~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

脊柱固定術後の身長の伸びは ?  固定範囲について

2009-05-01 19:44:53 | 側弯症手術について
 (添付画像は下記URLより借用しました。説明文はaugust03が追記したものです)

 Scoliosis and Spine Accociates :
 http://www.scoliosisassociates.com/subject.php?pn=idiopathic-scoliosis-009

 私august03はブログ Step by stepのなかで、基本的にできるだけ手術をせずに
保存療法 (装具療法や運動療法など)で側わんカーブを抑え込むことを主眼として
関連する情報等をお届けしています。それでは「測湾整体」と同じではないか、
という質問もときおりお受けします。答えは ノー です。
「測湾整体」による施術と「医師/理学療法士の皆さん」が行う治療とは全く次元
が異なるものです。世間には「測わんヨガ」を売りものとする元患者という民間業
者もいますが、これとも「医師/理学療法士の皆さん」が行う治療とは全く次元が
異なるものです。

側弯症とは、単に脊柱がカーブしている「形態」のバランスが崩れてるだけなのだから、
そのバランスを「施術」「ヨガ」で整えればいいのだ。という程度の捕らえ方を
しているのが民間業者ですが、本当にそうでしょうか?

この子の側わんは5回通えば治りますよ.....(5回後)......う~ん、もう少しですね
あと3回通いましょうか.... そうしている間に、カーブはどんどんと進む可能性が
あります。確率は、正確ではないかもしれませんが、これまで読んできた文献等
から推測しますと、ほぼ50%と予想されます。誤差はあると思いますが、ある確率で
進行性の患者さんと進行性ではない患者さんが存在することが文献等から読み取る
ことができます。
そういう患者さんが混じっているために、仮に 100人のこども達が「側湾整体」や
「そくわんヨガ」に通いますと、半分の50人はあたかもその施術やヨガが利いたか
のような状態を生じることになります。その錯覚にこれまで多くのこどもたちが
そしてお母さんがたが騙されてきました。
いいえ、「治った」と思われるケースであれば何の問題もありません。単にお金を
費やしたというだけですから。
問題は、進行性の患者さんの場合です。側わんが進行しているかどうかは、身体の
外から見ただけではわかりません。触ってみて判断できるものでもありません。
レントゲン写真を撮ることで判断できるのであり、そのレントゲン撮影にも技術が
必要です。
一部の測椀整体は「提携病院」なるものを準備して、その病院でレントゲン写真を
とることが「できる」という宣伝をしています。撮ることが「できる」という事と
正確なレントゲン写真を撮ることとは全く異なります。側わん専門医のおられる病院
では先生が自ら撮影に立ち会って技師さんにあれこれと指示するところもあります
現場にその都度立ち会うことがなくとも、病院内でいろいろと撮影上の指示が先生
から技師さんに行われています。できるだけ撮影誤差を少なくし、できるだけ正確
なコブ角の測定をすることがどれだけ重要であるか、ということは皆さんも十分に
ご理解できていると思います。

民間業者と専門医療機関による治療と何が異なるか。 それは医学と呪文の差と
言ってもいいでしょう。側わん症の患者さんの中には空洞症を有していた、という
場合も決して少なくはありません。小さな子供の場合、それ以外にも合併症が隠れて
いたということもあります。病院で診てもらうということは、そのような不測の事態も
含めて、先生はしっかりと検査し、治療方針をたて、状況を観察しながら、適宜に
対処していくことになります。民間業者にはそのような多方面からのアプローチ
というものができるはずもありません。基本的に彼らは、民間人にすぎないのです
から、何の責任も有せずに、場当たり的に患者さんを騙していくことになります。

過去にそのような例でどれだけ多くのこども達が手遅れとなってきたか。それは
遠い過去のことではありません。私がこのブログを書き始めたつい2年前までその
ような泣くになけない出来事を涙ながらに書き込まれたお母さんがおられました。
整体に通ってもちっとも治っていくように見えず、どころかさらに曲がりが強く
なってきたように感じて、そのお母さんは側わん整体師に質問しました。

「なんだか前よりもひどくなってきてるように思えるのですが.......」
その質問に対する整体師の答えは、
「ああ、これは内臓が腫れているんですよ。しばらく静養すれば収まります」

その母親と娘さんがそこから逃げ出したのは当然です。
残念ながら、その娘さんは病院で診てもらったときは、すでに遅くすぐに手術と
なってしまいました。

世間には、装具と体操を売り物とする側わん整体もいますが、根っこは同じです。
側わん症とは形態だけを整えればいいという次元のものではありません。
その患者さんがどういう状態であるかを、併発・合併症の有無なども含めて、病気を
治療する体制のなかでケアされるべきものです。

そして、どうしても手術が必要となったときには、適切な時期に手術を行うこと。
先生からよく説明を受けられて、わからない点はしっかりと質問されて、納得して
手術を受けてください。

ここで、添付の写真について説明してみたいと思います。
側わん症の手術方法は、患者さんの状態(カーブのタイプ、硬いタイプなのか、
それとも柔軟性のあるカーブなのか、体格、健康状態等々)により、一律にこれと
決められるものではありません。
お子さんが手術かもしれない、となった場合、どうしても心配なことのなかに、

  * 背中が曲がらない ロボットみたいな生活様式になってしまう
  * 身長がそこで止まってしまう 

というようなことがどうしても、すぐに頭に浮かばれると思います。
そのように疑問にお答えする意図もあり、添付の写真を掲示してみました。
ただし、誤解していただきたくないのですが、これは「例示」であって、標準的な
ものということではありません。このような術式で実施することができるお子さんの
場合もあれば、できないケースもありえます。また先生の手術に対する「考え方」
によっても変わってきます。ですから、皆さんは、一般知識として「脊柱固定術」
にも様々な方法がありえることを学ばれて、先生からの説明を理解する一助にして
いただければと思います。

この写真は、「内視鏡を用いた、前方からのアプローチによる、脊柱固定術」の
一例です。前方固定という表現はあたかもお腹の真ん中を切開して手術するような
イメージを与える言葉ですが、そうではありません。患者さんは手術台の上に、
横向き (横臥)になったポジションで手術を受けます。わき腹/肋骨のあたりから
切開して脊柱にいたるということをイメージしていただければと思います。
内視鏡というのは、多くの医療現場で用いられているあの鋼製の筒を用いた手術
ということです。写真に写っている長い棒は、一本は内視鏡(内部を観察)、二本は
骨等を切除したり、デバイスを取り付ける為の工具を体内で操作している。という
感じで理解されればいいと思います。
左端の写真が術前、真ん中が術後です。説明を受けないとわからないと思いますが
これは、身体の正面から撮影しているのですが、脊柱を固定しているスクリュー等
のインスツルメンテーションが「後方固定術」の写真とは方向が違うことに気付いて
いただければと思います。ブログ内に様々な術後写真がありますので、それらと
この写真とをじっくりと比較して見ていただければ、違いにきずかれると思います。
そして、ここからが今回の主題なのですが、写真の「縦の赤点線」と「赤円」とを
比較していただきたいと思います。

縦の赤点線は私がかってに想像して引いたものですから、実際の手術でもそうで
あるかどうかは正確ではありません。ただ、ここでは「固定範囲」というものの
考え方を理解していただくために、誇張的に描いてみました。赤円は、脊椎の中の
腰椎と呼ばれる部位です。第1腰椎から第5腰椎までこの手術では「固定」されては
いません。「固定」されていない、ということは「曲がる」ということです。
この写真の患者さんの場合は、胸椎だけを「固定」しているわけですが、おそらく
この場合でしたら、術後の患者さんの様子は、背筋がしっかりと伸びた、という
感じで周りの人たちからは見られるのではないでしょうか。手術した傷口を見せ
なければ誰も手術したともわからないと思います。
この写真の説明によりますと、 12才の女の子、55度が手術によって15度に減少。
とあります。手術によって身長が伸びた部分と、おそらく術後も多少は身長が伸び
たであろうと思います。

このように、脊柱固定手術と一口で言っても、いろいろなケース、パターン、
手術方法、対処方法が存在します。どういう方法をとるのか、それによってどういう
ことが得られるのか、どういうリスクがあるのか、様々なことを先生は説明されます。
それを全て理解することはかなり難しいと思います。少しづつ勉強して学んで
いただければと思います。
大切なことは、少しづつでもいいですから、知識を得て、先生の説明が理解できる
ように努力されること、そしてもしわからないことがあったら、遠慮せずにちゃんと
その場で質問して、不安を残したままにしないことです。
そして、何よりも、ネットに氾濫する「手術は怖い」「手術で失敗すると下半身
不随になる」「一生治らない傷が残る」「ロボットみたいな生活になる」「結婚
できない」「こどもが生めない体になる」 etc etc .....
そのような風説に惑わされない智慧を身につけていただければと願っております。


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