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医学文献紹介: 夜間のみの装具療法 vs 経過観察 (マイルドカーブに対する装具療法は効果があるのか? )

2018-01-27 21:20:42 | 特発生側弯症と装具療法
初回記載: 2018年1月26日
追加記載: 2018年1月27日
 

 お子さんが特発性側弯症、ただしマイルドカーブなので装具療法にはまだ早いので経過観察しましょう、と医師から説明を受けたとき、待つよりも、いまからでも装具療法を開始したほうが良いのでは? と頭をよぎったとしたら、でも、装具を付けての生活は子どもの負担が大きいと言うし、マイルドカーブのまま進行しない確率も大きいと言うし、.......どうしたらいいの?

このような悩みを持たれた親御さんも大勢おられるのではないでしょうか?

ここにご紹介する文献は、夜だけの装具着用で側弯症の進行を防止しようという発想から行われた臨床試験成績の報告です。どういう結論が導かれているかは、私august03もこのブログを書きながら読み進めていきますので、まだわかりません。また、この方法はいわば実験的なものであって「標準治療法」とは異なる進め方であるということ、まだこれからも同様の試験が行われていくと思われますので、このひとつの文献データからのみ「結論」を導きだすことはできないもの。ということを前提として、これから書き進める内容をお読みいただきたいと思います。

 以前のような馬力も出なくなってきており一気呵成に読み進め・書き進めることも難しい為、この項目もおそらく何度かに分けて、追記、追記が続くと思いますので、ご了承ください。 なお、文献は google検索、Pubmed検索でタイトルを入力することで本文をPDFで入手可能です。なお記載においては、できるだけ平易になるようにaugust03による意訳ならびに補足説明(青文字)の混在したスタイルで進めたいと思います。

◇ John m.Wiemann et al ; Nighttime Bracing versus Observation for Early Adolescent Idiopathic Scoliosis.
Jornal Pediarric Orthopedic vol 34, number 6, September 2014.
「特発性側弯症の早期段階における夜間装具療法と経過観察との比較」

・これはプロスペクテブ前向き試験、つまり過去のデータをレビューするのではなく、今これから被験者の同意を得て、治療を実施しながらその結果を得る、という方法で進められたもの
・試験は1病院のみで実施。(複数施設での試験ではない、という意味ではここでの結果が広く汎用性・一般性があるかどうかの信頼性は高いとは言えないことになります)

・参加した患者の背景は、初潮前・リッサーサインはゼロ・15~25°のマ、ルドカーブ
・この条件の患者に対して、骨成熟が完了するまで「Charlestonチャールストン夜間装具」を装着
・これらの患者のカーブの進行状態は、別施設の医師が観察した (治療した医師が「成績」を報告することでのデータの信頼性が失われることを避けた、という試験方法)



本文献自体には、Charlstonブレースの写真は掲載されていませんでしたので、googleにて「charlston brace」を画像検索し、その中から一点を参考としてここに貼付

・初潮前、リッサーゼロは、特発性側弯症の特徴としてハイリスク(進行しやすい)であると仮定できた
・夜間専用としてデザインされたCharlstonブレースは、骨が未成熟なときの15~25°マイルドカーブに対して進行させない、という効果を有すると考えた。これは標準治療方針の25°以上になったら装具療法-full time (20時間以上とか)-を開始する、ということを避け得る方法であると仮定した。

・装具開始の標準治療方針は、 25~40°、10歳以上、リッサー0~2、初潮1年以下、これまでに何の治療もしていない患者、ということでこれまで15年以上続けられてきた。しかし、依然として装具療法の効果の有無を巡っては議論が続いており、質の高い研究は不足している。
・さらに多種多様な形状の装具があることで、その有効性に対する証拠をの曖昧なものにしている。

・思春期特発性側弯症は、その病名が示すように“思春期”にカーブが進行することが分かっている。この成長期に装具療法を行うことでカーブ進行を制御できる。これを踏まえてSRS(側弯症学会)ガイドラインは、この思春期の子ども達に装具療法を行うことにベネフィットがあるとしている。
・しかし、成長がもっとも大きく進むのは初潮期であり、レントゲンで確認できるリッサーサインが腸骨に表出する前のことになる。
・初潮後のリッサーサイン1~2の患者が治療対象の大部分ではあるが、カーブ進行が最も大きいのは初潮前、リッサーサインゼロの患者ではないか、という懸念は存在しており、これらの患者に対する早期からの装具療法こそ有益ではないか、という考え方がある。

・チャールストン装具は「夜間専用装具のデザイン」であり、これまでに複数の試験・研究によりその効果が報告されている。またこのデザインはバイオメカニクス分析からも、側彎カーブの凸側に対する圧迫作用に優れていることが報告されている。また、夜間だけ装具を装着する治療のほうが、患者は受け入れやすく、患者の心理的な負担も少なくなることが期待されている。

・本研究の実施方法説明:
・二名の専門医師により確認された初潮前・リッサーゼロ・コブ角15~25°の女子よりインフォームドコンセントを得て、試験に参加してもらった。
・A病院の患者にはCharleston装具で夜間のみ装着を実施し、B病院の患者には経過観察とした。全ての患者は6か月毎にレントゲン検査を実施した。装具患者では、装具の点検や調整のために6か月より短い期間での来院も行われた。
・コブ角計測は、リサーチフェローが行い、もし計測誤差3°以上が疑われるときは、そのレントゲン写真を本試験の研究者が再計測し、結果判定した。

・B病院の経過観察の患者の場合は、もしレントゲン検査で25°以上にカーブが進行した場合や、初回検査時よりも5°以上の進行があった場合は、フルタイムのTLSO装具を開始した。
・A病院のチャールストン装具の患者では、骨成熟の完了が観察できるまでチャールストン装具による夜間着用が継続された。患者によっては、夜間装具に加えて、昼間にTLSO装具も追加した。
・いずれの場合も、カーブが50°を超えた場合は、手術が推奨された。

・患者は骨成熟が完了し、少なくとも2年間のフォローアップを行った。

結果
・チャールストン装具療法患者 23人、比較対象患者 23人
 9名が2年フォローから脱落した為、データとして分析できたのは、できたのチャールストン装具群21人、比較対象群16人 (医学データとしてはかなり小さなものであり、この結果を一般化できると考えるのは非常に難しいと思います)

・試験開始時のコブ角はそれぞれ平均19°

・比較対象群16人では、8人が観察中に5°以上(ただし10°以下)に進行。8人が10°以上進行した。
・チャールストン装具群では、6人(29%)が観察中の進行はなく、骨成熟完了時まで夜間装具のみで療法を終えた。4人は観察中に5°以上(ただし10°以下)に進行。残りの11人(50%)は10°以上進行した。

・比較対象群16人のうち2人(12%)はカーブが進行し続けて手術となった。またチャールストン装具群でも4人(19%)が手術となった。


比較対象群16人の経過


チャールストン装具群21人の経過

Discussion
・これらのデータから、15~25°の小さなコブ角であっても、初潮前・リッサーゼロの患者ではカーブが急激に進行することがありえることを示すことができた。
・比較対象群は、全員がカーブ進行により、フルタイムのTLSO装具療法となった。
・チャールストン装具群では 6人29%がカーブ進行は試験開始時の状態をほぼ維持していた。残り15人はカーブ進行はあったが、それは大きなものではなかった。
・しかし、患者数が小さく、手術を抑制できたかどうか、できるかどうかを示すには患者数が小さく、示すことはできなかった。
・また、この試験では、患者が本当に装具を何時間装着していたかを検証することができず、その点からのデータ信頼性は高いとは言えない。
・25°から装具療法を開始するというSRSガイドラインからは、意図的に異なる療法を用いたが、初潮前・リッサーゼロというハイリスク患者の経過を見ることは意義があったと考える。

(comment by august03)
・患者数(データ数)が小さく、ここから夜間装具のみでカーブ進行を抑制できる(できた)という結論を導くことはできていませんでした。
・ここで示されたチャールストン装具群と比較対象群のデータを総合的に見てみると、15~25°で初潮前・リッサーゼロの患者さんは十分な注意をもって経過をみていかないと、つまり、レントゲン検査を半年以上も受けるのを忘れていた、というような場合、その間に急激にカーブが進行していた。ということになりかねない。という警句を読み取ることができると思います。
・また、両群のカーブ進行経過を注意深く見ていただけますと、「進行する側弯はどんどんと進行していく」.....当ブログ内で私はこれを荒ぶる側弯と呼称しているのですが....と、「比較的おとなしい側弯」があることが感じられると思います。 これに対して、研究者は「装具のコンプライアンス」つまり本当に装着していたのか? の確認ができる試験方法ではなかったことが影響しているのかもしれないと考えているのかもしれません。 装着時間の問題かもしれず、あるいは、遺伝的要素とか、なんらかの環境的要素なのかもしれません。これはいまだに未解明の問題ですが、
未明ゆえに、注意深く経過を観察していくことの必要性があることがおわかりいただけると思います。


august03



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国内での夜間装具について知りたくなり、Google検索 (キーワード:側弯症 夜間装具)をしてみました。

結果は次のとおりです。
・夜間装具 SNNB http://www.naganogishi.jp/snnb/
・整形外科 瀬本喜啓のWEBページ  http://www.semoto.jp/SNNB.html


日本語では情報がこれ以上得られなかったので、英語での検索をしたところ、Youtubeで「how to sleep in your scoliosis brace with no pain 側弯ブレースでの痛くない睡眠方法」というのがあり、10歳前後の女の子が解説していました。これを見ていましたら、この女の子は装具ライフのあれこれをYoutubeにアップしていることがわかりました。

  Sammys Scoliosi Diary



例えば、装具の着用方法、装具を付けたときの四季の服装アラカルト、装具をクリーンにする方法などなど
英語のビデオですが、画像を見ているだけでも何を説明しているかはおおよそ理解はできます。 たぶん、親御さんというよりも、装具療法をこれから始めるお子さん、現在実施しているお子さんに見てもらうことで、お子さん自身が何かを得るきっかけになるのでは? と感じた次第です。




 上記の文献和訳は続きます

 august03





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