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側弯症-自然緩解、装具療法の効果等に関する医学文献をここに一覧にしました

2017-11-12 14:52:31 | 特発生側弯症と装具療法
初回記載:2017年11月12日


側弯症における「自然緩解」「自然経過」「装具が効果を持つための要素」「装具療法後の長期フォローアップ」に関する医学文献をここにまとめてみました。

アブストラクトのみからの場合詳細データを読み取れない拙訳もあります。またここでは情報提供を目的としておりますので、概要を理解していただけることを試みとしています。

それぞれの説明等は、カテゴリー「特発生側弯症と装具療法」「マイルドカーブ」「カーブが進行するリスク」「20年後のアウトカム」などを参照ください。


カーブ進行の予測因子

◇2009年 Curve progression in idiopathic scoliosis: follow-up study to skeletal maturity.(シンガポール)
     特発性側弯症におけるカーブ進行:骨成長完了後でのフォローアップ研究

・骨成長がまだ完了していない特発性側弯症患者において、骨成長終了時点でコブ角30°である要素について調査した。
・骨成長完了時点でのコブ角の大きさが、その後の長い年月に与える影響は大きい
・これまでの研究から、コブ角30°以下の場合、骨成長完了後の過程でカーブ進行があまり進まないことが一般的に言われてきた。
・学校検診で特発性側弯症と診断された186人を骨成長完了時までフォローアップした。
・リスク要因として、側弯症と診断された時の年齢、性別、思春期の状態、最初の診断時のコブ角を調査した。
・その結果、最初の診断時のコブ角が、骨成長完了後にカーブが30°以上に進行することの予測因子であった。
・We suggest an initial Cobb angle of 25 degrees as an important threshold magnitude for long-term curve progression. 


フォロー平均2.4年・初診時コブ角と装具装着時間がポイント

◇2007 Results of brace treatment of adolescent idiopathic scoliosis in boys compared with girls:
a retrospective study of 102 patients treated with the Boston brace. (フィンランド)
女子と比較した男子の思春期特発性側弯症の装具療法の結果 :ボストンブレースで治療した102患者のレトロスペクティプ研究

この研究の目的は、1987年から1995年までの間に、ボストンブレースで治療した51人の男子について、その装具療法の効果を、(適正に比較対照として選択した)女子のそれと比較することである。患者は1日23時間の装着を指示された。患者記録をレビューし、コブ角/Rissersignについて、ブレース装着前/装着中/終了時/最終観察時について記録した。同じ状態の背景を持つ男女をマッチドペアとして男子と女子を比較した。
夜間だけの装着やときどきだけ装着していた患者は「非遵守患者」と定義した。指示を守った「遵守患者」で1年以上装具療法を行い、その後は(装具なしで)経過観察を1年間実施できた患者だけを分析対象とした。51人のうち33人が「遵守患者」であった。装具装着しても5度以上のカーブ進行があったり、手術治療が行われた場合は、装具療法失敗」と定義した。試験の最終観察時で「装具療法失敗」は全51人中16名 (31.4%)であった。対応する女子患者では、全51人中11名(21.6%)が「装具療法失敗」であった。しかし、指示を守った「遵守患者」33人だけを分析すると、失敗例は、6人(18%)であり、女子の遵守患者では9人(27%)であった。統計的に考察すると、「遵守患者」と「非遵守患者」では、進行リスクと矯正率に非常に大きな差があった。男子の特発性側彎症患者への装具療法の成績は、女子と比較すると成績は不良であった。この原因のひとつは、男子の場合は、女子よりも「非遵守」であつたことがあげられる。しかし、いずれにせよ、思春期特発性側彎症においては、装具療法が薦められるべきである。

・装具装着 23時間/日が指導された
・男子患者 51名
・この指導を守れて装具療法を終了したのは33名 
・平均装具療法期間 2年。
・初診時コブ角平均28°(±7.3) (15°~44°)
・フォロー期間 平均2.4年(±1.1)(1年~4年)
・最終観察時のコブ角 平均31.1°(±7.6)(15°~47°)
・初診時から最終観察時までの間に5°以上の進行があったのは 6名/33名

・51名のうち3名(6%)が装具療法中(非遵守含)に手術となった。この3名の初診時コブ角はすべて30°以上であった。

患者背景


本文献から引用したグラフに赤ペンにて追記。手術となった3名の初診時コブ角が >30° としか記載されていない為、詳細は不明ですが、計測レンジに44°もあることから、おそらく40°前後の患者ではなかったかと推測されます。





25年長期フォローアップ・初診時コブ角と装具装着時間がポイント

◇2016年 Curve progression 25 years after bracing for adolescent idiopathic scoliosis:
     long term comparative results between two matched groups of 18 versus 23 hours daily bracing (ギリシア) 

・1978年から1993年のあいだに思春期特発性側弯症で装具療法を実施したのは117名
・この117名において prospective前向き臨床試験を実施
・この117名は全て手術することなく装具療法を終了できた
・使用した装具はボストンブレース
・この117名のうち25年後のアウトカムを調査できた77名についての報告

・77名(女子は71名)のうち、装具装着時間18時間群42名(part timeと表記)と23時間群35名(full timeと表記)とを比較
・初診時の平均年齢 13歳
・初診時のコブ角平均 29° (21~38°)
・   46名(60%)は 30°以下
    31名(40%)は 30°以上
・装具終了時平均年齢 16歳
・平均装具装着期間 2.7年(1.4~4年)
・装具終了時の平均コブ角 22° (10~35°)

・平均フォローアップ期間 25年(22~28年)
・25年後調査時での平均年齢 40歳(37~43歳)
・25年後調査時での平均コブ角 26°(12°~40°)
・25年間でのコブ角度の増加 平均4°(マイナス3°~プラス11°)
・55名(71%)は 30°以下
・14名(18%)は 30~40°の間
・ 8名(10%)は  40°以上
・こどもを生んでいる人数 71名

・Full time(23時間)とpart time(18時間)ではアウトカムに有意な差はない。

☞この77名のなかで手術に至った人はゼロ
☞初診時コブ角に30°以上も31名いますが、最大は38°まで。初診時でのコブ角が進行のリスク要素


16年長期フォローアップ

◇2011年 Long term results after Boston brace treatment in late on-set juvenile and adolescent idiopathic scoliosis
     学童期及び思春期特発性側弯症患者におけるボストンブレース装具療法を終了後の長期フォローアップ

・ノルウェーの研究データ
・16年以上の長期フォローアップ
・272名が調査に参加 (251名 92%が女性)
・装具療法終了から 平均25年 (16年から最長32年)

・272名中214名が思春期特発性側弯症
・272名中 58名が学童期(7~9歳)特発性側弯症

・カーブタイプ 胸椎カーブ 189名 70%
        胸腰椎カーブ55名 20%
        腰椎カーブ 28名 10%

・装具装着開始時の年齢 平均13.1歳
・初潮の始まった年齢  平均13.4歳

・装具装着前のコブ角 平均33° (20~57°)
・装具装着時のコブ角 記載見つからず
・装具療法終了時のコブ角 平均28°
・装具は2年間あるいはリッサーサインが5になるまで装着
・装具は一日20時間以上着用が指示された
・装具はボストンブレースを使用

・装具療法中に 5°以上の進行があった患者 84名 31% (272名中25名 9%が手術となった)
・手術をした25名中18名 70%は装具開始から1年以内で手術
・手術時の年齢 平均16歳
・手術をした患者の装具開始前のコブ角 平均40°(28~57°)
・手術をした患者の装具装着時のコブ角 平均46°(34~58°)

・一方、装具療法中に5°以上のカーブ減少があった患者 71名 26%

・長期フォローアップ中に 45°以上の進行があった患者 247名中35名 13%
・長期フォローアップ中に 45°以下を維持できた患者  247名中215名87%

・76%の方がフルタイムで就業
・10%の方がパートタイム

・87%の方が出産を経験していた
・5%の方が妊娠時に腰痛(?)を経験


22年長期フォローアップ

◇2003 Back pain and function 22 years after brace treatment for adolescent idiopathic scoliosis:
    a case-control study-part I. 装具療法を行った思春期側弯症の22年後の機能と腰痛 スゥエーデン

1968年~1977年に思春期特発性側弯症で装具療法を行った21歳以下の患者(女122人、男5人)を最低20年間の経過観察を行った。
目的:装具療法を行った特発性側わん症患者の長期アウトカムを調査する。
背景: これまでは長期データがほとんど発表されていなかった
方法: この期間中に装具療法をした127人のうち110人(87%)について、コブ角やレントゲン撮影による再検査を行った。質問票を用いて、生活の質(QOL)や疾患特有の問題について、例えば腰痛などについて回答を得た。110人のうち、109人でこれらの調査が完全に実施できた。年齢と性が一致する比較対照グループ100人を無作為に選択し、同じ検査を実施した。
結果 : ひとりの患者が装具終了後4年して27度の増悪があり手術をしていたのを除き、カーブの悪化は平均7.9度であった。比較対照者にくらべて患者グループでは、椎間板変性がみられた。痛みの質問票(VAS)では2.7点とマイルドなものではあるが、腰痛や胸椎部の痛みがあった。しかし、鎮痛薬を常用していた患者はわずか24%であった。腰椎疾患質問票(オズウエストリー)の回答によると、比較対照者に比べて腰椎部の動きと総合点数が劣っていた。しかし、日常生活の質(QOL)では差がなかった。腰痛のために欠席しがちであることを除いて、社会生活上の差もなかった。また、患者の側弯カーブの型による差もみられなかった。(シングル胸椎50人、腰椎19人、ダブルカーブ40人)痛み、カーブサイズ、治療後の10度以上の進行、カーブ型、椎間板変性、BMI(肥満)、喫煙等のそれぞれには因果関係は見られなかった。
結論: 20年以上を経過した装具療法患者を調査したところ、比較対照者と比べると腰痛はみられたが、機能上の差はなかった。手術を行った患者も同様の結果が見られた。



米国/カナダ 25施設による多施設ランダマイズ臨床試験報告・装具装着時間がポイント
経過観察群の成功率48%

◇2013 Effects of Bracing in Adolescents with Idiopathic Scoliosis

患者背景(簡略記載).....詳細は一覧参照
・平均12.5(±1) 10~15歳
・リッサー 0,1,2
・初診時コブ角 30.5°(±6.5) (20~40°)
・146名装具治療
・96名は経過観察のみ
・平均フォローアップ期間 装具群 24カ月、経過観察群21カ月
・臨床試験の成否判定基準 50°以上のカーブ進行・50°未満での骨成熟完了(女子リッサー4、男子リッサー5)

結果:治療成功確率 装具群72% , 経過観察群 48%
装着時間6時間以下の成功率 41%
装着時間13時間以上の成功率 90~93%

本文献り引用:患者背景



装具療法成功率85%,経過観察群の成功率55%

◇1995 Effectiveness of treatment with a brace in girls who have adolescent idiopathic scoliosis.
A prospective, controlled study based on data from the Brace Study of the Scoliosis Research Society
    思春期特発性側彎症を有する女子における装具療法の効果 スゥェーデン

思春期特発性側彎症286人の女子に対するSRS(米国側彎症研究会)基準による研究において、胸椎あるいは胸腰椎カーブ25度~35度、平均年齢12歳7ヶ月(10歳~15歳)、の患者の経過観察を行った。患者は、非治療(観察のみ)129人、アンダーアーム型装具療法111人、就寝中の電気刺激治療46人である。39人が研究から脱落した。残り247人(286人の86%)を骨成熟までか、あるいは治療が明らかに失敗と判断し脱落するまで経過を観察した。治療失敗の定義は、カーブが初回のレントゲン撮影計測よりも6度以上進行した場合とした。
この定義を用いることで、装具療法患者111人中の17人(15.3%)が治療失敗、非治療(観察のみ)129人中の58人(44.9%)が失敗、電気刺激療法46人中の22人(47.8%)が治療失敗であった。統計解析により、今後4年間での治療効果について分析したところ、装具療法は74%の成功率、非治療(観察のみ)では34%、電気刺激では33%であった。

(アブストラクトのみの為詳細は不明)
・女子286人 このうち装具療法111人、経過観察のみ129人、電気治療46人
・39人が脱落し、残り247人を骨成熟完了ないし治療失敗(6°以上の進行)が明確になるまでフォロー
・初診時コブ角 25°~35°
・平均年齢12.7歳(10~15歳)

・装具療法 111人中 94人成功(85%)、17人失敗(15%)
 経過観察のみ 129人中 71人成功(55%), 58人失敗(45%)


マイルドカーブの自然緩解

◇2010年 Spontaneous regression of curve in immature idiopathic scoliosis
    - does spinal column play a role to balance ?  骨成熟に至っていない特発性側弯症でのカーブの緩解

・169人の特発性側弯症患者を最低1年間フォローアップ
・平均年齢9歳
・平均フォローアップ 21カ月
・初診時全て 25°以下
・初診時全て リッサーサインは 0
・全員、何の治療も実施せず

・グルーブA 55人 : 最終観察時までに 5°以上 ないしは完全に回復した群
・グルーブB 70人 : 最終観察時までに進行も減少もなかった群
・グルーブC 44人 : 最終観察時までに 5°以上の進行があった群 →25°を超えたら装具療法

例 グループA : 初診時 15° → 調査時 7°
例 グループB : 初診時 14° → 調査時 14°
例 グループC : 初診時 16° → 調査時 26°

・169人のうち125人(55+70)が自然緩解したといえる。これは全体の 74% に相当する。










マイルドカーブは自然緩解あるいは安定する確率77%

◇1984年米国 The prediction of curve progression in untreated idiopathic scoliosis
      during growth. 成長期における特発性側弯症患者のカーブ進行の予測

・727人の特発性側弯症の子ども達を骨成熟完了まで、もしくはカーブが進行するまでフォローアップした。
・女子 575 (79%) 男子 152 (21%)
・女子575人のうち338人(59%)は初診時に初潮は終えていた
・初診時コブ角の大きさは、5~29°
・169人 (23%)にカーブ進行あり 進行が見られたのは初診時から平均14カ月以内 (3~84カ月)
・この169人のうち131人には装具療法を行った
・残りの38人のカーブ進行はスピードが遅く、骨成熟後までに40°以下であったので、装具療法はしなかった
・この38人を特殊例として除外すると、カーブ進行は初診時から平均12カ月以内に発生している
・カーブ進行は見られたが、装具療法にまで至らなかった患者には骨成熟完了している患者が多く見られた
・78人 (11%) は初診時よりもカーブが5°以上 減少した。
・727-169(進行群)-78(改善群11%)=480人(66%)は 平均26カ月(12~88カ月)のフォローアップで、不変であった

☞改善群11%+不変群66%=77% 


20°以下のマイルドカーブの85%は自然緩解

◇1998年 Assessment of curve pogession in idiopathic scoliosis 
     特発性側弯症におけるカーブ進行に対する評価 ギリシア

・85,622人をスクリーニングし、10°以上のコブ角があり、フォローができた839人の報告
・この836人を平均3.2年フォローアップ
・839人のうち123人(15%)が 5°以上のコブ角進行が見られた。
 カーブが30°以上進行した患者の初診時コブ角 30°以上

・839人のうち230人(27%)は 5°以上の改善(カーブ減少)が見られた。
・改善した230人のうち80人は、カーブが完全に消失した。
 カーブの消失や改善が見られた患者の初診時コブ角 10~20°
・この839人のうち151人(18%)は、フォローアップ期間内でコブ角に変化は見られなかった

☞約85%はカーブが進行していない



マイルドカードの自然緩解

◇2000年 Risk factors for idiopathic scoliosis: review of a 6-year prospective study.
アブストラクトのみから
・85627人 (9~15歳)をスクリーニング
・この中から10°以上の側弯を有する群1.7% (1456人)をフォローした
・399人27.4%が 5°以上の改善あり
・218人がカーブの進行も減少もなかった (不変)

・改善399人と不変218人、計617人 42% が緩解したと言える。


マイルドカードの自然緩解

◇1978年 Scoliosis: incidence and natural history. A prospective epidemiological study.

アブストラクトのみから
・26,947人 から 1,122人のデータを得た
・6~10° 男女比 1:1 20°以上 男女比 5:1
・603人を2年間フォロー 初診時20°の骨未成熟の患者の 20%では進行なし


マイルドカードの自然緩解

◇1984年 The prediction of curve progression in untreated idiopathic scoliosis during growth

・対象727人 女子 575 (79%) 男子 152 (21%)
・480人(66%)は 平均26カ月(12~88カ月)のフォローアップで、カーブの進行も減少もなかった (不変)

・カーブが改善した78人を加えると、727人のうち558人 (78%)が 緩解したと言える。


マイルドカードの自然緩解

◇1990年 特発性側弯症の自然経過

このデータに関しては「そくわんカーブが進行するリスク」を参照ください。



上記表は、オリジナル文献の数値を視認しやすいようにaugust03が作成したものです。
20°未満の約70%はカーブ進行が見られません。




☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。  医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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