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2009-10-26 | 世の中のこと
肥満差別は犯罪なのか、それとも肥満をこそ罰すべきなのか――ひまだね英語
2009年10月23日

■本日の言葉「obese」(肥満している)■
肩の力を抜いたゆるい「暇ダネ」の英語をご紹介するこの金曜コラム、先週が「やせすぎ」の話題だったからでもありますが、今週は「太りすぎ」の話題について。肥満が社会問題化する米英では「肥満差別」「肥満迫害」も問題になりつつあるという話です。なので、あまりゆるくないです。(gooニュース 加藤祐子)

○肥満差別は犯罪か

いつものようにコラムのネタを探していたら、19日付のBBCでこんな記事を見つけました。「太りすぎは『保護されるべき』(Overweight 'should be protected')」と。太っている人をバカにしたりからかったりするのはいけないと、そういうことなのかと思って読み進むと、ことはもっと深刻で。「仕事探し、家探しなどで太っているからといって差別するのは犯罪だ。米サンフランシスコ同様にイギリスでも、差別禁止を立法化するべき」という市民団体の主張がその内容でした。

英市民団体「Size Acceptance Movement(体のサイズを受け入れよう運動)」いわく、太りすぎを理由に誰かを差別したり非難したりするのは「hate crime」とみなすべきだと。「hate crime」とは、なかなか日本で概念が定着しないのですが(現実には多発しているのに、ひとかたまりの現象として認識されないというか)、「憎悪犯罪」とでも訳しますか。「無差別犯罪」とも少し違う。相手の人種や国籍、宗教、政治信条、社会的地位、性的指向、場合によっては応援するスポーツチームを言いがかりに、その相手を憎悪し、そして暴行あるいは殺害するというもの。日本でたびたび起きる、少年がホームレスを襲撃殺害するなどの事件は、まさにこの「hate crime」に相当します。

そしてこの市民団体は、太っているからといって嘲笑したり罵倒したりするのは「hate crime」と同様、「違法な差別行為(discrimination)」と規定すべきだと主張していると。人種(race)にもとづく差別を「racism」と呼ぶなら、太っている(fat)ことを理由にした差別は「fat-ism」だと(実際にはそういう言葉はまだありません)。

なるほど。この団体の代表たちは「いきなり殴られたこともある。ビールを顔にかけられたこともある。電車の中で暴力を振るわれたこともある。『おいデブ、そこどけ! 健康な人間のお通りだよ!』と言われたこともある」と。また就職においても、同等の能力と資格をもつ候補者が2人いたら、企業の93%が、太っている人よりはやせている方を選ぶものだと、この市民団体は主張しています。

この記事を読んでもらった同僚はこれにびっくりして「イギリスでは本当に、太ってるからって殴られたりするのか?」と。私はちょっと考えて、殴られたりしている場面そのものを目撃したことはないものの、怒鳴られたり嫌味を言われたりしている場面は確かに見たことがあると答えました。たとえば閉店間際のパブとかで。あるいはパブ閉店後に最終バスを待つ行列で、太った人に「お前が乗ると俺が乗れないだろ!」とか難癖つけてる酔っぱらいと、列に並ぶほかの人たちが言い合いになったり(イギリスではとかく、パブが閉まる前後に、あちこちで言い合いになることが多いのです)。

ほかにも、肥満とか太りすぎが原因で何か辛い目に遭わされたという事例がどれだけあるか探したところ……ありました。直近だけでもたくさん。たとえば22日付のAP通信記事によると、今やアメリカの各地で「肥満患者が救急車を使う場合、搬送代に特別料金が加算されるため、『肥満差別だ』と批判の声が一部であがっている」とか(そうです、アメリカではほとんどの地域で、救急車は有料なのです)。

あるいは22日付の英タイムズ紙によると、英スコットランドでは何と、肥満した両親のもとで子供たちが育つのは危険だからと、福祉担当局が新生児を含む子供たち4人を強制的に保護したケースがあったと。もっとも子供たちを緊急保護した理由は肥満ばかりではないそうなのですが(新生児だけは親元に戻されることになったという報道もあります)。

またイギリスではここ数日、体重444キロ(!)の「world's fattest bloke(世界一太った男)」と呼ばれている男性について、100万ポンド(約1億5000万円)もかけて国民保険制度が治療・介護してきたのはおかしいんじゃないかと、かなり厳しい意見が飛び交ったり。いや毎日2万カロリーも摂取する彼は食べ物中毒という病気なんだから怒るよりも治療すべきだという意見が出されたり。リンクしてしまったように、大衆紙「サン」などが大々的にとりあげて、いわばさらし者に。

○なぜ肥満は社会問題なのか

最初のBBC記事に戻ります。「fat-ism」禁止を求めるこの英団体は、サンフランシスコの条例を参考にするよう求めているとか。そういう条例がサンフランシスコにあるということも、私は知らなかったのですが、いわく太っていることを理由に、入居を拒否したり、採用差別したりすることは禁止。医療機関でも、たとえ患者が太りすぎだと思っても、患者自身がその話をいやがるようなら、「やせるように」と無理強いしてはいけないのだとか。

「個人の自由を最大限に尊重する街、サンフランシスコ」のイメージが自分にあるからか、これを読んで「サンフランシスコらしいなあ」と思う一方で、最後の医師に関するくだりにはちょっと首をひねったりもしました。ただし、科学専門サイトのこの記事によると、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究で、肥満の患者とそうでない患者に対する医師の態度を比較すると、肥満患者を軽んじる傾向にあるのだとか。太っている患者には、敬意を払わないと。もしそうだとすると、病院に行って医者にバカにされたり叱られたりしたくないという、このサンフランシスコの条例も理解できます。

というのも、アメリカに行ったことのある方はうなずくと思うのですが、同じ「太ってる」と言っても日本人のそれと、アメリカ人の太り方は、ちょっと規模感があまりにも違うので。日本の医者が「痩せた方がいいですよ」とやんわり諭すのと、アメリカの病院で言われる「痩せた方がいい」では、ちょっと緊急性も違うだろうなと。

よく指摘されるデータですが、OECD健康統計によると2006年現在で、アメリカの肥満率は34.3%。先進国1位です。イギリスは同2位の24%、日本は3.4%で先進国最下位。太りすぎの率は同年現在で米英日それぞれ33%、38%、21.8%。

ここでいう「肥満」とは、BMI(体重÷身長÷身長)値30超。BMI25~30が「太りすぎ」です。ちなみに先週ご紹介した「やせすぎモデル」の話で出てきた数字は、BMI18とか、BMI13とかでした。ファッション業界の身体感覚と、一般人業界(業界というか…)の身体感覚とが、いかに違うか、改めて数字を見てげんなりしたりも。

なぜ米英でこんなに肥満や太りすぎが多いのか。理由は、そもそもの食生活の中身だとか(脂肪の多い食事とか)、食品産業の社会的影響力の問題だとか、色々言われています(「スーパーサイズミー」とか「ファーストフード・ネイション」とかの、本や映画がお勧めです)。

なぜ米英で食事をすると太りやすいのかは理由は色々あると思いますが(米英生活経験者なら、いかに彼の地では太りやすいか身にしみている方も多いかと)、様々な統計で指摘(このリンク先はPDFです)されているのが、教育との関係。そして貧困との関係。さらに言えば、貧困や教育との関係は、特にアメリカではおのずと人種との関係にもなります(米疾病対策センターの調査によると、白人に比べて黒人とヒスパニックの肥満・太りすぎは明らかに多い)。

前回も書いたように米英では、大量生産される安い食事や食材は得てして栄養価が低く、脂肪量が高く、肥満の原因となりやすい。つまり米英では、肥満とは貧困問題でもあり人種問題でもあるのです。太りすぎの人を差別し攻撃するというのは、その人の貧しさを攻撃し、教育レベルを教育し、生活習慣を攻撃し、場合によっては人種をも攻撃しているという、そういう側面が絡みついているのです。米大統領夫人のミシェル・オバマさんが、ことあるごとに子供たちの肥満問題について発言 し、健康な食生活と運動の重要性を声高に強調しているのは、そのためです。

そして人口の実に64.3%が肥満あるいは太りすぎだというアメリカでは、肥満関連の健康問題の医療費は全体の約9%を占め、毎年1470億ドル(14兆7000億円)にもなり、10年前から倍増しているという、米政府統計も明らかになっています。加えて、肥満ではない人に比べると、肥満の人の医療費は42%も多いのだとか。

○むしろ太った人を罰すべき??

アメリカでは現在、医療保険改革の是非をめぐり激論が交わされています。国民皆保険に反対する人の多くは、なぜ民間の健康保険に入れないような(既往症があったり、収入が少なかったりする)人たちの分も、自分たちが分担しなきゃならないんだという、社会福祉制度の基本概念を蹴飛ばすような本音を抱えています。とすると、ただでさえ健康保険の社会分担に反対する一部のアメリカ人が、上記してきたような「太りすぎの人=貧しかったり、白人でなかったり」に対する医療費の分担を、快く受け入れるはずもなく(そういう人たちにしてみれば、イギリスで「世界一の太った男」に医療費を国民が払い続けていることこそ、国民医療保険制度のダメさ加減の象徴だ、ということになります)



ワシントン・ポスト紙が運営するオピニオン・サイト「Slate」は21日、「太っている人は、太っているというそのことで罰を受けるべきだろうか?」という書き出しで、肥満・太りすぎの人の医療保険について解説。「太っている人はその分だけ病気になりやすいのだし、肥満というのは得てして自己努力で改善できるのだから、保険料は高くすべき」という、保険会社の考え方を紹介しています。そして、いま連邦議会が検討中の医療保険改革案では、(1) 民間保険会社は、加入者の体重によって保険料や保険金の額を変えられるし、(2)公的医療保険でも、保険料の算定などに加入者の生活スタイルを考慮することになっているのだとか。ここでいう「生活スタイル」とはつまり「煙草を吸っているか」「コレステロール摂取量を制限しているか」「血圧を下げる努力をしているか」「体重コントロールの努力をしているか」など。つまり何の努力もしないで肥満ないしは太りすぎだという人には、やはりペナルティーが加えられることになりそうなのです。

最初にご紹介した、サンフランシスコの条例とはえらい違いです。肥満差別は犯罪なのか。それとも肥満こそが罰せられるべきなのか……。

何の結論も出ませんが、日本にはどういう「fat-ism」(肥満差別)があるだろうか考えていたら、ふと目に入ったニューヨーク・タイムズ記事。これによると、世界全体では現在7人に1人が飢えているのだそうです。世の中、おかしい。このコラムを書きながら自分がおいしいゴーヤチャンプルー弁当をむしゃむしゃ食べたことを気まずく思うのはおかしいと分かっているのに、それでも気まずく思わずにはいられないほど、おかしい。

◇本日の言葉いろいろ

・obese = 肥満している
・obesity = 肥満
・overweight = 太りすぎ、体重過多
・hate crime = 憎悪犯罪
・discrimination = 差別
・racism = 人種差別


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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。
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やっぱり人間はストイックじゃないと。

肥満は罪ですよ。

明らかに。

特に20代、30代の肥満は人間としてマズイでしょ。

40代でも恥ずかしい。

まぁ、60代以降は少しはしょうがないかな。

どっちみちムクムクしてて可愛いのは10代の始めのうちまでですね。

逆に70代でもスマートな人は素晴らしいですね。


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