~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯(そくわん)をもう一度基礎から (PDFダウンロード):修正追記あり

2017-10-27 00:18:30 | 側弯そくわんをもう一度基礎から
(最初の投稿は10月18日。修正10月27日:修正箇所は後半、黒太字で示しました)


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http://www.sokuwan.jp/doctors.html




“治る ”と言う者がいるとき、(それを目にしたり、祖父祖母・舅、姑などから行けと言われたら)罪悪感に責めさいなまれている母親には、たとえ医学的知識・情報を持っていたとしてもその指示を拒否する力はありません。
   
“治る ”と言う者がいるとき、そこに行かずに「もし手術になったら」と、
母親の罪悪感はさらに増大して、母親をさらにさらに苦しめることになる。
それを想像したとき、母親は「ダメもと」「後で、舅、姑から責められるくらいなら、お金がかかっても行かせたほうがまし」と考えるもの。

“治る ”と言う者がいるとき、それにすがりつくのが母親というもの。
医学的根拠なんてどうでもいい、そんなものがなくてもいい
治ると言ってくれているのを無視することはできない
可愛い娘を、可愛い息子の曲がった背中を真っすぐにしてくれるなら
藁にでもすがる、お百度でもする、なんでもする、
そう考えるのが母親というもの。

何もしないより、何かをしていることで「救われたい」と考えるのは
人間の心理、ましてや母親ならば。

思春期特発性側弯症という病気は、身体への影響である以上に
心理上の影響が大きい病気、というのがこの病気の現実の姿。

患児のこころ、そして、それ以上に母親のこころを苦しめます
祖母のこころを苦しめます
罪悪感という思いがどうしても、そのこころから離れません

もしこの病気が、腫瘍とか、心臓疾患とかであったなら
同じ苦しみでも、おそらくこころを苦しめるその中身は違ったものなのでは?
その差が生じるもっとも大きな違いは
それらの病気については、医学的知識・情報が豊富であり
例えば、小説・手記・テレビ・映画等で繰り返し繰り返し、読み見て聞いている
どういうものであり、どういう対応がとれるのか、あるいはとれないのか、
そういうイメージが思い浮かぶ。
まさか我が子が、という驚きはあったとしても
罪悪感に責めさいなまれる、ということとは違う感情を抱いて、
お母さんはこどもの腫瘍や心疾患に立ち向かっていくのではないかと想像してしまいます

こどもが腫瘍になったことを、心臓病になったことを、
その原因と責任を母親のせいにする父親も、祖母祖父も、舅も姑もいないでしょう
家族が一丸となって、その病気に立ち向かうこども(孫)のために
何ができるかを考え、
支援の準備をすることでしょう
それができるのも、知識と情報が豊富であり、イメージができるから。
ある意味、イメージトレーニングができているから。

思春期特発性側弯症の苦しさは、その原因が不明であるがゆえに
そして、女の子に多く発症するがゆえに、そして「見た目」に関係するがゆえに
自分が悪いのではないかとお母さんは自分を責め、
お前に原因があるのではないかと夫は妻に責任をなすりつけ
....自分(夫)は関係ないと知らぬフリをする
祖母は娘(母)の責任は自分にもあるのではないかと、相手側の祖父(舅)祖母(姑)に
ひけめを感じて、祖父と一緒にあれこれと調べ、
そして辿り着くのが「側弯症は治る」という整体の広告。

そうか、なんだ側弯症は治るんだ、と娘に連絡し、お金は出すから行けと指示をだす

祖父祖母にしても、あるいは舅姑にしても、
可愛い孫の為に、費やすお金は無駄などとは考えもしない
あるいは、もしも行かせなかったら、他の親戚や、
あるいはその情報をもってきてくれた「親切な友人」に示しがつかない

ダメでもいいではないか、何もしないよりはマシではないか
身体の疾患なのだから、骨と筋肉に問題がある病気なのだから
体操療法というのは「理にかなっている」ではないか

そう信じるのは人間として当然の心理

「治る」「治せる」と言ってくれる人を信じたいのは人間として当然の心理

それに賭けたいと思う、その人間の感情を誰にも否定はできません

.....だから、私august03は、そういう人間の心理を利用する側弯整体を非難します。

思春期特発性側弯症は、いまだに原因が不明ですが、発症に関与しているひとつの要素としての「遺伝子」に関するニュースがこの数年、次々と発表されてきています。遺伝子に関しては、私も勉強しなければならないことがたくさんありますが、その中でも、次の内容はぜひともお伝えしたいのです。


「遺伝を考えた人間の話」木田盈四郎(-BLUE BACKS-昭和54年)というかなり古い本からの引用になりますが、このような人間の心理について語っている部分がありますので、ご紹介します。 原文をベースに、赤字部分は上記内容を転移してみました。

....人間が真理、自然界の摂理を知ることを妨げている障害は、わたしたちの行為の根底には、自然の因果の法則があるという認識に対する感情的な反発があるため.....わたしたちは、自然界の出来事が(遺伝子の)因果的に決定されているのを見ると、
密閉室恐怖症に似た、身動きのとれぬ感じを抱く。........いうなれば、わたしたちが細胞の塊であるとか、DNAに基づいてできている、ということがわかるにつれて、わたしたちの存在の根底がくつがえされるような、頼りげないような気持ちが起こってくる心理状態と一致している。......遺伝学に対する無知は、
人間が遺伝という現象を感情的に考えすぎて、それに対しては知らぬフリをしたいと考えたいためである。.....(引用終わり)

思春期特発性側弯症になりやすい体質....これはまだ全てが特定されたわけではありませんが、遺伝子が関与しているとのこと...との関係については、これから、少しづつ資料を提示しできるだけ分かり易い形で情報を提供したいと考えていますが、このStep by step側弯症ライブラリー患者の皆さんへ を読みにこられる皆さんにお願いしたいのは側弯症(そくわん)における「(ご自身の)こころの問題」と「医学的知識・情報」とを切り離して冷静に事実と向き合って欲しい、ということです。

例えば同書から、遺伝子と病気についての関係の記述を次に示してみます。

....このような多因子遺伝病を表4.12に示したが、その中にもありふれた病気が多く含まれている。たとえばアレルギー体質というものは、住民の10パーセントくらいにもっていると考えられており、また近視の人も同じく10パーセントくらいいるのだからこれはありふれた病気といえる。こうしたありふれた病気の遺伝素因は、親から子へメンデル式遺伝をしているという証拠はまつたくない。たくさんの遺伝子が関係していると考えられる疾患のひとつである.....(引用終わり)

医学的事実という定義でいえば、思春期特発性側弯症の原因はいまだに特定されてはいません。
いまだに原因不明の病気です。原因の全てが遺伝子にあるわけではなく、「何かが引き金」になることで、「まだ特定されていない複数の遺伝子」にスイッチが入る。そういうイメージで、原因究明の研究が続けられているようです。
ここで遺伝子をとりあげるきっかけは慶応大学の研究報告(バレエとの関係も示唆されていましたが)を見たところから出発しているのですが、これまで手のだせなかった遺伝子に関する書物を読む機会を与えてくれました。

これは一般論として私が理解しつつあることですが、遺伝とは「リスク」要因であって、そのリスクがどこにあり、どの程度のもので、対応方法は何か、ということをヒモといていくことで、漠然とした怖さから、自分で理解し対処できる内容に変わっていけるもの。という感じを受けています。

例えば、インターネットで「病気、遺伝」をキーワードにして検索しますと、日常よく聞く病気の大半が遺伝子が関与していることがわかります。遺伝的要素を持っている人に、何かが作用することで、その病気が発症しやすくなる。

親から子へという遺伝的関与も存在します。また全くそのような遺伝系列的な流れのない、突発的な発症もあります。いまはまだ特定されていないわけですが、仮にそれを遺伝子Aと呼ぶなら親からは引き継がなかったその遺伝子Aが、こどもの成長過程のなかで、遺伝子のコピーが行われている最中に、突然変異によって遺伝子Aが生まれた。というような仮説もありえる、それが遺伝子をベースとした遺伝子解析研究の中で検証されている、というように受け止めることができました。(←これはあくまでも私の勝手な想像です。側弯症は「原因不明」ですから、この点については、私ふぜいでもなんでも言えてしまいます。実はこれが「側弯症」の怖いところなのです。一見それらしく感じられる「話」が、あたかも事実であるかのように独り歩きしてしまうのです。例えば、下記のような「意見」も原因不明なのですから、「私見」とはいえ「考え」としては成立していることになってしまいます。)

世界中のどこでも、ほぼ人口の1~2%には(程度の差はあれ)側弯症が見られる、ということは、人類の太古の昔から延々と続く何かがある。ということになると思います。ある資料には、例えばAという遺伝子があることで、AAAという病気に対する免疫を持つことができ、ゆえに体の中にA遺伝子を持つ人は、生き延びることができた。しかし、A遺伝子には、BBBという別の病気を引き起こすリスクも持っていた。というような話が書かれていました。「良い遺伝子とか、悪い遺伝子とか」そういうものはない。遺伝子にはそれぞれに何かの役割をもっていて、それが働くこともあれば、働かずに眠ったままのときもある、と。

このように何千年も、何万年もヒトの身体を構成する遺伝子の中に側弯症に関与する何かがあり続けるのは、それは遺伝的多様性という考え方に立脚すると、何かの役目を持っているから存在しつづけている。ということも言えるのだと思います。

側弯症は不思議な病気で、なぜ幼児とか思春期とかに発症するのか? 原因不明もあれば、明らかに神経性の病気から側弯症という同じ病態を持つものもあり、病態は似ているのですが、もしかすると、それは結果であって、それぞれに原因は違うところにあるのかもしれない、とふと考えてしまいます。

おそらく先生がたが長年研究を続けても、その原因が特定できないのは、結果としての「側弯という病態」は同じなのですが、対象とする患者さんがあまりに多様であることも関係しているのかもしれません。

そういう中で、現代医学の革新として遺伝子解析技術が進歩し、多くの病気の原因が、実は特定遺伝子の中に潜んでいた、ということが解明されてきています。側弯症もそのような研究のひとつとして遺伝子解析が進み、その報告がニュースとして私たちの目に飛び込んでくるようになりました。遺伝子だけで説明できるわけではなく、......その遺伝子も全てが解明できていないわけですが......それ以外の何かもあるようだ。というのが現状のようですが。

つまり、やはり何もまだわかっていない、というのが結論的になるのですが、しかし、側弯の最大の怖さである「進行することをできるだけ抑え込みたい」という視点にたつと、遺伝的要素の有無はリスクとしてしっかりと把握すべきだと考えます。誤解していただきたくないのは、遺伝が確定しているということではなく、側弯症になりやすい体質(リスク)というものが存在するということです。そのリスクを理解すれば、「できるだけ早く変化を見つける」「時期を逃さずに装具療法をする」「装具は辛いものですが、その効果は装着時間と相関している」ということをこどもに理解してもらい、周囲の人たちにも理解してもらい、なんとか2年、3年という期間を乗りこえてもらい、カーブをできるだけ小さいものにして、骨成熟期を迎える。そして、その後も、定期的に検査を受けて、万が一にもカーブが進行していた場合は、手術するのか、せずにがんばれるのかご家族と一緒に考え、医師と相談する。そのような長いスパンで取り組む必要がある。ということはどうか忘れないでいただきたいのです。


こういう話をすると、困ったことが必ず起こります。
側弯整体は、こう言うでしょう。
「骨盤が曲がっているのを治せば、スイッチは入らない」と。

彼らが言うことをどう捉えるかは、皆さんの判断です。
皆さんが判断することを私は非難はできません。
なぜなら、皆さんのこころの痛みを私は治すことはできませんから。

でも、私は側弯整体は非難を続けるしかありません。
なぜなら、彼らが「そくわんは治る」と言い続ける限り、皆さんのこころは惑わされ続けるからです。彼らが医学的に正しい判断ができるようになれば、皆さんを取り巻く環境は大きく改善します。
彼らは整形外科医師・側弯専門の脊椎医師(医学)が治せない病気を、自分たち整体(民間施術師)が「治せる」と喧伝しています。
この瞬間から、思春期特発性側弯症に対する世間のイメージは、“医学”から“まがいモノ”になってしまっています。
彼らは自分たちが「正しい」と思い込んでいるようですが、その正義感が、実態として、思春期特発性側弯症患者をまがいモノに貶めている、
という構図に気づいていない。側弯症が「病気」ではなく、単なる骨格変形であり、施術や体操や、医学的根拠のないアーチ板を当てれば「修復できる程度のもの」に貶めている。自分たちの存在が、いわば一般的概念で見れば、大昔のシャーマンや祈祷師と同じ立場であるということに気づいていない。
祈祷師によって施術される患者はその時点で、医学の治療対象とはかけ離れた立場に追いやられる、ということに気づいていない。
患者とその家族のこころを苦しめているのが、自分たちだということに気づいていない。
患者の背中を「商品」としてインターネットや一般書物に掲載することで、それを見た人にとっては、それらはもはや医学的事実とか、科学的見地とかからはかけ離れた、単なる「見世物」になってしまっていることに気づいていない。それがいかに患者や家族のこころを苦しめる原因になっているかに気づいていない。




上記に掲げた「脊柱側弯症のしおり」(いわて脊椎側弯センター編)をダウンロードされることをお薦めします。
とても分かり易くて、理解が進む説明書です。
グーグルの検索語に「脊柱側弯症のしおり」と入れれば、図のようなPDFがダウンロードできる検索結果が表示されます。

これを読まれて、そして、同様に「側弯症専門医」のおられる医療機関を
選択して、診察を受けて下さい。
整形外科ではなく、このサイトに掲示されている側弯症専門医のおられる
医療機関に電話して、予約をとって下さい。
ご自分のおられる地域からは遠いかもしれません。
交通費が高いかもしれません。
でも、交通費も医療控除の対象となります。
もしもそくわんが進行して、どうしても手術が必要となった際も
育成医療という制度で、経済的負担は格段に少なくすることができます。
このような側弯症専門医療機関には、そのような医療制度を説明してくれる
スタッフの方もおられるはずですから、経済的な心配もほとんど無用だと
思います。
気の早い言い方で申し訳ありませんが、
手術が必要な場合は、この育成医療制度が適用できる時期にすることも
頭の片隅に置いていていただきたいと思います。

そしてもうひとつ、
学校で行われている側弯症検診も、この育成医療制度も
側弯症の治療と戦いつづけてこられた専門医の先生がたが
長い年月と努力をかけて、日本の医療制度の中に誕生させてくれたこと、
どうかそのことも頭の片隅においていただきたいと思います。
そのような努力もせずに「治せる」と宣伝して金儲けをしている側弯整体とは違い
先生がたは無責任に「俺は治せる」とは申さないでしょう。
それが「医師」という立場です。医学的事実が何であり、患者さんの身体に
メスを入れるという責任を担う医師とは、そういうもの、ということを
どうか理解していただければと願います。

august03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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