オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

『忘災』の原発列島

2014-06-01 | 原発

安全神話が重大事故を招く−−これが東京電力福島第1原発事故の教訓だろう。安倍晋三政権は「世界で最も厳しい水準」をクリアした原発から「再稼働させる」と明言している。だが今、その「世界一」こそが新たな安全神話では、と疑う声が上がっている。【浦松丈二】

 
 「客観的に世界最高水準なんかではない」。脱原発派・菅直人元首相はそう言いながら手元のタブレット端末をたたいた。フィンランドのオルキルオト原子力発電所3号機の写真が画面に広がる。小泉純一郎元首相が視察して有名になった核廃棄物最終処分場オンカロの近くに建設中の巨大原発だ。菅元首相は3月にここを視察した。
 
 「フランスのアレバ社の原発だが、飛行機の衝突にも耐えられるよう格納容器が二重になっており、メルトダウンに備え、溶けた核燃料を受け止めるコアキャッチャーも入れた。ただし、建設費は大幅に増えて1兆円近くになりそうだと言っていた」
 
 格納容器を二重にし、コアキャッチャーをいれる費用は、原発を新設するより高い。全国の原発48基全てを改良するのは無理だ。
 
 「世界一」の源流は昨年6月、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「世界一厳しい基準を目指した」と語ったことだ。その意味は、過酷事故対策のほか、火山や竜巻への対応も新たに盛り込んだこと。安倍首相は今年1月の施政方針演説で「規制委員会が定めた世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り、原発の再稼働はありません」と「世界一」を強調。4月に政府が策定したエネルギー基本計画も「世界で最も厳しい水準」という言葉を使っている。
 
 世界一の根拠を菅元首相が質問主意書でただしたところ、安倍政権は閣議決定した答弁書で「国際原子力機関(IAEA)や諸外国の規制基準を参考にしながら世界最高水準となるよう策定した」と説明。菅氏は「世界最高水準になるように策定したから世界最高水準だと同義反復しているだけだ」と批判する。
 
 「世界にも類をみない欠陥基準だ」と厳しく批判するのは、経済産業省、資源エネルギー庁で官僚として働いた経験がある泉田裕彦・新潟県知事だ。
 
 泉田知事は「IAEAが求める多重防護の第5層(住民避難など原発施設外の緊急時対応)が日本ではそっくり抜けている。世界では、メルトダウン事故が起きることを前提に被害を最小限にとどめる対策を定めているが、規制委員会はそこは自分の担当ではないと逃げている」と指摘する。 IAEAの多重防護には五つの階層がある。それぞれの階層が、前階層の防護が破られても独立して機能するよう対策を求められている。日本では過酷事故は起きないとの「安全神話」から事実上、第4層(過酷事故の拡大防止)、第5層(放射性物質の放出の影響緩和)の取り組みはされてこなかった。新基準でも、第5層に含まれる住民避難計画は、災害対策基本法で自治体にまかされており、規制委の審査対象外だ。
 
 東電柏崎刈羽原発を抱える新潟県には教訓がある。07年の中越沖地震。原発敷地内で火災が発生したが、東電の消防隊は消火に失敗し、避難した。新潟県庁への連絡用ホットラインは機能しなかった。地震で施設のドアがゆがみ、東電社員らが中に入れなかったのだ。
 
 「非常時に連絡が取れないと困ると言って、新潟県が東電に作らせたのが免震重要棟。当時の規制基準にはなかった。その後、新潟だけにあるのはおかしいと福島第1原発に作られた。完成は東日本大震災の8カ月前だった。あの要求がなかったら今、東京に人が住めていたかどうか疑わしい」
 
 泉田知事はおもむろに規制委設置法の抜粋を差し出した。規制委の仕事として「原子力利用における安全の確保」とある。新潟県は同法に基づき、規制委に第5層の住民防護策などについての質問を出したが、きちんとした回答は返ってきていない。「規制委の田中委員長は法律を知らないのではないか。認識を確認するために面会を申し込んでいるが拒否されている」と泉田知事。田中委員長は知事からの批判に対し「私がコメントすることではない」。「世界一」の基準は、地元を納得させることすらできていない。
 
 福島原発事故の前から地震と原発事故の複合災害「原発震災」を警告していた石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)は「欠陥だらけの新基準では第二の原発震災が起こりかねない」と憂慮する。
 
 「新基準が世界一厳しいというのはうそで、IAEAの多重防護を実現していない。耐震性に注目した場合、地震による損傷を予防する第1層が致命的に甘い。まるで、過酷事故が起きてもよい、そのときは新設の過酷事故対策(第4層)で破局を食い止める、と考えているみたいだ。しかし、第4層の応急策も施設の充実よりも作業員頼みで大地震時に機能するかどうかわからず、非常に危険だ」
 
 石橋氏が指摘するのは、耐震設計のための地震の揺れ「基準地震動」の設定が低すぎること。「3・11後、原子力安全・保安院の人たちは『基準地震動を抜本的に引き上げなければ』と反省していたのに、規制委が発足して忘れてしまったかのようだ」
 
 再稼働の優先審査が進む九州電力・川内原発は、基準地震動を審査申請時(昨年7月)の540ガルから620ガルに引き上げ、新基準で大筋妥当と認められた。しかし石橋氏は「活断層がなくてもマグニチュード7前後の地震が発生し、揺れが1000ガルを超えることはありうる。現在の『科学的予測』は過小評価のおそれがあるから、少なくとも過去に全国で観測された最大の揺れを、全原発で一律に考慮すべきだ」と訴える。
 
 事故の教訓から生まれたはずの「世界一」の規制基準。新たな安全神話が列島に忍び寄っている。(毎日新聞)
 
 
 安倍政権も東電も、またもや「事故は起きない」という根拠のない“安全神話”を前提にしている。事故を前提とした大規模な避難計画は示されていない。事故も地震も「起きないもの」とされている。要するに世界一はもともといつもの言葉の遊びに過ぎない。
 原発の屋根は航空機でも破壊出来る。原発があることが逆に国防を危機に曝すと言うのに、安倍政権の好戦的態度は止まない。
 まさに神頼みの空威張りだ。
 
 日刊ゲンダイによると、安倍首相が衆院予算委員会に水筒を持ち込み、愛飲している水は磁気玉水。パチンコ玉大のセラミックボールを浸した〈情報水〉というシロモノだ。販売元のバイオIT株式会社によると、くだんのセラミックボールは直径1センチで、1個1万800円。漢方やミネラルなど、体にいい成分の磁気情報をバイオIT(生命情報記憶伝達技術)で水に転写。その水と粘土を混ぜて作ったモノだという。
 発売中の「週刊新潮」によると、昭恵夫人が半年ごとに約10個購入している。作り方は水1リットルにボール1個を10分間浸すだけだ。
 1台200万円と高額な健康装置「ラドン吸入器」も免疫力向上のため、愛用している。
 
 一国のトップがこうした“民間療法”に頼るのはいかがなものか。
 
 「いわば神頼みで、権力を握る政治家や経営者が行き詰まると占いに頼るのと同じ理屈です。自分の力に限界を感じながらも、それ以上のことを成し遂げたいという心理状態なのでしょう。健康によさそうなモノは〈自分は守られている〉という気分をあおるのでなおさら頼みにする。実際、プラセボ効果が表れることがあります。ただ、依存する恐れもある。思い通りに“頼みの水”を口にできないと、精神的に不安定になり、思いつきで行動する心配があります」(心理学博士 鈴木丈織氏)
 
 国の命運を神頼みの首相に預けている図は何とも怖ろしい。怖ろしいを通り越して自虐的な笑いを誘発してしまう。
 
 高価な民間療法を試せない1億2700万人の国民は八百万(やおよろず)の神々に今年一年の無事を託す。
 神様一人あたり16人の民を救ってくださればよいのだが、100円のお賽銭ではお仕事に身が入らないのでしょうねえ。
 

海水注入止めたのは官邸の誰? 吉田氏「記憶が欠落」

2014-05-27 | 原発

2011年3月13日、東京電力福島第一原発の吉田昌郎(まさお)所長は首相官邸から電話を受け、原子炉を傷める3号機への海水注入を断念して淡水に変更した。電話の相手は誰だったのか。東電が12年に開示した社内テレビ会議録で判明しなかった事実について、吉田氏は政府事故調査・検証委員会の聴取でも「記憶が欠落している」と答え、その人物の名を口にしていなかった。
 海水注入を巡っては、吉田氏が12日夜、官邸にいた東電の武黒一郎フェローからの中止要請を無視して1号機で継続したことが知られているが、実は13日未明にも3号機を舞台に「海水か淡水か」を巡る論争が繰り広げられていた。
 吉田調書などによると、3号機は原子炉の水位が下がり、核燃料がむき出しになる危機を迎えていた。午前5時42分に淡水の入ったタンクがすべて空だという報告があり、吉田氏は海水注入を決断した。
 「緊急です、緊急です、緊急割り込み!」
 午前6時43分、官邸に詰めていた東電社員から電話が入った。吉田氏がこの時、原子炉を傷める海水注入は極力避け、真水や濾過水を使用するよう要請されたことはテレビ会議録で判明している。吉田氏は12日夜と異なり、この13日朝はあっさりと要請を受け入れた。吉田氏はのちの聴取で、電話の主が「官邸の誰か」に代わったことを明かしたうえでこう語っている。
 「私は海水もやむを得ずというのが腹にずっとありますから、最初から海水だろうと、当初言っていたと思います。その後に官邸から電話があって、何とかしろという話があったんで、頑張れるだけ水を手配しながらやりましょうと」
 ところが、質問が電話の相手に及ぶと、吉田氏の歯切れは悪くなった。
 「ここは申し訳ないけれども、私の記憶はまったく欠落していたので(中略)、本当に誰と電話したかも完全に欠落しているんです。ですから、そこは可能性だけの話しかない」
 吉田氏は電話の相手の可能性として、当時官邸にいた東電と原子力安全・保安院の幹部の名を挙げたが、断定はしなかった。真相は今もはっきりしない。
 テレビ会議録によると、吉田氏が淡水を注入することを決めた後の午前9時13分、福島オフサイトセンターに詰めていた東電の武藤栄副社長も「もう海水を考えないといけないんじゃないの。これ官邸とご相談ですか」と淡水注入に疑問を呈した。吉田氏はそれでも淡水注入を続けた。
 吉田氏は使える淡水をかき集めようとしたが、うまくいかなかった。そして午後0時18分。吉田氏はついに「あの、もう、水がさ、なくなったからさ」と海水注入への切り替えを指示した。
 吉田氏は10分程度で切り替えが終わると思っていたが、実際に海水注入が始まったのは午後1時11分。この間、1時間近く3号機には水が入らず、原子炉はますます過熱した。深刻な事態を招く発端となった「官邸からの電話の相手」は今も謎のままだ。(朝日新聞 木村英昭)

■3号機への海水注入を巡る3月13日の動き
午前6時43分 
「官邸の誰か」が淡水注入を求める。吉田所長は受諾
午前9時13分
武藤副社長が海水注入への切り替えを進言。吉田所長は淡水注入を継続
午後0時18分
吉田所長が海水への切り替えを決断
午後1時11分
吉田所長が海水注入開始を報告
 
これだけ危険で重大な決断を強いられた電話の主に関する記憶が欠落している・・・・・そんなことがあるはずがない。科学者や技術者ではなく、利権しか頭にない行政が決断を下すシステムが怖ろしい。しかも名前も開示できない。こんな体制でまた原発を再稼働しようとしている。

核のゴミ、1本1億2800万円 英に委託の処理費、95年の3倍

2014-05-27 | 原発

 青森県六ケ所村に4月、英国から返還された高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の輸入価格が、1本あたり1億2800万円だったことが税関への申告でわかった。過去最高額で、海外に処理を委託した廃棄物の返還が始まった1995年の3倍。管理や輸送の費用がかさんだとみられる。費用は電気料金に上乗せされる。 原発から出る使用済み核燃料を再処理して再び燃料として使う「核燃料サイクル政策」について、政府は4月、閣議決定した新たなエネルギー基本計画のなかで「推進」するとしたが、再処理で出る核のゴミの費用もかさむことで、サイクル政策の非経済性が改めて浮かんだ。
 再処理事業では新たな燃料のほか、利用不可能で強い放射線を出す高レベル放射性廃棄物も発生する。六ケ所村にある日本の再処理工場はトラブル続きで完成しておらず、電気事業連合会によると、日本は69年以降、英仏両国に送って再処理を依頼してきた。
 再処理でできたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料などは英仏から日本の各原発に順次運ばれて一部は使われてきた。一方で、高レベル放射性廃棄物を固めた「ガラス固化体」も95年以降、六ケ所村に返還されている。固化体は円柱形で直径約40センチ、高さ約1・3メートル、重さは約490キロ。地下深くに埋める地層処分を目指すが、処分場の候補地は決まっておらず、六ケ所村の施設内で保管されたままの状態だ。
 固化体の返還は今年4月が16回目で、132本が入った。固化体を所有する各電力会社は「私企業間の契約のため」として価格を明らかにしていない。
 だが函館税関八戸支署への届け出によると、4月に管内に入った固化体の輸入総額は169億3800万円で、1本あたり1億2800万円。13年2月の前回は1億2200万円で、95年4月の1回目は4400万円だった。
 固化体はテロ対策などのために管理や輸送に厳重な警備が必要となる。また、再処理を委託した英国の工場でトラブルが相次ぎ、事業費もかさんだとみられる。固化体は英国に約640本残っており、19年までに順次運ばれる予定だ。
 使用済み燃料の再処理費用について、各電力会社は電気料金算定のもととなる経費「原価」に組み入れている。東京電力福島第一原発事故後に相次いだ電気料金値上げの際も原価に入れて申請し、認められた。 (朝日新聞 大谷聡)

2兆2千億円という税金をつぎ込み、完成が20回も延期されて、未だに正式稼動していない六ヶ所村再処理工場。国策のサイクルがいっこうに回らない中で、使用済み燃料や核のごみは六ケ所村にたまる一方だ。

危険な使用済み核燃料を弄び、高額な給料を受け取り、失敗の責任も取らずに研究という名の遊びを続ける科学者。
当初は1997年完成予定だった。現在の予定は今年の10月。建設費は当初の3倍の2兆2千億円に膨らんだ。

 2006年に実物の使用済み燃料を使う試運転を始めた。今年1月には原子力規制委員会に稼働に向けた審査を申請。日本原燃の赤坂猛理事(60)は「技術的には完成している」と強調するが、規制委の審査をクリアできるかは不透明だ。

 再処理工場に隣接する使用済み燃料プールは北海道電力泊原発(後志管内泊村)のプールの3倍の3千トン、国内最大の貯蔵容量を誇るが既にその98%が埋まっている。使用済み燃料は99年から受け入れ始めたが、再処理工場が動かないのでプールから取り出せない。使用済み燃料は各地の原発のプールで1年、再処理工場のプールで3年の計4年冷却し再処理する予定だったが、今は「平均して13年ぐらい寝ている」(赤坂理事)。
 海外で再処理され返還された核のごみも六ケ所村に集まる。放射能の強い廃液をガラスと混ぜ固めたガラス固化体1442本が一時貯蔵庫で保管され、今回132本を受け入れた。国は、核のごみを「青森県以外の場所」(資源エネルギー庁幹部)で地下300メートルより深くに埋める方針で、処分技術の研究は宗谷管内幌延町で行われているが、実際に処分する場所は全国どこにもない。

 青森県六ケ所村の再処理工場から環境に出される放射性物質は年間で33京ベクレルもあり、平均的な原子力発電所から環境に出される放射性物質の1年分を一日で抜いてしまうという。 再処理工場でやることは、プルトニウムを取り出す事だけで、放射能を消すわけではない。原子力発電所が長い間運転していると、燃料を焼き固めた瀬戸物、燃料棒の中に、核分裂生成物とプルトニウムがどんどん溜まっていく。燃え残りのウランもまだ残っているという状態で、いわゆる使用済み燃料になる。燃料棒の中に閉じ込められているので原子力発電所から出てくる放射能は、基本的にはあまり多くない。
 再処理では、燃料棒をちょん切ってセトモノをむき出しにするという作業から始まる。次にセトモノの中からプルトニウムだけを取り出す。濃い硝酸を温度をかけて温めて、セトモノをドロドロに溶かして液体にし、薬品を加えて、燃え残りのウランと核分裂生成物とプルトニウムを化学的に分ける。閉じ込めていた放射性物質はバラバラにする事によって外に出してしまう。特にクリプトン85というのは完全なガス体で、どんなことをやっても他の物質と化合しないし、フィルターというものにもくっつかない。クリプトン85に関しては、一切捕捉しないで全量を放出するという。 お金をかければクリプトン85もマイナス153度で液化でき、閉じ込めることができる。しかし、六ヶ所村では放出する。
 
 さらにフランスのアレバ社が英仏海峡でやっているように再処理の過程で出る廃液も青森の海4k程度の沖合にパイプを作って流してしまう。気体の方は高さ150メートルの煙突を作って放出する。使用済み燃料棒のまま地中深く埋めた方が低コストで当面は環境汚染も防げる。
 青森の人達はこの事実を知らされ、自分たちの頭で判断して誘致を決定したのだろうか?

吉田調書必読

2014-05-21 | 原発

暴走する原発を止める責務は誰が負っているのか。いよいよ原発が破裂しそうになったときは逃げてもよいのか。そもそも人間に暴走を始めた原発を止める能力はあるのか。命に危険がせまったとき人間は規則通りには動かない。自らの命を優先する者もいる。それを計算に入れずに、どう安全を設計できるのか。


 福島第一原発の元所長、吉田昌郎(まさお)氏(昨年12月に死去)の証言を記録した「吉田調書」の内容が明らかになった。
 
 福島第二原発への所員の大量離脱について、東電はこれまで、事故対応に必要な人間は残し事故対応を継続することは大前提だったと、計画通りの行動だったと受け取られる説明をしてきた。外国メディアは残った数十人を「フクシマ・フィフティー」、すなわち福島第一原発に最後まで残った50人の英雄たち、と褒めたたえた。しかし、吉田自身も含め69人が福島第一原発にとどまったのは、所員らが所長の命令に反して福島第二原発に行ってしまった結果に過ぎない。
 所長が統率をとれず、要員が幹部社員も含めて一気に9割もいなくなった福島第一原発では、対応が難しい課題が次々と噴出した。まず、爆発は、2号機でなく、無警戒の4号機で起きていたことがわかった。定期検査中で、核燃料が原子炉内でなく燃料プールに入っている4号機の爆発は、原発の仕組みを知る世界の人を驚かせた。燃料プールは圧力容器や格納容器のような鋼鉄製の容器に守られておらず、仮に核燃料が自らの熱で溶けるようなことがあれば、放射性物質をそのまま直に生活環境にまき散らすからだ。しかも燃料プールには膨大な量の核燃料があった。後になって、4号機の燃料プールの核燃料は溶けておらず、爆発の原因は3号機から流入した水素と疑われることになるが、午前9時39分には火災の発生が確認され、米軍から回してもらった消防車で消そうとするなど騒ぎとなった。吉田は部下が福島第二原発に行く方が正しいと思ったことに一定の理解を示すが、放射線量の推移、2号機の白煙やゆげの出現状況とを重ね合わせると、所員が大挙して所長の命令に反して福島第二原発に撤退し、ほとんど作業という作業ができなかったときに、福島第一原発に本当の危機的事象が起きた可能性がある。28時間以上にわたり吉田を聴取した政府事故調すなわち政府が、このような時間帯に命令違反の離脱行動があったのを知りながら、報告書でまったく言及していないのは不可解だ。
 東電によると、福島第二原発に退いた所員が戻ってくるのはお昼ごろになってからだという。吉田を含む69人が逃げなかったというのは事実だとして、4基同時の多重災害にその69人でどこまできちんと対応できたのだろうか。政府事故調も東電もほとんど情報を出さないため不明だ。
 この日、2011年3月15日は、福島第一原発の北西、福島県浪江町、飯舘村方向に今回の事故で陸上部分としては最高濃度となる放射性物質をまき散らし、多くの避難民を生んだ日なのにである。
 
 最悪の事態が心配されたとき、所員の9割が命令に反して10キロ余り離れた別の原発に一時退避したという。
 電力会社は原発運転員らに「命が危なくても残って作業せよ」と命じられるのか。そう危惧される事態が実際に起きていたのである。
 自衛官や警察官、消防士など特殊な公務員と違い、原発運転員は民間従業員である。吉田調書は重大な問題を投げかけている。
 ところが原子力規制委員会の田中俊一委員長は調書の存在自体知らなかったという。事故を繰り返さないために生まれた規制組織が、事故の詳細を把握していないとは、あってはならない話だ。原発の新しい規制基準が昨年つくられる過程でも、事故時の運転員たちの離脱は、その可能性さえ議論されてこなかった。 政府事故調は772人もの関係者から事情を聴いている。ほかにも貴重な論点が隠されているに違いない。もう一つ戦慄すべき事実が明らかになった。2011年3月14日、福島第一原発3号機で高濃度の放射性物質を人為的に外気に放出するドライベントの準備を進めていたのだ。国はこの時、混乱を避けるため3号機の危機を報道機関に知らせない「情報統制」をしており、多数の住民が何も知らないまま大量被曝する恐れがあった。

 吉田調書などによると、3号機は14日未明、注入する水が枯渇して危機を迎えた。東電はウエットベントで格納容器の圧力を下げようとしたが下がらず、14日午前6時23分、次善の策としてドライベントの検討を始めた。午前7時前の時点で甲状腺がんを起こす放射性ヨウ素が南南東の風に乗って北北西方向に広がり、3時間で福島県北部の相馬郡付近が250ミリシーベルトになると予測。この値は甲状腺被曝の影響を防ぐため安定ヨウ素剤を飲む当時の国の目安100ミリシーベルトを超えていた。 国から午前7時49分に情報統制に入ったと通告された後も、東電は再度、ドライベントを実施した場合の放射性物質の拡散を予測していた。 吉田氏は政府事故調の聴取でドライベントを検討していたか質問され「それはもちろん、しています」と明言。一方で、それに先だってウエットベントの操作をしている間に「爆発してしまって何か圧が下がってしまったんですね」と述べた。これは午前11時1分に3号機建屋の爆発が偶発的に起きた後に圧力が下がり、人為的なドライベントを実施する必要がなくなった経緯を説明したものだ。爆発後、構内の放射線量はほとんど上がらなかった。偶発的な爆発と違い、人為的なドライベントには危険性を住民に周知する責任が発生する。
 当時、国は3号機の圧力上昇を報道発表しないよう東電と福島県に要請していた。この情報統制について吉田氏は聴取で「そんな話は初耳」とし、「広報がどうしようが、プレス(報道発表)をするかしないか、勝手にやってくれと。現場は手いっぱいなんだから」と証言。原子炉の制御に追われ、住民への周知にまで気を使う余裕がなかったことを打ち明けていた。
 東電広報部は取材に対し、3号機で放射性物質の拡散予測を含めドライベントの実施を検討したが、住民には知らせなかったことを認めた。最終的に実施しなかった理由については「事前の検討段階で、最終的に実施する必要がなくなった」とした。
 

新エネルギー基本計画は原発再稼働宣言

2014-04-18 | 原発

 福島第一原発では濃度の高い放射能汚染水を別の建物に送っていたというドジが発覚した。3年経っても原発事故はまるで収束していない。汚染水誤送は想定外のことだというから、これからも想定されていない事態が目白押しだろう。それにもかかわらず、安倍政権が新エネルギー基本計画を閣議決定して原発再稼働を進めると言う。
 今回の基本計画は原発政策を続行していくという宣言のようなものだ。これからは、規制委の審査結果によって自動的に再稼働していくことになる。
「エネルギー政策に奇策は通用しない」とか「万全の対策を尽くす」など無内容な文言が並ぶ。「高レベル放射性廃棄物は国が前面に立って最終処分に向けた取り組みを進める」そうだ。言葉だけの努力規定で最終処分が進展するなら世話はない。数値も期限も明示されない計画?単なる「再稼働宣言」に過ぎない。
事故を検証し、教訓を経た形跡がない。集団的自衛権問題と同じく、「民意などくそくらえ」の姿勢だ。
 安倍政権の原発政策に、都知事選で連携した細川護熙元首相と小泉純一郎元首相がまたもや立ち上がった。「自然エネルギー推進会議」を立ち上げ、自然エネルギーの推進、原発再稼働と原発輸出を阻止するための活動を開始する予定だ。
 原発事故は、「安全性」より「経済性」を重視したために起きた。それにもかかわらず、政権は「経済性」を最優先とする計画を掲げたのである。原発にしがみつくことが経済性優先になるとは露ほども思わないが・・・・

 田中龍作ジャーナルよると、原発再稼働に警告を発する集会に自民党の国会議員が参加していたと言う。主催者が参加国会議員の名前と政党をアナウンスすると、「なぜ自民党が来るんだあ」・・・ヤジまで飛んだ。原発に反対しても河野太郎議員のように祖父の代から受け継いだ盤石の地盤があれば怖くないが、当選回数が少ない議員にとって執行部の方針に逆らうことは、自殺行為にも等しい。1選挙区で3人も4人も当選する中選挙区制度の頃は、執行部の方針にタテついても、派閥の力によって公認が配分されていたため、公認を外されることはなかった。公認を外されても、後援会の力で当選できた。派閥の力が衰えた今、党を牛耳るのは総裁と幹事長だけだ。2人が原発推進派となれば、ハト派と原発慎重派は肩身が狭くなる。安倍政権の行き着く先は、戦争と原発だらけの世界だ。


核燃料税の不思議

2014-03-27 | 原発

稼働している原発の核燃料に課してきた核燃料税の仕組みを、原発が止まっていても電力会社などに課税できるように原発を抱える八つの道県が変えていたことがわかった。朝日新聞の調べでは、これにより原発停止状態でも2014年度以降、少なくとも年間計109億円の税収が確保されることになった。税収の大半は値上げされた電気料金で賄われており、電気利用者に負担が押しつけられている構図が浮かんだ。
 核燃料税は、自治体が地方税法で定められた住民税などのほかに、条例で課すことができる「法定外普通税」の一つ。原発の安全対策に使うとして福井県が1976年に始めた。
 東京電力福島第一原発の事故前は、古くなった核燃料の代わりに新しいものを挿入するたびに価格に応じて課税する仕組みで、原発が動いていることが前提だった。
 ところが、朝日新聞社が全国13の原発立地道県を調べたところ、8道県が事故後に、原子炉の規模を表す出力に応じて課税できる「出力割」を採り入れる条例を作っていた。新潟、静岡、島根の3県も導入を検討中だ。新たな仕組みでは、原発が止まっていても一定額の税収を確保できるためだ。
 現在、全国48基のうち稼働している原発はない。12年度実績では、13のうち8道県が税額ゼロだった。
 福井県は11年11月、最初に新制度を導入。それまでは原発停止中の税収はゼロだが、出力割によって常に年間60億円が入ることになった。同県税務課の担当者は「稼働の有無に税収が大きく左右され続けるのは好ましくない」と説明する。
 青森県は12年4月に出力割を導入し、今年4月から濃縮されるウラン製品などにかける税率を2・3倍にすることも決めた。4月以降、年間37億円増える。これを加えると、青森を含めた8道県は少なくとも146億円の税収を得ることになる。
 一方、福島県は「原発の稼働を前提とするはずの核燃料税は福島の状況にそぐわない」とし、12年12月に核燃料税をやめた。宮城県も13年6月の条例更新時に出力割の導入は見送った。
 電力各社が13年、料金値上げ申請で経済産業省に提出した資料によると、北海道、関西、四国、九州の電力各社がそれぞれ、北海道、福井県、愛媛県、鹿児島県の核燃料税の増額分を、料金算定の基礎となる経費「原価」に上乗せしていた。核燃料税は道県の一般会計に入り、交付金として原発立地・周辺の市町村に一定割合が支払われることが多い。各道県は出力割導入や増額の理由について「福島事故により安全対策の必要性が増えたため」とするが、交付金の使途を見ると、物産館の建設費や商店街活性化策など安全対策からは遠い事業もある。(朝日新聞 大谷聡)
   

  
 福島事故後にもかかわらず、原発立地地域が原発への依存を続けていることの現れで、悪循環から抜け出す気もないらしい。
電力会社がいわれのない税金に「ノー」と言わないのは、金が地方自治体を黙らせる良い方法だと分かっているからであろう。それにコストはすべて電気料金に上乗せできる独占企業である。すべてのコストを電気料金に加算できるのだから、設備投資や地方へのバラマキをためらう必要は無い。むしろ電気料金の値上げで売り上げが伸びるのだから、こんなおいしい仕組みはない。原発銀座の福井県が1976年導入し、2011年通年課税に改定した核燃料税。福井県が発表した2012年度一般会計の決算によると、県税収入は前年度比8・0%増の926億5700万円で5年ぶりの増収となった。前年度大きく落ち込んだ核燃料税が、11年11月に導入された「出力割」が初めて通年課税になったことなどにより、過去2番目に多い77億7400万円と増えたことなどが要因だと言う。しかも12%から17%に5%も上げている。

敦賀市樫曲の山あいに広がる中池見湿地(約25ヘクタール)。多様な動植物が生息し、重要湿地とその生態系を保護する「ラムサール条約」への登録を目指す市民運動も展開されている。貴重な自然遺産を守る事業の原資が、実は<原発マネー>県から受け取る「核燃料税」で賄われる。ある県幹部は「実のところ、こんなにおいしい税収はない」と漏らす。原発が存在する限り、たとえ停止していようが核燃料税は支払われる。県は半永久的に巨額の収入を得る。まるで、唱えるだけで好きな物が手に入る「打ち出の小づち」だ。

 最大のメリットは、税収がどれほど大きくても、国の地方交付税交付金を減らされる心配がない点。この交付金は自治体の財源不足を補うのが目的なので、通常の県税の場合、増収があると、その75%にあたる額の交付金が減らされる。たとえば100億円の増収なら、〈ごほうび〉として県の取り分になるのは4分の1の25億円だけ。一方、核燃料税だと、100億円がまるまる入る。
こんな仕組みがあるから福井県は日本総合研究所が調査した都道府県別幸福度ランキングで燦然と一位に輝く。分析には▽人口増加率▽財政健全度▽食料自給率▽国政選挙の投票率▽1人当たりの県民所得―の基本指標5項目と、健康、文化、仕事、生活、教育の5分野50項目の計55項目を活用。「新たな観点や重要な要素」として、14年版では信用金庫貸し出し平均利回り、平均寿命、女性の労働力人口比率、自殺死亡率、子どもの運動能力の5項目を追加した。 福井県は分野別順位で仕事、教育が1位、待機児童率や持ち家比率などの項目で比べる生活分野が3位だった。新たに加えた5項目のうち女性の労働力人口比率、子どもの運動能力も1位となった。 西川知事は「県民の日々の努力や、これまで進めてきた子育て・教育などの政策の成果が認められたもの。これからも幸福度の向上をさらに高いレベルで追求するとともに、夢と希望があふれるふるさとづくりを進めていきたい」とのコメントを出した。原発マネーで幸福度日本一。かたや福島が復興もできず瀕死の状態だと言うのに、福井はますます肥え太る。こんなことが許される世の中なのだ。


ドイツで日本への反原発デモ

2014-03-10 | 原発

3月9日午前のNHKニュースが報じるところによると、ドイツの首都ベルリンで8日、日本政府に対してすべての原発を廃止するよう訴えるデモが行われた。
デモは原発に反対する市民グループの呼びかけで行われ、地元の市民やドイツに住む日本人などおよそ1000人が参加した。
ドイツ政府は日本の福島第一原子力発電所の事故を受けて2022年までに国内のすべての原発を廃止する方針を決定しており、ヨーロッパではイタリアやスイスも脱原発の方針を打ち出している。にもかかわらず事故当事国である日本の政府が急ピッチで原発再稼働への準備を進めている現況にドイツ国民とドイツ在住日本人が抗議の意思表示をしたものといえる。
参加者たちは風車を手にしてデモ行進をした。これは、風力発電も含む再生可能エネルギーへの転換を意味するもので、「再稼働反対」「原発を止めろ」と声を上げながら、ベルリン市内をおよそ2時間にわたって行進。そして日本大使館の前で集会を開き、日本政府に対して、すべての原発の廃止や原子力技術の海外への輸出を止めるよう訴えた。

「福島にチェルノブイリ、もうたくさん!」(デモのシュプレヒコール) 「福島は警告する」と書かれた横断幕を掲げ、原発の廃止を訴えるデモが首都ベルリンをはじめ、ドイツ全土で行われた。
 ドイツでは、安全性を見直すため、国内にある17基の原発のうち、稼働年数の長い8基をすでに一時停止させているが、反原発運動の高まりは「原発政策」の見直しにも影響を与えそうだ。

PM2.5以上に原発(放射能汚染)は地球環境を悪化させる環境問題なのだ。


終わらない悪夢

2014-02-27 | 原発
以前にこのブログにも貼り付けた動画でアレバ社の再処理工場が高濃度の放射能排水をパイプで沖合数キロのところに廃棄している事実に疑問を感じた。再処理工場で生成された90%の劣化ウラン(再処理して燃料にできるのはたった10%)がシベリアのトムスクでコンテナに積まれて野ざらしになっている事実にも驚愕した。そのような状況がなぜ放置されているのか?
 終わらない悪夢・・・・これを見て世界の惨状・特にロシアでの棄民政策・被曝モルモット政策には憤りを超えて絶望感に気持ちが萎えた。世界最大の原発国・フランスが制作した意義は大きい。
原題:Waste: The Nuclear Nightmare   制作:Arte France/Bonne Pioche (フランス 2009年)
 
 NHKも政府の原発政策を応援するために原発安全キャンペーン・福島帰還キャンペーンとしてNHK総合で何度も何度も再放映すると良い。福島などなんの危険もない農業最適地、終の棲家に思えるだろう。
時を経て再度視聴して、福島の廃炉にも東北の再生にも希望が持てなくなった。原発先進国はすました顔で戦前から地球上に放射性廃棄物を拡散しているのである。
 
 廃墟と化しているワシントン州コロンビア川沿いにあるハンフォードプルトニウム生産工場では今なお土壌や川の水から高濃度のウランやトリチウムが検出されている。
米国とともに核開発、核実験の双へき旧ソ連でも1946年に建造されたマヤーク核施設で軍事用プルトニウムが生産されていた。
 「ウラルの核惨事」の著書で有名なメドベージェフ博士は、1957年に発生したマヤーク施設の放射性廃棄物貯蔵施設における爆発事故を亡命後、1976年に告発した。約200人が死亡、27万人が被曝したにもかかわらず、このマヤーク核施設の爆発事故は一切公表されなかった。博士が公表しても西側諸国は無視した。英国原子力委員長はメドベージェフの話はナンセンスだと無視し、アメリカは知っていても黙っていた。おそらく原子力に対する恐怖を煽りたくなかったのだろう。

 フランスでも専門家がアレバ社の再処理工場の近辺で、水や土ばかりでなく、換気塔の上にタコをあげて排気を収集し、含まれる放射性物質を仔細に調べていた。これが途方もなく高い濃度であること、また海に放出されている排水中の放射性物質濃度が非常に高濃度であることに驚かされた。こんないい加減な会社に巨額のカネを払い福島原発で汚染水の処理をしていると思うとおぞましい。
 
 アレバ社の広報担当者の説明によると、使用済み核燃料は特殊な再処理工程を経た後、1%がプルトニウムとして、95%がウランとして回収され再利用されるため、廃棄されるのは全体のわずか4%にすぎないという。 そこで取材班は、回収されたウランが、どこで、どのように使われているかを追跡取材することになる。回収ウランの行き先は、何とフランスから8千キロも離れたシベリアの奥深くにあるトムスク、そしてさらに先にある地図に載っていない秘密都市セヴェルスクであることが分かる。フランスのアレバの工場にEU諸国を中心に日本など58カ所の原子力発電所から運ばれた使用済みの核燃料廃棄物は何とロシアに船と列車で運び込まれていたのだ。
たくさんのコンテナのような物体が無造作に放置されているのはグーグルマップの衛星画像からも確認できる。 
 
 このドキュメンタリーが問題提起していることは、チェルノブイリ事故以前に、既に深刻な環境汚染、健康被害が米国、ロシア、フランスなど核保有国に発生していたこと、しかも現在も汚染が拡散していること、そして情報が完璧なまでに隠蔽されてきたことである。
 視聴者の知りたいこと、知らなければならないことを映像化し、核燃料廃棄物の処理施設周辺地域において、大気、水、土などが50年ー70年経った今でも深刻な状態にあること、人が居住する場となっていないことを静かに伝えている。

 グリンピースの協力がなければ、これほど深い問題提起はできなかったろう。海洋投棄はかつてはどこの国もやっていた。放射性廃棄物をイギリス、フランス、アメリカ、ロシア、日本などがドラム缶で海洋投棄していた。これらの国々にとって海は格好のゴミ捨て場となってきた歴史がある。IAEAの調査によれば、50年間でさまざまな国が約10万トン以上の放射性廃棄物を海洋投棄し、イギリスだけで全体の80%を超えているという。グリーンピースやその他のNGO・NPOによる海洋投棄現場での体当たりの反対運動が報道されることにより世論を喚起したが、海洋投棄が国際条約で禁止となるまでには10年もの歳月を要した。
 日本はグリーンピースをクジラ肉事件で地裁、高裁と二度に渡って重罪としている。オランダから放射能、放射線測定器を満載し、日本の調査にきたグリーンピースを領海外に2ヶ月近く押しとどめ、海洋調査をさせなかった日本政府、その事実をまともに報道してこなかった日本のマスコミ、そして報道するときはいつもクジラを守る過激なグリンピースである。
 一方アレバ社のようないい加減な会社には巨額のカネを払い福島原発で汚染水の処理をしている。

 使用済み核燃料の安全性についての一番の懸念はプールに貯蔵されている点だ。プールが干上がったら使用済み燃料の温度が上昇して水素爆発を起こしかねない。飛行機の衝突やテロのリスクも想定するとプールでの貯蔵は認められないとドイツやスイスでは考えている。特にドイツは水を使わない方法を採用、コンクリートの貯蔵コンテナに入れ山の斜面に埋め込んでいる。山で守れない場合は非常に分厚いコンクリートの建物で囲んでいる。米政府はコスト面からこうしたやり方を拒否している。フランスのラ・アーグには地対空ミサイルがあり攻撃されたら打ち落とすつもりらしい。使用済み核燃料の貯蔵プールは世界中に450カ所近くある。あらゆる原発と再処理工場に最低1つはある。爆発につながる危険な場所があまりに多すぎる。

元フランス環境相のコリーヌ=ルパージュは次のように語る。
「私たち(フランス)は1970年代にいずれ廃棄物の処理法が開発されるだろうと考え原子力発電に賭けたが、40年間処理方法は見つかっていない。放射性廃棄物の大部分を再利用できる方法も廃棄物を一気に処分する方法も存在しない。原子力は持続可能なエネルギーではない。フランスでは原子力エネルギーはほとんど宗教のようなものである。右翼から左翼まであらゆる政党に支持されている。地球温暖化問題がさらに追い風になっている。原子力エネルギーが私たちを救うと考えられている。私は原子力技術に反対はしないが、多くの問題がある。経済的に見合うかどうかは私には分からないがフランス社会の諸悪の根源になっていると確信している。不透明な秘密主義の下で行われており、真実を覆い隠すという風潮は他の分野にも広がっている。現在の財政難の一因にもなっている。原子力エネルギーの推進に全力を注いでしまったため再生可能なエネルギーや効率的なエネルギーを開発する機会を失った。フランスの産業は遅れてしまった。」


フランス原子力庁長官、政府の科学技術顧問ベルナール・ビゴの迷言は原発推進者の鑑だ。
「私たちが今眺めている大聖堂を作った人は最初の石を置いたときは、自分たちの建築技術は時の試練に耐えると信頼していたはず。放射性廃棄物も同じ。長期間にわたり完全に封じ込める能力を私たちは持っている。放射性廃棄物を処分する時に必要な言葉がある。それは「信頼」。政治指導者、科学者、経営者の責任感、物理の法則、そうしたものをあなたが信頼しなければどうしようもない。信頼しなければ何も始まらない。未来を描くためには信頼が必要である」

取材の締めくくりに高名な天体物理学者ユベール・リーブスは静かに語った。
「原子力エネルギーが問題なのは未来を抵当に入れていること。原子炉の運転開始から解体まで一世紀以上にわたるかもしれない。同じ政治体制が一世紀以上つづくことはごくまれ。裕福だったアルゼンチンは今は貧しく、ソビエトは崩壊した。千年という単位で政治的安定を語ることは出来ない。エジプト人が廃棄物を埋めていたとしたらどうだろうと考えてみて欲しい。人類の歴史は実に多くの大変動がある。そんな途方もない未来を管理できると考えるのはおこがましいことだ。」
 
 
 
 
 


先日ブログで韓国での偽証の多さを書いたが、この頃は日本も負けてはいない。韓国の信念に対して、日本では利権と儲け至上主義のために「ウソ」が横行している。昨年後半から思い出すだけでも、レストランでの食品表示偽装、医薬品のデータ改ざん、JR北海道のレール検査数値改ざん、作曲家のゴーストライター事件……。次々に大掛かりで深刻な「ウソ」が浮かび上がる。もちろん最大のウソは原発に関する嘘。サルコジ大統領と同じように無知な政治屋と官僚、御用学者によって国民の税金を使った安全キャンペーンと福島帰還キャンペーンが繰り広げられている。
 ロシアやフランスの真似をすれば、日本にはまだまだ廃棄物処分の選択肢がありそうだ。目の前は太平洋なんだからパイプを延ばして福島沖に汚染水を放出してしまえばいい。再処理工場も早く稼働して海と大気中に放射性物質をどんどん放出すればいい。偏西風に乗って海に流れるだけだから日本人は安全。再処理工場や原発にはテロに備えて迎撃ミサイルを配備すればいい。大量に発生する劣化ウランは日本海溝に捨てれば何の問題もない。モンゴルに金を渡して野ざらしにするのもウインウインの選択肢だ・・・・・なるほどなるほど、そんなに簡単なことなら使用済み核燃料の処分に道筋をつけてから再稼働をお願いします・・・・・そうすりゃ誰も文句は言わんでしょう。

汚染水漏えい事故が頻発する福島への帰還キャンペーン

2014-02-21 | 原発
東京電力福島第一原発のタンクで、またも大量の処理水漏れ事故が起きた。漏れた水約百トンには、一リットルあたり二億四〇〇〇万ベクレルもの超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。「なぜ送られてくるはずの水がこない?」などと、気づくチャンスは少なくとも三回あったが、東電はいずれも見過ごした。甘い危機管理により、ただでさえ疲弊する現場の作業員たちは、汚染土壌の除去など余計な作業に追われる結果になった。(東京新聞 岸本拓也)

 極めて初歩的なミスによる極めて重大な事故である。
東電によると、 「近くに排水路がないことから海への流出はないと考えている。海への流出は確認されていない。漏えいはすでに止まっている。」という。漏えいした汚染水は現在回収中で、漏えい箇所の土壌回収作業を始めたという。
タンクからの100トンの汚染水漏れは、国際的な事故評価尺度における「レベル3(8段階中、下から4番目の影響度)」と評価された約300トンの漏えいに次ぐ量となる。今回漏れた汚染水の1リットル当たりの濃度は昨年8月のケースと同水準という。東電の説明によると、別のタンクに移送するはずだった汚染水が、漏えいが起きたタンクに誤って回り込み、溢れ出したという。配管の経路にある弁に故障が生じている可能性があるとして、今後調査を進めるとしている。
何度も汚染水が、コントロールされていない状態が発表されるのに、原発再稼働への道を進む狂気の日本である。
凍結壁を地下に打ち込んで、地下水の海への漏水を防ごうという滑稽な対策を打ち出している。過去に例がなく、効果があるのかどうかも疑わしい。金だけは膨大にかかる。愚かな行為の後始末を愚かな行為で取り繕う廃炉への道は30年では済まないだろう。

福島第一原発事故の被曝による健康影響について、住民の理解につながる情報を積極的に提供するための施策を復興庁が18日、発表した。放射線リスクに関する基本的情報を集めた冊子を作り、放射線の専門家の育成や住民向け相談員の配置などの支援もする。昨年12月に決めた福島復興の新指針で、原発事故の避難者全員の帰還を断念した政府の方針転換に伴う具体的な施策の一つだ。 国は今春以降、約3万8千人が避難を余儀なくされている福島の6市町村で避難指示解除を提案する予定だ。住民意向調査では放射線リスクへの不安などから、「帰らない」「判断できない」といった回答が多数を占めている。このため、国が率先して情報を発信し、不安を和らげる必要があると判断した。2014年度予算案に数十億円を計上している。冊子には福島県での個人線量計による外部被曝や子どもの甲状腺検査の状況などのデータを記載。世界保健機関(WHO)が事故後の福島でのがんの発生リスクを予測した報告書や放射線と喫煙など生活習慣によるがんのリスクの比較なども盛り込んでいる。 正確で最新の情報にするため、国は計56人の有識者に点検や助言を依頼した。今後も最新の知見を反映し、冊子を更新する。
 こうしたリスクを住民にわかりやすく伝えられる人材を福島の地元で多く育てるため、保健福祉や教育の関係者に研修をするほか、福島県立医科大に専門的な講座の創設を支援する。帰還を選んだ人の相談に乗る保健師や自治体職員らを配置し、活動する拠点を国が整備する。(朝日新聞 中村信義)
 
放射能は安全だと住民を啓蒙して福島に帰還させる施策である。
日本政府は従来からチェルノブイリ原発事故の影響について、小児甲状腺癌の影響以外、「放射線被曝を起因とする公衆衛生上の大きな影響があったという証拠はない」とするUNSCEARやIAEAの見解のみを取り入れている。
ベラルーシとウクライナからは、「UNSCAERは当事国の科学者のロシア語やウクライナ語による膨大な報告を無視したり、解釈を歪曲したりしている」という強い批判がなされてきた。
子どもの放射線の感受性の高さや従来の放射線防護の政策と規制などについては触れていない。
巨額の税金を費やして、「放射能への不安を低減させるため」に「きめ細かな」安心キャンペーンが進められようとしている。
「不安を抱くことは無知のなせるわざ。正しい知識を得られれば不安解消。故郷へ安心して帰れます。」と言いたいらしい。
低線量被ばくの影響については、これ以下であれば安全だという値は存在しない。低線量被ばくでも健康影響があるとする研究も数多くあり、不安を抱くことは当たり前だ。
 
チェルノブイリ原発後、現場の医師たちの強い警告・患者たちの証言をつづった、NHKスペシャルの迫真のドキュメンタリーシリーズが放映された(1991年8月4日放送)。再放送を求めたいが、今のNHKに期待しても無理だなあ。
 
 
 
 
 
なぜ、そこまで、帰還を急がせようとするのか?
「エートス」運動や「大本営発表」の踏襲か?
 
ETHOSとは、ギリシャ語のETHOS(信頼)から来ている。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシで行われた復興プログラムの名前だ。
「さまざまな経済的な理由、故郷に残って復興に尽力したい、という理由などから、放射能汚染されていて線量の高い地域に住み続けざるを得ない事情のある人たちに、汚染された環境に合わせた生活をさせる」というものだ。
放射線防護対策に重点を置くのではなく、『環境はもう汚染されてしまったのだから仕方ない』という考え方がベースになっており、変えられないものは、そのままにしておいて、生活者が暮らし方を高線量地帯での生活スタイルに適応させる、という運動。
 
一晩で10万人の死者を出した東京大空襲、被害が大きくなった当時の国の施策が思い出される。
東京大空襲の直前、昭和20年1月、防空実施のため必要な人員が地方へ転出しないよう国家総動員法の発動を含めた強力な指導をする方針が閣議決定された。
日本各地への空襲が激化する中、避難は禁じられたのである。 「逃げるな、火を消せ」「命を捨てて御国を守れ」・・・これが政府のかけた号令だった。
大空襲の4日後、貴族院議員・大河内輝耕は「火は消さなくてよいから逃げろ、と言っていただきたい」と帝国議会の質疑で政府に求めた。しかし、内務大臣は最後まで避難や退去を認めなかった。その翌月、政府は、今後の疎開方針として、老幼病者、学童の集団疎開、建物疎開による立退き者だけは疎開を認めた。子どもたちが親から離れて地方に移住する「学童疎開」は、終戦時まで全国的に実施されたが、成人は最後まで都市にとどまらなければならなかったのである。

 いつの時代も利権と保身のために権力者は棄民政策を執る。一旦選挙で選ばれてしまった政治家は愚民に耳など貸さない。愚民を正しい方向に導いてやるという信念のもと、古き良き日本への回帰を熱望する。そのためには多少の愚民の犠牲はいとわない、いやむしろ愛国精神を鼓舞するために歓迎すべきなのである。

新資格「放射線取扱業務士」 目的は「天下り」

2014-02-14 | 原発

自民党は政府に対し、放射性物質の除染作業や原子力発電所の廃炉作業に関する新たな国家資格「放射線取扱業務士」の創設を求める方針を固めた。東京電力福島第一原発周辺の除染を巡り、不適切な作業が広がっているとの見方があることから、国民の除染への不信や不安を払拭する狙いがある。
 現在、原発関連の国家資格には、原子力規制委員会が所管する「核燃料取扱主任者」(核燃料物質の取り扱いの保安・監督)と「原子炉主任技術者」(原子炉の運転の保安・監督)があるが、原発事故後に浮上した除染作業や廃炉に関する国家資格はない。除染については、厚生労働省令で請負業者に対し、除染に使う機器の取り扱い方法や構造などについて4・5~5・5時間の講習(学科と実技)を作業員に行うよう義務づけているだけだ。
 自民党の原案では、新設する放射線取扱業務士は、〈1〉除染業務〈2〉放射線量測定業務〈3〉原子炉運転・保守業務の3分野に分かれる。それぞれ1~3級の資格を設ける方向だ。試験科目や内容は、法案の成立後、厚労省令で定める。除染作業の知識、放射線の正しい測定法や人体に与える影響、関係法令などを幅広く問うものとなりそうだ。
 原案では、請負業者の放射線取扱業務士を雇用する割合などに応じて、公共工事の受注の機会が増えるよう国に配慮を求める規定も設けた。請負業者に対し資格を持つ作業員の雇用を促し、現場の作業員の指導に当たらせることで、作業のレベルアップを目指す。
 除染を巡っては、厚労省が2013年1~6月、福島県内で作業を請け負う388業者を対象に労働基準法などの違反の有無を調査。その結果、264業者で、作業員の被曝(ひばく)線量測定の不備などが計684件見つかり、是正指導した。環境省が、除染の排水処理が適切でないなどとして改善指示したケースもある。(2014年2月12日08時54分 読売新聞)

 自民党案の新たな「放射線取扱業務士」は、除染や放射線量の測定などを行うとされているが、現行の国家資格で十分カバーできる業務だ。新たに設ける必要なんてまるでない。放射線業務の適正化なんて、もっともらしいことを言っているが、要するに霞が関の新たな天下り先の設置が狙いだろう。
 実際、放射線管理業務に携わる団体の関係者も呆れている。
「車に例えると、現行資格で『大型』まで運転できるのに、新たに『原付』だけに適用する免許をつくるということ。仮に、専門性が必要だとしても現行資格の試験科目を増やしたり、新たに講習時間を設けたりすることで十分、対応可能だと思います。まあ、所管が厚労省なのか、環境省なのか分かりませんが、無駄なカネがかかるのは間違いない。福島原発の被災者も怒ると思いますよ」
 原案では、請負業者が「放射線取扱業務士」を雇用する割合に応じて、公共工事の受注の機会を増やすような規定も設けるという。ゼネコンを使いながら新資格を定着させ、見返りにカネをばらまく算段である。こんなバカな法案は早く潰した方がいい。 (日刊ゲンダイ)

大手マスコミの記事は殆どが事実を述べるだけで批判的な記事はない。日刊ゲンダイがなければ、基礎知識のない国民は簡単にだまされてしまう。本来なら、大手マスコミが論評すべきなのだが、批判精神ゼロ。太鼓持ちでしかない。これだから頭脳明晰な役人の私腹を肥やすシステムづくりに対抗できないのだ。
 こんな資格を設けたところで、でたらめ除染はなくならないし、ヤクザ介入による原発作業員の違法派遣はなくならない。孫請けの問題点は、賃金のピンハネと、責任の所在が曖昧になることである。東電が現場の実態を把握して改善しようとしている様子はまったくない。
 福島原発の除染・解体には30年掛かると言われており、作業員はまるで足りていない。違法派遣にはヤクザ・ギャングが関わっており、債務者やホームレスを強制的に送り込んでは被曝するとクビにする・・・・こんなことで福島の事故は収拾できるのだろうか。