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食欲の秋

2009-11-02 | 食べ物関係!!
テーマ別書籍レビュー 文豪の愛した一品、旬の食材… 食欲の秋に読みたい6冊
2009年10月28日(水)14:10
text by 横川 潤(よこかわ じゅん) 食評論家

食評論家。文教大学国際学部国際観光学科准教授。米国の有名食ガイド「ザガットサーベイ」を翻訳して紹介。食に関する著書、連載多数。主著に『東京イタリアン誘惑50店』(講談社)、『美味しくって、ブラボーッ』(新潮社)など。10月には座談会形式のレストラン評価本「東京最高のレストラン2010」刊行予定。
 今秋また、「ミシュランガイド東京」が発売になる。この本について言いたいことは山ほどあるが、ことに「皿の上」だけを見て決めるという基準が腑に落ちない。では、部屋のデザインやサービスは無視を決め込むのか、その店がどこにあるのかは関係ないのか。

 「皿の上」以外は大切である。例えば、高級店に行くという場合、ハレの日を祝いたいとか、女性を口説きたいとか、商談を進めたいといった、「皿の上」以外の動機が重要である。そして「食べる」という行為は、著しく個人的であり、想像力がその喜びを一段と増す点において、性行為に近い。単なる生殖行為に快感はなく、ベッドの上に物語や意味が加わる時、恐らく快感はいや増す。食も同じで、そこに加える社会的文脈、すなわち「物語」や「意味」にこそ、カネを費やす価値がある。

 例えば、寿司店で旬のネタを知っていたら楽しいし、フランス料理店で食材やワインの故事やシェフの履歴に通じていたら座が盛り上がる(ただし、やりすぎないこと)。そして、物語や意味を作り出すプロである作家は、さすがにおいしく食べる術を知っている。皿の上“以外”を生き生きと描いた本を読めば、実際に食べた気、行った気にさえなる。そういった本を6冊紹介したい。

作家が愛した豊穣なる味

 山本容朗著の『文人には食あり』は、作家と食に関する雑記。北杜夫は食通のイメージとは遠いが、彼は東京・銀座にある老舗の洋食店「煉瓦亭」を褒めている。「ほどよく冷えたビールの小ビンに、カリッと揚げたての上カツレツとピカピカのライス、そしてアツアツのコーヒー。まさしく銀座の昼食バンザイ!を叫びたくなってしまうおいしさです」。気取らず、威張らずの物言いが、『どくとるマンボウ』の作風に通じている。

 とはいえ、仕事として東京中のトンカツを食い荒らした身として、煉瓦亭のカツレツは今なお東京屈指のレベルにあると確信している。「衣食住にさして欲望を持たぬ」と言いながら、さすがの慧眼である。「皿の上」のイメージが無限に豊穣なることを知る、とびきりの美食指南と言えようか。

 山本容朗と同じく、編集者として作家と親しく接した書き手である重金敦之は、近著『美味は別腹』で、やはり作家のエピソードを交えながら、月ごとの食材エピソードを紹介。1月の餅、2月のアンコウ、3月のアナゴなどと続き、旬の喜びを伝えている。

 旬とは言いつつ、堅苦しくは考えず、9月は「メロンパン」である。メロンの味とは似つかぬあのパンは、ビスケットの生地で表皮をこしらえており、焼き上がると、かさぶたのごとく盛り上がり、その部分をむしり取りたく……といった、軽妙なうんちくが満載だ。日本人として日本に生きる幸せを知らしめる一冊である。

 岡本かの子は、「食」というテーマに真っ向勝負を挑み、小説としての可能性を探った作家である。食は万人が知っていて、毎日親しむ対象であるがゆえ、生半可な取り組みでは、知識面や表現面で馬脚を現しかねない。その点、短編集『老妓抄』収録の、「鮨」と「食魔」には、食という魔物の虜となった登場人物を通じ、ちらちらと青白い炎を燃やす作家の狂気が見え隠れする。「食魔」の主人公がしきりとげっぷをし、咀嚼物の味とにおいを反芻するくだりなど、敬愛した谷崎潤一郎の影響が色濃く出ている。
米国人が見た京料理

『すべてを食べつくした男』ジェフリー・スタインガーテン著、柴田京子訳、文春文庫
 「高倉通りと四条通の角に立って信号が変わるのを待ちながら、この土地の料理ならずっと食べ続けてもいいと思った」と綴るのは、ジェフリー・スタインガーテンの『すべてを食べつくした男』。米国のフードジャーナリストである著者は、同書で世界各国の美食を紹介しつつ、京都を「世界で一番気に入っている都市だ」と絶賛。フランス料理の研究家である辻静雄の書を片手に京都の名店を訪ね歩き、料理にのめり込む様が、日本人として好ましい。

 京懐石の「千花」では、椀物を口にしてこう感じ入る。「基本にあるのは、うま味という日本的概念の集大成だった。あらゆる食品の極まるところのもの、風味、こく、滋味、醍醐味のことだ」。

 米国の料理といえば大味、米国人といえば味音痴という、日本人の思い込みは激しいが、この本を読めば、「一概には言えない」の感を深めるはずだ。異文化の食をどこまで理解し得るかを考えさせられる。

 最後に実用書を2冊。今や有名シェフはセレブ化し、食べ歩き好きはしきりと料理人の噂話を語りたがる。手っ取り早くそうしたうんちくを語りたい人には、小石原はるかの『レストランをめぐる冒険』がお薦めだ。料理人の師弟関係や交友関係をチャート化し、彼らやその料理写真を満載。見ているだけで行った気になる、食べ歩き上級者になりたい初級者向けの本である。

 最後に拙書『恐慌下におけるA級の店選び究極の法則』を紹介する。「A級」とは「え~級」である。温泉に浸かるとつい「え~湯だな」と声が出る。このご時世、高くてうまい店を「え~」とは思い難い。価格と味で「え~」とうならせる東京の店全50軒を紹介。エッセイに近い内容だが、一読して行った気になったとしたら、著者として本望である。


『レストランをめぐる冒険』小石原はるか著、小学館

『恐慌下におけるA級の店選び 究極の法則』横川 潤著、講談社+α新書
(日経ビジネスアソシエ 2009年9月15日号)
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人間たるモノ、やっぱり知性も満足させないと。

食べ物本ではスタンリイ・エリンの『特別料理』とか。

ハリー・クレッシングの『料理人』とか。

『バベットの晩餐会』の原作(イサク・ディーネセン)も面白かったですよ。

まぁ、クレッシングの『料理人』が知られていない分だけお勧めですが。
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卵かけご飯、味わい尽くすシンポ
2009年11月1日 YOMIURI ON LINE


 卵料理好きが集う「第5回日本たまごかけごはんシンポジウム」が、島根県雲南市吉田町の吉田総合センター周辺であり、多くの家族連れらでにぎわった。
 シンポは10月25日にあり、卵の早割りや二人羽織で卵かけご飯を食べる競技、様々な卵かけご飯のレシピの展示など盛りだくさん。
 中でも、10種類以上から選んだ卵と、ネギ、カツオ節、しょうゆをかけてご飯を味わう「吟味会」には長い列ができ、ご飯1杯に卵2個を割ってかける人や、2杯目を食べようと再び列に加わる人もいた。
 家族で初めて訪れた、同市加茂町の介護士菊池理恵さん(34)は「しょうゆによって甘さや辛さが微妙に違っていておいしい」と話し、長男の陽斗君(5)は「卵かけご飯は大好き。もっと食べたい」と笑顔だった。
 シンポは毎年、米や卵をより多くの人に食べてもらおうと、全国に先駆けて卵かけご飯専用のしょうゆが開発された同町で開かれている。
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これは私も大好きです。

人生の最後は、これでも良い。

ご飯はササニシキが合うと思います。

あっさりしてますからね。


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