージは
胸一杯に空気を吸い込んだ。「よしっ、行くぞ!」 
バレエ団の芸術監督を担っているドーリス・ライネ
女史の部屋に入ると開口一番、「んー、惜しかったわ!
あなたからの連絡が来なかったから、つい先日に
新しいダンサーと契約をしたところなのよ…、
あなたは連絡もして来ないから、いつこのバレエ団に
やって来れるのかも分からなかったものね。残念ね、
また空きがあったらその時ね。」

ショージは身体が凍りつき、あまりのショックに
口が開かなかった。取り敢えず、今何を言われた
のかだけを把握出来たので「さようなら…」とだけ
言い残して、このヘルシンキ国立劇場を後にした。

 お先真っ暗とはこの事だ。しかし頭を抱えて
しょぼくれている悠長な時間などはない。財布に
残っている金の事を考えると、もう走るしか
なかった。一体何処に向かって走るのか?本屋だ。
本屋に行き、片っ端からバレエ雑誌を読んだ。
「何処でも良い、本当に何処のバレエ団でも
良いから直ぐに雇ってもらえる所を見つけないと…!

今更、イタリアのバレエ団に引き返すことなど
出来ないのだ」ショージの手元には1か月分の
生活費しかない。仕事がなければもうそこで終りだ。
食べる事も動く事も出来なくなる。「あー、ど、
どうしたらいいんだ…絶対絶命か!?」
(つづく)