彼がとおる不思議ナコースを私も 白石一文

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先端技術総合研究所を訪ねるのは、三月いらいだｔった。
先端技術総合研究所を訪ねるのは、三月以来だった。あのときは行先もしらされぬままに辻井に連れてこられたが、今回はＡＶネットワー０－ックカンパニーの戦略企画室の一一環として正式に中山たちに招かれての訪問だった。
　あれからわずか九カ月して経っていないとはとても思えない。
網膜認証装置の前に自らが立ちながら霧子は我が身の変転に驚きを禁じ得なかった。
前回同様、中央籐四階の部屋に入ると、中山と茂木が待っていた。
　こちらは辻井以下企画室のメンバーが三人、室長の三谷、技術担当の山田そして広報担当の霧子だった。
　前回明らかに違うのは向えるえる中山たちも、訪ねてきた辻井たちも浮かない顔をしていることだだった。霧子は未来テレビの試作機をみるのは今回が初めてだったが、辻井、三谷、山田はすでに何度もここの試験機のデモを経験している。
「ただのバクじゃないって、どう言うこと？」
辻井はいつにない厳しい調子で中山に話しかける。
「ついこのあいだまですごく順調だって言っただったたでしょう。それが急にこういう話しになるなんて全然納得できないのよ」
「まことに申し訳ありません」
中山が恐縮してきった様子で頭を下げる。となりの茂木も神妙な顔つきで下を向いていた。