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2017年の文献より: マイルドカーブに対する夜間装具の効果 (第二弾として)

2018-01-28 22:49:08 | マイルドカーブ
初回記載: 2018年1月28日 

昨日1月27日に続けて、夜間装具の効果に関する文献です。ただしこちらは、文献本体が入手できなかった為、アブストラクトのみからですが、私見を述べさせていただくには十分と考えらた為、ここにご紹介するものです。


出典「Efficacy of nighttime brace in preventing progression of idiopathic scoliosis of less than 25°」
   「25°以下の特発性側弯症に対する進行防止に用いた夜間装具の効果」
G.LateuraP.GrobostaJ.GerbelotbA.EidaJ.GriffetaA.Courvoisiera
orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research
Volume 103, Issue 2, April 2017, Pages 275-278

・1施設における
・後ろ向き試験(レトロスペクティブ....過去に実施された治療データを集計しての報告)
・患者数142人に対して夜間装具で治療。骨成熟が完了するまでフォローアップした。
・初診時のコブ角は 平均15.5° (10°~25°)
結果
・最終観察時の平均コブ角は 16.3°、これは統計学的には有意に進行したことを示した。
・リッサーサイン0や1の患者では平均的変化は 16.2°であり、これは統計学的には有意な進行とは言えなかった。
・142人のうち26人(18%)は、コブ角が消失した。24人(17%)はコブ角が進行した。 92人(65%)は変化なしであった。
・この結果から、夜間装具は、多くのケースでカーブ進行の抑制に効果があったと考えられる。


(comment by august03)
・こちらの報告は、本文が入手できなかった為、患者背景が不明のため、直接的に昨日の文献と比較したり、一般化はできませんが、昨日の文献ではもっともリスクの高い背景で 30%で進行抑制が報告されていました。一方、上記文献では 65%に変化なし、と報告されていることから 142人の中には、リッサーサインが2とか、3とかの患者も含まれていたのではないかと推測されました。
・この報告からは、この65%に注目していただきたいのですが、カテゴリー「マイルドカーブ」の中の「マイルドカーブの自然経過 :およそ70%以上は自然緩解(医学データより) Update」や「特発性側弯症 マイルドカーブについてのQ&AA」を参照いただきたいのですが、上記2017年の海外研究報告で示された結果も、2011年の国内報告とその結果がほとんど同一である、ということです。

     軽度側弯マイルドカーブの自然経過として、約70%は自然緩解・進行せずに、そのまま収まっていく 

従いまして、夜間装具の結果は「自然経過で示されたデータ」を上回るような有効性は示せてはいない、ということになると思います。

ここからさらに申し上げれば、身体を固定する装具が自然経過を超えることができなかったときに、体操療法が自然経過を超えることの蓋然性は見えない。ということです。

マイルドカーブで、経過観察しましょう。と医師から説明を受けたときに、待つのはおかしい、と感じられる、その気持ちは理解できます。しかし、装具をすることで100% カーブ進行を抑制することはできそうもない、ということはこれらのデータから推測できるかと思います。 この時期に大切なことは、医師からの説明に動揺したり、反発することではなく、お子さんのカーブが進行性のものなのか、おとなしいタイプなのか、ということを親御さんの立場で、家庭でも経過観察する努力だと思います。この時期に家庭でできることとして、朝夕に身長を測定して、その変化を記録していく。ということなどもあります。カーブが進行すれば、身長が伸びない・逆に低くなる、という変化に現れると考えて下さい。 方法は、特発性側弯症の娘さんの記録に経過観察をしつづけたお母さんのブログに詳しく記述されていますので、ぜひともそちらを参考にしていただければと思います。

august03


Abstract
Introduction
The objective of the present study was to assess, at skeletal maturity, the efficacy of non-operative treatment by isolated nighttime brace in the prevention of progression of progressive idiopathic scoliosis of less than 25°.
Hypothesis
Isolated nighttime brace treatment is effective in the prevention of progression of mild progressive idiopathic scoliosis (Cobb < 25°).
Material and methods
A single-center retrospective study included 142 patients managed by nighttime brace for progressive idiopathic scoliosis with Cobb angle < 25°, with assessment at skeletal maturity. Mean Cobb angle at start of treatment was 15.5° (range, 10–25°). Mean values for Cobb angle and sagittal parameters before treatment and at skeletal maturity were compared on Student t-test. Change in Cobb angle over time was also analyzed.
Results
Mean Cobb angle at skeletal maturity was 16.3°, showing significant increase over baseline (15.5°; P = 0.04), although the difference was less than the uncertainty of measurement (± 6°). In baseline Risser 0 or 1, mean change in Cobb angle at skeletal maturity (16.2°) was not significant (P = 0.1). Cobb angle diminished in 26 cases (18%), increased in 24 (17%) and was unchanged in 92 (65%).
Conclusion
The present study confirmed the efficacy of non-operative treatment by nighttime brace in mild progressive idiopathic scoliosis (< 25°) in a large majority of cases. A nighttime brace thus seems to be an effective option for the treatment of adolescent scoliosis,ensuring a safe curve of around 20°.


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