「側弯症にまつわる都市伝説の害」整体誇大広告の弊害

初回記載:2017年10月4日
追記:2017年11月8日


追記:2018年2月14日
民間療法に関する主張は、新たに民間療法反対論(https://blogs.yahoo.co.jp/gcpmamoru)というブログに記載していくことにしました。


　整体・カイロ等民間療法者への呼びかけ
　これは私見であり、反対意見があることも知った上でここに記載するものです。
　根本原則として、病気の治療は医療機関で行われるべきものと考えます。医師、看護師、検査技師(検査部門)、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、医療コーディネーター等々が医療設備を用いて、責任の明確な立場の方々が患者を検査し、治療し、看護するもの、と考えます。まして、子どもの病気に対してはそれが否定される理由がどこにあるのでしょう。　特発性側弯症は子どもの病気です。自分の症状や治療内容を理解できる大人ではありません。　子どもなのです。
民間療法者は、大人を対象としてビジネスをすることで何が不満なのでしょう? 自分達が子ども達を救っていると本当に信じているのであれば、その医学的証拠を、医学データととして認められるレベルのものを提示すべきです。施術前後の写真は証拠ではありません。患者さんからの感謝の手紙は証拠ではありません。医者を巻き込んで「これは凄い」とと語ってもらうことは証拠ではありません(そもそも医者であるならば、医学データの何たるかは知っているはず。医者の自分が凄いと言うのだから、これは事実だ。というのは権威を利用した「まやかし」「印象操作」です)。政治家を連れてきて、「これは凄い」と語らせることは証拠ではありません。〇〇協会や△△団体から表彰されることは証拠ではありません。 医学データを示すことなく、事情を理解しえない子どもを治療しようとすることは、もちろん医療ではなく、道義にも倫理にも反する行為です。






ここに掲示したのは、次の記事からの引用です。
10月4日Yahooニュース「がんの代替医療　誇大広告や体験談が強調された治療法に注意を」※女性セブン2017年10月12日号
(引用)注意すべき点は3つ。1つは“がんが治る”“がんが消える”という誇大広告にあたる謳い文句。2つ目は、保険がきかない自由診療を行う病院。3つ目は体験談が強調された治療法。個人の体験談は真偽がわからない最も危ない情報です。こういった広告に騙されてはいけません。

(comment by august03)
いわゆる有名人...イメージとして賢い人たち....がナゼ? 騙されるの? ナゼそんなものを信じるの? と言うのは後付けの知恵というものでしょうね。本人にとっては切実な問題、なんとしてでも「生きたい」「治りたい」という強い思いがあったはず。その思いを、結果的に騙されていたことをもって、その人自身を責めることはできません。ただ、後付けとして見聞きする私たちにできることは「あの人も死の間際には、騙されていたことに対して強い後悔を抱いていたのでは」という想像力かもしれません。そして、攻めるべきは、誇大広告を平気で流して、病人を騙して病人を金の生る木として利用する悪徳商人どもでしょう。私august03から見て腹立たしいのは、騙したのが医療関係者であればそれを罰する法律があるのに、民間療法の場合は、やり放題、騙し放題、金儲け放題で、まったく野放しになっていることです。
グーグル検索すると、あいかわらず登場しますね「側弯症専門整体」のホームページ。かくかくの実績、かくかくの満足度、〇〇年の実績、写真入り、患者の声あり、といつもながらの手口なのですが、少し賢い整体になると「治る」とは書かずに「可能性あり」と記載している。患者さんから見たら「可能性あり」は「治る」と同義語なのですが、いわば法的にもし問われても「可能性あり」の記載であれば逃げることができますから。こういう場合、いわゆる詐欺罪と同じく、詐欺罪では騙した奴も悪いが騙された人も不注意であり、貴方にも責任の一端はある、ということになるわけで、側弯整体としては、痛くもかゆくもない。儲けるだけ儲けているわけですから、なんと言われようとかまわない。なぜなら患者側からは損害賠償請求はまずできませんから。
施術で治るものなら、ノーベル賞です。そのありえないものにすがるのが患者心理であり、その患者心理を利用するのが民間療法、側弯整体です。

とある側弯専門整体によりますと、
「テレビゲームが流行りだして１年後～2年後から側弯症のお客様が増えた感じがしました。自分の子供がテレビゲームをしている様子を見ると、変な姿勢や曲がった姿勢でゲームをしているので、やはり姿勢は大事」
「体に衝撃を受けると背骨が曲がってしまいます。特に多いのが年配の方が階段から落ちて腰が痛いからと病院でレントゲンを撮ると、側弯症と診断される方が多いです。その他、尻もちをついて尾骨をぶつける、交通事故で体に衝撃を受ける、子供の頃遊具から落ちたといったことが原因となります」
「いろいろな部活や習い事などで長時間練習して曲がった姿勢でいると、側弯症になる確率が大きい感じがします。」

あまりにナンセンス。プログをお読みいただいている皆さんにはいかにこの側弯専門整体士の言ってることがトンチンカンであるかはすでにおわかりだと思いますが、改めて下出先生の著書から引用します:
(page174)....なお、日ごろの姿勢の良し悪し、体力や運動能力、食べ物や生活習慣、よくするスポーツの種類、肩こりや背中の痛みや腰痛、歯のかみ合わせなどは、いっさい側弯症の発症や進行との関連がないこともはっきりしていています。「姿勢が悪いと側弯症になる」とか、「歯のかみ合わせが悪いと側弯症になる」とか、「骨盤がずれているので背骨が曲がった」というような話を聞くことがありますが、このような話はまったく根拠がないウソといってよいもので、特発性側弯症を正しく理解し、適切な治療をおこなううえできわめて有害なものといえます。

つまり、
・特発性側弯症は“姿勢”とは無関係です。
仮にこの側弯整体師の言っていることが機能性側弯であったとしても、[機能性側弯:疼痛、姿勢、下肢長差などの原因による一時的な側弯状態で、弯曲は軽度で捻れを伴わず、その原因を取り除くことにより側弯は消滅 (日本整形外科学会HP)] ということであり、整形外科医師からの診察、指導を受けることで緩解するものです。疼痛による代謝性のものであれば、その疼痛の原因を探りまずはその痛みの除去が必要でしょう。背骨の曲がりが下肢長差由来であると判明すれば、その曲がりが特発性側弯症のように増大する性質はなく、手術を必要とするような心配するような内容ではないと診断、説明されるでしょう。
・背骨が曲がるような衝撃であれば、それは曲がりではなく骨折でしょ。衝撃で特発性側弯症は発症するものではなく、年配の方がレントゲン撮影で判明するのは「変性側弯」、つまり老化による脊椎の変性の進行による背骨の曲がりが大半です。変性側弯は、椎間板や椎体自体あるいは周辺骨組織の老化による変形とそれに伴って神経がダメージを受けていることによる痛みです。
施術などしたら、症状はますます悪化します。

医学に素人な患者を騙して金儲けをするのが側弯専門整体師という輩なのです。患者さんは金を失うだけではなく、時に症状をますます悪化させたり、手遅れになったり、という事態に陥ってしまいます。あたかも、がん患者さんが誇大広告に騙されて命まで失ってしまうような事態が発生してしまうのです。
そのような事態になっても、彼らは罰せられることはありません。なぜなら、民間療法を頼ったのは患者さん本人が「選択」したものであって、彼らが強制したものではなく、また騙したものでもありません。なぜなら、彼らは「可能性」を語っているだけですから。

類似する話しとして、緩和医療医の大津秀一先生の著書「死ぬまでに決断しておきたいこと20」より、少し引用させていただきます。
....耳に心地よい話を信じるか否か: 人は見たいものしか見ない-残念なことに世の中には人を騙そうとする人がいます。(略)医療現場に携わっていると、それはそれは多くの騙されている人がいます。(略)　おいしい話には裏がある。健康なときにはそれをよくわかっていて、実際にだまされなくても、身体が弱っていたり藁にもすがる思いだと、ころっとだまされてしまうことがあります。....おいしい話ほど魅力的に映るもの:さて、耳に心地よい話を信じるか，否かです。耳に心地よい話を聞いた際には、それを信じたい心がないかどうかをよく見直したほうが良いでしょう。耳に心地よい話は絶妙なタイミングでやってきます。老後のお金が心配な時の、投資の話。人生に迷っているときに、すべてを説明してくれる素敵な宗教の話。まだ生きたいと思っているときの、病気を治す話　(略)特に私たちは、弱っている時は、普段耳を傾けないようなことに耳を傾け、時にこんなはずじゃなかった、という結末にひた走ることがあります。その根本に、「助けてもらいたい」「すがりたい」「嘘でも何でももたれかかって助かりたい」というような心が潜んでいないかに注意する必要があるでしょう。(略)病気を治すと言ってはばからない怪しい免疫クリニック、食事でがんを治すと主張するクリニック。医師が書く「これで治った」という本。

この本のなかで大津先生は、前参議院議員の円より子さんのサイトの記事を紹介しています。
....妹は乳がんが見つかって以来、近藤先生に心酔し、誰の勧めも退けて手術をしない道を選んだ。そしてどんどん悪化し、国立がんセンターの勝俣先生に診てもらった頃には手遅れに近かった。....医学的知識は私にはほとんどない。ただ身近に乳がんになった人が多くいて、その全員が妹のような初期の乳がんの場合、手術をして、みな10年、20年経ってピンピンしているのを見ると、なぜ妹は近藤先生の言うとおりに放置してしまったのか、悔しくてならない。.....がんと言われただけで不安になり、手術を想像するだけで恐怖感をもつ人もいる。本物ではなく、がんもどきと言われてほっとし、自覚症状がないなら、何もせず放置してもいいと医師に言われれば、当然安堵するだろう。.....がんを放置せず、手術を受けて治っていたかもしれないと、毎朝線香を立て彼女の写真に手を合わせながら後悔する私である......

大津先生は次のように結んでいます。「情報が湯水のよう垂れ流され、そして特定の考えに誘導しようとする戦略も巧妙になっている世の中において、必要なのは「これは自分が聞きたかった話を集めているだけではないか」という問いでしょう。弱っている方を誘導しようとする力はものすごく多く存在しています。(略)追い詰められた時に、私たちは「聞きたかった話」をたくさん聞くかもしれません。それが本当かどうかを、できるだけ心を平静にして判断することだと思います。

(from august03)
がんと側弯症とでは対象にはならないかもしれませんが、「彼ら」のやり方の根は同じ、ということに気づいていただけたでしょうか。
とある側弯整体は、整形外科医師を引き入れて、あたかも医学的裏付けと専門医師さえもが己を認め、その施術によって「側弯症が治る」と宣伝しているようです。であるならば、なんども書きますが、きっとこの二人はノーベル医学賞を受賞するに違いありません。なぜなら、施術によって側弯症を治すことは人類史上初めての快挙だからです。その功労を称賛する理知に富み、公明正大なる政治家と政党は、きっと彼らにノーベル賞を授与するように働きかけていることでしょう。いえいえ、ぜひとも働きかけてもらわねば困ります。その政治家と政党はその快挙と人類に対する貢献を認めているのですから、日本という国をあげて推挙する運動をしてもらわねば困ります。

....と、皮肉はこれくらいにしておきます。似たような根を持つ誤った宣伝で、それを信じて亡くなられた方々がいることを私たちは忘れてはいけないと思います。



☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
　医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


august03


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