鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

和製クトゥルー神話二冊を読む。

2010-05-30 22:13:25 | 書籍
さて、中間試験も終わりましてあまりの出来の悪さに愕然となりつつもつんであった本に手を付けられるのが嬉しい今日この頃です。
という訳でブックオフで買ってきた和製クトゥルー神話ものを二冊立て続けに読んでいるわけですが…正直な話、日本の作家が書いたクトゥルーものってどれも微妙なんですよね。クトゥルー神話を十分に生かしきれていないというか、下手なパロディにしか見えないというか。
まず一冊目は殊能将之「黒い仏」。以前クトゥルー神話の魔導書関連のネタを漁っていた時に偶然この作者の「妙法蟲聲經義疏」を見つけてから気になっていたんですが、いざ読んでみると…いやはやなんとも。ミステリー作品としても神話作品としてもどちらも中途半端で消化不良この上ありません。折角「妙法蟲聲經」やら「くろみさま」やらの面白そうな小道具が出てくるのにそれを生かしきれていない感は否めません。というか個人的にはミステリー成分全廃して天台僧と星慧派(笑)の攻防を描いてくれたほうが嬉しかったのですが…。最後の方で星慧が時を駆ける僧侶になってしまったのは驚きですよ。「確か、こんな台詞だったな、と思い出しながら」って消失のキョンですかあんたは。
あ、ちなみにこの妙法蟲聲經って他の魔導書類の名前なんかと同じで他の人が作品を書くときにも使って良いんですよね? っていうか良いですよね。異論は認めない。よし今度の文芸部の作品で使ってやろう。
二冊目は田中文雄「邪神たちの2・26」。…えー、カバー折り返しの略歴によると作者は早稲田の政経学部卒だそうですが、その割にはこの程度の作品かよとしか言いようが無いです。神話作品として云々以前に時代考証が甘い。在郷軍人会員の村長が「中国の戦況は――」などと言うし(この時代の呼称としては「支那」或いは「大陸」が妥当)。後は個人的な話として作者の歴史観が気に食わないというのもありますが。
…うーむ、これならネット上にある個人HPの神話作品のほうがよっぽど見事な仕上がりですわ。