初回記載:2017年11月6日
「装具療法終了した25年後のアウトカム (2016年最新文献より) 更新」 を先にお読みください。
ここでは、思春期特発性側弯症におけるカーブ進行のリスク要因について、医学文献よりご紹介します。
◇1984年米国 The prediction of curve progression in untreated idiopathic scoliosis
< during growth. 成長期における特発性側弯症患者のカーブ進行の予測
・727人の特発性側弯症の子ども達を骨成熟完了まで、もしくはカーブが進行するまでフォローアップした。
・女子 575 (79%) 男子 152 (21%)
・女子575人のうち338人(59%)は初診時に初潮は終えていた
・初診時コブ角の大きさは、5~29°
・169人 (23%)にカーブ進行あり 進行が見られたのは初診時から平均14カ月以内 (3~84カ月)
・この169人のうち131人には装具療法を行った
・残りの38人のカーブ進行はスピードが遅く、骨成熟後までに40°以下であったので、装具療法はしなかった
・この38人を特殊例として除外すると、カーブ進行は初診時から平均12カ月以内に発生している
・カーブ進行は見られたが、装具療法にまで至らなかった患者には骨成熟完了している患者が多く見られた
・78人 (11%) は初診時よりもカーブが5°以上 減少した。
・727-169(進行群)-78(改善群)=480人(66%)は 平均26カ月(12~88カ月)のフォローアップで、
不変であった
上表は本文献から得られた数値を視認しやすいように一覧にしてみたものです。
(comment by august03)
このデータは、思春期特発性側弯症と診断された727人の子供たちを、初診時からおよそ2年間フォローした結果を示したものです。
初診時の時点で約60%は初潮を迎えていた、ということですので、初潮前(40%)と初潮後でのコブ角の変化を私たちは見ることができます。また、年齢との関係、初診時のコブ角との関係という切り口からも、2年間の変化を見ることができます。そして、このデータから推測されたことが、側弯カーブの進行リスクとしてはおよそ次のことが述べられています。
進行するリスク要因 ・初診時のコブ角の大きさ
・成長期にカーブは進行しやすい
・年齢の目安 女子は 9歳から13歳 (男子は女子よりも遅め)
・リッサーサインは 0~1
・初潮前の半年から初潮後の2年
・初診時に20°以上の場合、カーブ進行のリスク高い
・初診時に15°未満の場合、カーブ進行のリスク低い
もしお子さんが10歳の女の子の場合で、リッサーサインが1、初診時のコブ角が20°前後であったときは、今後カーブが進行するリスクは約70%と見込まれることから、主治医の先生とよく相談し、またお子さんとよく話し合われて、装具療法に入る準備をすることが大切ということが言えます。装具療法はたいへんですが、初潮から2年(以上)、リッサーサイン5まで、一日20時間以上の着用を遵守することができれば、コブ角を30°前後で抑え込める可能性が高くなります。
このデータの場合、初診時のコブ角が30°以下の子供たちだけでしたので、727人中131人に装具療法を実施し、手術に至ることなく全ての子供たちが装具療法を終えることができています。
☞この子供たちは、施術マニュピレーションも側弯体操も受けていたわけではありません。施術・カイロプラクテックが効果のないことは、2016年のSOSORTによる 「Chiropractic Treatment for Idiopathic Scoliosis : A Narrative Review Based on SOSORT Outcome Criteria」特発性側弯症に対するカイロプラクテック : SOSORT基準に基づく(医学文献・データ)批評におい否定されています。「特発性側弯症に対する民間療法(施術・カイロ・ヨガ等)による効果はない」も参照ください。
国内での類似データを下記にご紹介します。
◇1990年鹿児島大学 特発性側弯症の自然経過
・初診時から1年以上フォローできた78人
・初診時から平均28カ月 (12カ月~最長4年6か月)をフォロー
・調査時に骨成熟期に達していたのは 女子31例中 15例 (48%)
(commen by august03)
・こちらのデータは、米国のデータのおよそ10分の1の患者数ですが、初診時から1年以上のフォローアップによって得られたデータの傾向は、上記米国データと非常に近似したものです。新しいファクターとしては「椎体wedging (椎体ウエッジ)」の有無がカーブ進行のリスク要因として検討されています。椎体wedgingとは、脊柱の中でねじれが生じて始めている椎体にくさび状の変形が見られるかどうか、というイメージでお考えください。
・年齢平均11歳 (7~14)
・コブ角平均 18°(10~30°)
・平均フォロー28カ月(12カ月~4年6か月)
・調査時に骨成熟期に達していたもの 15/3例 48%
・初診時Risser 0は、18例のうち8例 44%が進行
・初診時RisserI,II,III (growth spurt)は13例のうち7例 54%が進行
・初診時に椎体wedgingありは 11例のうち10例 91%が進行
・同なしの場合は 20例のうち5例 25%が進行
・Risser 0で wedgingありは 5/5例 全て進行
米国データと上記国内データとでは、リッサーサインとコブ角との関係性で若干「差」があるように見えますが、ここで両方のデータから類似傾向として引き出されることとしては、やはり初診時のリッサーサインが小さいほど(0~2)そしてコブ角が大きいほど20°以上、その後カーブ進行のリスクは高まる。ということだと思います。
さらにもう1件、類似データをご紹介します。
◇1998年ギリシア Assessment of curve pogession in idiopathic scoliosis
特発性側弯症におけるカーブ進行に対する評価
・85,622人をスクリーニングし、839人に10°以上の側弯症を確認した。
・この836人を平均3.2年フォローアップ
・839人のうち123人(15%)が 5°以上のコブ角進行が見られた。
・839人のうち230人(27%)は 5°以上の改善(カーブ減少)が見られた。
・改善した230人のうち80人は、カーブが完全に消失した。
・この839人のうち151人(18%)は、フォローアップ期間内でコブ角に変化は見られなかった
(comment by august03)
ギリシアでの839人のデータ分析図を上に3点コピーしました。
年齢で見た場合の進行リスクは、女子は10~11歳にかけて、男子は13~14歳にかけて。いわゆる第二次性徴期にかけてということになります。これは個人差がありますので、あくまでも目安ですので、お子さんの状態を良く観察することが大切ということになります。その下は初診時のコブ角と進行頻度の大きさを表しています。初診時コブ角がマイルドカーブの場合は、進行するスピードも緩やかですが、25°~30°以上の場合は進行スピードが速いというリスクがあると捉えて下さい。 マイルドカーブだから進行しない、という意味ではありませんので、ご注意下さい。3番目の表はこのデータから見られた、「年齢と初診時コブ角での、その後の進行リスク」です。赤線は私が追記してみたものです。
5. 患者の立場から見た場合、経過観察であれ体操療法であれ、
その前提である「早期発見されること」は非常に大きな意味を持つ。
ここで私august03があらためて申し上げるまでもなく、どの段階で側弯症が発見されるか(されたか)が、全てにおいて一番重要な要素ということです。 そしてリスクの高い方も、また低い方であっても、基本は、忘れずに受診して定期診察を受け、タイミングを逃さずに装具療法に入る。ということに尽きると思います。
カテゴリー:「特発性側弯症と民間療法」や「20年後のアウトカム」でさらに文献を追加ご紹介しますが、リスクが高いからといって民間療法を受けても、何の意味もありません。
上記3件の文献からは リスク を切り口として内容を見てきましたが、すでにお気づきの方もおられると思いますが、これらの文献には「改善例」「回復例」も述べられています。データ間には地域差、年代差、施設差、患者数の差などがありますので、数値は一定ではありませんが、推定として 20%~60% の方々が、装具療法に入ることなく、自然回復していることが分かります。これらの方々は、定期診察は受けて経過を見てもらっているわけですが、施術を受けたわけでもなく、側弯症体操をしていたわけでもありません。
民間療法者の根拠のない「側弯症は治る」「治した」という宣伝に惑わされることのないように、ご注意下さい。
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
「装具療法終了した25年後のアウトカム (2016年最新文献より) 更新」 を先にお読みください。
ここでは、思春期特発性側弯症におけるカーブ進行のリスク要因について、医学文献よりご紹介します。
◇1984年米国 The prediction of curve progression in untreated idiopathic scoliosis
< during growth. 成長期における特発性側弯症患者のカーブ進行の予測
・727人の特発性側弯症の子ども達を骨成熟完了まで、もしくはカーブが進行するまでフォローアップした。
・女子 575 (79%) 男子 152 (21%)
・女子575人のうち338人(59%)は初診時に初潮は終えていた
・初診時コブ角の大きさは、5~29°
・169人 (23%)にカーブ進行あり 進行が見られたのは初診時から平均14カ月以内 (3~84カ月)
・この169人のうち131人には装具療法を行った
・残りの38人のカーブ進行はスピードが遅く、骨成熟後までに40°以下であったので、装具療法はしなかった
・この38人を特殊例として除外すると、カーブ進行は初診時から平均12カ月以内に発生している
・カーブ進行は見られたが、装具療法にまで至らなかった患者には骨成熟完了している患者が多く見られた
・78人 (11%) は初診時よりもカーブが5°以上 減少した。
・727-169(進行群)-78(改善群)=480人(66%)は 平均26カ月(12~88カ月)のフォローアップで、
不変であった
上表は本文献から得られた数値を視認しやすいように一覧にしてみたものです。
(comment by august03)
このデータは、思春期特発性側弯症と診断された727人の子供たちを、初診時からおよそ2年間フォローした結果を示したものです。
初診時の時点で約60%は初潮を迎えていた、ということですので、初潮前(40%)と初潮後でのコブ角の変化を私たちは見ることができます。また、年齢との関係、初診時のコブ角との関係という切り口からも、2年間の変化を見ることができます。そして、このデータから推測されたことが、側弯カーブの進行リスクとしてはおよそ次のことが述べられています。
進行するリスク要因 ・初診時のコブ角の大きさ
・成長期にカーブは進行しやすい
・年齢の目安 女子は 9歳から13歳 (男子は女子よりも遅め)
・リッサーサインは 0~1
・初潮前の半年から初潮後の2年
・初診時に20°以上の場合、カーブ進行のリスク高い
・初診時に15°未満の場合、カーブ進行のリスク低い
もしお子さんが10歳の女の子の場合で、リッサーサインが1、初診時のコブ角が20°前後であったときは、今後カーブが進行するリスクは約70%と見込まれることから、主治医の先生とよく相談し、またお子さんとよく話し合われて、装具療法に入る準備をすることが大切ということが言えます。装具療法はたいへんですが、初潮から2年(以上)、リッサーサイン5まで、一日20時間以上の着用を遵守することができれば、コブ角を30°前後で抑え込める可能性が高くなります。
このデータの場合、初診時のコブ角が30°以下の子供たちだけでしたので、727人中131人に装具療法を実施し、手術に至ることなく全ての子供たちが装具療法を終えることができています。
☞この子供たちは、施術マニュピレーションも側弯体操も受けていたわけではありません。施術・カイロプラクテックが効果のないことは、2016年のSOSORTによる 「Chiropractic Treatment for Idiopathic Scoliosis : A Narrative Review Based on SOSORT Outcome Criteria」特発性側弯症に対するカイロプラクテック : SOSORT基準に基づく(医学文献・データ)批評におい否定されています。「特発性側弯症に対する民間療法(施術・カイロ・ヨガ等)による効果はない」も参照ください。
国内での類似データを下記にご紹介します。
◇1990年鹿児島大学 特発性側弯症の自然経過
・初診時から1年以上フォローできた78人
・初診時から平均28カ月 (12カ月~最長4年6か月)をフォロー
・調査時に骨成熟期に達していたのは 女子31例中 15例 (48%)
(commen by august03)
・こちらのデータは、米国のデータのおよそ10分の1の患者数ですが、初診時から1年以上のフォローアップによって得られたデータの傾向は、上記米国データと非常に近似したものです。新しいファクターとしては「椎体wedging (椎体ウエッジ)」の有無がカーブ進行のリスク要因として検討されています。椎体wedgingとは、脊柱の中でねじれが生じて始めている椎体にくさび状の変形が見られるかどうか、というイメージでお考えください。
・年齢平均11歳 (7~14)
・コブ角平均 18°(10~30°)
・平均フォロー28カ月(12カ月~4年6か月)
・調査時に骨成熟期に達していたもの 15/3例 48%
・初診時Risser 0は、18例のうち8例 44%が進行
・初診時RisserI,II,III (growth spurt)は13例のうち7例 54%が進行
・初診時に椎体wedgingありは 11例のうち10例 91%が進行
・同なしの場合は 20例のうち5例 25%が進行
・Risser 0で wedgingありは 5/5例 全て進行
米国データと上記国内データとでは、リッサーサインとコブ角との関係性で若干「差」があるように見えますが、ここで両方のデータから類似傾向として引き出されることとしては、やはり初診時のリッサーサインが小さいほど(0~2)そしてコブ角が大きいほど20°以上、その後カーブ進行のリスクは高まる。ということだと思います。
さらにもう1件、類似データをご紹介します。
◇1998年ギリシア Assessment of curve pogession in idiopathic scoliosis
特発性側弯症におけるカーブ進行に対する評価
・85,622人をスクリーニングし、839人に10°以上の側弯症を確認した。
・この836人を平均3.2年フォローアップ
・839人のうち123人(15%)が 5°以上のコブ角進行が見られた。
・839人のうち230人(27%)は 5°以上の改善(カーブ減少)が見られた。
・改善した230人のうち80人は、カーブが完全に消失した。
・この839人のうち151人(18%)は、フォローアップ期間内でコブ角に変化は見られなかった
(comment by august03)
ギリシアでの839人のデータ分析図を上に3点コピーしました。
年齢で見た場合の進行リスクは、女子は10~11歳にかけて、男子は13~14歳にかけて。いわゆる第二次性徴期にかけてということになります。これは個人差がありますので、あくまでも目安ですので、お子さんの状態を良く観察することが大切ということになります。その下は初診時のコブ角と進行頻度の大きさを表しています。初診時コブ角がマイルドカーブの場合は、進行するスピードも緩やかですが、25°~30°以上の場合は進行スピードが速いというリスクがあると捉えて下さい。 マイルドカーブだから進行しない、という意味ではありませんので、ご注意下さい。3番目の表はこのデータから見られた、「年齢と初診時コブ角での、その後の進行リスク」です。赤線は私が追記してみたものです。
5. 患者の立場から見た場合、経過観察であれ体操療法であれ、
その前提である「早期発見されること」は非常に大きな意味を持つ。
ここで私august03があらためて申し上げるまでもなく、どの段階で側弯症が発見されるか(されたか)が、全てにおいて一番重要な要素ということです。 そしてリスクの高い方も、また低い方であっても、基本は、忘れずに受診して定期診察を受け、タイミングを逃さずに装具療法に入る。ということに尽きると思います。
カテゴリー:「特発性側弯症と民間療法」や「20年後のアウトカム」でさらに文献を追加ご紹介しますが、リスクが高いからといって民間療法を受けても、何の意味もありません。
上記3件の文献からは リスク を切り口として内容を見てきましたが、すでにお気づきの方もおられると思いますが、これらの文献には「改善例」「回復例」も述べられています。データ間には地域差、年代差、施設差、患者数の差などがありますので、数値は一定ではありませんが、推定として 20%~60% の方々が、装具療法に入ることなく、自然回復していることが分かります。これらの方々は、定期診察は受けて経過を見てもらっているわけですが、施術を受けたわけでもなく、側弯症体操をしていたわけでもありません。
民間療法者の根拠のない「側弯症は治る」「治した」という宣伝に惑わされることのないように、ご注意下さい。
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?