伸子は両手を後にまわし、半分開け放した窓枠によりかかりながら室内の光景を眺めていた。
部屋の中央に長方形の大テーブルがあった。シャンデリアの明りが、そのテーブルの上に散らかっている書類――タイプライタアの紫インクがぼやけた乱暴な厚い綴込、隅を止めたピンがキラキラ光る何かの覚え書――の雑然とした堆積と、それらを挟んで相対し熱心に読み合せをしている二人の男とをくっきり照して、鼠色の絨毯(じゅうたん)の上へ落ちている。
部屋じゅうを輝かす灯が単調であるとおり、二人の男の仕事も単調でつまらなかった。ホームスパンの服を着た、浅黒い痩せた男が左手に綴込を待ち、眼をくばり、頁をめくり、どんどん桁の多い数字を読みあげて行く。向い合って、伸子の父の佐々(さっさ)が椅子に浅くかけ、青鉛筆を持って油断なく数字をチェックしていた。
部屋の中央に長方形の大テーブルがあった。シャンデリアの明りが、そのテーブルの上に散らかっている書類――タイプライタアの紫インクがぼやけた乱暴な厚い綴込、隅を止めたピンがキラキラ光る何かの覚え書――の雑然とした堆積と、それらを挟んで相対し熱心に読み合せをしている二人の男とをくっきり照して、鼠色の絨毯(じゅうたん)の上へ落ちている。
部屋じゅうを輝かす灯が単調であるとおり、二人の男の仕事も単調でつまらなかった。ホームスパンの服を着た、浅黒い痩せた男が左手に綴込を待ち、眼をくばり、頁をめくり、どんどん桁の多い数字を読みあげて行く。向い合って、伸子の父の佐々(さっさ)が椅子に浅くかけ、青鉛筆を持って油断なく数字をチェックしていた。