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ネパールの思い出  その3

2005-02-15 | アジアの想い出
私のとっての第2の故郷とも言えるネパール。
今回は友人の思い出を綴ろう。

C.B.シェレスタ
ネパール語もヒンドゥー語もできず、英語も幼児なみの私に、政府がつけてくれたアシスタント・スタッフの リーダーがC.B.シェレスタだ。職業はエンジニア(測量技師と建築家の中間のような職種)。
同世代の彼は、非常に賢く、たよりになる存在だった。始めは、あまり手伝ってくれず、ニコニコしながら、 こちらの行動を観察していたのだが、1週間ほどすると、するりとこちらの内懐に入ってきて、パートナーとして欠かせない存在になった。
ヒンドゥー教徒。2人の子供がいる。奥様は、良く覚えていないが、笑顔の元気な女性だった。
彼は、とてもエネルギッシュで、親切で、決してへこたれず、絶対怒らない。
いつもニコニコ笑っている。彼が精進中に預言者めいたことをしたのは、既に書いた。
科学知識も豊富で、辞書を引き引きヘタな英語を使う私と、よくいろいろな話をした。
ヨーロッパ的な合理主義の教育を受けていたのに、敬虔なヒンドゥーだった。
地形を測量していたとき、いきなり
「日本じゃ、どうするんだ?」
と聞いてきた。辞書をひいて
「サテライト」
というと
「あぁー、そうか!」
と納得して、仲間に説明していた。
友人というよりも、先生かな?彼はfamilyと言ってくれたが。

B.アラム
シェレスタと同年の、サーベイヤー(調査員。これも日本で言う、技師のような仕事)。
ムスリム。私がつきあった、最初のムスリムだ。奥様一人、子供3人。当たり前だが、奥様には会ったことがない。
彼は無口で、真面目な漢。漫画か小説に出てくるような、たよりになる仲間だ。
指輪物語のサムを思い出して欲しい。ムスリムのサム。それがアラムだ。
シェレスタとアラムは地方公務員。しかし、彼らはどんな職業、どんなカーストの人間でもわけ隔てなく付き合っていた。勿論、外国人の私にも、とてもジェントルだった。
私がクリスチャンだと言っても、まったく意に介せず、よくお弁当をわけてくれた。
特にそば粉のチャパティがおいしかったのは既に書いた。

サキャとバズラチャーリア
サキャは非常勤の地方公務員で、写真家、製図師(つまり絵描き)。
仏教徒で、奥さんと4人の子供がいる。アラムより1歳若い。
彼の美人の奥様の弟がバズラチャーリア。
サキャの一族は、名前でわかるように、釈迦の一族と関係があると思われている。
義弟のバズラチャーリアも、もちろん仏教徒で、バズラは密教の、アチャーリアは先生という意味。ヒンドゥーでいうバラモンにあたる。本当は仏教にはカーストは無いはずだが。
二人ともイケメンで、特にバズラチャーリアはスラッとした美男子。
非常にジェントルで知的で無口だから、日本なら(どこでも?)もてるだろう。
サキャは、ちょっと背が低いが、奥様は、もっと小柄で、並んでいるとお雛様。

5人組
シェレスタ、アラム、サキャ、バズラチャーリアの4人に、私を加えた5人は、いつも一緒に仕事をし、遊びに行った。私は居心地良かったけれど、今思うと、彼らはおかしな外人のお守りで、神経を使っていたかも知れない。
何しろ、カーストもなにも知ったことじゃない人といるんだから。
ある町で、豚が道路に寝ていたのを見て、思わず写真をとって、呆れられた。
「豚は本当は清潔なんだよ。日本には無菌の豚だっているんだ」
と力説して笑われた。野蛮だなーと思われたかな?

仕事に関しては、皆素晴らしい能力の持ち主だった。
特にサキャは絵描きだけあって、エレガントでスマートな実測図を描いた。
私が
「彼は天才だ」
と言うと、みんなニコニコした。仲間が褒められてうれしかったんだろう。
しかしサキャは、ネパール人の中でもエキセントリックだったらしく(たぶん日本人としての私のよりも?)
何を考えているのかわからない事が、よくあった。
「あれ、どういうこと」
と聞くと、みんな笑いながら
「サキャはサキャだから、誰もわからないよ。あんたも天才だって言っただろ」
と答えた。本当に、CGでも使ったら、彼のイマジネーションなら、世界に通用するだろう。

楽しかったのは、1年位過ぎたころ、アラムがポンコツのローバーのジープを買った時だ。
私も修理代をいくらか寄付したが、完成してからが最高だった。
休みの日には、みんなで、あちこちの町にいったり、自然公園にいったり、遺跡めぐりのピクニックをしたりした。
私がチャパティを好きなので、妻帯者は奥様にお弁当を作ってもらって、みんなで分けて食べた。
どうも料理は、アラムの奥様が、上手に感じた。

一度、調査区の作業員さんが、私をごちそうしたい、といったことがある。
4人組が、一緒に食べようと誘うので、OKした。
その日、事務所の近くの木に、可愛い子ヤギが繋いであった。
次の日は仕事を早く終わらせてパーティーだ。みんなニコニコしている。
料理は、珍しいカレーっぽいカレー(ネパールでは、日本にあるインド風のカレーは少ない)とライスと果物。結構、肉が入ってるカレーで、豪華なものなのだろう。
みんな、はしゃいで食べているのだが、一人のおしゃべりな作業員の若者が
「めぇーめぇー」
と言って、こちらをみる。まさか?
「ひょっとして、この肉、あのヤギじゃないよね?」
よほど真剣な顔だったのだろう。
作業員の監督が真顔で
「いえ、違います。バザールで買ってきました」
と言う。あれは、相当怪しかった。後で聞いたときに、嘘のつけないアラムは返事をしなかったからだ。


(鮎川)

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