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側わんスコリオメーター (ATR角度)測定は患者のリスクを高めないのか?

2017-11-11 00:13:53 | 側弯症と体操療法
2018年6月23日追記

      曲がった脊柱のコブ角を減少させることと共に、

      肋骨隆起 (リブハンプ)を治療する方法に関しましては
  
      次回以降(2018年6月末から7月初頭)に、新しい記事にてご紹介します






初回記載:2017年11月10日 
追記:2017年11月13日 

思春期特発性側弯症の症状を測定するツールとしてスコリオメーターがあります。スコリオメーターで角度(ATR angle of tunk rotation )を測定して、その角度が改善したことをもって側弯症の改善と同一の意味で用いられることのリスクについて考えています。






現在読んでいる医学文献は、下段に掲示しました。


経緯
・1984 Bunnell がATR 5°が コブ角20°と相関していると報告
・1990 Amedt がこれを否定。スコリオメーターのみで側弯計測を行うことはすべきでないことをサジェスチョン
・2002 Grossoがやはり ATRとコブ角との相関の低さを指摘
・2007 Grivas は、ATR7°の場合、脊柱はほぼストレートないし コブ角10°より小さいと報告
・2013 Coelho は相関ありとして、Bunnelの示したATR 5°を利用
・2014 Tyrakowski(SOSORT)は、ATRの使用もデータとして用いることを推奨
・2017 TyrakowskiのATR - Bunellスコリオメーターとコブ角は相関していることを報告


☞(comment by august03)
上記の経緯を読んでいただいて、皆さんには何が見えてくるでしょうか?
・august03が問題として危惧しているのは、

 -スコリオメーターは何の為に使用するのか? スクリーニング? 患者のアウトカム評価 ?
 -患者のアウトカム評価に使用した場合、

  「ATRとコブ角との相関が明確でない指標を用いて、側弯症が改善したとなぜ言えるのか?」

  「ATRで測定している解剖学的形態と、コブ角が測定している解剖学的形態とは異なるものでは?
   ATRが改善したことをもって、コブ角が改善したことの証明にしていいのですか? 」

 ⇒ でも、どうやら、コブ角と関連づけして、コブ角でも改善しているはずという流れにしたいようですね

   つまり

   ⇒ ATRが改善したのだから、コブ角も改善している

   ⇒ 改善してます

   ⇒ 体操は効果があります


・医学評価では、アウトカムや検査での「指標」が非常に重要です。指標にどの検査を用いるのか? その検査での「標準」は何か? ということを厳密に考えて、統一した指標が用いられないと、病気が良くなっているのか、それとも悪化しているのかがわからなくなってしまいます。 

・この場合で言いますと、側弯カーブの進行をスコリオメーターだけ用いて ATR(angle of tunk rotation )だけで評価した場合、患者さんの正確な評価ができているのか? という疑問が生じます。 リブハンプが改善していることと、脊柱のねじれた角度が改善していることとは、直接の関係はないと august03は.....自己流の勉強からの結論ですが....考えます。

・スコリオメーターと ATR だけで思春期特発性側弯症患者さんのアウトカム評価をされようとしている先生がたには、その場合の混乱、患者さんに与えかもしれないリスクということを ぜひとも よく検討されていただきたいと願うばかりです。
 

・この問題は、民間療法者の問題とも関係してくるのではないかと危惧しています。


august03



追記:2017年11月13日
グーグルで 思春期の脊柱側弯症 ポルトガル で検索しますと、下記のPDFをダウンロードすることができます。


この中に「思春期の脊柱側彎症:ポルトガル南部地域における検討」という資料があります。どうやらポルトガルでの脊柱側弯検診(スクリーニング)の結果が記載されているのですが、このスクリーニングにスコリオメーターが用いられているのがわかります。


スコリオメーターをスクリーニングの一次検査に用いられることはいろいろな国で行われているようです。現場で使用するにはたいへん簡便な器具ですので、スクリーニングに適しているのだと思います。ただ、気になったのが、スコリオメーター5°はコブ角10°に相当する・7°以上がコブ角30°に相当する。と定義して、「指標」として歩きだしていることです。 例えば、ワーストシナリオを想定した場合、スコリオメーター(ATR)7°がコブ角30°と考えることは、このスクリーニングで7°以上の子ども達は二次検診として整形外科に行き、レントゲン撮影をして、正確なコブ角を測定して、診断を確定することになると思いますので、心配はないのですが、しかし、ATR 5°以下の子ども達は、コブ角10°の軽度側弯(マイルドカーブ)ということで、二次検診は受けないと思います。

でも、どうして ATR 5°はコブ角 10° と言えるのでしょうか?

◇2013 Daniel M 「Scoliometer measurments of patients with idiopathic scoliosis」によれば、ATR 5,6,7,8,9 and 10 scoliometer measurement of scoliotic curvature greater than 20° cobb.
スコリオメーター計測で5~10°は コブ角 20°以上 考えるべき。ということを指摘しています。つまり、ATR 5°は コブ角で20°かもしれません。また類似の文献によりますと、ATRは患者さんの背中の丸め方....姿勢の変化で測定数値が変化する、という記載もあります。

スクリーニングにおける擬陽性も問題ですが、偽陰性はもっと大きな問題を生み出します。







◇1983 Burwell. Standardised Trunck Asimmetry Scores. A study of back countour in healthy schoolchildren

◇1984 Bunnell. An objective criterion for scoliosis screening

◇1990 Larie E Mendt. Validity and Reliability Testing of the Scoliometer

◇1990 Amendt Validity and reliability testing of the scoliometer

◇2002 Grosso The validity of clinical examination in adolescent spinal deformities

◇2007 Grivas, T. The effect of growth on the correlation between the spinal and rib cage deformity: implications on idiopathic scoliosis pathogenesis

◇2002 Grosso The validity of clinical examination in adolescent spinal deformities.

◇2007 Grivas The effect of growth on the correlation between the spinal and rib cage deformity

◇2013 Daniel M Coelho. Scoliometer measurements of patients with idiopathic scoliosis

◇2014 Tyrakowski M Methodology of evaluation of morphology of the spine and the trunk in idiopathic scoliosis and other spinal deformities - 6th SOSORT consensus paper

◇2017 Tyrakowski M Cobb angle measurements on digital radiographs using Bunnell scoliometer: Validation of the method



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